日記調査への参加者のより積極的な関与のための6つのコツ

日記調査において、参加者に続けてもらい、質の高い回答を継続的に提供してもらうのは大変なことだ。ふさわしい参加者を採用し、適切な謝礼を与え、記録する回答項目をシンプルに保とう。

日記調査は、参加者に自分の考えや感情、行動を経時的に報告してもらう長期的な調査手法だ。

日記調査は、ほとんどのユーザー調査よりも長くかかるし、参加者自身が主体的に記録する必要があるため、忘れやすい、調査への興味が薄れる、記録することに疲れたり、飽きてくる、といった問題が発生することがある。この記事では、日記調査の期間中、参加者に継続的に関与してもらうための6つのコツを紹介する。

コツその1. よく考えて参加者を採用する

日記調査には、参加するのに向いている人と向いていない人がいる。この調査の参加者は、多くの場合、質問にタイムリーにかつ十分詳細に答える必要があるからだ。したがって、参加するだけの時間があり、自分の活動や考えを長期にわたって共有したり記録したりすることを楽しめるような参加者を採用することが重要だ。

調査に時間を割くことをいとわない人を確実に採用するために、募集要項では、どのくらいの時間が必要になるのか、その日記調査の内容はどういったものなのかを明確に説明しよう。こうした情報は、参加者が自分は必要な時間の確保ができないと判断した場合に、自発的に参加を見合わせるのに役立つ。

調査パネルで募集すると、参加者が調査の説明をきちんと読まずに申し込んでくるということはよくある話だ。参加者が拘束時間を見て、それを理解していることを確認するために、拘束時間に関する質問をスクリーニングアンケートに1問(または2問)入れることを検討しよう。たとえば、その日記調査に必要とする時間が、2週間の期間中、3時間である場合は、参加者にこのくらいの時間を費やす意思があるかどうかを尋ねるとよい。信じられないかもしれないが、この質問に「いいえ」を選択する参加者もいる。

日記調査への参加意欲を測る、2つのスクリーニング質問。

参加者の中には、自分の考えを文章や動画で表現するのが得意な人もいる。日記調査で、(参加者が多数の自由回答形式の質問に答える必要がある)文章や動画による詳細な回答を集めるつもりであれば、スクリーニングアンケートに少なくとも1つは広範な自由回答式の質問を組み込もう。この質問によって、参加者がどれだけ自分の考えを表現することに抵抗がなくかつ詳細な情報を提供できるか、また、どれくらいそのことに労力をかける気があるのかを知ることができる。自由回答式の質問に対する詳細な回答は、調査への参加意欲が高いということであり、テーマによっては、その調査により適しているという可能性を示すものである。

理想的な参加者を集めるための、より徹底的かつリスクを回避できるもう1つの方法が、日記調査を二次調査としてオプションにすることだ。このやり方では、参加者を最初のインタビューに招き、調査に適合すると判断した場合に、日記調査に参加してもらうことを通知する。そうすれば、インタビューで参加者の意欲を確認しながら、日記調査にも引き続き参加してもらいたい人を選ぶことが可能である。

コツその2. 最適なツールを選ぶ

日記調査ツールには、アンケートプラットフォーム、ソーシャルメディアアプリ、オンラインドキュメント、(dscoutやIndeemoのような)コンテキスト調査に特化したプラットフォームなど、さまざまなものがある。

参加を促すために、回答を行う際のインタラクションコストを最小限に抑える努力をしよう。利用するツールは、主に予算と収集したいデータの種類によって決めるのかもしれないが、参加者がどのようなデバイスを使用しているか、自分たちが選ぼうとしているツールに慣れているかどうかも考慮する必要がある。たとえば、参加者がデスクトップ端末で作業を行う可能性が高い場合、モバイルアプリを使用する必要があると、役に立ちそうな回答を入力してもらえないこともありうる。自由回答質問が多い調査であれば、ソーシャルメディアアプリや日記調査専用アプリ(dscoutなど)によって参加者がボイスメモや動画を記録できるようにすれば、時間をかけず楽に回答が可能になる。

そして、どんなツールを使うにせよ、日記調査のパイロット調査実施することをお勧めする。

コツその3. 参加者に適切に調査を始めてもらう

特に、調査設計が複雑な場合や、選定した日記調査ツールについて最初に説明しておかないとそれを使うのが難しいと予想される場合は、調査前の説明会を予定しておこう。調査前の説明会で提供する内容は以下である:

  • 必要に応じた、日記調査ツールについてのひと通りの説明(または、練習のための試用)
  • 調査の進め方についての説明
  • どのような回答が役に立つのかの概要
  • 謝礼の仕組み(参加者がどのように謝礼を得るか)の概要
  • 回答が無効になる可能性のある条件や、調査の参加を取り消す可能性のある条件についての情報
  • 参加者との質疑応答

また、参加者と彼らの体験についてさらに詳しく知りたい場合は、調査前の説明会の時間を伸ばして、そこでインタビューを実施してもよい。調査前の説明会は、技術的な問題や混乱の原因を調査開始前に解決するだけでなく、信頼関係の構築にも役立つ。調査を実施しているリサーチャーのことを個人的に知っていると参加者が感じていると、回答を提出する可能性も高くなる。

コツその4. 日記調査での回答項目を短く保つ

一般に、リサーチャーは、参加者が回答する際に使用する「テンプレート」を提供する。これは、アンケートのような一連の質問だったり、行動を促すものであったり、何かの動画や写真をアップロードしてもらう案内だったりするのだが、このような回答用テンプレートをデザインしていると、参加者が回答する質問を多くしたくなるものだ。しかしながら、1回の回答でやらなければならないことが多くなればなるほど、参加者が報告を放棄する可能性は増す。したがって、質問や催促は最小限にして、調査課題に答えるために必要なものにだけにとどめよう。1回の回答に15分以上かかるようなら、それは量が多すぎるのだ!

たとえば、カスタマージャーニーマップを作成する目的で日記調査を行う場合は、参加者が回答を提出するたびに、使ったデバイスと、その企業とのやり取りについてどう感じたかを尋ねるとよい。そうすることで、カスタマージャーニーマップのそれぞれの行に入力するのに必要なデータを確実に収集することができる。

コツその5. 参加者と連絡を取りつづける

調査期間中は、参加者と連絡を取りあうことをお勧めする。専用の日記調査ツールやソーシャルメディアアプリを使用している場合は、フォローアップの質問をしたり、入力された回答に応答するのも難しくないだろう。「ありがとうございます」の一言だけでも、参加者の調査に対するモチベーションを維持することができる。参加者からの回答が戻ってこなくなってきたら、何か手助けやサポートが必要ないか、声をかけてみよう。そうすることで、参加者のことをあなたが忘れていないこと、回答の受け取りをずっと気にかけているということを示すことができる。

参加者が一定期間ごとに回答を提出する必要がある場合は、リマインダーを設定するとよい。たとえば、最近実施したUX専門家を対象とした日記調査では、参加者に3週間、毎日の仕事終わりに回答をするよう依頼した。そして、参加者が忘れないように、カレンダーの繰り返し設定をしてそこから通知が行くようにした。

参加者と連絡を取り合い、時折フォローアップの質問をするのは良いアイデアだが、送信するメッセージやフォローアップ質問の数には慎重になろう。参加者は、フォローアップ質問が多すぎると、調査についていけないとすぐ感じるようになる。また、大量のメッセージが届くと、無視するようになる可能性もある。

コツその6. 謝礼の仕組みに工夫を凝らす

謝礼を与えることで、参加者のやる気を維持し、長期にわたって体験を記録する意欲を高めることができる。調査に参加者が費やす時間に対して、適切な謝礼を提供するようにしよう。参加者にどれくらいの謝礼を提供するべきかがわからない場合は、こちらの計算機を利用すると便利だ。

謝礼を仕組みにして、それをうまく利用することで、質の高い報告を定期的にしてもらえるよう仕向けることができる。これについて説明するために、参加者が調査終了時に1回だけ謝礼を受け取る日記調査について考えてみよう。この仕組みは、短期間の調査では効果的だが、長期にわたる調査では、謝礼を受け取るのに手間がかかりすぎると感じて、脱落する参加者が出てくる危険性がある。簡単な改善策は、日記を書く期間中、一定期間ごとに謝礼を支給することだ。この方法を取ることで、脱落のリスクを減らし、調査期間中の回答の質も均一化できる。たとえば、4週間にわたって回答をした後に100ドルを受け取る代わりに、最低限必要な数の回答を終えた参加者は、毎週25ドルを受け取れるようにするとよい。(この方法の欠点は、その週のノルマを達成した参加者の中に、後から報告する分の回答を「貯める」人がいるということだ。そうすれば、最小限の労力で最大の謝礼を得ることができるからだ)

また、回答ごとに参加者に謝礼を支払うことも可能だ(謝礼配信プラットフォームには、回答ごとに謝礼を自動送信できる機能を備えたものもある)。回答ごとに支払う謝礼モデルを利用する場合は、支払い額を段階的に設定することを検討しよう。たとえば、最近実施した4週間の日記調査では、毎週、最初の4回の回答に対して、参加者に15ドルを支払った。それから、さらに報告することがある参加者は、さらに4回回答するごとにもう5ドル受け取ることができた。この金額は、報告することがたくさんある参加者に引き続き回答を提出するように促すには十分な金額だが、報告できるようなやり取りがそこまでなかった参加者が回答をでっち上げるほど多額でもない。

日記調査に参加しつづけてくれていることに報いるために、ボーナスの支給も検討しよう。たとえば、先ほどの調査では、参加者は日記調査中の各週に少なくとも4回の回答を作成すると、追加で20ドルを受け取ることができた。

結論

日記調査は、その期間の長さと作業量から、参加者に続けてもらうことは大変なことだ。まずは、参加意欲の高い参加者を採用することから始めることだ。そして、調査期間を通して役に立つ回答を確実に受け取るために、回答の作成プロセスをシンプルに保ち、定期的に参加者をフォローして、適切な謝礼を提供する必要がある。

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