アメリカ・ロスアンゼルスの住宅事情
東京とロスアンゼルスの住宅事情を比べてみました。知っているようで案外知らない、ロスアンゼルスのリアルな住宅事情をお届けします。
春は日本では新生活の時期、でもアメリカでは春は卒業・新学期の時期ではありません。しかしながら春は一般的にアメリカの人にとって、クリーニングや家の中の整理・掃除のシーズンなんだそうです。日本だと年末ですよね。こんな感じで、住宅にまつわる常識を日本とアメリカで比べてみようと思います。
東京では「家やマンションを買う≒新築」という傾向が強く、
ロスアンゼルスでは「家やマンションを買う≒中古」
アメリカでの住宅の売買の平均価格は2017年2月時点で$296,200(1 USD=110円換算で、日本円で約2961万円)。私の住むアメリカ・ロスアンゼルスの住宅売買の平均掲載価格は$575,000(日本円で約6325万円)でした。新築物件の掲載は殆どなく、私の個人的な印象で言うと、新築1:中古9というところでしょうか。売買されている物件のほとんどは中古物件、それも築年数が30年以上経っている物件も多くみられます。実際に街を歩くと、新築工事をしているのは新しい住宅地のみで、ロスアンゼルスの街中で住宅の新築工事はあまり見られません。よって、売買市場において、中古が圧倒的という事は間違いがないと思います。
そもそも、不動産の賃貸、売買サイトで築年数のフィルターがありません。築年数は、プライオリティの上位には無いようです。日本とは違いますね(Median Sales Price for New Houses Sold in the United States – MSPNHSUS)。
日本の首都圏の2017年2月時点での新築戸建て住宅の平均成約価格は3,373万円、23区で5,079万円でした(市場動向 首都圏の新築戸建・中古マンション価格(2月) – アットホーム)。価格のみで比べるとロスアンゼルスの平均価格より東京の23区の方が実は少し安いようです。一般的にアメリカの方が東京よりも安く家が買えるのかと思ったら、都市部での比較をすると話は違うようです。
最近イギリスの経済紙「エコノミスト」で発表された「世界で最も生活費の高い都市」で東京と大阪が4位5位に入っていましたがロスアンゼルスは10位以下でした(Daily chart: Measuring the cost of living worldwide – The Economist)。何となく、今まで挙げた比較と逆の結果のような感じがしますが、この調査は単に住宅の価格比較ではないため、あまり参考にはならなさそうですが、「東京での生活費がロスアンゼルスよりも高い」という結果には実際に両方の都市に暮らしてみて、個人的にはちょっと疑問があるところです。
単に数字上の比較で、1平方メートルあたりの価格では、東京の方が高いかもしれませんが、実際の住宅の平均広さがロスアンゼルスの方が広いというのもランキングと実事情との不整合の原因かもしれません。1平方メートルあたりの価格が高くても住宅自体の面積が狭いので、ロスアンゼルスよりも住宅の価格が安い傾向に見えるのかもしれません。
サンタモニカの1ベッドルーム当たりの平均賃貸価格は月額$3,500
サンタモニカの1ベッドルーム当たりの平均賃貸価格は月額$3,500。対して、日本の23区の賃貸の相場を調べてみると、港区の1LDKで21.91万円、ドルに換算すると約$1,990です。こちらも、実際の数字で広さを比較するとサンタモニカの方が広いと思われますが、それにしても、このところのロスアンゼルスの不動産価格の高騰は目を見張るものがあります(US Home Prices and Heat Map/Rental Price – Trulia)。
大学を卒業した学士のロスアンゼルスでの平均収入は年間で$42,151~$116,954ですので、仮にキャリアを新しく始めたばかりだとしても、初任給は年間463万円、月額では38.6万円(税込み)です。この給料ではサンタモニカには住めなさそうですね(Average Salary by Degree/Major Subject for Location: Los Angeles, California – Pay Scale)。
日本の港区の家賃も、大学新卒の平均月給で賄うのは難しそうです。厚生労働省の平成26年の大学卒初任給の統計によると、大学卒は20万円/月でした(平成26年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況:1 学歴別にみた初任給 – 厚生労働省)。ちなみにこの統計の月給を年に換算すると初任給は年間240万円。ロスアンゼルスよりも、日本の賃金の方が低い事がわかります。
アメリカの賃貸に入居する際、デポジットという敷金と似たものはあるが、礼金は通常ない
日本で賃貸のアパートやマンションを借りる際は、敷金、礼金併せて、入居時に家賃の4か月分ぐらいを支払う事も少なくないと思います。礼金は退去時には戻ってこないですし、引っ越しは出費がかなりかさむイメージがあります。
一方、アメリカでは入居の際に、セキュリティデポジットという名目の敷金が必要な事があります。通常家賃の2か月分~半月分といったところが多いと思います。このデポジットは、退去時には基本戻ってくるもので、礼金はありません。
小さな事かもしれませんが、所変われば、習慣も違います。取るに足らない細かな違いで、日本とは違う、アメリカのシステムの違いだと考えるのではなく、不動産に対する観念、物件をどの程度大切に使う気持ちがあるのか、といった気持ちがこういった、費用設定に現れているのかもしれませんね。
ところで、英語でマンションというと、アメリカ人には豪邸という意味になってしまいます。マンション住まいの方は旅行の際に、アイ リブ マンションと言わずにアパートメントという方が合っているかもしれません。
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- 著者(森原悦子)について
- Interface in Design, Inc. COO/President。
武蔵野美術大学卒。インダストリアルデザイナーなどとして活躍後、旧イードに入社。定性調査やエスノグラフィーといった手法を得意とし、クライアントのグローバルな商品開発のコンサルティングリサーチを多く手がける。2011年8月より現職。