マクロコンバージョンとマイクロコンバージョン

マクロコンバージョンとは、ビジネスの主要な目標に直接貢献する、望ましいユーザー行動のことである。これに対し、マイクロコンバージョンとは、マクロコンバージョンに先行し、より頻繁に発生するユーザー行動を指す。

プロダクトマネージャーやデジタルマーケティングの専門家は、自らのプラットフォーム上で、そこに訪れた人たちを、購入したり、情報を送信したり、特定の行動を取る顧客へと転換したいと考えている。「コンバージョン」という用語は、ビジネスの目標と一致するユーザーの行動を指す。つまり、これはデジタルプロダクトであなた方が達成したい望ましい結果のことである。

マクロコンバージョンは、ビジネス目標に直接関連する顧客の行動である。一方、マイクロコンバージョンは、そうした目標に到達するための小さなステップにあたる。マクロコンバージョンとマイクロコンバージョンの違いを理解することで、成功に向けたプロダクトの最適化ができるだろう。

マクロコンバージョン

コンバージョン率は、企業がプロダクトの成功を測定するために利用する重要業績評価指標(KPI)である。これは、望ましい特定のユーザー行動(すなわちコンバージョン)がどれだけ頻繁に発生するかを測定するものである。

最も影響力のあるコンバージョンは、マクロコンバージョンと呼ばれる。サイトオーナーは、サイトの主な目的に直接関連する1つまたは少数のマクロコンバージョンを追跡することが多い。

マクロコンバージョンとは、ビジネスの主要な目標に直接貢献する、望ましいユーザー行動のことである。

プロダクトの目的マクロコンバージョン
商品やサービスの販売購入完了
リード(見込み客)の収集リードフォームの送信
イベントの宣伝イベントへの登録完了
ソーシャルコミュニティの構築アカウントの作成
マクロコンバージョンの例

コンバージョンは、売上の獲得(たとえば、購入や購読)と関連づけられることが多いが、必ずしもそうとは限らない。たとえば、コミュニティ構築を目的とするプロダクトでは、新しいアカウントを作成することがマクロコンバージョンと見なされるし、政府機関のサイトでは、納税の準備と申告がマクロコンバージョンとされたりもする。非金銭的なコンバージョンについては、この記事の最後で詳しく説明する。

マクロコンバージョンの設定

プロダクトのマクロコンバージョンを設定するには、まず、そのプロダクトで企業が達成しようとしている全体的な目標について考えることから始める必要がある。プロダクトがこの全体的な目標にどのように貢献しているか、またそのためにユーザーがどのような行動を取る必要があるかを検討しよう。

必要なユーザー行動が定義できたら、ユーザーがこれらの行動を取っているかどうかを判断するための適切な指標の選定をチームで行う必要がある。この指標によって、プロダクトの成功を長期間にわたって追跡できるようになる。

マイクロコンバージョンによる詳細な追跡

マクロコンバージョン率はプロダクトパフォーマンスを測る優れた指標だが、マクロコンバージョンを実際に行うユーザーはごく少数に限られる。さまざまな業界におけるマクロコンバージョン率の平均はわずか2.9%である。

さらに、ユーザーが最終的にマクロコンバージョンを行うまでには、検討や下調べ、準備といった長いプロセスをたどると考えられる。そのため、マクロコンバージョン率は変化が緩やかになりがちで、プロダクトに対する漸進的な改善の成果を評価することが難しい。

そのため、プロダクト改善の成果を詳細に測定するには、マイクロコンバージョンを活用するとよい。

マイクロコンバージョンとは、KPIとの関連は間接的だが、より頻繁に発生する行動のことである。

プロダクトの目的マイクロコンバージョン
商品の販売カートに商品を追加 決済フローの開始
リード(見込み客)の収集リードフォームページへのアクセス ニュースレターへの登録
イベントの宣伝イベント情報ページへのアクセス イベントアプリのダウンロード
ソーシャルコミュニティの構築アカウントを作成せずにそのプラットフォームにアクセス アプリのダウンロード
マイクロコンバージョンの例

マイクロコンバージョンには、プロセスマイルストーンと二次的行動の2種類がある。

プロセスマイルストーンとしてのマイクロコンバージョン

プロセスのマイルストーンは、ユーザーがマクロコンバージョンに至る過程で踏む重要かつ最も一般的なステップである。これは、マクロコンバージョンに至る可能性が最も高いユーザージャーニーの各段階を意味し、ユーザーがどの段階で離脱しているのかを特定するのに役立つ。

プロセスマイルストーンとしてのマイクロコンバージョンとは、マクロコンバージョンに至るまでの段階的な進行を表すコンバージョンのことである。

プロセスマイルストーンによって、ユーザーがマクロコンバージョンに向かって進んでいるかどうか、またどのように進んでいるかを追跡することができる。プロセスマイルストーンは、マクロコンバージョンに即座に大きな影響を与えない段階的なデザイン改善の効果を分析する際に特に有用である。

この画像は、航空券購入の購入マイルストーンを6つのステップで表している。ステップ1: フライトの詳細を入力すると、フランクフルト空港(FRA)から大阪空港(KIX)へのフライトが検索される。ステップ2: 便の選択肢が時刻や経由地とともに表示され、便を選択する。ステップ3: 乗客名とEメールアドレスの入力欄が表示され、乗客情報を入力する。ステップ4: 追加手荷物などのオプションを選択する。ステップ5:クレジットカードの入力欄が表示され、お支払い情報を入力する。ステップ6:航空券を購入し、航空券と「ご搭乗ありがとうございます!」というテキストが表示される。最後のステップには「マクロコンバージョン」というラベルが付けられている。
航空会社ウェブサイトでの航空券購入は、マクロコンバージョンの例といえる。そこには、航空券を購入する際に顧客が通常通過するいくつかのプロセスマイルストーンが存在するが、そのそれぞれが良いマイクロコンバージョンである。

プロセスマイルストーンの設定

ウェブサイト上で追跡するプロセスマイルストーンを特定するには、カスタマージャーニーマップやアナリティクスデータなどの既存の情報を活用しよう。これらのリソースを利用することで、ユーザーがよく取るステップのうち、どれがマクロコンバージョンに近づいていることを示すシグナルなのかを見つけ出すことができる。

または、ユーザーになったつもりでプロダクトを一通り試し、どんな行動がマクロコンバージョンへの過程であるかを判断するとよい。この行動には、ユーザーがジャーニー上で乗り越えなければならない摩擦点も含まれる。たとえば、アカウントを作成するためにメールアドレスを認証することは、アカウント作成を成功させるためのプロセスマイルストーンである。

二次的行動としてのマイクロコンバージョン

ユーザーに大きな負担を求めるマクロコンバージョンは、複数のセッションを通じて信頼やロイヤリティを築いていくという望ましい行動の後に行われることが多い。これらの行動は、マクロコンバージョンを行う前にユーザーが実行する必要があるわけではなく、一般的なステップでもないが、企業側から見れば、やはり非常に望ましいものであり、将来的なマクロコンバージョンを予測できる可能性もある。

二次的行動としてのマイクロコンバージョンとは、マクロコンバージョンに直接つながるわけではないが、将来的なマクロコンバージョンを予測できる可能性があるマイクロコンバージョンのことである。

この画像は、ある航空会社ウェブサイトの二次的行動を、マイクロコンバージョンとマクロコンバージョンに分けて示している。マイクロコンバージョンには、マイレージプログラムへの登録、ニュースレターへの登録、航空会社のアカウントの作成、アプリのダウンロードなどが含まれる。これらの行動は将来的に影響を与える可能性がある。マクロコンバージョンは、航空券の図で表されている航空券の購入である。
航空会社ウェブサイトにおけるこのような二次的行動は、航空券購入のために必要不可欠なステップではないかもしれないが、それでも依然として望ましい行動であり、将来の航空券購入の予測になる可能性があるため、マイクロコンバージョンとして活用することができる。

二次的行動はコンテキストに大きく依存し、ウェブサイトの目的、デザイン、機能によって異なってくる。

コンテンツとのインタラクションとエンゲージメントパーソナライゼーションとフィルタリング
コンテンツの共有動画の視聴コメントの投稿特定数の記事ページの閲覧特定のトピックのフォローコンテンツの印刷文書のダウンロードリストのフィルタリング/ソートニュースレター、通知、更新情報への登録商品の比較アカウントの設定変更/パーソナライゼーション
マイクロコンバージョンとして活用できる一般的な二次的行動

二次的行動の設定

プロダクトに対する二次的行動を設定する際には、マクロコンバージョンには直接つながらないものの、プロダクトへのエンゲージメントの増加やブランドとの強い結びつきを示す、望ましいユーザー行動を念頭に置くべきである。こうした行動を取るユーザーは、マクロコンバージョンに直接つながる道筋上にはいないかもしれないが、将来的にはそこに到達する可能性が高いからだ。

非金銭的な目的のプロダクトでのコンバージョン

多くのUX専門家は、イントラネットやソフトウェア、ソーシャルメディアプラットフォーム、オンラインフォーラム、教育サイトなど、非金銭的な目的のウェブサイトやプロダクトに対してマクロコンバージョンやマイクロコンバージョンの概念を適用することに苦労している。

これらのプロダクトでは、主要なビジネス目標を明確に設定することはしばしば難しく、したがって、どのユーザー行動がこれらの目標に直接貢献するのかを決めるのも難しい。

このような状況でマクロコンバージョンとマイクロコンバージョンという概念の適用方法を理解するには、必須のユーザー行動と任意のユーザー行動という2種類の行動を区別する必要がある。

必須のユーザー行動

コンバージョン率は、ユーザーが必須行動をどのように実行しているのかについての評価には適していない。必須行動とは、ユーザーに他の選択肢がない行動を指す。このような必須行動のデザインのパフォーマンスを評価するには、使いやすさ、エラー数、カスタマーサポートとのやり取りといった指標を収集するとよい。

たとえば、社内イントラネットを通じて従業員が休暇の申請を行うプロセスについて考えてみよう。この場合、イントラネットのデザインを変更しても休暇申請の数自体は変わらないため、コンバージョン率を測定しても意味がない。従業員は、休暇申請を行うにはイントラネットを使うしかないため、プロセスがどれほど簡単であろうと複雑であろうと、イントラネットを使用せざるをえないからである。

任意のユーザー行動

ユーザーがある行動を実行する選択の自由を持つ場合、またはその行動を実行する方法が複数ある場合、コンバージョン率はユーザーの行動パターンを理解し、デザイン改善の影響を評価する上で有効なツールとなる。

たとえば、イントラネットで、参加が必須ではない社内イベントの参加登録の宣伝をする、と仮定しよう。従業員が紙の申込用紙とイントラネットのどちらからでも登録できる場合、イントラネット登録のコンバージョン率は、イントラネットでどれだけ効果的にイベントを宣伝できたかについての貴重な知見となる。

しかし、ユーザー行動が任意である場合でも、非金銭的な目的のプロダクトに対してマクロコンバージョンを設定するのは依然として難しい。なぜなら、企業の主要なビジネス目標に直接貢献するユーザー行動が存在していない可能性があるからだ。とはいえ、ビジネスに何らかの好影響をもたらす行動がいろいろと存在することもありうる。こうした任意の行動は、本質的にプロダクトに対する二次的行動であるため、それらのコンバージョン率を追跡することは可能である。

プロダクトの目的マイクロコンバージョン
任意参加のイベントの宣伝イベントへの登録完了
無料の文書の提供文書のダウンロード
社内コミュニケーションの円滑化メッセージの送信
無料情報(記事/動画)の提供記事ページへのアクセス/動画の視聴
非金銭的な目的のプロダクトにおけるマイクロコンバージョンの例

さらに、これらのコンバージョンに関するプロセスマイルストーンを追跡することも有益である。たとえマクロコンバージョンでなくても、そのデータは、コンバージョンに至るまでのユーザーの行動パターンや、時間の経過に伴う行動の変化に関する知見を提供してくれるからである。

結論

この画像はマイクロコンバージョンとマクロコンバージョンを比較したものである。マイクロコンバージョンには、商品をカートに追加する、配送情報を入力する、支払い情報を入力するといったプロセスマイルストーンが含まれる。マイクロコンバージョンの二次的行動には、ニュースレターへの登録、アカウントの作成、アプリのダウンロードなどがある。マクロコンバージョンには、購入の完了、アカウントの作成、イベントへの登録、リードフォームの送信などがある。

マクロコンバージョンとマイクロコンバージョンという概念を活用することで、デザインが企業の主要な目標にどの程度貢献しているかを理解することができる。こうした知見は、デザインアプローチの改善やプロジェクトの投資収益率(ROI)の算出に役立つので、ステークホルダーに対してUX作業の価値を効果的に証明することを可能にしてくれるだろう。