IAによくある3つの間違い(そのすべてが情報の匂いの弱さによるものだ)

リンクやナビゲーションのラベルで用いられる、曖昧なcall-to-actionの動詞、不必要な並列表現、会話的な口調は混乱を招く。代わりに、情報の匂いの強いラベルを採用しよう。

かつてヤコブ・ニールセンは言った、「わからないものをクリックするには人生は短すぎる」と。この言葉は、ユーザーがナビゲーションカテゴリーに対して取りがちな行動をよく言い表している。つまり、ユーザーはクリックする「前に」そのカテゴリーをクリックするとどこに行けるのかが明確でないかぎりクリックしない。もちろん、リンクがどこにつながっているのかを知りたくて試してみるユーザーも「一部」いるが、そのような人は比較的少数派だ(非常にやる気があり、とらえどころのない何かを探している人である場合が多い)。多くのユーザーが曖昧なリンク名を完全に無視しているというのは周知の事実なのである。

我々が実施している情報アーキテクチャについてのトレーニングコースでは、ナビゲーションメニューやリンクの適切なラベルの作成方法について多くの時間を費やしている。そこで我々が繰り返し立ち返る考え方というのが、そのラベルの情報の匂いの強さだ。すなわち、リンクラベルはクリックしたときに何が見つかるのかをユーザーに明確に感じさせるものでなければならない。IAカテゴリーを表す言葉を選ぶ際にもっとも重要なのは、明確さであるということを我々は強く主張してきたのである。

そこで今回は、ラベルの情報の匂いが弱いことに起因する、よくあるIAの間違いを3つ紹介する。

1.   曖昧なcall-to-action(魔法の呪文ではない)

従来のアドバイスでは、Webページには強力なcall-to-actionが必要だ、とされてきた。何をすべきかをユーザーが知るためには、(特に情報密度の高いページでは)次のステップを明確にする必要があるからだ。よく言われるのは、call-to-actionは動詞を使って表現するとよい、ということだ(例:「今すぐ始めよう」、「登録する」など)。このアドバイスの背景にあるのは、ユーザーに便利でわかりやすい次のステップ(登録、アカウント作成、注文、営業から電話をもらうための予約など)を提供することで、サイトからの離脱を防ぐという考え方である。これは「ある特定の」状況では有効なアドバイスだ。しかし、常にそうではない。リンクは絶対にcall-to-action的な表現にする必要があるというわけではない。特に、ナビゲーションリンクは、そうしたcall-to-actionのような表現にすることのメリットはない。

call-to-actionは、自動的にユーザーにクリックさせる催眠術のようなものではない。したがって、そこで提案するアクションは、ユーザーにとっての「価値」が明確でなければならない。call-to-actionとは、明確で状況的に意味のあるものである必要があり、提案するアクションはユーザーにとって説得力のあるものでなければならないということだ。一方、ナビゲーションでは、リンクラベルそのもの以外に提供できるコンテキストがあまりない。さらに、「探索する」や「接続する」といった単語は、単独ではあまり意味をもたない。その結果、もし自分が特定の情報を探しているのだとしたら、「学ぶ」や「探索する」のような漠然とした言葉は自分のゴールにはマッチしない。つまり、クリックする理由がないのである。

動詞の入った、すぐに行動に移せる言い回しを使う目的は、情報が密集している場面で、状況に合った明確な提案をすることだ。ユーザーが情報量に圧倒されていたり、次に何をすればいいかわからなくなっているのであれば、明確な提案は歓迎されるだろう。ただし、複数の競合するcall-to-actionがあると、お互いに存在感を薄めてしまうことになる。

ユーザーに何かを申し込ませようとする情報サイトでは、ページ上に明確なcall-to-actionのリンクがあると有益だ。ユーザーを次のステップに導くことができるからだ。しかし、この場合でも、そのリンクには、(「もっと読む」や「もっと学ぶ」といった漠然としたものではなく)情報の匂いが強いラベルが必要である。

しかし、ナビゲーションカテゴリーのラベルは、call-to-actionとして表現する必要はない。なぜならば、ナビゲーションの目的は、ユーザーが次にどこに行けばいいのかについて、複数の選択肢を明示することだからだ。曖昧な動詞(「探索する」「発見する」「学ぶ」「パートナーになる」など)は、カテゴリー名としては有効でない。というのも、他のカテゴリーとの違いがわかりにくく、ユーザーが十分な情報を得た上で効果的な選択をする助けにならないからである。ナビゲーションカテゴリーにはこうした動詞は使わないようにしよう。

動詞を使うこと自体が問題ではないことに注意しよう。むしろ、「行動指向的な漠然とした動詞」が問題なのである。タスクベースのカテゴリーであれば、ユーザーが何をしようとしているのかを表す具体的な動詞を使えば(たとえば、公共料金のサイトの「ペーパーレス&オートペイ」など)、有効なラベルになる。

Tibcoは、リソースや参考資料といった、情報提供が本質であるコンテンツのカテゴリーに曖昧なラベル(「活動する/Engage」)を採用している。このラベルは、ユーザーにそのカテゴリーで何が見つかるかはっきり感じさせるものではないし、カテゴリーの中身を示唆するコンテキストも周囲にはほとんどない。そのため、call-to-actionであるにもかかわらず、このラベルはユーザーがクリックする気になりにくい。
ラベルがcall-to-actionになっていても、それが指す内容が明確で、情報の匂いが強く、ユーザーのゴールと一致するものであれば、十分に機能する。Xfinityのナビゲーションカテゴリーの1つに付いているラベルは(「プランを作成する/Build Your Plan」)、情報の匂いが強い。こうした表現であればうまく機能する。ユーザーがそのリンクをたどったときに何を期待できるかが明確に示されているからだ。

2.   無理のある並列的な表現

情報アーキテクチャにまとまりと言語的リズムをもたせるために、ナビゲーションラベルの品詞をすべて統一するという手段が取られることがある。これはうまくいけば、一貫性を持たせることもできるし、そのパターンを変えることで、いくつかのカテゴリーにまたがるサブセクションを暗示することもできる。たとえば、ナビゲーションで、情報カテゴリーには名詞を使い、タスクベースのカテゴリーではそれを動詞に切り替えると、品詞が変わったことによって、ナビゲーションセクションの種類が変わったということをさりげなくユーザーに知らせることが可能である。

FedExは、輸送と印刷という業種の違う2つの事業を展開している。そのナビゲーションでは、いくつかのナビゲーションオプションに並列的な表現を用いているが(「輸送/Shipping」と「荷物の追跡/Tracking」はともに動名詞)、次では品詞を変えて(「デザイン・印刷/Design & Print」は短不定詞)、違う種類のサービスであることをさりげなく示している。最後は、名詞を使って(「店舗/Locations」と「サポート/Support」)、それらが(タスクに焦点を当てたものではなく)その他の情報カテゴリーであることを知らせている。これはほとんどのユーザーには意識されないさりげないシグナルであるが、種類が異なるメニューオプションを区別するのに役に立つ。

しかし、並列的な表現がユーザブルで理解しやすい情報アーキテクチャには必須というわけではない。あるカテゴリーがそのパターンに自然には当てはまらない場合、並列的な表現を無理に当てはめることは逆効果になる可能性もある。

Macquarie Universityでは、主要なナビゲーションカテゴリーを並列的な表現にしようとしている(「学ぶ/Study」「研究する/Research」、「パートナーになる/Partner」)。「学ぶ」と「研究する」は、(情報提供が本質であるコンテンツに動詞を使うメリットはないとはいえ)許容できるラベルであるが、「パートナーになる」は、寄付の方法、学生の雇用方法、図書館の情報、キャンパスの地図、職員や卒業生のためのリソースといったさまざまな情報を扱うラベルとしては情報の匂いが弱い。

3. ぎこちない(曖昧な)会話的な表現

さらにあるIAの間違いとして、親しみやすく、好意的に感じられて、とっつきやすくしようと、過度に会話的なナビゲーションラベルを使うというのがある。これは目標としては立派だが、いくつかの理由で失敗することが多い:

  • 結果的にラベルが曖昧になり、情報の匂いが弱まる。「…をしたい」はよくある失敗例で、このカテゴリー名からわかるのは、タスクベースの選択肢があるということだけだ。したがって、ユーザーはその具体的な選択肢が何であるのかを推測する(というより、選択肢自体を無視する)しかない。
  • このような口調はユーザーの感情価と相反するので、彼らは見下されている、あるいは、操られているように感じたりする。ただでさえ嫌なタスクに取り組んでいるときに陽気な言葉遣いは効果的とはいえない。一般的に、人は自分がどう感じるべきかを指示されるのを好まない。特に、イライラしていたり、ただでさえ嫌なことをしている場合はなおさらだ。たとえば、税金の支払いに関する情報に「…をしたい」のようなカテゴリー名を使うことは、ほとんどのユーザーがそのタスクに対して感じていることと真っ向から矛盾する。ほとんどの人は、税金の情報を熱心に調べているのではなく、必要だから調べているのである。
  • 会話的な表現が人間同士のやりとりを模倣したものだからといって、それを使うと自動的にユーザー中心になるわけではない。会話的表現は、もともと会話ではない状況では、ぎこちなく、非効率的に感じられることもある。というのも、会話は本質的に社会的な相互作用であり、重要なのはそれが互恵的な性質であること、つまり、当事者双方が主体性を持っていて、互いに知的な反応ができるということが前提だからだ。Webサイトのナビゲーションは、ユーザーのニーズに反応しているわけではない。そのため、ユーザーは、Webサイトとインタラクトしている間、友人と気軽なおしゃべりをしているように錯覚することはない。さらに、会話のような曖昧な表現を使うナビゲーションカテゴリーとインタラクトするのは効率も悪い。人間は、その社会的性質から、他の人間との会話において多少の非効率を許容する。詳細な話に入る前に交わされる挨拶は、我々のペースを落とすが、社会的な絆を築くのに役立つからだ。しかし、ユーザーは、デジタル製品を相手に、関係を築こうとは思わない。彼らはただ、必要な情報にすばやくたどり着きたいのである。

この記事で紹介した他の2つの間違いと同様に、この間違いの解決策も、単に良さそうだからという理由で言葉を選ばないことだ。その代わりに、情報の匂いが強い、明確で説明的なラベルの作成に注力しよう。会話的な言い回しは、明確にしようとすると長くせざるを得ないことが多いので、そうした表現は、ナビゲーションラベルではなく、ヘッダーやサブヘッダー、地の文など、長めに表現することがよりふさわしい場所に使うようにしよう。

マサチューセッツ州歳入局(徴税当局)は、ナビゲーションラベルを会話的な表現で表そうとしている(「…したい/I want to…」「…について詳しく知る/Learn more about…」)。しかし、こうした言い回しは漠然としているし、税務情報を調べるユーザーの心情に一致しそうにない。「…したい」というラベルは、このカテゴリーがほとんどのユーザーにとって唯一関連性のあるカテゴリーであることを基本的には伝えているが(訳注:「私/I」という主語によって)、そのカテゴリーにどんなコンテンツがあるのかは不明だからだ。

要約

情報の匂いの弱いリンクやカテゴリー名は、混乱と曖昧さを生み、その結果、めったにクリックされることがない。曖昧な動詞を使ったcall-to-actionは(「学ぶ」「探求する」「パートナーになる」など)、ナビゲーションではうまく機能しない。説明的でないからだ。また、すべてのナビゲーションカテゴリーに並列的な表現(品詞の統一や頭韻法など)を使う必要はなく、そうすることで、奇妙なカテゴリー名が生まれる可能性もある。そして、会話的な表現は、ナビゲーションラベルとしては的外れだ。曖昧になることが多く、ユーザーの現在の感情の状態と衝突する可能性があり、人工的な感じがするからである。