金融商品の選択における実態調査:
AIはどの程度活用されているか -株式投資編-

金融商品を選択する際、AIはどの程度利用されているかを調べるため、株式会社イードではアンケート調査を実施しました。後編では、「株式購入」についての調査結果を紹介します。

  • UXリサーチ事業部 宮内
  • 2025年12月22日

昨今の金融・投資に対する関心の高まりを受け、生活者が金融商品を選択する際にどのような情報を参考にしているのか、また、その中でAIはどの程度利用されているのかを把握するため、株式会社イードでは2025年9月に「金融商品の選択における実態調査」を実施しました。この調査では、特に生命保険株式投資に焦点を当て、情報検索時のAIの利用状況を分析しました。

この記事では後編として、「株式投資」に関する分析結果をお伝えします。

※性年代が人口構成比になるようにウエイトバック集計を実施(n数は回答者数の実数を表記)。

1. 株式投資状況

現在、株式投資(注)をしている人は、全体の約4割でした。

株式投資をしている割合は、男女差、年代差が大きく見られました。男女別では男性が約5割、女性は3割弱と、男女で2倍近い差があります。年代差は男女差ほどではないものの、年代が高くなるほど株式投資割合が高くなります。

本記事では、株式投資経験者のうち、「過去1年以内に個別株または投資信託等の購入をしている人」に絞り、分析を行います(全体における該当者の割合は図1参照)。

注:本調査では株式投資を「証券会社を通じて個別株や、株式を組み込んだ投資信託などの金融商品を売買すること」と定義。

株式投資状況の表。性別と20代~60代の年代別。選択肢は、①1年以内に購入②1年より前に購入③投資していないの3つ。①と②を足した投資経験ありは、全体では39.1%、男性50.1%、女性27.8%。性別問わず、年代が高いほど割合が増加する傾向。
図1 株式投資をしている人の割合

2. 株式投資時に参考にした情報源

過去1年以内の株式投資者が参考にした情報源は、全体では「証券会社のサイト」が最も多く、「ニュースサイト」「企業のホームページ」「投資情報サイト」と続きますが、年代により情報の使い方の特徴がはっきり分かれています。例えば、20代と60代の特徴は次の通りです。

  • 20代: 「証券会社サイト」「企業のホームページ」といった公式情報に加えて、「SNS」「動画サイト」も同程度に参考にしている。
  • 60代: 「証券会社サイト」の利用が約6割と高いことに加え、「ニュースサイト」「新聞・雑誌・書籍」も多く活用。一方で「SNS」「動画サイト」の利用は消極的。

このように、新聞や雑誌などの従来型の媒体と、SNSや動画サイトといった投稿型の媒体との使い分けが株式購入においても年代で明確に分かれました。日頃の情報収集手段の違いが見て取れます。

※図2から図9は複数回答 (%)。

株式投資者全体の情報源の割合(n=2496)。証券会社のサイト48.4%が最多で、次いでニュース・報道系メディア33.2%、企業のホームページ30.1%、投資情報・個人発信サイト29.5%、新聞・雑誌・書籍22.3%、動画サイト21.1%、SNS 19.4%など。AIは6.5%。
図2 株式投資者全体の情報源
男性株式投資者の情報源の割合(n=1680)。証券会社のサイト50.6%が最多で、次いでニュース・報道系メディア35.7%、企業のホームページ32.5%、投資情報・個人発信サイト31.2%。新聞・雑誌・書籍24.1%、動画サイト22.8%、SNS 19.9%など。AIは6.8%。
図3 男性株式投資者の情報源
女性株式投資者の情報源の割合(n=816)。証券会社のサイト43.8%が最多で、次いでニュース・報道系メディア28.0%、投資情報・個人発信サイト25.8%、企業のホームページ25.2%、家族・知人20.7%など。SNSは18.2%、動画サイトは17.5%。AIは5.9%。
図4 女性株式投資者の情報源
20代株式投資者の情報源(n=347)。SNS 34.7%が最多で、次いで証券会社のサイト34.5%、企業のホームページ30.0%、動画サイト28.0%、ニュース・報道系メディア21.8%、投資情報・個人発信サイト21.7%、AI 17.0%、家族・知人16.5%など。
図5 20代株式投資者の情報源
30代株式投資者の情報源(n=373)。証券会社のサイト37.3%が最多で、次いでSNS 29.2%、動画サイト28.5%、企業のホームページ25.9%、投資情報・個人発信サイト25.2%、ニュース・報道系メディア23.9%、新聞・雑誌・書籍15.2%など。AIは7.7%。
図6 30代株式投資者の情報源
40代株式投資者の情報源(n=562)。証券会社のサイト45.8%が最多で、次いでニュース・報道系メディア33.4%、企業のホームページ32.3%、投資情報・個人発信サイト29.3%、動画サイト23.1%、SNS 20.9%、新聞・雑誌・書籍18.4%など。AIは6.4%。
図7 40代株式投資者の情報源
50代株式投資者の情報源(n=651)。証券会社のサイト56.1%が最多で、次いでニュース・報道系メディア38.8%、投資情報・個人発信サイト35.9%、企業のホームページ31.6%、新聞・雑誌・書籍24.7%、動画サイト17.5%、SNS 16.3%など。AIは4.1%。
図8 50代株式投資者の情報源
60代株式投資者の情報源(n=563)。証券会社のサイト57.9%が最多で、次いでニュース・報道系メディア39.7%、新聞・雑誌・書籍33.3%、投資情報・個人発信サイト29.7%、企業のホームページ29.1%など。動画サイトは13.9%。SNSは5.5%、AIは2.1%。
図9 60代株式投資者の情報源

また、活用した情報源別に満足のいく銘柄選択ができたかを集計したところ、「満足」の割合はAIが最も高い情報源の1つとなっており、AIが十分役に立っていることが分かります。
※活用した情報源は複数選択式での回答であるため、満足度の集計は回答者の重複あり。

12種類の情報源の利用者ごとの銘柄選択の満足度(5段階)を示すグラフ。満足度が高い順に、AI、SNS、動画サイト、企業のホームページ、証券会社のサイト、新聞・雑誌・書籍、ニュース・報道系メディア、投資情報サイト・個人発信サイトなど。
図10 各情報源利用者の満足度(満足のいく銘柄選択ができたか)

3. 株式購入におけるAI活用状況

図2にあるように、注目していた株式購入におけるAIサービスの利用割合は全体の6.5%でした。生命保険の検討におけるAIの活用は1.9%であるため、両者を比較すると約3倍の差がありますが、これを牽引しているのは20代です。

AIの利用は年代が上がるほど低下しますが、20代と30代の間に大きな差があります(20代17.0%、30代7.7%)。30代以上ではAIは情報源の中では最も使われていないものであるのに対し、20代では「新聞・雑誌・書籍」よりも多く利用されていることが分かります。

AI利用者に対してAIで何を調べたかを確認したところ、「投資についての基本的な理解(指標の意味、税制、新NISAについてなど)」が55.7%と最も多い結果となりました。次に「自分に合った投資方法の提案 (リスクの取り方、一括か積み立てかなど)」が47.7%、「個別企業についての情報のまとめ (事業内容、財務状況、成長性など)」が45.8%と続きます。“投資歴の比較的浅い若い層が株式投資の基本を理解するためにAIを活用している”という様子が見て取れます。

なお、AIの活用方法として「最終判断のサポート」は13.8%と最も低く、生命保険検討時のAI活用と同様に、意思決定そのものはAIに任せず、最終判断は本人が行っていることが確認されました。

AIの活用方法のグラフ。8項目のうち最も多いのは「投資についての基本的な理解」55.7%、次いで「自分に合った投資方法の提案」47.7%、「個別企業についての情報のまとめ」45.8%。「最終判断のサポート」は13.8%と最も低い。
図11 AIの活用方法(n=163) ※複数回答(%)

4. まとめ

金融商品選定時のAI活用は、2025年9月時点では一部の人のみが行っているという結果でした。今後どの程度普及するのか、いずれキャズムを越えることがあるのかどうか、引き続き注目していきたいと思います。

調査概要

調査手法
アンケートパネルへのwebアンケート
調査期間
2025年9月18日~22日
回答者
全国20代~60代男女
有効回答数
9,683s
調査名
生命保険と株式投資に関する調査
男性女性
20代5718511,422
30代9671,0201,987
40代9699811,950
50代1,1419802,121
60代1,1281,0752,203
4,7764,9079,683
表1 n数
男性女性
20代5.98.814.7
30代10.010.520.5
40代10.010.120.1
50代11.810.121.9
60代11.611.122.8
49.350.7100.0
表2 構成比

イードについて

株式会社イードでは、このように、サービスの利用状況を把握するための調査を行っております。今回ご紹介した調査はインターネットアンケートによって行いましたが、より詳細に理解するためにインタビュー調査や観察調査も実施いたします。利用状況の把握調査にご興味がある方はお気軽にお問い合わせください。