ジャカルタのバイクタクシーは何でも屋?
バイクタクシー配車サービスの進化
バイクタクシー配車サービスGO-JEKを利用してきました。これは、単なるタクシー配車だけではなく、フードデリバリー、マッサージ、イベント会場への送迎など、様々な体験を与えてくれます。実体験と共にご紹介します。
インドネシア発、バイクタクシー配車サービス
こんにちは。先日、筆者は出張でインドネシアのジャカルタに行ってきました。
ここジャカルタは地下鉄がないため、主な交通手段としてバイクが市民の足として利用されています。また、タンデムシートに人を乗せ、バイクもタクシーとして機能しています。
日本ではLINEタクシーを筆頭として配車アプリが話題になったのは記憶に新しいことと思います。
現地の協力会社のスタッフと話している際に、ここインドネシアではそれに取って代わる、GO-JEKという新たなサービス(アプリ)があると耳にしました。TELKOMSELという会社が提供するバイクタクシーの配車サービスで、単なる配車サービスにとどまらず、バイクタクシーを使って様々なサービスを提供してくれるのだそうです。早速試してみることにしました(ちなみに、インドネシア語でバイクタクシーのことを「ojek」と呼びます)。
筆者がこの前にインドネシアを訪れたのは2012年冬頃。当時はまったく気が付きませんでしたが、今回は明らかに街中で緑のヘルメットとジャケット姿のGO-JEKドライバーが目立ちます。
GO-JEKドライバーになるためには運転免許、IDカードを申請する必要があり、審査が通った者には正式に会社から専用ジャケット、ヘルメット、携帯デバイス、IDカードが支給されるとのこと。売り上げに応じて、会社からコミットメントをもらう仕組みなのだそう。
GO-RIDE:スタンダードなバイクタクシー配車サービス
まずはGO-JEKのキモと言うべきGO-RIDEを紹介します。
ピックアップして欲しい場所と行きたいところを指定し、配車を頼むとドライバーが迎えに来てくれます。
注文後、すぐにドライバーから確認の電話がかかってきました。インドネシア語をしゃべれない筆者は大慌て。しかし、その場にいたインドネシア人に電話を代わってくれと頼むと親切に指示を出してしてくれ、一安心。
待つこと5分。ドライバーが到着。
乗る前にマスクとシャワーキャップのようなものも渡されます。マスクは排気ガスがきついジャカルタ市内ではうれしい配慮です。シャワーキャップはヘルメットの汚れから頭を守ってくれます。ただし、合計6回ほど利用したうち、キチンとフルセットを渡してくれたのはたった1回だけでした。。
利用の感想
通常、東南アジアのバイクタクシーは到着後に金額を払うことが多いので、先に決めた金額から上乗せされて要求され、トラブルになることも多いです(ドライバーが道を間違えたとしても)。しかしこのアプリ経由で手配すると、1度も値段の変更をせがまれる事はありませんでした。ドライバーに評価を付けることが可能なので、ドライバーのモラル向上に一役買っているようです。これは東南アジア各国で何度もバイクタクシーを利用している筆者からすると信じられない変化です。
また、自分と相手の位置がリアルタイムで確認でき、確実に迎えに来てくれるので安心感があります。よくある、すっぽかしの心配もありません。
現地のインドネシア人Aさんのコメントによると、
“以前は私も路上で直接バイクタクシーを拾っていました。たとえ現地の人間でも値段交渉が難しいです。でもこのサービスでは事前に金額が決められているので最近はほとんどこちらから予約しています。”
このように、サービスを利用することでユーザーから「口頭による煩わしい交渉」を省き、「確実に目的地に連れて行ってもらいたい」というニーズが満たされるようになっています。
GO-FOOD:フードデリバリーサービス
自分のいる場所を指定し、レストランを選び、フードをメニューから注文するとドライバーが食べ物を届けてくれる仕組み。
雨のため、オーダーから約40分後にドライバーが到着。食べ物をうけとる時はきっちりレシートを渡してくれました。毎回注文のたびに特定のお店のWEBサイトに飛ばなくても、GO-JEKのアプリ内から手軽にオーダーできるのは楽チンに思います。
GO-MASSAGE:マッサージ師を届けてくれるサービス
約束の時間から30分遅れで40代と思われる女性が到着。なかなか本格的なマッサージをうけることができました。こちらも値段が先に決まっているので「値段を吹っかけられたらどうしよう」という心配はありません。
GO-TICKET:イベント会場に送迎してくれるサービス
サービスの中では最も新しく追加されたサービス。
コンサートやフリーイベントなどの様々なアクティビティーが紹介され、実際にそこへ連れて行ってくれるという仕組みです。実は近年、インドネシアでランニングブームが起きており、毎週木曜日にモールで集合して走ると言う、「Indorunners」というグループの集会に参加してきました。
興味があるイベントを目にし、行きたい!と思った次の瞬間にバイクが迎えに来るというのは自分にとってまったく新しい体験でした。一緒に走ったランナーとは打ち解けることができ、走った後はみんなで夕食を共にしました。ネットワーキングツールとしても使えそうです。
どのサービスも使用前にどんな体験ができるのだろう、というわくわく感があり、実際に思ったとおりのサービスが受けることができるので、筆者は大変気に入ってしまい、結局ジャカルタ滞在中は毎日利用していました。
現状のアプリ上の問題と、現地の評価
と、ここまでサービス自体はかなり満足できるクオリティでしたが、アプリ自体の問題についてはいくつか疑問が残りました。まず、登録時にアプリが落ちてしまうことが多く、投げ出したくなるほどのストレスを感じました(筆者自身、登録の最終画面でエラーが3回続けて起こり、利用をあきらめようかと思ったほど)。また、このアプリは現在英語版しか提供されていません。英語の読めないインドネシア人(メインユーザーである中間層はほとんど読めない)がどのように使っているのかも気になりました。
これらについて現地のインドネシア人Aさんに話を聞いてみたところ、意外な反応が返ってきました。
Aさん:“現在のところこのアプリ以上に優れているアプリがないので多少使いづらくても気にならないです。
ほとんどの人は英語が読めませんが、アイコン、色などを手掛かりに徐々に使い方を覚え、どうしてもわからないときは友人に聞けば何とかなっています。”
筆者:ところで皆さんはこのアプリはどのように知ったのですか?
Aさん:“ほとんどの人が友人から使っているところを見て自分も使うようになったと言っています。
どこかに一緒に出かけたときに友人が使っているところを見かけて自分も使ってみたり、FacebookやSNSなどで友人が投稿したのを見て、すぐに自分も使ってみるようです(筆者注:インドネシア人はコミュニティ内の結束が強い)。他にも、Amazon.comは通常届くのが最短で1日かかるらしいのですが、出店者に直接連絡してGO-JEKを組み合わせて当日に届けてもらうようにするユーザーもいるそうですよ。”
英語の障壁も使いにくさもほとんど気にならないようですね。
サービスの新規性、価値が使いにくさを上回っている様子。今後もバイクタクシーを主軸に様々なサービスを展開していくことが予想されるGO-JEK。まだまだ快進撃が続きそうです。
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- 著者(Naoya Nakahashi)について
- 株式会社イード リサーチ事業本部HCD事業部リサーチャー。
東京造形大学卒。デザインマネジメントを学ぶ。商品デザインのグローバルリサーチに従事した後、2015年4月、イードに入社。異文化におけるライフスタイル、デザイン比較に造詣がある。趣味は電子楽器演奏。