携帯機器が携帯機器でなくなる時

腕時計をはじめとして、PDAなどの携帯型情報機器、携帯型オーディオ機器、携帯型デジカメ、携帯型ボイスレコーダなど、携帯型の電子機器は多数身の回りに存在するようになった。これらの機器は携帯しているため、いつどこででも利用できるわけで、ユビキタスコンピューティングの分野でもその搭載機器として注目されている。

ただし、問題がある。それは携帯機器が携帯機器でなくなってしまう時である。どういう時かというとそれは当たり前のことだが電源が切れてしまった時だ。電子機器は電気で動く、だから電気がなくなってしまえば動かなくなる。携帯はしていても、携帯機器ではなくなってしまうのだ。

腕時計はその点でユーザビリティが高い。なぜなら電池が一年以上は持つし、ちょっと値段は高いが時計屋や電気店で交換してもらえば、また元通りに使える。しかも交換だから10分程度しかかからない。

その意味で、乾電池を利用している機器は比較的ユーザビリティが高いといえる。乾電池なら駅の売店でもコンビニでも購入できるし、交換すればすぐに利用できるから。この場合は交換には1分もかからない。だから乾電池を利用している携帯型情報機器や携帯型オーディオ機器、デジカメ、ボイスレコーダなどはその点では便利である。

しかし充電式の電池というのはユーザビリティが低くて困る。充電しなければならないし、それには数時間の時間がかかる。出先で電池が切れたら、そこでは充電できない。だから私は充電式電池を使っている機器はできるだけ購入しないようにしているが、必要があって購入してしまった場合には予備の電池を購入し、それをいつも携帯している。

デジカメの場合、これまではできるだけ乾電池を使用するものを購入してきたが、最近の小型のものになると乾電池を利用したものはほとんどない。小型である利便性を優先して、それらを利用するようにはなったが、私は予備の充電式電池を購入し、フル充電してからそれをいつも二つ携帯している。

デジカメもそうだが、一般に小型の機器になるほど専用の充電池を利用していることが多いようだ。小型にするために電池の実装スペースを切りつめ、乾電池よりも小型でパワーのある充電池を使うようにするためだろう。

携帯電話がその典型である。今や携帯電話なしでは生活に苦労するほどの時代になってしまったが、困っているのはその電池切れである。コンビニなどには一時しのぎのために乾電池を利用した簡易充電器があり、しばしばその厄介になっているが、あまり便利なものではない。しかもキャリアによってコネクタ形状が違っているので、焦って購入した時にはコネクタ形状の合わないものを買ってしまうこともある。何とか乾電池を利用した携帯電話というものは作れないだろうか。ぜひ研究していただきたいものだ。最近の携帯電話はカラー表示をしたりして、電気の消耗が激しくなっているが、カラー表示をすることと通話ができなくなることのバランスを考慮してもらいたいものだ。

もう一つの電池として太陽電池の利用がある。車に搭載するねずみ取り検知器は一種の携帯型機器といえるだろうが、太陽電池を利用したものが多い。車の場合、多くの時間、戸外にあるので、充電に関してはあまり問題がない。しかし、最近購入した太陽電池を利用した腕時計には困ってしまった。購入したのは秋だったので問題なく使えた。しかし、冬になり、コートを着るようになってから電池切れを起こすことが頻繁に発生した。要するに袖の長いコートを着ていると、戸外にでていても日光が当たらないのだ。また夏になり、袖が短くなれば使えるだろうと、そのまま腕につけているが、今でも表示には何もでていない。

もう一つ、充電式電池を使った携帯機器で困るのは、充電したまま置き忘れてしまうことがある点だ。これまた携帯機器が携帯機器でなくなってしまう時だ。これがオーディオ機器ならまだ我慢できる。しかし一番困るのは携帯電話だ。忘れるのが悪いといえばそうなのだが、忘れるのは人間の自然なサガである。充電器に置き忘れた時は、その日一日、世界から孤立してしまったような不便さを感じる。乾電池式の携帯電話が無理なら、違うやり方で置き忘れ防止策を考えて貰えないだろうか。たとえば、充電が完了したらピービー鳴り続けて充電器から外すことを促すとか、充電器においたまま一定以上の距離を離れると手元でピーピーと警告が鳴る、とか。

携帯機器は便利である。しかし、それが携帯機器でなくなってしまったときのこと、そのあたりをメーカーの皆さんには良く考えてもらいたい。電池が切れること、携帯機器を忘れてしまうこと、そういうことが起きるのが利用状況(context of use)なのだから。

公開: 2003年4月21日
著者: 黒須教授

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