3桁のワンストップサービス

生活していると、様々な問題に直面することがある。交通事故や犯罪だけでなく、子供がタバコを飲んでしまったといった緊急の場合もある。必ずしも緊急性がなくても、自殺を考えるほどに追い込まれてしまった人々が誰かに相談を求めている場合がある。何らかのトラブルに巻き込まれているが、それが警察に相談するほどのことなのか、あるいは誰に相談したらいいのか分からない場合がある。高速道路でタイヤがパンクした時にJAFに電話したくても番号を忘れてしまっていることもあるだろう。

そうした形での通報や連絡、呼び出し、相談など、さまざまな形で人々は生活の中で他人の助けを必要とする場合がある。もちろん明らかに身体の具合が悪ければ、そしてそれが平日の日中であれば、人は病院に行くだろう。しかし休日の、しかも夜中だったら、さて救急車を呼んでいいのか、病院の救急窓口に行くべきなのかどうか、迷ってしまうだろう。結果的に行かなくていい場合もあるだろうし、行くべきときもある。心理的に追い込まれてしまった人が未明時になってどうしようもなくなり、人に助けを求めたい気持ちになることもあるだろう。

こうした時、役に立つのが電話だ。窓口が開いていなくても、窓口に出向かなくても、その場からすぐに連絡ができる。そして適切なところに電話をすれば、適切なアドバイスなどが得られる。もちろん24時間で対応してくれていることが前提とはなるが・・。

しかし、どういう場合にどこに電話をすればいいか、それをどうやって緊急時に知ることができるのか。用意のいい人なら、あらかじめそうした自分用の電話帳を作っておくだろう。近くの病院の診療時間と電話番号をポストイットなどに書いて壁にはってある家庭を見かけたことは何回かある。では、外出先で手助けが必要になったらどうするか。誰に聞けば、どこに相談するといいかを教えてくれるのか、そもそもそれが分からない状況というものがある。

自治体の窓口などにあるワンストップサービスに重宝した体験を持つ人は多いだろう。どのような用事の場合にどの窓口に行くべきか、そしてその場所はどこか。それを教えてくれるだけでもワンストップサービスは有用だ。だから、同じようなサービスが電話でできるなら、それはとてもありがたいこと、社会のサービスのインフラとして大きな意義があると思う。

警察と消防の3桁の電話番号であれば小学生でも知っている。しかし、それ以外の場合にどうするかは大人でも知らないことが多い。こうした時のために、3桁の、たとえば111でつながるワンストップサービスがあればとても便利だろうと思う。そこにはどんな種類の連絡や相談を持ちかけてもいい。いつ何時でもいい。そこで問題の種別を判断してくれて、適切なところに電話を転送してくれる。そんなサービスが実現されれば、と考えている。ちなみに、現在の3桁番号は次のように使われている。

  • 100 100番通話
  • 104 番号案内
  • 106 コレクトコールオペレータ扱い
  • 108 自動コレクトコール
  • 110 警察への事件・事故の急報
  • 113 電話の故障
  • 114 お話し中調べ
  • 115 電報のお申し込み
  • 116 電話の新設・移転・各種ご相談
  • 117 時報
  • 118 海上の事件・事故の急報
  • 119 火事・救助・救急車
  • 171 災害用伝言ダイヤル
  • 177 天気予報

人間の記憶のスパンが7±2だといっても、短いに越したことはない。短ければたいていの人は覚えていられる。しかし、3桁番号といっても、それが種類別に沢山あると覚えるのが大変だ。その意味で、そうした分岐作業を助けてくれるワンストップサービスは重要だ。

たとえば東京に暮らす外国人にとって重要な番号というものには次のようなものがある。

  • 東京都外国人相談室
    • 英語: 月?金(Tel: 03-5320-7744)
    • 中国語: 月・木(Tel: 03-5320-7766)
    • 韓国・朝鮮語: 水(Tel: 03-5320-7700)
    • フランス語: 木(Tel: 03-5320-7755)
    • スペイン語: 木(Tel: 03-5320-7730)
  • 東京英語いのちの電話03-5774-0992
  • 警視庁外国人困りごと相談コーナー(電話相談)03-3503-8484 英語・中国語
  • 東京都保健医療情報センター「ひまわり」03-5285-8181
  • 東京都救急通訳サービス(電話による緊急通訳サービス)03-5285-8185
  • 日本学生支援機構「留学情報センター」03-5520-6131

この一覧を見ただけでも、場合分けが多く、しかもそれを覚えておくというのはとても大変なことだと分かる。そうした時、111番に電話をして、自分が外国人でこれこれのことで困っていると話せば、オペレータが適切な番号に転送してくれたらどんなに便利だろう。こうしたことが社会のユーザビリティといえるだろう。

このワンストップサービスに近い機能をもっているのが104の番号案内だ。しかし現在の104には二つの欠点がある。一つは番号を教えてくれるだけで、自分でその番号にかけ直さなければならないという点。何か書く道具が手元になければ記憶しなければならない。もう一つは名前検索を原則にしている点だ。これこれのこと、という内容検索まではサポートしてくれていない。その意味で、電話によるワンストップサービスは104による番号調べを機能強化してくれる形でもいいだろう。オペレータの仕事の負荷は増えてしまうが、社会のニーズは強いはずだ。さらに、その転送先の電話が月曜から日曜まで24時間サービスをすることも大切だ。

何らかの形で、そうした社会的インフラを整備することが社会のユーザビリティの向上に必要だと思う。そして、そのためのコストの負担は公共的な投資として生活者が負担する気持ちを持つようにすべきだろう。

公開:2007年5月22日
著者:黒須教授

分類キーワード