ビジネスホテルに関する調査(1)
意外に多いプライベート利用
年々稼働率が上昇しているビジネスホテルは、一昔前の「ビジネスホテル」から変化を遂げつつあるようです。イードは自主調査を行い、ビジネス/プライベートでの利用実態や、各ホテルの認知・イメージ等を明らかにしました。
増加する国内宿泊者
観光庁が発表したデータによると、昨年度(平成27年)、国内宿泊施設の宿泊者延べ数は初めて5億人を突破したそうです。訪日外国人が大幅に増加していることに加え、昨年度は日本人旅行者も増えています(観光庁は「増税の反動」や「円安」「北陸新幹線開業」の影響を指摘しています)。
ホテルの稼働率も年々上がってきています。昨年度のホテル稼働率は60.5%で、平成23年度と比べるとわずか4年の間に10ポイント近く上がっていることが分かります。中でもシティホテル、ビジネスホテルの稼働率は7割を超える高い値となっています。「今まで普通にとれていたホテルの予約がとれなくなった」という経験をした方も多いのではないでしょうか。
自主調査概要
イードはこのうちの「ビジネスホテル」に着目し、ビジネスホテルに関する自主調査を実施しました。以降はこの調査のデータを用いながら、利用実態や満足度について見ていきたいと思います。
意外に多いビジネスホテルのプライベート利用
ビジネスホテルを利用したことがあるのは、回答者全体のうちの6割強でした。
直近で利用した際の用途を聞くと、男性50代を除く全ての年代で「ビジネス利用」より「プライベート利用」の方が多いという結果となりました。中堅ビジネスパーソンが多いと思われる男性30~40代でも「ビジネス利用」より「プライベート利用」の割合が多く、ビジネスホテルは今や“出張時に泊まるホテル”としてだけでなく、“旅行時に泊まるホテル”として存在感を増していることが分かります。
ビジネスパーソンは「Wi-Fi環境」も重視してホテルを選ぶ
ビジネスホテルを選ぶ際の重視点を聞いたところ、ビジネス利用/プライベート利用問わず「価格の安さ」「立地」が最も重視されていました。
上記に続く重視点が「朝食がついている」であり、半数が重視しています。“朝食つき”があたりまえとなりつつある現在、朝食がついていないと選択肢から外されてしまう可能性も大きいと言えます。続いて「予約のとりやすさ」が挙がっているのは、客室稼働率上昇によって客室確保が難しくなっていることも影響していると考えられます。
5位以降の重視点は、ビジネス目的とプライベート目的で異なります。プライベート目的では「部屋の広さ」や「インターネット上のクチコミ」が重視されますが、ビジネス目的の場合、これらよりも「Wi-Fi環境」が重視されます。部屋で仕事をする際、便利に使えるWi-Fi環境があることがホテル滞在の快適さに結びついていると考えられます。
知名度1位は「東横イン」、2位は「アパホテル」。3位は…
知名度が最も高かったビジネスホテルは「東横イン」。特に40代以上は8割が知っていて、突出した知名度を誇っています。続く「アパホテル」は、幅広い層に知られています。3位の「ホテルルートイン」は男性の認知率が高いという特徴が、4位の「サンルートホテル」は50代以上の認知率が高いという特徴がありました。
「ドーミーイン」の巧みなブランディング
知っているホテルのイメージについても聞いてみました。提示したイメージワードは以下の17項目です。
安心/清潔/おしゃれ/安い/朝食が充実/温泉が良い/部屋が広い/ベッドが良い/接客が良い/女性向け/男性向け/ビジネス向け/観光向け/店舗数が多い/新しい/会員特典が充実/海外の旅行者が多い
この結果についてコレスポンデンス分析を行ったところ、「ドーミーイン=温泉が良い」というイメージが突出して強いことが分かりました。ドーミーインはビジネスホテルの中でも特にブランディングに成功しているホテルであると言えそうです。
- コレスポンデンス分析
- コレスポンデンス分析とは、集計結果をマッピングし、数字だけでは一見分かりづらいカテゴリー間の関係性を視覚的に把握できるようにする手法です。
コレスポンデンス分析では、常に原点を基点にして考える必要があり、原点からの方向と距離に着目して分析を行います。マップ上、類似性の高い項目は原点から同じ方向にプロットされます。原点から見て同じ方向にあれば、一見距離があっても、同じような要素をもつ項目である言えます。逆に原点をはさんで対極にある項目同士は、正反対の要素を持つ項目であると言えます。原点からの距離は、どれだけその方向の要素を特徴的に有しているかを表します。特徴的な項目ほど、原点より遠くにプロットされます。
次にドーミーインを除いて再度集計を行い、ドーミーイン以外のホテルのイメージをマッピングしました。
このマップを見ると、「リッチモンドホテル」「ダイワロイネットホテルズ」をはじめ、“おしゃれ”なイメージのホテルが多く、昨今ビジネスホテルとシティホテルの境界が曖昧になっていると言われていることもうなずけます。
「東横イン」「サンルートホテル」は“ビジネス向け”というイメージを持たれています。“新しい”というベクトルからは反対の方向にマッピングされていることからも、「昔ながらのビジネスホテル」という印象を持たれていると推測されます。
着目すべきは、「安い」というイメージをもつホテルが少ないことです(「スーパーホテル」「アパホテル」は安いというイメージがあると言えますが)。ビジネスホテルが安さ以外の付加価値を訴求しだした影響と、宿泊者増加に伴う宿泊費上昇の影響が考えられます。
まとめ
今回、以下の点を見ていました。
- 国内宿泊者は増加しており、ビジネスホテルの稼働率も年々上昇している。
- ビジネスホテルをプライベートで利用する人は多い。
- ホテル選択時の重視点は「価格の安さ」「立地」がトップ2。続いて「朝食がついている」「予約のとりやすさ」。ビジネス利用時は「Wi-Fi環境」も重視される。
- ドーミーインは“温泉が良い”というブランドイメージを確立している。
- “おしゃれ”なイメージのビジネスホテルが多く、シティホテルとの境界が曖昧になってきている。
- “安い”イメージのビジネスホテルは少ない。その背景として、ビジネスホテルが安さ以外の付加価値を訴求し始めたこと、宿泊者増加によって宿泊費が上昇していること等が考えられる。
次回は「ビジネスホテルの満足度」について、様々な角度から分析していきたいと思います。
調査概要
- 調査手法
- インターネットアンケート
- 調査期間
- 2016年1月6日~1月12日
- 調査対象
- 20歳以上の男女
- 有効回答数
- 2,107サンプル
- 調査企画・実施
- 株式会社イード リサーチ事業本部
このほかにもイードのリサーチ事業本部では、さまざまな調査・分析を行っております。 お問い合わせ・お見積りは無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。
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