1998年には実現しそうにないこと

1998年のウェブトレンドへの補足記事

1994~1995年にかけての爆発的成長の時代には、毎月のようになにか革命的なもに比べれば、ここのところ、ウェブの動きはかなり沈静化してきた。たとえ「インターネット時間」であっても、もはや1年程度では根本的な変化は起こらない。よって、いくら話題になっていても、来年中には実現しそうにないこともいくつかある。

帯域幅の問題の解決 - 無理

1998年中は、引き続きデザインの軽量化が、ウェブユーザビリティ面で最も重要な要求事項であり続けるだろうと予想する(実際には1999年、2000年になっても変わらないだろう)。

ウェブでは、今後もアナログモデムのユーザが主流となる。なぜなら、ほとんどの新規ユーザが持っているのがそれだからだ。個人の接続状況を改善しても、インターネット経由の転送速度(特に海を越えた接続)が遅いのでユーザの足を引っ張ることになる。快適なナビゲーションに求められる1秒以下の反応時間、ユーザの注意をそらさないための10秒以内の反応時間を実現するのはほとんど不可能だ。よって、帯域幅が、ウェブデザイン上の極端に厳しい制約になると言う状況は変わりようがない。

マイクロペイメント - 無理

1995年8月に、私はマイクロペイメントが「ごく近いうちに」実現するだろうと予想した。これは明らかに間違いだったことが証明されたので、ここで少し言い換えることにしたい: マイクロペイメントは2年以内に実現するだろう。すなわち、2000年初めということになる(1999年後期という可能性もある)。

私はマイクロペイメントの熱心な信奉者だ。ウェブを本当にユーザにとって価値のあるメディアにするには、自分の享受するサービスに対してユーザが支払うしかない。支払いを回収できるようになれば、付加価値サービスの面で、インターネットでできることはまだまだたくさんある。

残念ながら、マイクロペイメントにはインフラが必要で、それは非常に地味なものにならざるをえない(なにしろお金に関することだから)。何らかのサービスが受けられるのでない限り、個人ユーザがマイクロペイメントソフトウェアをインストールするメリットはない。同様に、お金を払えそうなユーザがいない限り、サービスはほとんど立ち上がらない。少額取引は技術的には可能(昔からいくつかのシステムが発案されている)なので、いつかは成功すると期待しているが、すぐにそうなるとは思っていない。

ブラウザがInternet Explorerだけになる - 無理

市場シェア動向曲線は、おそらく1998年6月ごろに交差する。そうしたら、Microsoftが勝ち誇ったようなプレスリリースを出すに違いない。この地球上でもっとも普及率の高いブラウザはIEだ、と。ウェブデザイナーに関する限り、これはたいした出来事ではない。ブラウザがIEだけになってしまうことはないし、ウェブデザイナーも、クロスプラットフォームのデザインという要求を無視するわけには行かないからである。1995年後半のように、単一のブラウザが他を圧し、市場を独占するという状況に戻ることはないだろう。

第一に、この先も当分の間はあいからわず古いブラウザを使い続ける人がいる。私のサイトにも、未だにMosaicやNetscape 0.9からのアクセスがある。ほとんどのユーザにとって、ウェブの閲覧は人生の第一優先事項ではない。とりあえず使えるブラウザがインストールされていれば、わざわざ新しいものをダウンロードはしないのである。

第二に、ウェブの利用はデスク上のボックスを超えて、様々な新型デバイスに拡大するだろう。特にモバイルでのインターネット接続は、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)のキラーアプリになるだろう。PilotやNewtonのようなデバイスが、標準でワイアレスモデムを組み込んだ形で工場から出荷されるようになれば(予想:1998年後期)、独立のソフトウェアベンダーが接続機能を当然のものと考えて、数多くのおもしろい、有用なモバイルネットワーク機能をデザインするようになるだろう。接続機能がオプションになっているうちは、期待薄だ。そのためのデザインは、誰もやらないだろう(Eメールベンダーを除く)。もちろん、接続機能の中には、自宅やオフィスで基地となるコンピュータへの接続も含んでいるべきだ。だが、時代遅れのファイアーウォールのコンセプトを打ち砕いて、企業ユーザに安全な接続を提供するには1年以上かかるかもしれない。

モバイルハンドヘルドコンピュータに加えて、テレビやその他の消費者向けデバイスもインターネットに向かうだろう。もちろん、WebTV 3.0はIE Lightという名前になっているかもしれない(今や、ありえない話ではない)。だが、どんなブランド戦略をとるにせよ、WebTVにはIEと根本的に違うところがあるはずだ。テレビはコンピュータとは根本的に違うからである。それぞれに理想的なユーザビリティを確保したまま、この2つのプラットフォームのユーザインターフェイスを統一することは不可能だ。

重要なことは、新しい形のウェブアクセスが増えると言うことである。よって、IE以外のブラウザも増える。中にはIEという名前のブラウザもあるだろうが、デザインは変えなくてはならないだろう。デバイスが小さく、制限の多いものであればあるほど、ユーザインターフェイスを最適化して、要求仕様とデバイスの利用状況にぴったり合ったものにする必要がある。

1998年9月追記: IDCの調査によれば、Internet Explorerの市場シェアは、本当に1998年6月にNetscapeを上回ったようである。まさに私の予想した月だ!にもかかわらず、Microsoftからは、自慢げなプレスリリースは出なかった。恐らく、現在の独禁法訴訟のことを考えて、強みを隠しておきたかったのだろう。

公開: 1998年1月1日
著者: Jakob Nielsen