サービス業とサービス活動

サービスというテーマについて、既存の資料によってその切り口の幾つかを示す。明らかになったのは、ISO 9241-210のような「付け足し」的な扱いでは到底把握しきれない多様性がサービスにはあるということだ。

前回、Clarkの第一次から第三次までの産業分類について振り返ってみたが、今回はまず、総務省の編纂した日本標準産業分類で、サービス業の位置づけを考えてみたい。

日本で最初に分類規準が設定されたのは1920年の第1回国勢調査の時だったが、それは職業分類であり、当時は産業と職業の区別が明確ではなかった。その後、1930年の第3回国勢調査の時に産業分類が作られたが、統計調査をきちんと実施する目的で実効性のある日本標準産業分類が最初に制定されたのはは1949年だった。1949年といえば、Clarkの初版(1940)がでてから9年後であり、その影響は大きかっただろうと思われる。その後、10回以上の改訂が行われ、現在は、2007年の第12回改訂版が利用されている。

同様の産業分類は、日本標準産業分類(JSIC)の他に、国際標準産業分類(ISIC)や北米産業分類システム(NAICS)などがあり、日本標準産業分類においても、分類項目の改訂においては配慮がなされている。

2002年の改訂でサービス業について、大幅な改訂が行われ、2007年の改訂では更に改訂が加えられた。詳しくは総務省統計局の日本標準産業分類などを参照されたい。

さて、2002年の改訂までは、第一次産業として、農業、林業、漁業、第二次産業として、鉱業、製造業、建設業が位置づけられ、それ以外の産業、すなわち、電気・ガス・熱供給・水道業、運輸・通信業、卸売・小売業、飲食店、金融・保険業、不動産業、公務の他はサービス業とされていた。しかし、2002年の改訂で、そのサービス業が、情報通信業(製造業や運輸・通信業からの移行を含む)、医療、福祉、教育、学習支援業、複合サービス事業などの大分類として独立させられた。さらに2007年の改訂で、学術研究、専門・技術サービス業や、生活関連サービス業、娯楽業などが大分類として独立させられている。

このように、サービス業から独立した大分類カテゴリーが多いのだが、サービス業として残っているものは「他に分類されないもの」となっていて、そこだけがサービス業であるとは書かれていない。いいかえれば、広義のサービス業には、新たに大分類カテゴリーとされたものを含め、実に多様な業種が含まれていることになる。

さて、これまでは、産業分類にもとづくサービス業の内容について見てきたが、そこで実施されているサービス活動はどのように定義されるのだろう。

Zeithaml他 (1985)は、過去のサービスマーケティングの論文を集約して、サービスの特徴を、

  1. intangibility (無形性)
  2. inseparability of production and consumption (生産と消費の不可分性)
  3. heterogeneity (異種混合性ないし変動性)
  4. perishability (消滅性)

とまとめている。1の無形性は、サービスが製品と同じような意味で見たり感じたり味わったり触れたりすることができないことをいい、2の生産と消費の不可分性は、生産と消費が同時に行われることをいい、3の異種混合性ないし変動性は、生産者ごとに、また消費者ごとにサービスの質と本質が変動することをいい、最後に4の消滅性は、サービスが保存できないことをいう。およそ半年後の論文では、彼らは消滅性を外しているが、ともかく、こうした点がサービスという活動を特徴づけると言ってよいだろう。

またサービス品質の要因として、Parasuraman他 (1985)は、信頼性、反応性、コンピタンス、アクセス、丁重さ、コミュニケーション、信用性、安全性、理解、実体性をあげている。彼らはさらにサービスのプロセスモデルを提唱しており、このモデルはISO 9241-210のモデルを強引にサービスに当てはめた場合より、遙かにサービスの本質を示しているものといえる。

なお、サービス業の戦略的業態分類として、南方と酒井(2006)は、サービス産業全体を、サービス財販売産業と物財販売産業に分け、前者をさらに、目的的サービス機能体化型サービス、手段的サービス機能体化型サービス、手段的サービス機能非体化型サービスに分類し、それらを代行的サービスや施設提供サービス、マス情報提供サービス、移動保管サービス、状態分析サービス、使用権提供サービス、システム財創出サービスに区別している。いいかえれば、Rarasuraman他のプロセスモデルは、こうした分類ごとに少しずつ異なるものになってくると考えられる。

本稿では、サービスという巨大なテーマについて、その切り口の幾つかを既存の資料によって示してきたが、そこで明らかになったのは、ISO 9241-210のような「付け足し」的な扱いでは到底把握しきれない多様性があるということである。もちろん、goodsを扱う製造業にもいろいろあるわけで、ISO 9241-210のプロセスモデルはその典型的、と我々が考えるものについての集約的なモデルに過ぎない。モデルというのは緻密に記述してあればいいというものではないので、その意味では、ある程度の雑ぱく性は許容される。しかし、「虚業」のHCDを考えるには、本稿で示した程度の整理や分類は押さえておく必要があるだろう。

Original image by: 総務省統計局

公開:2013年3月25日
著者:黒須教授

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