ユーザーエクスペリエンスにおける社会的証明

ユーザーというのは他のユーザーの行動に左右されるものなので、大勢の人の行動や意見、アドバイスをデザイン上に表示することで、彼らに影響を与えることができる。

社会的証明とは心理現象の1つで、人々が自分の行動の指針として、他者の行動を参考にすることである。購入するかどうかや、どこで食事するかの決定、どこに行くかや何を言うか、誰にそれを言うか、等の判断といった状況のほとんどで、「正しい」行動を取りたい、という我々の自然な欲求がこの傾向を作り出している。社会的証明の実生活における代表例の1つが新型iPhone発売日のApple Store前の長い行列である。大勢の人が新型のスマートフォンを非常に魅力的だと思い、そのために立って(あるいは眠ったまま!)行列に並ぶことにかなりの長い時間を費やすという事実は、そのスマホの価値に対する我々の印象に大きな影響を及ぼす(さらに、それを欲しくてたまらない気持ちにもさせる)。

Apple Storeがイギリスにオープンした日。Lucius Kwok撮影。クリエイティブコモンズライセンスによる利用。
Apple Storeがイギリスでオープンした日。Lucius Kwok撮影。クリエイティブコモンズライセンスによる利用。

こんなにたくさんの人が欲しがっているのだから良いものに違いない、というわけだ。だからこそ、1958年にマクドナルドも「1億個以上のハンバーガーを販売」と書いた看板を掲げたのである。

社会的証明を利用したインタフェースパターンの例

Web 2.0によって、他者に影響を与えたり、情報を提供する目的で、ユーザーが行動や意見を公にするという行為が一般化してきている。以下、社会的証明の原理が作用している例をいくつか紹介しよう。

レビュー

Adagio Teasはレビューを利用し、見込み客に影響を与えて、こう思わせようとしている: 「他の人もこのお茶を気に入っているのだから、たぶん私もそれを気に入るだろう」と。
Adagio Teasはレビューを利用し、見込み客に影響を与えて、こう思わせようとしている: 「他の人もこのお茶を気に入っているのだから、たぶん私もそれを気に入るだろう」と。

 行動(社会的フィルター)

eBagsは(この同じページを見た)他の顧客が同時に何を見たかをベースに、関連するバッグを表示し、ユーザーにこう思わせようとしている: 「彼らもこのバッグを見たのなら、彼らが検討した他のバッグも私の欲しいタイプに違いない」と。
eBagsは(この同じページを見た)他の顧客が同時に何を見たかをベースに、関連するバッグを表示し、ユーザーにこう思わせようとしている: 「彼らもこのバッグを見たのなら、彼らが検討した他のバッグも私の欲しいタイプに違いない」と。

意見

このEtsyのインタフェース事例にはある特定のアイテムを「高く評価している(:admire)」人の数とユーザー名が出ている。Etsy上のショップにあるアイテムは1つしかなかったり、数が限られていることが多いため、興味を持っている人が他にもいることを表示し、希少性の原理の効果もうまく利用しようとしている。
このEtsyのインタフェース事例にはある特定のアイテムを「高く評価している(:admire)」人の数とユーザー名が出ている。Etsy上のショップにあるアイテムは1つしかなかったり、数が限られていることが多いため、興味を持っている人が他にもいることを表示し、希少性の原理の効果もうまく利用しようとしている。

社会的証明の原理の背景

社会的証明は、Robert Cialdini博士の著書、「影響力の正体 説得のカラクリを心理学があばく」(1984年初版刊行)で詳述されている影響力の6原理のうちの1つである。心理学の教授であるCialdiniは学生とともに非常に多くの調査研究を実施し、こうした原理を確認して、証明を行った。社会的証明とは、我々の不安感や「正しいこと」をしたいという欲求がすり替えられたものなのである。

ユーザビリティ調査をすると、ユーザーレビューはどうでもいいし、他の人の意見は信用してないので、自分独自の観点だけをベースにすべての決断を行う、と言ってくるユーザーがたまにいる。しかし、残念ながら、何千もの心理学の研究から証明されているのは、こうした「一匹狼」論がまるで正しくない、ということである。すなわち、これも、デザイン決定はユーザーの言っていることではなく、やっていることをベースにすべき理由を示す例といえる。

社会心理学の研究で繰り返し指摘されているのが、意識的、無意識的な我々の相互依存が、我々の下すほとんどすべての決断のきっかけになっている、ということである。社会的証明の最も普及した利用例の1つが、シチュエーションコメディで利用される、一般にはあまり評判のよろしくない「録音された笑い声」である。Cialdiniは次のように指摘している。「実験からわかったのは、録音された笑い声を利用すると、滑稽なネタのときに観客がより長く、頻繁に笑うようになり、また、そのネタをより面白いと評価するようになるということである。加えて、録音された笑い声はお粗末な冗談に対して、最も有効であることを示す証拠もある」。

このテクニックをいつ利用すべきか

信頼性を向上させたいとき: オンラインで見つけたコンテンツやサービス、製品を他の人がどう見えているかをユーザーは本当に気にかけている。他のユーザー(そのユーザーが彼らの親しい人ならさらに良い)がそのコンテンツや製品を気に入っているという表示を追加することで、意志決定時の不安は解消される。

採用や受容を促進したいとき: ユーザーにニュースレターを購読してもらったり、Twitterアカウントをフォローしてもらおうとしているなら、既に多数の購読者がいることを伝えることで、購読は増加する。それによってあなた方のコンテンツが他の人からも気に入られていることがわかるからである。(例: 我々自身のニュースレターの購読ページ。今回だけは自分のところのサイトを良い例として挙げることを許して欲しい :-))。

社会的証明の検証

社会的証明の利用にともなう最も重要なリスクとは、そのコンテンツやサービス、製品を良いと評価するユーザーが少なすぎると思われることである。最近実施したユーザビリティセッションで、1人のユーザーはある記事をシェアした人数をチェックし、その記事はそれほど人気がないので、たぶんあまり良いものではないのだろう、と述べていた。

ある調査参加者はFacebookでこの記事をシェアした人がたった千人であることに気づいたので、この記事に良い印象を持たなかった。もちろん、Google+での17人のユーザーという数字によってもたらされる印象はさらに悪いものである。
ある調査参加者はFacebookでこの記事をシェアした人がたった千人であることに気づいたので、この記事に良い印象を持たなかった。もちろん、Google+での17人のユーザーという数字によってもたらされる印象はさらに悪いものである。

社会的証明関連の要素によるリスクには、インタフェースが煩雑になり、ページの読み込みが遅くなる(可能性がある)というのもある。ソーシャルウィジェットは(FacebookやTwitterのような)ソーシャルネットワークサイトとのバックエンドでの通信を複雑にして、サイトの応答時間を大幅に遅くしてしまうことが多い。この傾向はモバイルデバイスや接続が悪い場所では特に顕著である。

以下の表は社会的証明の採用を検討するときに考えるべき課題と、そのときに利用できるテストテクニックを挙げたものである:

課題 テスト手法/データ
(向上することがあるとしたら)どの社会的証明の仕組みを利用することでコンバージョンが向上するか。 コメントやレビュー、いいね、テスティモニアルA/Bテスト
※訳注:顧客や専門家による推薦文を使った広告
社会的証明の機能が信頼性に影響を及ぼしているか。 そのタスクに対するユーザーの自信度を測定するフォローアップアンケート(例:「1から7で言うと、この選択に対してどのくらい自信がありますか」)付きのユーザビリティテストをおこない、そこで伝えようとしているメッセージに対する感情的反応を引き出す。
社会的証明の機能にユーザーが気づくか。 ソーシャル機能で注意が行く場所や注視点を測定するユーザビリティテストやアイトラッキングテスト。注視点が集中しないようなら、デザインや配置が良くないことが考えられる。また、タスクベースのユーザビリティ調査もテストとして利用可。
社会的証明の機能にユーザーが圧倒されないか。 ユーザビリティテストをすれば、社会的証明関連の機能がインタフェースを過密にして、紛らわしくし、行動のきっかけとなる要素にユーザーが集中できなくなってないかを知ることが可能。
社会的証明の機能によってページが遅くなるか。 ページをロードする時間の評価をおこない、様々な接続条件での妥当性を判断。

結論

インタフェースでの社会的証明の利用は様々なWeb環境でありふれたものになってきている。より洗練したかたちの実装では、不特定のユーザーによる採用や選好を表示するだけでなく、知っている人(例:Facebookの友達)からも採用されていることが強調されている。社会的証明を利用するとうまくいくことから、サイトの中にはこのテクニックを使いすぎ、シンプルなインタラクションを複雑にしてしまっているところもある。だからこそ、ある特定のデザインを実装するときにはテストをして、社会的証明関連の機能ならすべてメリットがあると疑うことなく受け入れてしまわないことが重要である。

社会的証明等の説得テクニックについて、さらに詳しくは1日トレーニングコース「説得力のあるWebデザイン」を参照。

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調査レポート(英文)

公開:2014年12月2日(原文:2014年10月19日)
著者:Jennifer Cardello
原文:Social Proof in the User Experience

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