UXにおけるビジュアルデザインの5つの原則

スケール、視覚的な階層、バランス、コントラスト、ゲシュタルトの原則を正しく適用すれば、美しいデザインを生み出せるだけでなく、ユーザビリティも向上させられる。

ビジュアルを見たとき、我々はそれが魅力的か不愉快かを、通常、すぐに判断できる(なぜならば、こうした判断は、Don Normanのエモーショナルデザインのモデルでいうところの、本能レベルで展開されることが多いからだ)。しかしながら、レイアウトが視覚的に魅力的である理由を言語化できる人はほとんどいない。だが、優れたビジュアルデザインの原則をグラフィックに活かすことで、エンゲージメントを促進し、ユーザビリティを向上させることは可能である。

ビジュアルデザインの原則は、線や形、色、グリッド、空間などのデザイン要素をどのように組み合わせると、よく考えられたバランスの良いビジュアルを作成できるかを説明するものだ。

この記事では、UXに影響を与える以下の5つのビジュアルデザインの原則を定義する:

  1. スケール
  2. 視覚的な階層
  3. バランス
  4. コントラスト
  5. ゲシュタルト
これらの5つのビジュアルデザインの原則に従うことで、エンゲージメントを促進し、ユーザビリティを向上させることができる。

1.  スケール

この原則は広く用いられており、ほとんどすべての優れたビジュアルデザインで活用されている。

定義:スケールの原則とは、相対的なサイズによって、その構図内の重要度とランクを示すことである。

つまり、この原則が適切に使われると、そのデザインで最も重要な要素が、それほど重要でない要素よりも大きくなる。この原則の背景にある理由はシンプルである。すなわち、大きい要素は注目されやすいということだ。

とはいえ、見た目が魅力的なデザインで利用するサイズは、通常、3種類までだ。そして、サイズの異なる要素がいろいろとあることによって、レイアウト内に多様性が生まれるだけでなく、ページ上に視覚的な階層を確立することもできる(次の原則を参照)。必ずそのデザインにおける最も重要な要素を一番大きくして、強調しよう。

スケールの原則が適切に使われ、正しい要素が強調されていれば、ユーザーは楽にそのビジュアルを解析して、その利用方法を理解することができる。

iPhone版Medium:人気のある記事が他の記事よりも視覚的に大きく表示される。こうしたスケールによって、ユーザーをより興味をもてそうな記事に誘導する。
ポーランドのクラクフにあるこの駐車場では、最も重要な情報(=「H」ゾーン。すなわち、駐車場内の現在地)のサイズが一番大きい。(画像ソース:www.behance.com

2.  視覚的な階層

レイアウトは、適切な視覚的階層があると、ユーザーから理解されやすい。

定義:視覚的な階層の原則とは、重要度の高い順にデザイン要素に注意が向くように、ページ上で視線を誘導することである。

視覚的な階層は、スケール、明度、色、間隔、配置、およびその他さまざまなシグナルのバリエーションによって実装することが可能である。

視覚的な階層は、エクスペリエンスを提供できるかどうかを左右する。ページのどこを見ればいいのかがわからない場合、そのレイアウトには明確な視覚的階層が欠けている可能性が高い。

明確な視覚的階層を作り出すには、2~3種類の書体サイズを使用して、コンテンツのどの部分が最も重要なのか、つまり、ページのミニ情報アーキテクチャで最上位レベルなのか、をユーザーに示すとよい。あるいは、重要な項目には鮮やかな色を、重要度の低い項目には落ち着いた色を使うことも検討しよう。

スケールは視覚的な階層の定義にも役に立つ。そのため、デザイン要素ごとにそれぞれのスケールを導入するとよい。一般的な目安として、デザイン要素ごとにコンポーネントのサイズは、大、中、小とあるといいだろう。

Mediumモバイルアプリ:タイトル、サブタイトル、本文という明確な視覚的階層がある。記事の各コンポーネントの文字の大きさは、その重要度に相当するものになっている。
Uberモバイルアプリ:Uberのモバイルアプリは、視覚的な階層が明確だ。画面は地図と入力フォーム(画面の下半分)で二分されていて、この両方のコンポーネントがユーザーにとって同じくらい重要であるという意図が強調されている。視線は、背景がグレーなことから、「行き先は?」(Where to?)フィールドにまず引きつけられる。そして、次にその下の最近の目的地リスト(:Home(自宅)、Raleigh-Durham…のところ)にいくが、このエリアはフォントサイズが少し小さくなっている。
Dropboxモバイルアプリ:Dropboxのモバイルアプリは、視覚的な階層がややわかりにくい。説明用のテキストのサイズはファイル名よりも小さくなっているが、ファイル同士の区別がしにくいからだ。また、サムネイルによって、この視覚的階層にさらにレイヤーが追加されているが、サムネイルの見た目も利用するファイルの種類ごとに違う。その結果、ユーザーは探しているフォルダやファイルを見つけるために解析と読み取りをたくさんおこなう必要がある。

3.  バランス

バランスはシーソーのようなものだ。しかし、ビジュアルデザインにおいて、バランスを取らなければならないのは、重さではなく、デザインの要素である。

定義:バランスの原則とは、デザイン要素の配置や割合がある条件を満たすことである。そして、画面の中央を通る仮想軸の両側に視覚的なシグナルの量が(必ずしも対称とは限らないが)均等に分布している場合にそうしたバランスは生じる。この軸は垂直であることが多いが、水平なときもある。

重さのバランスを取るときと同様、軸の両側に小さなデザイン要素を1つ、大きなデザイン要素を1つそれぞれ置いた場合には、そのデザインは少しバランスが悪いように感じられる。バランスを取る際には、要素の数だけでなく、デザイン要素の占める面積も重要である。

ビジュアル上に設定する仮想軸は、レイアウトをどのように構成するかの基準点となり、ビジュアルの現在のバランスの状態を理解する役に立つ。バランスの取れたデザインには、他の領域に目が行かなくなるほど目を引くエリアはない(とはいえ、一部の要素に視覚的な重みが置かれて、そこが焦点になることはある)。バランスには以下のような種類がある:

どの種類のバランスをビジュアルに利用するかは、何を伝えたいかによる。非対称的なバランスは動的で魅力があり、動きのある躍動感を生む。対称的なバランスは落ち着いていて、静的だ。そして、放射状のバランスでは、視線は常に構図の中心に引き付けられることになる。

The Hub Style Exploration:安定感のある構図になっているので、好きな仕事を探しているような場面には、特に適している。この画面のバランスの種類は対称的である。Webサイトの中央に仮想的な縦軸を引くと、要素が軸の両側に均等に分布している。(画像ソース:dribbble.com
Nike:このページは非対称的なバランスで、Nikeのブランドにふさわしい動きのある躍動感がある。このビジュアルの中心に縦軸を引いた場合、軸の両側の要素の数はほぼ同じだ。ただし、軸の左右にある要素自体は同じではないし、まったく同じ位置に配置されているわけではないという違いがある。厳密にいえば、靴の左側のほうがテキストの量が少々多い。とはいえ、右側には、広い面積を取り、視覚的な重みをもつ大きなテキストが置かれていて、バランスが取れている。そのため、両側の要素の量はほとんど同じであるかのように感じられる。
Brathwait の腕時計:このクラシックな腕時計は放射状のバランスになっている。視線はまず時計の文字盤の中心に引き付けられる。そして、仮想軸がどこに引かれるかに関係なく、すべての視覚的な重みが均等に分布している。
この見開きページ(:写真は右側のページのみ)はバランスが取れていない。ページに縦軸を引いた場合、要素が軸の両側に均等に分布していないからだ。(画像ソース:www.behance.net

4.  コントラスト

これも広く利用されている原則で、デザインの特定の部分にユーザーの目を引くためのものである。

定義コントラストの原則とは、ある要素が異なる(たとえば、異なるカテゴリに属している、異なる機能をもつ、異なる動作をするなど)という事実を伝えるために、視覚的に異質な要素を並置することである。

言いかえれば、コントラストは、2つのオブジェクト(またはオブジェクトの2つのセット)の間に、(たとえば、サイズや色などの)目に見える顕著な違いを提供して、その2つが異なるということを強調するものである。

コントラストの原則は、多くの場合、色を通じて適用される。たとえば、赤はUIデザイン、特にiOSでは、削除を示すために頻繁に利用されている。こうした鮮やかな色によって、その赤い要素が他の要素とは異なっているということを示しているのである。

iOSのリマインダーアプリ:周囲の背景とのコントラストが高い赤い色が削除のために利用されている。

多くの場合、UXにおける「コントラスト」という言葉は、テキストとその背景とのコントラストを思い起こさせる。デザイナーはときに重要でないテキストを目立たせないように、意図的にテキストのコントラストを下げることがある。しかし、このアプローチは危険だ。テキストのコントラストを下げると読みやすさも低下し、コンテンツにアクセスできなくなる可能性があるからだ。色のコントラストチェッカーを利用し、すべてのターゲットユーザーが今後もコンテンツを確実に読み取ることができるようにしておこう。

Greenhouse Juice Co:ボトル上のテキストの読みやすさは、ジュースの色による。ジュースの中にはコントラストがうまく機能しているものもあるが、淡い色のジュースのボトルのラベルはほとんど読めない。(画像ソース:www.instagram.com

5.  ゲシュタルトの法則

これはゲシュタルト心理学者によって20世紀初頭に確立された一連の法則のことで、人間が画像を理解する方法をとらえたものである。

定義ゲシュタルトの法則は、人間が、多くの要素からなる複雑な画像を一連の異なる要素として解釈するのではなく、全体を作り上げるひとまとまりのシステムに個々の部分を無意識のうちにまとめることによって単純化して構造化する方法を説明したものだ。つまり、ゲシュタルトの法則は、個々の要素ではなく全体を認識するという我々の傾向をとらえたものである。

ゲシュタルトの法則には、類同、連続、閉合、近接、図と地、対称性、最大秩序などがある。近接は、UXにとって特に重要だ。これは視覚的に近くにある項目は同じグループに属しているものと認識されることをいう。

ピカソの絵の中にあるのが、不揃いの図形ではなく、キスをしている2人の人物だと思うことを可能にするのがゲシュタルトの閉合の法則である。我々の脳が、欠落している部分を埋めて、2人の人物を作り出すのである。
また、ゲシュタルト理論の応用は、ロゴでもよく見られる。NBCのロゴの白地の部分に孔雀は存在していない。しかし、我々の脳はそこに孔雀がいると理解する。
Uberの登録フォームには、ゲシュタルトの近接の法則が使われている。つまり、フィールドラベルが該当するテキストボックスに近接しているので、どのフィールドに何の情報を入力するのかがわかりやすい。もしフィールドとその次のラベル(次のフィールド用)の間の空間がもっと少なかったら、ユーザーはどのラベルがどのフィールドのものなのかを理解するのに混乱するだろう。
2017年の米国納税申告用紙:フィールドとフィールドの間に空間がないため、記入が厄介である。また、2個目の苗字入力フィールド(:2個目の「Last name」のところ)が何を指しているのか見逃す可能性もある。ゲシュタルトの近接の法則を使って、自分のためのフィールドと配偶者のためのフィールドを区別したほうが、UXのためにはよかっただろう。

ビジュアルデザインの原則が重要な理由

なぜビジュアルデザインの原則に注意を払って、理解をする必要があるのか。何かを「美しく見える」ようにする以外にも、この原則を理解して活用すると、以下の点で役に立つ:

  • ユーザビリティを向上させる。こうしたビジュアルデザインの原則に従うと、使いやすいレイアウトになることが多い。たとえば、美しい芸術作品を作り出すのに用いられることが多い黄金比は、組版にも利用されて、フォントサイズや行の高さ、行の幅の間に視覚的に心地よい関係を作り出してきた。結果として、典型的には、行の長さが短くなり、それによって、(余白を介して)Webページにバランスが作り出されて、テキストが読みやすくなっている。強力なインタラクションデザインと組み合わせれば、こうしたビジュアルデザインによって、タスクの成功率とユーザーのエンゲージメントを向上させることができるだろう。
  • 感情と喜びをかき立てる。美しいものはポジティブな感情を引き起こす(実際には、美的ユーザビリティ効果により、ユーザーはデザインが視覚的に魅力的であると感じると、ユーザビリティ上の些細なミスに寛容になる)。優れたビジュアルデザインの原則に従うことで、デザイナーは見栄えの良いUIを作成し、その結果、ユーザーの気分を良くすることができる。
  • ブランド認知を強化する。強力なビジュアルシステムは、製品に対するユーザーの信頼と関心を生み出し、ブランドを適切に表現して強化する。

参考文献

Lupton, E. (2008). Graphic Design: The New Basics. New York: Princeton Architectural Press.

Poulin, R. (2018). The Language of Graphic Design. Beverly: Quarto Publishing Group USA, Inc.

ダウンロード(英語)

Visual Design Principles (A4 size) (PDF)

Visual Design Principles (US Letter size) (PDF)