Webデザインを変えるとしても、以前のものをすぐには捨てないで
サイトの既存のデザインをいくつかのライバルサイトと一緒にテストすることで、新しいデザインに向けての有意義な洞察が得られる。競合調査によってユーザブルでない新機能の開発を避けられるのだ。
サイトのデザイン変更の準備はできている
では、どこから始めればいいだろうか。プロジェクトが最初からうまくいくように手助けしてくれるUXの活動にはいろいろなものがある。その1つがユーザビリティの競合テストだ。すなわち、現在のデザインをいくつかのライバルサイトと一緒に、ユーザビリティについて調査するというものである。コンピュータに飛びついて、すぐにでもデザインを始めたいという気持ちは抑えよう。
デザイン変更(あるいは更新)が必要な場合でも、そうすぐに現在のデザインを捨ててはならない。そこから学べるものもあるからだ。ユーザーのフィードバックを集め、それを新しいデザインに活かして、新しいプロジェクトへのスタート地点としよう。作業開始前に、どのくらい積極的な変更をおこなう必要があるかを知ろう。アジャイルチームにとって、競合テストというのはスプリントゼロ期間中に実行する価値のある活動である。
旧サイトは新サイトの最高のプロトタイプである。すでに完全に実装済みであるし、あなた方が目標にしているデザイン上の課題、つまり、ビジネス用のWebサイト、という課題はきっちりと解決しているものだからだ。たしかに、旧サイトによるデザイン上の課題の解決は完璧ではない。しかし、旧サイトは良くない、と言うだけでは不十分なのである。具体的にどのように良くないかを知っておくべきだからだ。また、旧デザインのどんな面がユーザーに好評なのかも見つけ出す必要があるだろう。インターネットの歴史は短いものだが、デザイン変更をしたら、うっかり削除してしまった素晴らしい機能を求めるユーザーからのリクエストの嵐に答える羽目になっただけだったという主要Webサイトの事例であふれている。
ユーザビリティの競合テストによって、異なるデザインパターンやユーザーフローを評価し、どのコンセプトが自分たちのオーディエンスに対してうまく機能しそうか、しそうにないかを判断するための手段を得ることができる。おかげでそうしたデザインを自分たちで作らずとも、アイデアをテストし、あなた方のサイト向きの新しいインタラクションを発見し、他者が犯したミスをしなくてすむようになる。ユーザビリティ調査がデザイン変更プロセスの下準備をしてくれるので、あなたやデザインチームは正しい課題に集中できる。また、自分の判断に自信が持てるようにもなる。類似の状況下でユーザーがWebサイトとインタラクトするのをずっと見てきているからである。
我々は皆、自分のライバルについていろいろと思いを巡らしているものだ。たとえば、ライバルはどううまく情報を提示しているのか。そして、どうすることで我々よりうまくいっているのか、など。インスピレーションを得るためにWebサイトをブラウジングするのは悪いことではない。しかし、そこでやめてはならない。テストしよう。気に入ったコンセプトやアイデアを見つけたら、それを慌ててコピーしてはならない。そのデザインは良さそうに見えるかもしれないが、ユーザブルでない可能性もあるからだ。デザインをテストして、リスクを最小限に抑え、手遅れになる前にそのデザインがうまく機能するかどうかを正確に知ろう。適切な知識もなしに模倣することへの誘惑ははねのけよう。それこそが、模倣された悪いデザインをさまざまなWebサイトでよく目にする理由だからである。
ユーザビリティの競合テストから学ぼう
個人的な好みや先入観をベースに、デザインソリューションについて論議したり、決断を下したりすることで、デザインチームは多くの時間を無駄にしている。意見について議論するほうが、ユーザーデータについての議論よりも、はるかに楽だからだ。そうした論議を継続するかわりに、競合テストをすることによって、デザインチームはターゲットユーザーからのフィードバックを早い段階で得ることができ、情報を十分に得たうえで決断を下せるようになる。
ライバルのサイトは、2番目に優れた新サイトのプロトタイプである。あなた方が抱えているのと同じデザイン上の問題をほぼ解決しているからだ。そして、こうした競合他社がその完成のために大量のリソースを注ぎ込んだデザインの完全な実装例でもある。
競合テストは以下の点であなた方の役に立つ:
- 将来的な機能の評価。新しい機能を提供したり、構築したりする前に、顧客がそれを有益と思うかどうか、あるいはどうやったらもっといいデザインになるかを知ろう。ライバルのサイトの機能に顧客がどう反応するかを見れば、その機能が労力を費やすだけの値打ちがあるものかどうかの判断の助けになる。
- 類似した機能の検討。あなた方のサイトで提供している機能がライバルのサイトのものと類似している場合もあるだろう。しかし、どちらかのプロセスのほうがもう片方よりもうまく機能している可能性はある。同じような機能のデザイン違いのものを検討することで、他サイトが犯したミスは回避しつつ、うまく機能し、あなた方のデザインをさらに良くしてくれる要素を迅速に特定することができる。
- さらに優れたやり方の発見。あなた方のサイトはテストで良い結果を収めるかもしれない。それでも、他のサイトをテストすることで、あなた方の思いもよらなかった機能やインタラクションが明らかになることもある。さまざまなデザインに対してユーザーに反応してもらうことで、彼らは比較対照の機会を得る。参照できる例がいくつかあるほうが、参加者が自分の考えを明確に述べたり、記憶を検索したりするのはうまくいきやすい。
ユーザビリティの競合テストの実施
競合調査はそれほど長い時間を必要としない。通常は2日あれば足りる。数日かけて、あなた方のWebサイトを1つか2つの競合サイトと一緒に調査すれば、UXについての複雑な質問に答えを与え、新しいアイデアへのインスピレーションを提供してくれる有意義な調査結果が得られることになる。2日というのはあっという間だ。プロジェクトのタイムラインからすると、わずかな代償である。
我々が実施するユーザビリティの競合テストの大半は思考発話法をベースにしている。この種の調査では、各参加者は考えていることを口に出しながら、どのWebサイトでも(例:サイトAとサイトB、サイトCで)同じタスクを実行する。我々はユーザーが各Webサイトにどのように反応するかを観察し、口頭でのフィードバックを書き留める。各セッションの最後には、どのバージョンが好きか、その理由はなぜかということをユーザーにたずねることもある。重要なのはユーザーの行動の背後にある論理的根拠を理解することである。
参加者が評価するWebサイトの順番は、順序効果を打ち消すために入れ替えよう。各参加者が評価するWebサイトの数は3個以下にしておこう。たくさんのサイトを評価すると、タスクが退屈になってしまい、参加者の思考の流れを追いにくくなる。
興味深い機能のあるサイトを選ぼう。選ぶサイトは直接のライバルである必要はない。多様性を考えると、あなた方のサイトとは機能やデザインが明確に異なるサイトとの比較が一番良い。ただし、良くないとわかっているサイトをテストすることで時間を無駄にしてはならない。あなた方のサイトより優れている可能性のあるサイトをテストすれば、調査から生まれるアイデアはより有益なものとなる。今は負けてもよいのである。あとできっと勝てるはずだ。
結論
サイトのデザイン変更をする前に、今のデザインの長所と短所をしっかり理解するようにしよう。ライバルの調査をして、デザインのアイデアや選択肢を収集しよう。競合テストの主眼は、勝者を決めることではなく、情報を十分に得たうえで、前進する決断を下せるように、デザイン要素が機能する理由、機能しなくなる理由についての深い洞察を得ることにある。