Web上の大学生

学生たちはウェブサイト間を素早く移動し、複数のタスクを同時に処理していくが、やっと見つけたアイテムを見失ってしまうことも多い。彼らはソーシャルメディアに夢中だが、それは個人的な会話のためのものと考えているため、企業サイトを訪問するときには検索エンジンから行く。

大学生は多くのウェブサイトにとって重要なターゲット層である。彼らは若く、社交的で、手元にあるだけのお金を(多くはオンライン上で)使い、高い頻度で様々な種類の情報を探している。彼らがウェブ上で大量の時間を費やす、あるいは浪費する、オンラインジェネレーションであることは間違いがない。

ユーザー調査

学生たちがどのようにウェブサイトを利用しているかを知るため、4カ国(オーストラリア、ドイツ、イギリス、アメリカ)で43人の学生を対象に観察調査を実施した。参加者の年齢は18才から24才で、男性が18人、女性が25人だった。テスト参加者が所属する教育機関は以下の通りである:

  • Freie Universitat Berlin
  • Humboldt-Universitat zu Berlin
  • Miramar College
  • Mesa Community College
  • San Diego State University
  • Southwestern College
  • Thames Valley University
  • University of California, San Diego
  • University of London
  • University of Reading
  • University of Sydney
  • University of Wisconsin

テスト対象の学生の研究テーマは、経営学、工学、人文科学、医学、自然科学等、大学及び大学院レベルの双方で多岐にわたっていた。大半の参加者は専業の学生だったが、兼業の学生も何人かはいた。

我々が利用したのは2つの調査手法である:

  1. ユーザーテスト: 参加者には考えていることを口に出しながら、タスクを実行してもらうように依頼した。このテストは会議室で調査のインタビュアーが学生の隣に座り、1対1のセッションの形で実施した。セッションには以下の2種類のタスクが含まれていた:
    • オープンエンド型タスク: 主に、そのユーザー自身の行動がベースになる。このタスクではユーザーは自分の行きたいどのサイトにでも行くことができた。タスクの例としては以下のようなものが挙げられる:
      • 学生ビザの取得方法を調べてください。
      • ロースクールの出願条件を見つけてください。
    • サイト指定型タスク。ユーザーには予め決めておいたサイトに行ってもらい、所定のタスクを実行するように依頼した。例としては以下のようなものが挙げられる:
      • 新しいアパートのために、ガスや電気等の手続きをいろいろしなければなりません。www.sdge.comに行き、新しいアパートにガスや電気を引くには何が必要かを調べてください。
      • 来週、学校で開かれる就職フェアに以下の企業が参加することになっています。履歴書を出す前に、あなたはそうした企業についてもっと知りたいと考えているとします。その企業について興味深い情報があるかどうか、見てみてください。[その後には企業サイトのリストが続く]。
      • [大学のサイト上で]春学期がいつ始まるかを調べてください。学内の書店の営業時間を見つけてください。
      • 友人がぜんそくと診断されたばかりだとします。彼は運動すると呼吸が苦しくなります。彼の医者が言うには、治療にはいくつかの選択肢があるそうです。www.advair.comとwww.mysymbicort.comに行き、友人に伝えてあげられる情報があるかどうか、見てみてください。
  2. 自宅での記録: 参加者には2日間、画面記録ソフトを利用して、彼らのオンライン上での行動をすべて記録させ、結果のファイルと一緒にハードドライブを送付してもらった。この方法によって、学生の利用状況についての知見が得られた。

学生たちにはAaron DunlapやAC LensからLegoland、Lexmark、さらにYelpや Youth Speak Collectiveに至るまで、合計217のウェブサイトをテストしてもらった。この全体数にはサイト指定型のタスクのために我々が選んだサイトと、ユーザーが自分自身で訪問することを決めたサイトの両方が含まれている。

学生たちのインターネット利用に関する神話

今回の調査によって、学生たちのインターネット利用について広く流通している3つの主張が論破された。

神話1: 学生はテクノロジーについての天才である

実際のところ、学生たちはテクノロジーに馴染んではいる。つまり、一部の年配のユーザーと違って、テクノロジーに怖じ気づいたりはしない。しかし、コンピューターサイエンスや工学系の学生を除けば、学生というものがテクノロジーに熟練している、あるいは時にそう呼ばれているように、彼らが「デジタルネイティブ」である、と決めつけるのは危険である。

大学生は時間を無駄にすることを嫌うので、「わからない」と見なしたウェブ要素には手を出さない。学生たちは忙しいため、個別のウェブサイトにかけられる時間はほとんどないと考えているのである。したがって、利用するのが難しそうだったり、面倒そうなエリアを彼らは飛ばしていく。自分のすることに対して、即、見返りが得られると思わない限り、彼らはリンクをクリックしないし、間違いを正したり、細かい説明書きを読んだりすることもしない。

とりわけ、学生たちはユーザーインタフェースの新しいスタイルを覚えるのを嫌う。彼らが好むウェブサイトはインタラクションパターンがよくわかっているものである。サイトが予想通りの反応をしないと、ほとんどの学生は我慢できずに、そのサイトを離れてしまい、難しいデザインを解読しようとしない。

神話2: 学生たちはマルチメディアや凝ったデザインを切望している

学生たちはマルチメディアを高く評価することが多く、YouTubeのようなサイトについては確実に訪問をする。とはいえ、彼らも常に動画や音声にさらされていたいというわけではない。

あるウェブサイトで音楽が自動的に始まると、我々がテストしていた学生ユーザーは即、それを止めてしまった。彼女は言った。「このウェブサイトはひどいです。勝手に何度も音楽を再生するのです。もう、それを聞きたくありません」。

学生たちはサイトがどういうふうに見えるかによって、判断をすることが多い。しかし、彼らが好むサイトの外観は、すっきりして、シンプルなものであり、派手でごちゃごちゃしたものではない。あるユーザーが言うには、ウェブサイトというものは「デザインについては、シンプルでありながらも、古くないようにするべきです。メニューはわかりやすくあるべきで、派手だったり動きのあるものは使いすぎないほうがいいでしょう。わかりにくくなる可能性があるからです」。

学生たちは凝ったビジュアルが好きではない。そして、間違いなく彼らを引きつけているのは、非常にあっさりしたインタフェース、つまり、検索エンジンである。学生たちは強く検索に支配されており、ナビゲーションの難易度という観点からいうと、ちょっとしたきっかけですぐ検索に頼ろうとする。

神話3: 学生たちはソーシャルネットワーキングに夢中である

そう、学生たちはほぼ全員、Facebookのようなソーシャルネットワーキングサービスにいつでも行けるタブを1つ以上は保持している。

しかし、そうだからといって、彼らは何もかもをソーシャルネットワーク上で行いたいと考えているわけではない。学生たちがFacebookやその類似サイトから連想するのは、仲間内で対話できるということであり、企業のマーケティングについてではない。学生たちは企業や大学、政府機関、非営利組織について知りたいときには、その組織の公式ウェブサイトを見つけるのに検索エンジンを使い、その組織のFacebookのページを探すことはしないのである。

ティーンエイジャー vs. 大学生

この調査で論破された神話の中には、10代の若者がどのようにウェブサイトを利用するかについての調査で論破されたものと類似しているものもある。そのため、ティーンエイジャーのためのデザインについてのガイドラインを、大学生のためのデザインにも適用できるのではないかと思いたくなってしまう。とりわけ、大学生の一番若い層は、年齢の最後に「teen」が付く「ティーンエイジャー」だからである。

しかしながら、ユーザビリティ調査とデザインガイドラインという目的のため、今回の「ティーンエイジャー」の定義は13才から18才迄のユーザーのみとしたい。年齢が18才から24才迄である大学生は、異なるガイドラインが必要な別のグループとなる。なぜならば彼らの示す行動は、我々が調査した10代の子供たちのそれとは違っているからである。

遊び vs. 作業

ティーンエイジャーが好むウェブサイトは、ゲームやクイズのような、動的で興味を引きつけるインタラクティブな活動を含むものである。彼らはサイトに「楽しさ」を求める。

大学生はそれに比べてずっと目的志向型である。彼らが双方向性を求めるのは、それが目的に適っており、今、取り組んでいるタスクを支援するものである場合に限られる。大学レベルでは、ユーザーは遊びと作業を区別し、ウェブサイトに常に楽しませてほしいとは考えていない。それどころか、学生たちはウェブサイトを道具と見なしている。良いサイトとは目的を早くたち成するのに役立つサイトなのである。

読むこと

ティーンエイジャーは読解力がないので、サイトに対して、相当量のコンテンツを読む必要のない絵で提供することを希望する。大学生は読解力が高いので、高度な文書を処理することが可能だ。しかしながら、このことによって、彼らが長いテキストを読むのが好きということにはならない。専門職に就いているような、教養の高い他の成人層同様、学生が好むウェブサイトは流し読みのしやすいものであり、灰色のテキストでできた壁によって、彼らを怖がらせたりしないものなのである。

これは、US National Science Foundationのサイトについて、学生の1人が言ったことである。「大量の文書がありますね。このサイトにはかなり圧倒されます。自分のためになるであろう内容を見つけるのが実に難しいです」

Wiley Interscienceについての別の学生のコメントもある。「それ[そのページ]は本当に、本当に長くて、好きではないです。焦点を絞りたいからです」

最後に紹介するのは、以前、私がヘッドラインの優秀さを賞賛したBBCのウェブサイトについての1人の学生の見解である。「長いテキストの中の見出しが良いと思います。かみ砕かれているので、自分の興味のあるものを選んで読むことができます。」

大学生たちの識字能力というのは高いことが多いが、このことは18才から24才のユーザー全てに必ずしも当てはまるわけではない。この年齢層の約40%の人の識字能力は低いものであり、単文以上の構造の文を読むことが難しくなる。したがって、(学生だけということではなく)全ての若者を対象にするつもりなら、広範囲の消費者のためのライティングについてのガイドラインに従った方がいいだろう。

年齢に応じたコンテンツ

子供を対象にしたユーザビリティ調査から、子供向けのコンテンツとインタフェースは、特定の年齢層向けにかなり絞ってデザインする必要があることが明らかにされた。7才向けの内容は8歳児にはとても子供っぽいと見なされてしまうのである。

学生向けのデザインではそのレベルまで対象年齢を絞ることは求められないが、若者向けに書くということは重要である。スタイルと話題の両方に関して、学生の求めるものはより年上のオーディエンスや、熟練した専門職の人向けのものとは異なっている。しかし、流行についていかなければ、と無理をする必要はない。そんなことをしても、ばれるものである。また、学生たちが大人であるという事実については、十分に敬意を払ってほしい。

企業がインターンや新卒の学生を引きつけたいなら、ウェブサイトの採用情報のエリアに「学生」専用のセクションを設けるべきである。若者を対象にしたコンテンツがあることで、彼らに歓迎されていることを感じさせ、そのサイトを閲覧することを促すのである。内容が堅苦しすぎたり、管理職の募集ばかりを掲載するのは逆効果になる。例えば、トップレベルにある経営コンサルタント会社のサイトに対し、ある学生は「卒業したばかりの学生にとって、手が届くような会社には見えない」と感じていた。

懐疑主義

学生たちは上っ面だけの情報を提供するサイトにいらだっていた。大学生はティーンエイジャーよりもずっと証拠を求めるのである。

最初に当たったウェブサイトで読んだことのすべてを、学生たちの全員が、信頼し、信用しているというわけではない。事実、自分たちの疑問に答えてくれなかったり、詳細情報や深みが欠けているウェブサイトには、多くの学生が懐疑的になるか、あるいはうんざりしていた。

彼らより若いユーザーが広告を常に識別できるわけではない一方、学生たちの広告に対する目は鋭く、彼らは記事と広告の境目がはっきりしないサイトには引っかかりたくないと思っている。これはeHowのサイトについてのある学生のコメントである。「広告だらけでわずらわしいですね。なんというか、どれが広告で、どれがそのサイトの実際の記事なのかを区別しにくいです」

このことによって、学生たちが広告を全部、嫌っているということにはならない。調査でも、自分の興味を引く、現時点での自分の目的に関係のある広告や提供については、彼らはきちんと評価していた。例えば、学生の1人はあるファッション広告を気に入っていたが、それは「それが流行の最先端で、まさに自分の欲しいものだから」であった。

しかしながら、ある程度、懐疑的であるにもかかわらず、ほとんどの学生はGoogleにはだまされてしまっている。SERP(検索エンジン結果ページ)に最初に返された結果を、彼らは無批判に選びがちである。

マルチタスク

学生たちはブラウザのタブを同時に多数開いたままにしていることが多い。あるサイトの反応が遅くなると、たいていの場合、彼らは別のタブに移り、別のサイトの閲覧を続ける。自分のFacebookのページをただチェックしているときですら、そうしたコンテクストの切り替えによって、最初のサイトを利用しようというフローからユーザーは逸脱してしまっていた。したがって、たとえ、後から戻ってきたとしても、自分が中断したところからの続きをするのにユーザーはかなり苦労していた。

学生ユーザーはマルチタスクを好み、待つことをしないという傾向にあるため、迅速で、反応が良く、扱いやすいウェブデザインがより必要になってくる。あなた方のサイトに留まるかわりにFacebookをチェックするということに対するどんな小さな口実も学生たちには与えないようにしよう。

「マルチタスクをしている」ときの学生たちは本来の意味で同時にいくつかのことをしているというわけではない。むしろ、彼らが行なっているのは、進行中の様々なタスク間でのコンテクストの頻繁な切り替えであり、作業自体は1つのサイト上で常に行なっている。

国別の違いなし

我々のテストは3つの大陸上にある4つの国で行われたが、学生たちの中には、別の大陸上にある違う国で生まれた者も多かった。しかし、ユーザビリティに関して得られた結論には違いはなかった。主要なウェブデザインガイドラインに関しては、学生たちはどこにいようが差がないのである。

もちろん、利用される言語の違いがあるため、その地域に合わせてデザインされたサイトが、世界共通の単一サイトに対して、優位であることには変わりはない。

外国出身の学生たちはネイティブスピーカーではないのが普通である。このことが意味するのは、彼らにはそのエリア出身のユーザーが求める以上に、シンプルな言語が必要だということである。 具体的には、専門用語や、複雑な語彙や構文、語呂合わせや口語的な表現を避けることが重要である。