モバイルEメールニュースレター
モバイルの利用によって、ニュースレターにいつでもどこからでもアクセスできるようになり、Eメールマーケティングのメリットが強化された。しかし、テンプレートのデザインにはユーザビリティ上の制約も新たに出てきている。
人々はますますモバイル機器でEメールやEメールニュースレターを読むようになってきている。携帯電話やタブレットの一般的なユーザビリティについての調査によると、携帯電話の小さな画面はユーザビリティ上の大きな課題になっている。そこで、新しい調査ではそうした画面でのEメールニュースレターのユーザビリティに焦点を当てた。
ダイアリー調査: 1週間のモバイルニュースレター
前回のニュースレターユーザビリティ調査には自分の携帯電話でニュースレターを読むという一連のラボテストが既に含まれていた。しかしながら、最新の調査ではラボという枠を超えて、ユーザーが自分自身の携帯電話でどのようにニュースレターを読むのかを評価したいと考えた。
それを可能にするため、平日5日間にわたるダイアリー調査を行い、ユーザーが携帯電話でEメールニュースレターを読むたび、記録してもらうように依頼した。また、調査参加者には各ニュースレターのスクリーンショットを撮って、それを我々にメールしてもらい、そのニュースレターが世界各国の実際の携帯電話上でどのように見えるかを確認できるようにもした。そして最後に、ユーザーには各ニュースレターについてのオンライン調査に答えてもらった。
参加者のEメールの一般的な利用方法についてのインタビューも実施した。例えば、どこで、いつ、どういう頻度で携帯電話でEメールをチェックするか、あるいは、携帯電話でニュースレターを読むことが特に多いような状況があるかどうか、について尋ねた。
テストユーザーはオーストラリアとイギリス、アメリカでリクルートした。こうした国々のユーザーには実質的な差が見られなかったので、以下の分析ではそれらの国はひとまとめにしている。
参加者のうちの57%が女性で、43%が男性だった。ユーザーの年齢層は20代から50代である。モバイルの調査では年齢層を広く取るのが常に重要だ。若い層は今までになかった行動を取ることもあるし、中高年のユーザーが含まれていることも我々には特に重要だった。というのも、この調査でB2Bニュースレターの読者をしっかり代表する層が欲しかったからである。職業の幅も広く、宣伝担当の役員や、電気技師、薬剤師、テレビプロデューサーなどが含まれていた。
全部で14人のユーザーがダイアリー調査の全期間を終了し、その間、彼らが開いたEメールニュースレターは191件だった。
真の「モバイルニュースレター」ではない
調査での大きな発見は何か。それは「モバイルニュースレター」について話していると語るのは誤りだということだ。人々が携帯電話で読んだという191件のニュースレターのそれぞれに対し、そのニュースレターをデスクトップコンピューターやラップトップコンピューターで開いたり読んだりしようとしたことがあるかと尋ねたところ、93%にあたる件数で「はい」と参加者は答えた。そんなわけで、携帯電話上だけで読まれたと思われるニュースレターは7%にすぎなかったのである。
つまり、ほとんどの事例で、ユーザーは同じニュースレターの別の号をコンピューター上でも読んでいただろうと思われる。(そこには、常にそうとは限らないが、たいていの場合、別のユーザビリティ上の課題が伴う)。したがって、主たる使用法はプラットフォームをまたがる購読ということになる。人々はニュースレターをコンピューター上で読むこともあれば、モバイル上で読むこともあるのである。
実際、人々はニュースレターの1つの号を両方の機器で読むこともしている。3分の1の確率で、ユーザーはより大きな画面でコンテンツを読み直したり、作業を完了したりするため、コンピューター上でもニュースレターを読んだとのことだった。言い換えると、同じニュースレターをモバイルで読むことによって、その行動が実際に引き起こされた事例において、デスクトップユーザーからの売上等のコンバージョンを記録してしまう可能性もあるということだ。これこそが、分析論のレポートを表面的に読むのではなく、深く掘り下げて調べるもう1つの理由である。
このように2種類のプラットフォームで読むということを前提とすると、購読者にEメールニュースレターのデスクトップバージョンとモバイルバージョンのどちらかを選択させるというのはお勧めではない。基本的には、ニュースレターの各号をユーザーがどこで読むことになるかはあなた方にはわからないし、彼ら自身にもその予測は不可能だろうからである。
したがって、2種類のニュースレターを発行する代わりに、レスポンシブデザイン等の技術を利用し、1種類のニュースレターを様々なプラットフォームに適応させるのがよいだろう。この点はウェブサイトとは対照的である。ウェブサイトはインタラクティブなので、ニーズに合わせて、ユーザーがモバイルサイトとフルサイトを切り替えられるようにしておけばよいからだ。Eメールではメッセージが送られてしまうと、すべてがあなた方のコントロールを離れてしまうのである。
最新の調査では、Pinterestのニュースレターがレスポンシブデザインの良い例を示していた。例えば、デスクトップコンピューター上で開くと、それは3カラムで表示されるが、携帯電話で開くと1カラムで表示されていた。
ニュースレターにレスポンシブデザインを実装すると、ユーザーがその時点で使用しているプラットフォームによって、リンク先を変える必要も出てくる。ユーザーが携帯電話でEメールを読んでいるなら、リンクはモバイルに適したページを示すべきである。モバイルに最適化されている(であろう)ニュースレターという読書エクスペリエンスから来て、フルサイトに放り込まれると、致命的だからである。逆に、ユーザーがコンピューターでメッセージを読んでいるのなら、リンクはフルサイトを対象とすべきである。そうすればユーザーはデスクトップに最適化したページを見ることになる。
自分たちのEメールテンプレートにレスポンシブデザインが利用できないなら、カラムが1つだけのレイアウトのままでいることを検討してみよう。それはデスクトップコンピューター上では少し旧式に見えるかもしれないが、携帯電話上でよく機能するだろう。
モバイルで読むことが、ニュースレターの影響力を変える
ニュースレターの最初のユーザビリティ調査以後10年間、受信箱があふれているにもかかわらず、なぜニュースレターを購読するのか、ユーザーは同じ理由を挙げ続けている:
- 情報価値がある…あるユーザーが言ったように、「他では調べようがないだろう情報を提供し続けてくれます。それがなければ忘れてしまうことを思い出させてくれます。それがなければ見逃してしまうだろう新しい事柄を教えてくれます」。
- 努力不要…ニュースレターは一旦登録しさえすればそれ以上何もしなくても届く。
- 忘れてしまうことができる…ニュースレターのその号に興味がなければ単にそれを開かなければ、すぐにスクロールされてEメールソフトの最初のページから消えていく。あるいは、後で読みたいものがあるなら、読む余裕ができるまで受信箱にただ寝かせておけばよい。
- タイムリーである…Eメールは高速のメディアである。
- リマインダーとして機能する…ニュースレターはユーザーをウェブサイトに戻ってこさせる主要な方法だ。ニュースレターによって彼らはするべきことを思い出すからである。
- 生産性を向上させる…ビジネス関係のニュースレターは仕事の質を上げるのに役立つ。
- ソーシャルである…Eメールは非常にシェアしやすいし、ニュースレターは社交の場やビジネスの場に適した雑談に役立つちょっとしたネタを提供してくれる。
Eメールニュースレターをモバイルで読むことによって、ニュースレターをいつでも利用可能、という素晴らしいメリットがさらに追加され、こうしたメリットのすべてが強化される。その上、携帯電話上ではインタラクションの方法はずっと容易だ。同じ情報を得るのに、ニュースレターをスクロールするほうがウェブサイトをページ移動するよりも労力がかからないからである。
そのため、Eメールニュースレターは、モバイルの利用によって、顧客とのかかわりを保つための方法として、過去そうであった以上に、今日ではさらに重要になっている。携帯電話を利用して、暇つぶしをする機会がある人には特にこれは当てはまる。あるユーザーは言った。「以前よりもたくさん宣伝関係の記事を携帯電話で見るようになりました。家では座って、そうしたものを見るために時間を使わないからです。でも、移動中で暇があれば、そういう記事を見ます。職場か家にいたなら、頼んでもないのに送りつけられたものとして、単に削除するでしょうけど」。
それと同時に、モバイル機器によって、競合する情報の新しいソース、つまり、非常に的を絞った専門アプリが導入されたとも言える。例えば、今回の調査に来ていた医師は、医療関係の最新情報を得るには、携帯電話上でMedscape(訳注: 医療関係者向けの専門情報サイト)のアプリを利用するほうが、同じような内容のニュースレターを読むよりも良いと言っていた。
インターネット上での居場所を守る
Eメールニュースレターを発行する最大の理由はこれかもしれない。それが、検索エンジンやソーシャルメディアのサイト、アプリケーションストアなどの門番によって課された料金や手数料、制限的な規則抜きで、顧客にアピールするために残された数少ない手段の1つだから。
ニュースレターはユーザー個々人の受信トレイにそのまま、つまり、彼らのポケットにそのまま入る。第三者による媒介をすべて迂回し、自分たちの好きなときに自分たちのウェブサイトのことを自分自身の顧客に思い出させることができるのだ。良質なユーザーエクスペリエンスと興味深いコンテンツに対するユーザーの絶対的権利を尊重することだけは忘れないようにしよう。そうすれば彼らが購読をやめることはないだろう。