ユーザビリティテストの基礎
UXリサーチャーは、この人気のある観察手法を用いて、デザインにある問題やデザインを改善する機会を明らかにする。
ユーザビリティテストは、人気のあるUX調査手法である。
ユーザビリティテストのセッションで、リサーチャー(「ファシリテーター(進行役)」または「モデレーター」と呼ばれる)は、参加者に通常1つ以上の特定のユーザーインタフェースを利用してタスクを実行するように依頼する。参加者が各タスクを達成する間、リサーチャーは参加者の行動を観察し、彼らからのフィードバックに耳を傾ける。
「ユーザビリティテスト」という言葉は、「ユーザーテスト」と同じ意味で使われることも多い。
(「ユーザーテスト」という言葉に対してときどき提起される異議の1つに、リサーチャーが参加者をテストしているように聞こえるというのがある(実際には、我々がユーザーをテストすることは絶対にない。我々がテストするのはインタフェースだけだからだ)。しかし、この用語の趣旨は、ユーザー「による」テストだということだ。そして、この点こそが実証的調査としての重要なポイントである)。
なぜユーザビリティテストなのか
ユーザビリティテストの目的は調査によって異なるが、通常は以下のようなものである:
- 製品またはサービスのデザインにある問題の特定
- 改善の機会の解明
- ターゲットユーザーの行動と嗜好の理解
なぜユーザビリティテストをおこなう必要があるのか。素晴らしいユーザーインタフェースをデザインする方法をプロの優れたUXデザイナーは知らないのだろうか。その理由は、非常に優秀なUXデザイナーも、実際のユーザーと、ユーザーがデザインとインタラクションしているところの観察に基づいた反復デザイン抜きには、完璧な、あるいは十分なユーザーエクスペリエンスさえ、デザインすることは不可能だからだ。
現在のユーザーインタフェースをデザインする際には多くの変数がある。そして、人間の脳にある変数はさらに多い。この組み合わせの総数は膨大だ。したがって、UXデザインを正しくおこなう唯一の方法は、そのデザインをテストすることなのである。
ユーザビリティテストの要素
ユーザビリティテストにはさまざまな種類があるが、ほとんどのユーザビリティテストで中核になる要素が、ファシリテーター、タスク、参加者である。
ファシリテーターは参加者にタスクを与える。参加者がこれらのタスクを実行する際に、ファシリテーターは参加者の行動を観察し、彼らからのフィードバックに耳を傾ける。また、ファシリテーターは、参加者から詳細な情報を引き出すためにフォローアップの質問をすることもある。
ファシリテーター
ファシリテーターは、テストのプロセスを通じて参加者をガイドする。指示を与え、参加者の質問に答え、フォローアップの質問をするのである。
ファシリテーターは、参加者の行動に誤って影響を与えてしまうことなく、テストから高品質で有効なデータを得られるように取り組む。このバランスを取ることは難しく、トレーニングが必要である。
(リモートユーザビリティテストのなかのモデレーターなしのリモートテストと呼ばれる形式では、アプリケーションがファシリテーターの役割の一部を担う)。
タスク
ユーザビリティテストでタスクになるのは、現実に参加者が実生活の中でおこなう可能性のある活動である。タスクは、ユーザビリティテストの種類や調査課題によって、非常に具体的なこともあれば、非常にオープンエンドな場合もある。
実際のユーザビリティ調査でのタスクの例:
- プリンターに「エラー5200」という表示が出ています。このエラーメッセージを消すにはどうしたらいいでしょうか。
- Wells Fargoでクレジットカードを新しく作ることを検討しているとします。wellsfargo.comにアクセスして、もしクレジットカードを作るとしたら、どのカードを作りたいか決めてください。
- プロジェクト管理部門のTyler Smithと話すように言われました。イントラネットを使って、その部署の所在地を調べてください。そして、リサーチャーにその回答を伝えてください。
ユーザビリティテストでは、タスクの言い回しが非常に重要である。タスクの言い回しのちょっとした誤りによって、何をするように求められているかを参加者が誤解したり、彼らのタスクの実行方法に影響を与えてしまう可能性があるからだ(プライミングと呼ばれる心理現象)。
タスクの指示は、参加者に口頭で(ファシリテーターがそれを読んで)伝えてもよいし、タスクシートに書いたものを渡してもよい。我々は参加者にタスクの指示を声に出して読んでもらうことが多い。そうすることで参加者は指示を全部読むことになるし、リサーチャーがメモを取るのにも役に立つ。参加者がどのタスクを実行しているかをリサーチャーが常に把握できるからだ。
参加者
参加者は、調査対象の製品やサービスの実際のユーザーでなければならない。つまり、そのユーザーは実際の生活の中ですでに製品やサービスを利用中ということになる。あるいは、参加者がまだその製品のユーザーにはなっていなくても、ターゲットユーザーグループと似たような背景を持っていたり、同じようなニーズを持っている場合もある。
参加者は、ユーザビリティテスト中に考えていることを声に出すように求められることが多い(この手法を「思考発話法」と呼ぶ)。ファシリテーターは、参加者にタスクを実行しながら、彼らの行動や考えを詳細に伝えてくれるように依頼する。この手法の目的は、参加者の行動や目標、思考、動機を理解することである。
ユーザビリティテストの種類
定性と定量
ユーザビリティテストには、定性的なテストと定量的なテストがある。
定性的なユーザビリティテストは、ユーザーが製品やサービスをどのように利用するかについての知見や所見、逸話の収集に重点を置く。定性的なユーザビリティテストは、ユーザーエクスペリエンスの問題を発見するのに最適だ。そして、この形式のユーザビリティテストのほうが、定量的なユーザビリティテストよりも一般的である。
定量的なユーザビリティテストは、ユーザーエクスペリエンスを表す指標の収集に重点を置く。定量的なユーザビリティテストで最もよく収集される指標が、タスクの成功率とタスク時間の2つだ。定量的ユーザビリティテストは、ベンチマークの収集に最適である。
ユーザビリティテストに必要な参加者の数は、調査の種類によって異なる。1つのユーザーグループを対象とする典型的な定性的ユーザビリティ調査では、その製品で最もよく起こる問題の大部分を明らかにするために、5人のユーザーに参加してもらうことをお勧めする。
リモートテストと対面テスト
リモートユーザビリティテストは、対面調査より時間も費用もかからないことが多いので、人気がある。リモートユーザビリティテストには、モデレーターありとモデレーターなしの2つの種類がある。
モデレーターありのリモートユーザビリティテストは、対面調査とほぼ同じよう機能する。ファシリテーターが、対面調査と同じように、参加者とやり取りをして、タスクの実行を依頼するからだ。ただし、ファシリテーターと参加者は物理的に異なる場所にいる。通常、モデレーターありのリモートテストは、SkypeやGoToMeetingのような画面共有ソフトウェアを利用して実施される。
モデレーターなしのリモートユーザビリティテストは、対面テストやモデレーターありのリモートテストのような、ファシリテーターと参加者とのやり取りはまったく存在しない。リサーチャーは、専用のオンラインリモートテストツールを利用して、参加者のためにタスクを作成し、それをセットアップしておく。その後、参加者は自分の都合のよい時間に1人でそのタスクを完了させる。タスクの指示とフォローアップの質問は、テストツールによって提供される。参加者がテストを完了すると、リサーチャーはセッションの記録とタスク成功率などの指標を受け取る。
ユーザビリティテストのコスト
シンプルな「ディスカウント」ユーザビリティ調査はあまり費用がかからないが、通常は参加者への謝礼として数百ドル支払う必要がある(訳注:これは、複数の参加者への謝礼の合計金額と思われる)。テストセッションは会議室で実施可能だが、最もシンプルな調査でも、(すでにテストのやり方を理解していて、参加者に連絡が取れている前提で)3日間の時間が必要である:
- 1日目:調査の準備をする。
- 2日目:5人のユーザーをテストする。
- 3日目:調査結果を分析し、それを次の反復に向けたデザイン変更のためのアドバイスに変換する。
その一方で、ときには、より費用のかかる調査が必要なこともある。最も綿密な調査の場合には、その費用は数十万ドルにも達する。
費用が増加する要素には以下のようなものがある:
- 複数のデザインの競合テスト
- 複数の国での国際的なテスト
- 複数のユーザーグループ(ペルソナ)によるテスト
- 定量的な調査
- アイトラッカーのような高価な機器の利用
- 利害関係者が観察できるようにするための、本格的なユーザビリティラボまたはフォーカスグループルームの必要性
- 調査結果についての詳細な分析とレポートの要望
高度な調査の投資収益率(ROI)もそれなりには高い。とはいえ、シンプルな調査のROIには及ばないことのほうが多いだろう。
ユーザビリティテストに関するNN/gの資料
- User Testing: Why & How(動画)
- How to Conduct Usability Studies(レポート)
- How to Set Up a Desktop Usability Test(動画)
- How to Set Up a Mobile Usability Test(動画)
- ユーザーの目的をユーザビリティテスト用のタスクシナリオにしよう(記事)
- Usability Testing for Mobile Is Easy(記事)
ユーザビリティテストのファシリテーション
実践的なトレーニングとファシリテーションスキルの向上を考えているなら、ユーザビリティテストに関する1日コースをチェックしてほしい。
- Talking with Participants During a Usability Test(記事)
- User Testing Facilitation Techniques(動画)
- Team Members Behaving Badly During Usability Tests(記事)
- Thinking Aloud: The #1 Usability Tool(記事)
参加者のリクルーティング
- ユーザビリティテスト参加者のリクルーティング(記事)
- 5人のユーザーでテストすれば十分な理由(記事)
- ユーザビリティ調査では何人でテストするのか(記事)
- Usability Testing with 5 Users: Design Process(動画)
- Usability Testing with 5 Users: ROI Criteria(動画)
- Usability Testing with 5 Users: Information Foraging(動画)
- Employees as Usability-Test Participants(記事)
- Using Usability-Test Participants Multiple Times(動画)
遠隔ユーザビリティテスト
- Remote Usability Tests: Moderated and Unmoderated(記事)
- モデレーターありのリモートユーザビリティテスト:実施方法(記事)
- Remote Unmoderated User Tests: How and Why to Do Them(記事)
- Tools for Unmoderated Usability Testing(記事)
特別なユーザビリティテスト調査またはユーザーグループ
- 定量的ユーザビリティテストと定性的ユーザビリティテスト(記事)
- Conducting Usability Testing with Real Users’ Real Data(記事)
- How to Conduct Usability Studies for Accessibility(レポート)
- ペーパープロトタイピング:実装前のユーザデータ収集(記事)
- Paper Prototyping 101(動画)
- Beyond the NPS: Measuring Perceived Usability(記事)
- International Usability Testing(記事)
- Usability Testing with Minors(記事)
印刷可能なユーザビリティテストのポスター
ユーザビリティテストについて説明したポスター(英語)をダウンロードして印刷することができる。