選択肢の範囲の区切り方1つで、調査結果が変わる!?

新人リサーチャーが学んだ、アンケート調査のコツ(1)

選択肢を作る際、リサーチャーはオープンデータを利用し、より妥当な選択肢となるように調整をします。妥当な選択肢にするとどのようなメリットがあるのか、今回は特に、利用頻度などの“範囲を尋ねる選択肢”について解説していきましょう。

  • U-Site編集部
  • 2015年9月29日

はじめまして。リサーチ事業部の新人リサーチャーYです。早く一人前になれるよう、日々精進しております。

著者(新人リサーチャーY)について
2015年4月、株式会社イードに入社。リサーチ事業本部リサーチ事業部に配属される。大学時代は心理学を専攻。ネット調査をはじめ、会場調査やインタビュー調査など幅広い手法を身につけるため、日々勉強中。

このたび、私が仕事の中で学んだ、“知っておくべきリサーチの基礎知識”をみなさんにご紹介したいと思います。

第1回は、「選択肢の作り方」についてです。今まで知らなかったという方にお勧めです。また、知っている!という人でも、意外と落とし穴に陥っていってしまっているかも?ぜひ、復習としてもご一読ください。

公開情報で選択肢の選定!

さて、調査で必ず使用する選択肢ですが、みなさんどうやって作成しているか知っていますか。「思いついたものを選択肢にしている」…なんてそんなことはありませんよ。しっかりと選択肢を作成するにも“調査”をしているのです。

方法としては、おおやけに公開されているオープンデータ(国が行っている調査データなど)や手元にある資料を参考に、選択肢を作成しています。

 
 

M先輩からのワンポイントアドバイス!

予め選択肢を用意して回答者に選んでもらう方法を”プリコード法(選択肢法)”といいます。
回答者の負担が少なく、集計がしやすいというメリットがある一方、適切な選択肢を作るのが大変であったり、作成側の想定外の回答は出現しにくかったりというデメリットもあります。(⇔自由回答法)

扱いづらいデータを減らすには事前調査が必須!

事前調査はなぜ必要なのでしょうか。

実は、この事前調査をしないと本調査を行った際に、扱いづらいデータが生まれてしまう可能性があるからです。どういうことなのか、例題を元に解説します。下記の例をご覧ください。格安SIMの自主調査で用いた、キャリアメールの利用頻度についての設問と選択肢です。一見何の問題もないように感じますよね。

設問
あなたは、携帯電話でキャリアメールを利用していますか。
あなたが送信するメール数のおおよその平均をお教えください(1つだけ選択)。





 
 

S上司からのワンポイントアドバイス!

“2-3ヶ月に1通”など、限定的な書き方をしてしまうと、厳密に考えすぎてしまう人には答えにくいときがあります。そこで、実際の調査ではより回答者の方が答えやすいように”程度”という言葉を付け加えることが多いので、覚えておいてくださいね。
(例)2-3ヶ月に1通→2-3ヶ月に1通 程度

しかし、ここには大きな落とし穴があります。それは設問内容によって1つの選択肢に回答者が大きく偏ってしまう可能性があるということです。

実際に「携帯のキャリアメールの送信頻度」を聞いた調査結果から、以下の選択肢に当てはめると、下記のようになります。

<選択肢>

Rookie1_5

Rookie1_1

月1通以上が8割を超えてしまい、これでは月1通以上というのは、どのくらいの頻度で使用しているのか検討がつかず、再度調査しなければなりません。これでは困りますね。人によっては、「月1通以上」に偏ることを事前に予測して、“月2~3通”や“週1通”といったように細かく分けようと模索しているかもしれません。

しかし、予測できたとしても新たな問題が起こります。それは“偏りを無くすための基準“が、わからないことです。月2~3通なのか、それとも週に1通なのか、経験の中だけでは判断がつかないことも多いでしょう。どこを基準に作成すればいいのか分からず、とりあえず月2~3通を基準にしてしまう、なんてこともあるかもしれません。

ではここで、基準を月2~3通とした場合を考えてみましょう。まず、選択肢をさきほどのものから下記のように変更します。

<選択肢>

Rookie1_6

先ほど同様、実際の調査結果をこの選択肢に当てはめると、下記のようになります。

<選択肢>

Rookie1_7

Rookie1_2

前回よりは、偏りが減りましたね。ですが、週1通以上といっても、1日1通なのか、それとも週1通のなのか、まだ“基準”の検討がつきません。もっと細かく選択肢を分類する必要があったといえるでしょう。

実際に行った調査では以下のように分類しました。

<選択肢>

Rookie1_8

Rookie1_3

違いがお分かりいただけたでしょうか。かなり偏りが減り、より詳細な結果を得ることができましたね。

このように1つの調査でより詳しい結果を得るために、偏りが発生しないよう、選択肢を決める必要があります。漠然と決めてしまうと、最初の選択肢のように偏りが大きすぎて詳細が分からなくなってしまいますからね。

事前調査を元に本調査したとすれば、偏ったデータが生まれづらくなるため、当社では”事前調査”をとても大切にしています。そして偏りを減らせるように、選択肢を分けることにより、後の分析の幅も広がるという利点もあるので、ぜひ覚えておいてください。

参考データ: 自主調査「格安SIM台頭の今、スマホキャリアに求められるものは…」

 
 

M先輩からのワンポイントアドバイス!

詳しく聞けば聞くほど良い、ということではありませんが、適切に把握できると、例えば後から「ヘビーユーザー/ミドルユーザー/ライトユーザー」の3区分を作るといった操作もしやすくなります(どこで区切ればよいか判断しやすくなるため)。

最後に

選択肢は“回答者”が適切なものを選びやすいように選定していきます。一見、問題がないように見えても、リサーチャーは“回答者”が答えにくいのではないかと必ずチェックをしています。地道な作業ですが、これを行わないと、回答者の負担が増し、回答率が下がるといったことにもつながってしまいます。「しっかりと“回答者目線”に立った調査内容にする」、このことが調査を行ううえで大切なことなのです。

さて、第1回「選択肢の作り方」はいかがだったでしょうか。ためになった!という方が一人でもいらっしゃれば幸いです。基本中の基本ですが、だからこそとても大切なことです。しっかりと理解し、活用してみてくださいね。

得たい結果によって、質問の仕方や回答方法を考え、調査を行っていくのがリサーチャーの基本です。常に最善の結果が得られるよう、調査設計をしています。

もしこんな調査がしてみたい、こんな聞き方で合っているのかわからない、といったお悩みがありましたら、お気軽にリサーチ事業部までご相談ください。懇切丁寧に対応させていただきます。

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最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。次の回でもお会いできることを楽しみにしております。