リモートチームのジャーニーマップ作成:
デジタルテンプレート

コラボレーションスプレッドシートは、カスタマージャーニーマップをバーチャルで作成するための効率的で有効なツールである。提供されているフォーマットと構造のおかげで、ほとんどすべての人がアクセスできるし、容易に利用可能だからだ。

ジャーニーマップは、顧客が目標を達成するためにたどったプロセスを視覚化したものだ。ジャーニーマップは、ユーザーの一連のタスクやアクションをタイムラインにまとめ、ユーザーの思考や感情と一緒に物語を作り出すことによって作成される。この物語によって、デザインプロセスの判断材料となる知見を伝えることができる。

分散型のチームがジャーニーマップをデジタル形式にまとめるのに役立つデジタルツールはいろいろとあるが、この記事では、カスタマージャーニーマップをバーチャルで作成するためのシンプルなスプレッドシートテンプレートを紹介する。このテンプレートは、対面のジャーニーマップ作成ワークショップのアウトプットをデジタル化するための第一歩としても利用可能である。

このテンプレートの利用方法

  1. テンプレートにアクセスする。ここからGoogleスプレッドシートテンプレートのリンクにアクセスして、自分のドライブにコピーを作成する(ファイル>コピーを作成)。コピーを作成するには、Googleアカウントにログインする必要がある。別の方法としては、ダウンロード可能なExcelバージョンとNumbersバージョンがこの記事の最後にある。
このカスタマージャーニーテンプレートは、あなた方専用のカスタマージャーニーマップの出発点となる。
  1. 視点を特定する。コピーしたテンプレートで、カスタマージャーニーマップのレンズを特定しよう(2~4行)。レンズには、マップのタイトル(:「Your Journey Map Title Goes Here」というセルに記入)、ペルソナ(:「Persona: In a sentence…」というセル)、シナリオ(マップにする特定のエクスペリエンス)(:「What is this persona…」というセル)、対応するユーザーの目標と期待(:「List the goals…」というセル)が含まれる。マップを作成している社内のチームや日付、(マップがまだ作業中の中間成果物であることを伝えるために)バージョン番号も必ず入れよう(:3~4行目の右端のセル)。
  2. 物語を作成する。次に、カスタマージャーニーのフェーズについての説明を入れよう(5~6行)。さらに、フェーズごとの、ユーザーの行動(7~12行)、思考や表現(13~18行)、感情的なエクスペリエンス(19~25行)を特定しよう。ただし、これらのデータポイントは、フィールド調査コンテキストインタビュー日記調査などの定性調査に基づいている必要がある。
  3. 知見と取り組むべき状況をとらえる。これらは重要であるが、見落とされがちな要素である。浮かび上がった知見は明確に列挙する必要がある(26~31行)。政治的に可能な場合は、ジャーニーマップのそれぞれの部分に社内の担当を割り当てるとよい。そうすることで、取り組むべき各状況を活かすための責任者が明確になる。
  4. マップを解析する。共同で分析してカスタマージャーニーのうまくいっているところといっていないところを特定しよう。ユーザーの期待に応えられていなかったり、より多くの時間が費やされていたり、不要なタッチポイントがある領域では、対応する「マイナス」(:Negative)のセル(38~40行)を塗りつぶそう。ユーザーエクスペリエンスがうまくいっているところは、対応する「プラス」(:Positive)のセル(34~36行)を塗りつぶせばよい。このやり方により、カスタマージャーニーについての概要が読み取りやすくなり、ジャーニー全体を通して、ユーザーのエクスペリエンスがどこでうまくいっていて、どこでうまくいっていないかをすばやく伝えられる。
ユーザージャーニーのうまくいっているところといっていないところは、対応するセル全体を塗りつぶすことによって視覚化できる(悪いエクスペリエンスは「マイナス」(:Negative)、良いエクスペリエンスは「プラス」(:Positive)、それ以外は「中立」(:Neutral))。このプロセスにより、ユーザーがジャーニーのどこで最も苦痛や不満を感じているかを読み取りやすく視覚化することができる。

このテンプレートを利用するタイミングと理由

リモートでのカスタマージャーニーマップ作成に利用できるデジタルツールには、いろいろなレベルのものがあるが、以下の理由から、スプレッドシートは多くのチームにとって効率的で有効な選択肢である:

互換性のあるフォーマットと構造。スプレッドシートの列と行は、ジャーニーマップの構造に合わせて容易に調整することができる。行は、ジャーニーマップの4つの主要なスイムレーン(フェーズ、行動、思考、考え方/感情)に合わせて調整され、列は、ジャーニーのフェーズに合わせて調整される。こうしたシンプルなグリッド構造のおかげで、チームは、中間生成物のレイアウトや視覚的な特徴ではなく、コンテンツに集中できる。この中忠実度のフォーマットは、対面でのマップ作成作業をデジタル化する第一歩として利用することもできるし、逆に、さまざまなインプットを継続的に収集して整理している段階では、高忠実度のジャーニーマップを作成する前段階として利用可能である。

さまざまな専門分野の担当者に有効。他のドラッグアンドドロップツールやデザイン指向のツールとは異なり、スプレッドシートはさまざまな分野で広く利用されている。デザイナー以外のメンバーにもお馴染みのツールを利用することには、2つの大きな利点がある。まず、技術的な研修のための時間が必要ない(ツールが実際に役に立つ前から、アカウントを作成して、それがどのように機能するのかを学ぶ必要がない)。第二に、他のメンバーが中間生成物に対する当事者意識と責任感を身に着け、本当にそれに貢献してくれる可能性が高くなる。そして、将来、編集が必要になった場合は、誰でも元の中間生成物に戻って容易に更新することができる。対照的に、中間生成物が専用の非常に専門的なソフトウェアで提供されている場合、それを編集する方法を知らない人もいると思われるし(最初に研修をおこなったとしても、定期的に利用しなければ、ソフトウェアの利用方法を忘れてしまう可能性がある)、中間生成物を最新の状態に保つ責任は、プログラムに精通している1人または数人の人(たとえば、デザイナーなど)だけに委ねられることになるだろう。

ほとんどの企業で利用可能。多くの組織では、データ保護の問題から、従業員が利用するソフトウェアについて厳格なポリシーがある。しかし、これらの企業のほとんどは独自の社内ツールセットを持っており、そのほとんどすべてのセットには何らかのコラボレーションスプレッドシートが含まれている。

役立つ情報

  • 必要に応じてテンプレートを変更してほしい。別のフェーズを追加したり、スイムレーンを拡張するなど、テンプレートを変更することを恐れないでほしい。テンプレートの目的はあくまでも出発点となることである。
  • ジャーニーマップを作業中の中間生成物として扱おう。カスタマージャーニーマップは、関連性と信頼性を維持するために更新する必要がある。中間生成物自体にバージョン番号と最終更新日を記載することで、この中間生成物が変更され、進化する可能性があることを他のメンバーにも理解してもらうことができる。
  • 忘れてはならないのは、他のメンバーと協力することである。マップを作成するプロセスもマップそのものと同じくらい重要だからだ。うまくいったジャーニーマップは、結果として生じた単なる中間生成物というだけではなく、「正しい」要素のチェックリスト以上の意味をもつものとして扱われるべきである。そのためには、マップは明確に定義された目標に基づいている必要があるし、調査を基に構築されなければならない。

このテンプレートは、UX Conferenceをバーチャルで受講した際に、「Journey Mapping to Understand Customer Needs」に関するトレーニングコースのグループ演習で利用するために開発したものである。以下のリンクからテンプレートをダウンロードして、あなた方自身のプロジェクトで自由に使うことが可能だ。そして、楽しくジャーニーマップを作成してほしい。

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