金融商品の選択における実態調査:
AIはどの程度活用されているか -生命保険編-

金融商品を選択する際、AIはどの程度利用されているかを調べるため、株式会社イードではアンケート調査を実施しました。前編では、「生命保険」についての調査結果を紹介します。

  • UXリサーチ事業部 宮内
  • 2025年12月18日

昨今の金融・投資に対する関心の高まりを受け、生活者が金融商品を選択する際にどのような情報を参考にしているのか、また、その中でAIはどの程度利用されているのかを把握するため、株式会社イードでは2025年9月に「金融商品の選択における実態調査」を実施しました。この調査では、特に生命保険株式投資に焦点を当て、情報検索時のAIの利用状況を分析しました。

この記事では前編として、「生命保険」に関する分析結果をお伝えします。

1. 生命保険の加入・乗り換え状況

過去1年以内に生命保険へ新規加入または乗り換え・追加した人は、全体の9.2%でした(新規加入約5%、乗り換え・追加約4%)。

年代別に見ると20代が最も高く、1年以内の新規加入が9.6%、乗り換え・追加が7.7%、計17.3%が該当しています。

年齢が上がるにつれてこの割合は下がりますが、60代でわずかに上昇しています。リタイアに伴うライフスタイルの変化や保険商品の特性などにより、保険を見直すケースがあるものと思われます。

生命保険加入状況のグラフ。全体・性別・年代(20代~60代)別で、1年以内の新規加入、1年以内の乗り換え・追加加入、加入・乗り換えから1年以上経過、加入していない、の割合。新規と乗り換え・追加加入の合計は、全体では9.2%、最も高いのは20代の17.3%。
図1 生命保険の加入状況(n=9683)。

2. 保険商品選択における情報源

過去1年以内に加入・乗り換えを行った人が参考にした情報源の上位3項目は、「営業担当者」「公式サイト」「家族・知人」という結果になりました。情報源の活用状況は年代により特徴が出ているので、詳細を見ていきます。

1年以内の新規加入・乗り換え・追加加入者の情報源の割合を示す13本の棒グラフ。最も多いのは営業担当17.2%、次いで公式サイト14.2%。AIは1.9%。
図2 1年以内新規加入・乗り換え・追加加入者の情報源(n=786、複数回答)。

営業担当者

高年齢ほど利用の割合が高く60代では3割を超えて、どの情報源よりも利用されています。年代が下がるほどその割合は低下しますが、最も低いのは20代ではなく30代となっている点が興味深いです。初めての保険選びは、知見のある営業担当者と相談して決めている様子が見て取れます。また、保険会社の営業担当者が勤務先に来て、そこで相談をすることもあるかもしれません。

公式サイト

30代以上は約15%が公式サイトを利用しているのに対し、20代は約10%と5ポイント程度低い結果となりました。

前述の通り、20代は初めての保険選びであり、保険に対する知識が少ないことから公式では調べずに(調べてもわからないので)、営業担当や、家族・知人、SNSの情報を参考に保険選びをしていると推測されます。

男女差

年代差と比べると、男女差は少ないですが、若干の性差が見られました。

女性は男性と比較し「ファイナンシャルプランナー」の利用割合が3.0ポイント高く、一方の男性は「新聞・雑誌・書籍の割合」が2.7ポイント高くなっています。男性の方が「自分で詳細を調べて自分で決めたい」「ファイナンシャルプランナーには相談しづらい」という心理があるのかもしれません。

1年以内新規加入・乗り換え・追加加入時の情報源を性別・年代別に示す表。営業担当者は全体17.2%で最多、60代31.6%、20代14.4%、30代9.0%。公式サイトは30代以上約15%、20代10.4%。女性はFP利用が男性より高く、男性は新聞・雑誌・書籍が高い。

図3 1年以内新規加入・乗り換え・追加加入者の情報源(性別/年代別)

3. 保険商品選択時のAI活用

注目していた金融商品選択におけるAIサービスの利用割合は、全体で約2%と極めて低い水準に留まりました。年代別では、20-30代が多く利用しています。

AI利用者を対象にAIで何を調べたのかを確認したところ、「自分に合った保障額や特約の目安」を調べる使い方が30.3%と最も多い結果でした。これは保険商品が、個人の状況に合わせた最適な選択が難しく、ネット上の一般的な情報では答えを出しづらいことが背景にあると考えられます。

その他の項目については、利用率に大きな差は見られませんでしたが、AIを「最終判断のサポート」にはほぼ利用していませんでした(3.0%)。現状では、AIは「判断に必要な情報を抽出し、整理する」のためのツールであり、あくまで「意思決定」は個人の判断で行っていることが確認されました。

保険商品選択時にAIで調べた内容の6本の棒グラフ。最も多い回答は「自分に合った保障額や特約の目安」30.3%。「最終判断のサポート」は最も少なく3.0%。
図4 保険商品選択時にAIで調べた内容(n=66、複数回答)

調査概要

調査手法
アンケートパネルへのwebアンケート
調査期間
2025年9月18日~22日
回答者
全国20代~60代男女
有効回答数
9,683s
調査名
生命保険と株式投資に関する調査
男性女性
20代5718511,422
30代9671,0201,987
40代9699811,950
50代1,1419802,121
60代1,1281,0752,203
4,7764,9079,683
表1 n数
男性女性
20代5.98.814.7
30代10.010.520.5
40代10.010.120.1
50代11.810.121.9
60代11.611.122.8
49.350.7100.0
表2 構成比

イードについて

株式会社イードでは、このように、サービスの利用状況を把握するための調査を行っております。今回ご紹介した調査はインターネットアンケートによって行いましたが、より詳細に理解するためにインタビュー調査や観察調査も実施いたします。利用状況の把握調査にご興味がある方はお気軽にお問い合わせください。