新規のタスクと日常的なタスクのユーザビリティ
ウェブサイト上の反復型の行動はうまくいくことが多い。だが、ユーザーが何か新しいことを行おうとすると、往々にして失敗するのだ。
あなたはもしかして、自分の持つユーザーエクスペリエンスと、最近私が報告した以下のようなユーザビリティに関する調査結果にずれを感じているのではないだろうか:
- イントラネットでの従業員の平均成功率は74%だった。つまり、測定したタスクのうちの4分の1が失敗に終わっている。
- ティーンエイジャーはテクノロジーの達人とされているが、その平均成功率は71%だった。したがって、彼らは企業関係のユーザー以上によく失敗していることになる。
- eコマースのユーザーが最初の検索キーワードで欲しいものを見つけられた確率は64%であり、検索が難しくなるとその成功率は28%に過ぎない。
- 最近の様々な調査を一般化してみての結論は、「ユーザーというのはウェブ上で何かを探したり、調べたりするのが信じられないくらい下手」ということだった。
これは希望のない状況である(以前より良くなってはいるが)。
しかし、あなたはウェブの利用時に4回に1回も失敗するだろうか。おそらく失敗しないだろう。私自身もウェブに対して閉口することはあるが、その頻度は調査データによって示されるほどではない。
あなたがそれほど失敗しない理由
あなたや私がユーザビリティ調査で見られるような低レベルのユーザビリティを経験しない理由を説明するのは簡単だ。ユーザーリサーチの実施ルールその1とは、ターゲットオーディエンスを代表するユーザーをリクルートすることだからである。そんなわけで、我々もそれを実行している。
その結果、どのように企業サイトのPRエリアをプロのジャーナリストが利用しているのか(日本語訳なし)といった専門分野に特化した調査を実施するのでないかぎり、我々の調査結果が伝えるのは、平均的なユーザーのパフォーマンスについて、になる。
しかし、親愛なる読者の皆さん、あなた方を平均的とは言わない。もし平均的であれば、このウェブサイトを読んだりしないだろう。
- あなたのIQや受けた教育はたぶん平均より上のレベルだろう。
- あなたのリーディングスキルはもちろん平均より上だろう。(私も通常、推薦するよりも複雑な文構造や語彙をここでは使っている。広範囲の消費者向けの文章ではないからだ)。
- ウェブデザインパターンやコンピュータの概念についてのあなたの知識が優れているのは間違いない。あなたがビジュアルデザイナーやマーケターだったとしても、インターネットプロジェクトに携わっているのなら、普通の人と比べれば紛れもないITの専門家と言える。
これらすべてから考えて、とてもではないが、あなた個人の体験をもとに、あるものを平均的な人がどのように活用するかを予測するのは不可能だ。あなたの能力は高すぎるのである。
ユーザーがそれほど失敗しない理由
平均的なユーザーでもユーザビリティ調査でテストしたときほどには日常では失敗しない。
理由は何か。それは、すでによく知っているウェブサイトで過ごす時間がとてつもなく長いからである。そのうえ、人々が行うタスクのほとんどは、ニュースのヘッドラインのチェックやFacebookの更新情報の流し読み、あるいは給与が自分の銀行口座に振り込まれているかの確認といった、同じサイトで以前に何度も経験した、かなりシンプルなものである。
これこそがユーザーが変化を嫌う理由である。つまり、彼らはよく訪問するサイトでの日常的なタスクの実行方法をやっと覚えたところなのだ。その結果、こうしたタスクでの彼らの成功率は高い。しかし、その前提はサイトのデザインが変わらないことである。
(このことがあらゆるデザイン変更を避ける理由にはならない。ユーザーがあることをできるからといって、彼らがそれをうまくできているとは限らないからだ。とはいえ、それでも、保守的であるほうがよいとは思うし、変更自体を目的にしたUIの変更はしてはならない)。
正確な数字はわからないが、フィールド調査でユーザーが自由に振る舞う姿を観察すると、既知の反復型タスクはユーザーがオンラインに費やす時間のおおよそ90%を占めるのではないか。そして、ユーザーが新しいものを試すのは割合にしておおよそ10%に過ぎないだろう。
わかりやすくするために、この割合を用いることとし、さらに、ユーザーの既知のタスクでの成功率を100%、新規のタスクでの成功率を80%としよう。これを前提にすると、実行頻度でウェイト付けして、新旧すべてのタスクをならした日常的ユーザーエクスペリエンスの成功率は98%になる。
ではなぜ、日常のユーザーエクスペリエンスはユーザビリティラボでの測定したものよりもずっと良いのに、ユーザビリティについて気にするのか。
その理由の1つは、人は、あるデザインの初回でうまくいかないと、そのデザインに対して熟練したユーザーにはなれないからである。
これがウェブサイトにも当てはまるのは間違いない。つまり、あるサイトの利用があまりに難しかったりイライラするものだと、人々は離れ、SERPですぐ下にあるサイトを試そうとするのだ。
もし、そのタスクあるいはアプリケーションがユーザーにとって非常に重要なものなら、彼らはより熱心に取り組み、ちょっとした失敗なら乗り越えるかもしれない。とはいえ、それでもまだ問題は残っている。それは、初期の利用時のユーザビリティがひどいものは、人々が繰り返し戻ってくるお気に入りの目的地にはなれない、ということである。
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Original image by: Chris Potter
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— U-Site編集部 (@UsabilityJp) May 26, 2013