検索をナビゲーションに改変する
多少なりとも複雑な問題を検索によって解決することは、ほとんどのユーザーにはできない。可能ならば、彼らの労力はサポート力の高いユーザーインタフェースにリダイレクトするほうがよい。
ユーザーというのはウェブ上で何かを探したり、調べたりするのが信じられないくらい下手なものである。数年前、私はユーザーの調査スキルを「不適切」と評したが、時とともに彼らのスキルは低下するばかりだ。今年、ユーザーテストを行なった後に私の頭に浮かんだ言葉は、「哀れ」というのと「使いものにならない」だった。
例えば、最近、行なった調査で、あるユーザーが娘さんへのプレゼントとして、頑丈だけど女の子らしい携帯電話ケースを買おうとしていた。彼女はAmazon.com上で、「ピンク色で耐衝撃性のあるiPhone 5カバー」といった検索キーワードを使って、商品データベースを手当たり次第に漁った。
このキーワードは我々がその週に見た最悪のものというわけではない。けれども、今回の事例でそのユーザーは希望するものを1つも見つけられなかった。彼女は何度かキーワードの修正も試みた。これはたいていのユーザーがしようとは思わないことである。しかし、彼女は自分の基本的な検索のやり方にはまるで疑問をもっていなかった。また、Amazonが利用しているのは全文検索で、検索キーワードの意味は考慮しないこともわかっていなかった。
彼女が見つけた商品の中には、ピンク色でも、携帯電話ケースでも、 iPhoneのケースでもないようなものもあった。しかし、Amazonのサムネイルは、少なくとも彼女がそうした間違った該当項目のほとんどをクリックしなくてすむ程度には良くできている。
今回のような場合に、Amazon.comのユーザビリティが良くないのはそのビジネスモデルのせいである。つまり、ありとあらゆる商品を扱っているからといえる。このような目的のもとでは、どれか1つの商品カテゴリーを最適な形でサポートすることは不可能だからだ。それでも、eコマースのデザインガイドラインに関してのAmazonの総合評価は、他のほとんどのサイトよりもまだ優れているが。
簡単な検索はうまくいくが、難しいと失敗する
毎回、調査で我々が目にするものは同じだ。それは、ほとんどのユーザーは検索をしようとはするが、その使い方はわかってないということである。
もっと学校が上手に子どもに検索の仕方を教えてくれたらいいのにと本当に思う。しかし、あまり期待はしていない。なぜならば、ほとんどの人が持つ読み書きのスキルはアリクイ程度だからだ(「チンパンジー」と言おうかと思ったのだが、彼らは私が例えたいことに対して賢すぎる)。新しい多様な語彙を頭から生み出すというのは氷河期の狩猟民が生き残るためのスキルではなかったので、今日のほとんどの人は手助けなしには適切な検索キーワードを考え出すことはできないのである。
検索ができないのに、なぜユーザーが今まで以上にこれほど検索に支配されているのかは謎のように思える。おそらく、多くの場合、主にシンプルなタスクに対してウェブ検索エンジンを利用したときには、実際に、検索というユーザーの取った方策がよく機能するからだろう。なるほど、大規模な検索エンジン(例えば、GoogleやBing、Naver、Baidu、Yandex)は回答エンジンに姿を変えてきており、ユーザーの求めるものをまさにSERP (検索エンジン結果ページ)上で提供してくれることが多い。
したがって、あなた方のところの検索機能のデザインが良くできていて、探している具体的アイテムの名前をユーザーがうまく定義できれば、検索はうまくいく。eコマースサイト上での検索のテストでは、ユーザーは1回目の検索において希望するものを見つけたのは64%の確率だった。そして、彼らの総合的な検索成功率は74%と非常に良かった。
成功率が10%上がったのは、ユーザーが複数のキーワードを試したからである。これは別の見方をすると、最初の検索に失敗した36%のユーザーの中で、割合にすると28%の人しか成功できなかったということである(10÷36=0.28)。言い換えると、検索の問題としてはやさしいものから難しいものになることで、成功の確率は64%から28%に低下した、ということである。
(イントラネットはまた別の話である。イントラネットの検索は実装が不十分なことが多いため、企業の従業員のほとんどはイントラネット検索の利用を限定的にすることを学んでいく。最近行なったイントラネットのユーザーテストでは、従業員たちは平均するとタスクの19%でしか、検索を経路探索のための最初の方法として利用していなかった。イントラネット検索の質は、良いものから悪いものまで、企業によって非常に大きなばらつきがあったが)。
平均的な情報検索者向けにデザインする
検索サジェストはいまや一般的なやり方となっており、ユーザーが自分たちのニーズをほのめかす文字を数語打ち込むやいなや、可能性のある完全な形のキーワードをドロップダウンとして表示し、彼らのキーワード生成能力の限界を越える手助けをしている。とはいえ、検索サジェストは有益ではあるが、制約にもなりうる。というのも、ユーザーはドロップダウンをミニSERPと見なし、そこに一覧されたものがサイトで扱われているもののすべてだと思うことが多いからである。つまり、検索サジェストに入ってないものをユーザーがわざわざ検索することは決してないように思う。
しかし、我々はCostcoのウェブサイトでの買い物についてのテストで、ユーザーの検索に関わる問題を克服する手助けになる良い方法を見つけた。それはあるユーザーがテレビを買いたいと思って、Costcoのホームページでいきなりtelevisionというキーワードを入力したときのことである。以下がそのときに現れた「検索結果ページ」である:
まったくSERPではなかったのだ! これはテレビのカテゴリーページである。このページに載っているのは、この商品カテゴリーに関連した特徴と、プラズマ/液晶、そして、ブランド、解像度、画面サイズといった関連するファセットである。そのどれもが「通常の」SERPに現れることはないだろう。そこで扱う検索結果の種類は幅広いものでなくてはならないからである。
では、Costcoはインチキをしているのか。検索という概念を非常に厳密に解釈すればそうなるだろう。しかし、テストでユーザーたちはこのサイトに満足していた。彼らが望んだもの、つまり、人々がまさに欲しいものをこのサイトは与えてくれたからである。
確かに、ユーザーの検索キーワードが一義的で、カテゴリーとぴったり一致しているときには、彼らを通常のSERPからカテゴリーページへリダイレクトすべきである。「3D TV」と検索すると、テレビについてのサブカテゴリーページに行くのはかまわないと思う。しかし、「3D」と検索したときには通常のSERPを表示すべきだ。(Costcoでは正確にこれを実行しており、3Dテレビとその検索キーワードに関連する他の商品の両方が入ってくる)。
人々が複雑な検索を理解するようになり、それに応じてスキルを向上させるまでは、必要とするものをユーザーが見つけやすくするために、こうした踏み込んだ措置を取るビジネスがカスタマーサクセスを向上させ、収益をも向上させることだろう。
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Alertbox「検索をナビゲーションに改変する」 http://t.co/kdJolgp98R 多少なりとも複雑な問題を検索によって解決することは、ほとんどのユーザーにはできない。可能ならば、彼らの労力はサポート力の高いユーザーインタフェースにリダイレクトするほうがよい。
— U-Site編集部 (@UsabilityJp) March 31, 2013