差し込むインタフェース

何かを何かに差し込むという場面は日常生活の中で結構多い。ところが、その差し込み間違いというのが結構発生する。設計した人たちはおそらくその間違いが発生しうることに気づいているのだと思うのだが、十分な対応がとられているようには思えない。

乾電池を使うものについては、プラスとマイナスの極性が重要だ。向きをまちがえるとちゃんと動作しないし、時には機器の故障の原因にもなる。たとえばボタン電池。あれはどちらを上にするかがとてもわかりにくい。いちおう+という刻印が付けられていたりするけれど、さて機器の方はその+を下向きにいれるのか上向きにいれるのかがわかりにくい。おまけに+の刻印が小さくて薄く、眼鏡をかけ光線の加減に配慮しないと良く見えない。単三や単四の乾電池を使う機器。スプリングがついていれば、それがほとんどの場合マイナス側を意味しているので、多少はわかりやすい。しかしスプリングがないこともある。また二本の乾電池を使う機器の場合、たいていは反対向きにして二本を入れるのだが、時に二本を同じ向きにいれる機器があったりする。何を考えて世間一般のやり方と違った設計にしたのか、設計者のセンスを疑いたくなる。

カードの入れ方。名刺大の磁気カードやICカードが日常生活のさまざまな場面で使われるようになって久しい。私の財布の中には、クレジットカードや銀行カードはもちろんのこと、テレフォンカード、図書カード、電車やバスのカード、洗車カード、コピーカード、デパートのギフトカード、ふみカード、飛行機会社のマイレージカードなど多種多様なカードが入っている。

これらの磁気機能のついたカードやICカードの使い方には幾つかの種類がある。(a) カードを機械の中に通す形式(バスや電車、地下鉄のカードなど)、(b) カードを機械の中に入れ、それが戻ってくる形式(銀行カードなど)、(c) カードを機械の中に入れてしまう形式(ATCカードなど)、(d) カードを機械の中に入れ、後で取り出す形式(一部のクレジットカードなど)、(e) カードを接触させる形式(SUICAなど)。まだあるかもしれない。

この時に問題になることの一つがカードの向きである。カードは長方形をしている。ということは表裏と前後の組み合わせで四通りの入れ方があることになる。(e)のタイプをのぞき、それ以外のすべてのタイプでカードの向きが問題になる。それが原因で間違いが起きる。

たとえばバスカード。少なくとも東京のバスの場合、四つある可能な入れ方のうち一つしか許容してくれない。地下鉄のカード。矢印が印刷してあるのだが、実はどの方向にいれても受け付けてくれる。四通りの入れ方が可能なわけだ。ただしそのことはちゃんと情報が公開されていない。

私は基本的にはカードを挿入する機器の場合には方向依存性をなくすべきだと考えている。ただしバスカードのように小型のカード読みとり装置しか設置できない場合には方向を強調表示したカードにすべきだろう。あるいは違った方向では挿入できないように切りかきをいれるなどの工夫をすべきだろう。

先日は、ETCカードの向きを入れ間違えていて、料金所でバーが開かず、後続車に迷惑をかけてしまった。また、アメリカではスーパーにあるクレジットカードをスライドさせる装置で向きを間違え、店員に直されてしまった。ATMで使う銀行のカードでもたまに間違えることがある。ともかく、こうしたカードのインタフェースでは、挿入方向について特定の方向しか許容しないのであれば、そのことをカード面に強調表示するか、それ以外の方向ではカードが物理的に挿入できないような仕組みを考えるべきだ。

パソコンのハードディスクの場合。デスクトップ用のものには切りかきが入っていて反対方向にはケーブルを装着できないようになっている。これは正しい考え方だ。メモリーも電源ケーブルも同様だ。しかしノートパソコン用のハードディスクの場合、逆方向でもささってしまう。このおかげで先日60GBの内蔵ハードディスクを駄目にしてしまった。なんでこんなちょっとしたことにも配慮できずに設計してしまったのだ、と設計者を恨んだものだ。

この他にも、装着方向が重要な意味をもつインタフェースは多数ある。こうしたインタフェースの場合には、どの方向でも問題ないように設計するか、あるいは特定の方向にしか装着ができないような設計にするか、そのいずれかの方針をとるべきだろう。こうしたインタフェースを設計している技術者の皆さんには、まだまだユーザのことが分かっていないのだろう。人間というのは間違えるものだ、ということが分かっていないのだろう。ユーザビリティ活動の先は長い、と実感した。

公開: 2004年11月22日
著者: 黒須教授

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