マイクロコンバージョンのためにユーザーに肩身の狭い思いをさせてはいけない

ユーザーに気まずい思いをさせることで、オファーに応じさせたり、ニュースレターに登録させようとするものを、マニピュリンクという。

厄介なトレンドがWebで伝染病のように広がっていっている。ニュースレター登録などのコンバージョンにユーザーを必死に近づけようと、一部のWebサイトが人を巧みに操るようなリンクテキストをポップアップモーダルに追加しているのだ。そうしたラベルはユーザーに肩身の狭い思いをさせようとするもので、マニピュリンク(manipulink)と呼ばれている(この気の利いた用語はSteve Costelloによって作り出された)。このラベルで用いられているのが、罪悪感を抱かせる手法(confirmshaming)とよく呼ばれるやり方で、オファーを断るのは気が引ける、とユーザーに思わせようとするものである(罪悪感を抱くようなことをさせないようにする手法、といったほうが説明としては理屈に合っているかもしれない)。

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Sears.com:このモーダルにあるのがマニピュリンクの典型的な事例だ。「Enter your email to get started」(:Eメールを入力して、始めよう)という指示の後に、「Show Me The Deals」(:お買い得品を見せてください)と、マニピュリンクの「No thanks, I don’t like deals.」(:いいえ、結構です。お買い得品は好きではありません。)という「クリエイティブな」ラベルが付された2つの選択肢が続いている。ユーザーが宣伝用のEメールを受け取ることになる、ということをこのテキストは実際には言っているのだが、それはページからはかなりわかりづらい。

このデザインパターンは、ニュースレターへの登録やサービスへの加入、アカウントの登録などのさまざまなオファーが書かれたモーダルオーバーレイ“頼むから行かないで”ポップアップといわれることもある)に出てくることが多い。たとえば、以下にあるオファーもそれで、はい、いいえ、という2つの選択肢があり、「the first person」(:誰よりも先に)というテキストのラベルがついている。

このデザインパターンのたちの悪さはこんな感じだ。受諾する場合のリンク(たとえば、「はい、最もお得な情報を見たいです」など)は、一般には、より大きく、派手で、目につきやすくなっている。そして、「いいえ、結構です。節約するのは大嫌いです」といった、ユーザーの人格や優先順位が好ましくないという内容のさまざまなメッセージが拒否する場合のリンク(=マニピュリンク)になっているのである。

マニピュリンクは古いデザインパターンの新たな解釈といえる。伝統的なポップアップウィンドウは、長年、人目を引く大きな受諾ボタンを使い、オファーが何であれ、それをユーザーに選ばせようとしてきた。しかしながら、こうした伝統的なスタイルのポップアップは、ユーザーにオファーを拒否させる場合には、もう少し礼儀正しかったといえよう。ユーザーは興味がなければ、「いいえ、結構です」を選べばよかったからだ。ところが、マニピュリンクは独自のやり方でこれまでにない悪意というものを新たに追加してしまったのである。

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Ace Hardwareでは、モーダル経由のニュースレターの宣伝に、伝統的で、より率直なアプローチを取っている。オファーは直接的なもので、上から目線の口調は使われていない。ユーザーはシンプルに、いいえ、結構です、という意思表示するか、このウィンドウを閉じて、次に進めばよい。

マニピュリンクは、必死にユーザーの行動に影響を及ぼそうとする、「注目を求めるデザインパターン(needy pattern)」の別パターンといえる。しかしながら、注目を求めるデザインパターンの多くは(先ほど見た、ポップアップの例のように)単にうっとうしいだけだが、マニピュリンクはユーザーエクスペリエンスにもっと積極的にマイナスのインパクトを与える。このインタフェース要素は心理的に悪影響を及ぼすように意図的にデザインされたものだからだ。我々はマイナス方向のエモーショナルデザイン(情動に訴えるデザイン)のレベルは3つあると考えている:

  1. ミステークが原因の否定的な感情:デザイナーがじっくりと考えなかった(またはユーザビリティテストを実施しなかった)ために、ユーザーが好まないようなデザインができてしまったことによって起こる。
  2. 最初は気持ちよく使えていたデザインが、繰り返し利用することによって、不快に感じるようになる。長く使うとマイナスに転じるというのは、テキストのアニメーションのように、表面的な楽しさを追求した場合の結果であることが多い。
  3. デザイン自体が故意に不快にさせることを意図している

こうしたデザインはどれも結果的にユーザーエクスペリエンスを悪化させる。しかし、少なくとも1番と2番は、完璧ではないデザインの副作用といえる。完璧な人などいないわけだから、我々もそういうデザインをしたデザイナーをあまり非難することはできない。なので、そうした非難の目はユーザーに害をなそうとする人に向けようと思う。

マニピュリンクの熱狂的支持者は、この手法を使う論理的根拠として、否定的なリンクを選ぶ前にユーザーを立ち止まらせることができる、と主張する。だが、これは、この戦略を利用しているデザイナーがユーザーが拒否しようとすることを否定的な自己イメージと結びつけることで、エモーショナルデザインの内省レベルを操作しようとしているということだ。

我々の実施したユーザビリティ調査で、1人のユーザーが、Women’s Healthのマニピュリンクの入っているモーダルと、WebMDによるもっと伝統的なオファー、という2つのモーダルを目にするということがあった。

Women’s Healthのオファーはこのユーザーの心には響かなかった。彼女はこの雑誌の別のタイプの情報には興味があったが、エクササイズのプランについては関心がなかったからだ。Women’s Healthがこのオファーによって彼女をだまして、ニュースレターに登録させようとしていることも彼女にはわかっていた。彼女は言った。「これは実際には宣伝に見せかけたニュースレターの登録フォームです。ですが、たぶん私は、「No thanks I don’t need to work out」(:いいえ、結構です。私にはエクササイズは不要です」を単にクリックすると思います。たとえ、そのセリフがばかばかしくてもね。なぜなら、Women’s Healthにはエクササイズについてのアドバイス以外にもいろいろなオファーがあるからです」。

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Women’s Healthでこのモーダルを閉じるには、ユーザーがマニピュリンクをクリックする必要があるのだが、彼女はそのリンクをマニピュリンクとは受け取っていなかった。

WebMDでもニュースレター登録のポップアップが出ると、このユーザーはここの直接的で礼儀正しいアプローチのほうが好きだということで、次のように言った。

「こっちのほうがいいですね。というのも、ずっと誠実だからです。なんてこと、私は病気になってしまうのね、と思わせるような、意地の悪い嫌味なセリフも出てきませんし。より誠実であることを評価したいです。実に率直であるところがいいと思います。『これがニュースレターです。購読したいと思えば、そうしてください。購読したくないなら、これがウィンドウを閉じるボタンです』という感じで、この画面で起こっていることがとてもわかりやすいし、彼らは私をだまそうとはしていないですから」。

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WebMDの正直で率直なオファーはこのユーザーの気持ちを捉えたが、それはWomen’s Healthにはできなかったことである。

これは2つのモーダルに対するたった1人のユーザーの定性的な反応にすぎない。しかし、見下して人を巧みに操ろうとするような口調の影響を示す好例となっている。実際、こうしたやり方に不快感を抱く人は随分といるようで、罪悪感を感じさせる手法を批判する、専用のtumblerアカウントが作られているくらいだ。ユーザーは愚かではない。愚かであるかのように扱われれば、侮辱されたと感じる。当たり前のことである。

マニピュリンクがうまくいかない理由

マニピュリンク支持者は、彼らの戦術が効果的である理由として、A/Bテストマイクロコンバージョン率が高かったことを挙げる。確かに、マニピュリンクによってニュースレターのユーザー登録率が少し上がることもあるだろう。しかし、常識を度外視して、コンバージョンだけに集中するのは災いのもとだ。ユーザーを脅してニュースレターに登録させなければならないとしたら、ニュースレターへの登録が増えるかどうかの問題ではなくなるだろうからである。

実際、マニピュリンクがあると、ユーザーは立ち止まって、よく考えるようになり、コンバージョン率が上がることもある。しかし、ここにはあるトレードオフが隠れている。このアプローチは、A/Bテストでは数量化しにくいやり方で、ユーザーエクスペリエンスに悪影響を及ぼしていくのだ。マイクロコンバージョンの増加に見られる短期的な利益は、ユーザーを馬鹿にするという代償によって得られるものだが、これは長期的には損失になっていく可能性が高い。ニュースレターの登録を多少増やすことに、NPSスコアを下げたり、ブランド認知が否定的な結果になったり、信用やユーザーの信頼を失ったりするほどの価値はあるだろうか、ということだ。

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Delish.comは、モーダルにマニピュリンクを使い、レシピについてのニュースレターにユーザーを登録させようとしている。Eメールアドレスを提供することで、「ほかでは見られないレシピが見られる」ようになり、冷凍食品を食べる(ような駄目な人間になる!)ことが避けられる、と宣伝文句にはある。しかし、Eメールアドレスを提供することによって、ユーザーはニュースレターに登録することにもなる、とテキストに書かれているわけではない。

マイクロコンバージョンが「大幅に」増加するという主張があてにならない理由はもう1つある。それは、マニピュリンクのあるモーダルはオファーの内容に偽りがあることが多いということによる。先ほどのdelish.comのモーダルが良い例だ。このサイトはユーザーがレシピを「見られるようにする」ためにEメールアドレスを要求しているが、Eメールアドレスを提供すると、それがdelishのニュースレターにも登録されるということは明らかにはしていない。しかし、ユーザーがレシピを見るためにEメールアドレスを提供すると、即、ニュースレターにようこそというEメールがDelishから送られてくるのである。

企業がこういう汚い手を使った後にコンバージョンが上がったとしても、それはマニピュリンクのテキストが「気が利いている」からではなく、実際には、彼らがユーザーにうそをついているからであるとも考えられる。しかも、このデザインパターンは、単なる注目を求めるデザインパターンとは違う。ダークパターンになってしまっているといってよいだろう。

マイクロコンバージョンのためにユーザーを馬鹿にしてはならない

自分たちの顧客に意地悪をするべきではない、というのは当たり前のことである。ユーザーとの関係を犠牲にして、Eメールアドレスを多少多く手に入れるというのは、木を見て森を見ず、ということだからだ。

サイトにおけるユーザーのインタラクションというのはどれもが対話なのである。すなわち、あなた方はユーザーとコミュニケーションをしているのであり、インタフェースはその手段にすぎない。レストランでウェイターからこう言われたと想像してみるとよい。「メインディッシュにコショウはいかがですか。それとも、食べ物には味がないほうがお好みでしょうか」。マニピュリンクはこういうやり取りのデジタル版といえる。人に直接言ったら失礼なことは、宣伝文句にあっても失礼なのである。

公開:2017年9月5日(原文:2017年4月30日)
著者:Kate Meyer、Kim Flaherty
原文:Stop Shaming Your Users for Micro Conversions

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