Web広告を機能させるには

ウェブ・ユーザは、非常に目的指向が強い。彼らの目的を妨害するような広告は無視されるだろう。成功をおさめるためには、広告をこのメディアに協調させるだけでなく、ユーザの目標や心構えにも合致させなくてはならない。

※Jakob NielsenとDon Normanとの共著。

ウェブで広告がうまくいかない理由はたくさんある。だが、一番驚かされるのは、実際にユーザに関係のあることを伝える広告でさえ、やはり失敗してしまう時だ。どうしてこんなことが起こるのだろう?そう。まず、始めに考えなくてはいけないのは、なぜテキスト広告が検索エンジンであれほどうまくいっているのかということだ。

どんなユーザにも目的がある--デジタルカメラのことを調べたいのかもしれないし、あるいは本を購入しようとしているのかもしれない。いずれにしろ、ユーザの注意は、目的の達成に関係あるものに集中する。それ以外はすべて無視してしまうのだ。ユーザが入力した検索キーワードに応じて検索エンジンが表示するターゲット広告は、ユーザの探しものに直接関連している。そのため、これが目にとまり、広告の誘導に従うようになるのだ。実際、このような広告は、無味乾燥な検索結果より優れているかもしれない。広告主が適任で、消費者への奉仕に直接的な興味を持っていることもわかるからだ。

ユーザの目的をターゲットに

よって、成功へのカギは、広告をユーザの目的に合致させる点にある。この点で、テキスト・オンリーの広告は優れている。単刀直入に要点に切り込むからだ。派手なグラフィックは見る者を引きつけるためにある。だが、ターゲットをしぼった広告では、見る者の注目はすでに保証されている。ならば、余計な装飾はやめにして、さっさと売り込みをかければよい。くわしい情報の掲載された特定ページへのリンクも用意しておくこと。最終ページ(製品もしくは決済情報を含む)は、取引を完結させることに力点を置こう。広告自体にたくさんの情報を詰め込んで、同じことを達成しようとするのは現実的ではない。あらゆるユーザ・インターフェイスを小さな広告の中に無理に詰め込もうとするのは、ハイパーテキストの利点をまったく理解できていないデザインだ。

検索ページでうまくいった広告をポップアップにしたり、ニュース・サイトやその他のサイトに転載したいと思うかもしれない。だが、そんなことをしても、目的の一部ではないから無視されるだけだ。ユーザは今、ニュースを読みたいのであり、あるいは、それがなんであれ、そもそもこのサイトに引きつけられたことをやりたいのであって、広告は、それがいかに魅力的で、ユーザのそれ以外の関心事に関係したものであろうと、無視されてしまうだろう。

しかし、ユーザがメインのタスクを達成したら、広告にも入り込む余地が生まれる。そこで、何が起こるか?広告は消えているのだ。

持続性のすばらしさ

サイトでの作業中に、おもしろくて、関係のありそうな広告に気づくことは珍しくない。これはたいてい、あるアイテムを深追いしようとリンクをクリックして、新しいページが読み込まれるのを待っている時に起こる。そこで、あとで戻ってきて、この広告をたどってみようと、頭の片隅に記憶しておくことになる。ところがどっこい。そうは問屋が卸さない。戻ってくると、違う広告が表示されるのだ。もっとも古くからあるインタラクション・デザインの原則、安定性が破られている。

1984 年の大昔から、Macintosh ヒューマン・インターフェイス・ガイドラインには、こんなことが書かれている。コンピュータが、ユーザの目から勝手になにかを取り去ることのないように配慮すること。(Windows でフォルダを開くと、前回指定したのと違うビューに変わっていてイライラすることがあるが、これも同じ理由による)。

新聞を読んでいる時のことを思い起こしていただきたい。記事を読みながらページをめくる。すると、たまたま興味のある広告に目がとまる。たいていは、そのまま記事を読み続けるだろう。だが、頭の片隅に、あとでその広告を見ようと記憶しておく。で、どうなるか?その広告は、そのままの場所にあるのだ。

ウェブサイトでも同じプロセスが許されるようにしておくべきだ。タスクの途中で割り込もうとしてはならない。うまくいきっこない。だが、ひとたびタスクを達成したら、広告をたどったり、再訪したりできるようにしておくことだ。

どうして、ローテーションして画面から消えてしまった広告を、もう一度見られるようにしておかないのだろう?ローテーション機能を用いて動的に広告を生成しているすべてのサイトが、広告掲載位置に「最近表示された広告 10 件を見る」というボタンを用意すれば、広告の成功率は上昇するだろう。(このガイドラインは、ホームページでも有効な、あるガイドラインに似ている:最近の特集記事、告知記事のアーカイブへリンクすること)

広告成功のために

ユーザの関心が得られ、時間の余裕のあるときに訴求すること。とうてい乗ってきそうもないときに、彼らをわずらわせてはいけない。残念ながら、現在のウェブ広告のアプローチは、そのほとんどが無理なことをやろうとして、ますます大型化し、さらに目障りなものになっていて、あいかわらず、ユーザの行動を妨げている。間違った方向に突っ走るのは、あまり頭のいい戦略とはいえない。

広告を機能させたいのなら、ウェブ・デザインとは、すなわちインタラクション・デザインであるという事実を受け入れること。ハイパーテキストを理解すること。そしてもっとも重要なのは、見る者の心理を理解することだ。

2003年5月5日