Webデザインのイデオロギー:
主導型、不可解型、不愉快型

ユーザをサポートするようなシンプルで控えめなデザインは成功する。なぜなら、それはWebの特性に従っていて、ユーザが気持ちよくWebを使えるようにするからだ。

ウェブサイトの外見の裏には、基礎となるインタラクティブ・サービスにおけるユーザ行動の理解がある。「買う」ボタンを赤にすべきか、オレンジにすべきか、ナビゲーションメニューをページ上部に横向きに設けるべきか、それとも左側に縦に配置すべきか、といった問題はよく討論されることだ。しかしほとんどの場合、ユーザビリティの上では数パーセントの違いにしかならない。逆に、デザインのイデオロギーによっては、サイトを成功に導くことも、失敗に終わらせることも可能だ。

私が見る限り、デザインには 3 通りの対照的なアプローチがある。それらに私は、主導型、不可解型、不愉快型と名前をつけた。

主導型: ユーザ主導

Vannevar Bush( 1945 年)、Ted Nelson( 1960 年)、Tim Berners-Lee( 1991 年)らによって提唱された、ワールド・ワイド・ウェブとハイパーテキストのオリジナルのイデオロギーでは、ユーザをコンテンツの主導者にし、ユーザが望むあらゆる方法でアクセスでき、あらゆる形で表現できるとしている。ユーザに主導権を与えるには、完璧なユーザビリティと明快さが必要になる。ユーザが全てのデザイン要素が意味することを理解していなければ、その主導権を握っていると感じることができないからだ。

検索エンジンは、主導型の典型的な例だ。ユーザに主導権を持たせ、ユーザが行きたいところに連れて行く。どんな言葉でも受け付けて、順位付けされたシンプルなリストを吐き出す便利なインターフェイスを使って、ユーザはウェブ上のどこにでも行くことができるのだ。

1994 年に WebCrawler が登場して以来、現在ではユーザのウェブ上での主な活動の1つは検索であることが明らかになっている。主導権を握っていると感じることは、気持ちがよいのだ。

ユーザに主導しているという感覚を持たせるための主な戦略のひとつは、デザイン標準と慣例に従うことだ。今何を見ているのか、そして目的を達成するためには何をしなければならないのかを理解することが、主導感を持つ上で必要なことだ。

主導型イデオロギーでのデザイナの仕事は、ユーザが行わなければいけないタスクに集中できるよう、必要となる機能を邪魔にならない明快なインターフェイスで提供することだ。大手のeコマース・サイトは、概してこれを理解している。ユーザが、インターフェイスの表面的なデザインの意味を理解しようとするよりも、商品に集中できたほうが物は売れるのだ。

不可解型: 混乱させる選択肢

多くのウェブデザイナたちは、ユーザに目新しいインタラクション要素を使ってサイト内を探し回らせるような「エキサイティング」なデザインを好む。彼らは全てのサイトが Yahoo と同じような外観になる傾向を悲観しているのだ。「キラーサイト」が不可解型の走りであった。boo.com は派手なサイトの典型だった。使いやすさよりも、押しの強さに重点を置いていた。

単純なユーザインターフェイスは退屈ではない。コンテンツに集中することができ、そのサイトを運営している企業とつながりを作ることができるため、ユーザを興奮させるものなのだ。

ウェブデザイナは、自分の作ったデザインを長時間見続けている。反対にユーザはサイトを 4 分間訪問して去ってしまうのだ。何が退屈で何が刺激的かという意味においては、全く異なる体験だ。自分やデザインチームの特殊な体験に照準を合わせてはいけない。

Flash デザインのユーザビリティのテストでは、不可解型イデオロギーの詭弁が明らかになった。デザインが標準的でないスクロールバーを採用しているほとんどの場合、ユーザは失敗した。テストユーザは概して、装飾の度合いが高かったり、一般的ではないスクロールバーが実際に機能するとは気付かずに、数え切れないほどの選択肢を見過ごしていたのだ。

ユーザは、スクロールバーを鑑賞したいのではない。裏を返せば、そのようなスクロールバーは見たくも無いのだ。彼らはコンテンツにアクセスしたいだけで、インターフェイスには邪魔されたくないのだ。

ユーザ主導を支持するデザイナであっても、多少の神秘性をデザインに取り入れようという誘惑に負けることがある。装飾的な特徴がユーザを魅了するのではないかと惑わされるのは簡単だ。例えば、イギリス政府が行ったユーザ調査によれば、ほとんどのユーザは、bbc.co.uk にある “lifestyle”(ライフスタイル、生き方)というカテゴリ名を嫌った。ユーザの 1 人は、「ライフスタイルだって?それって何?私はガーデニングが好きだけれど、それは私のライフスタイルではない。」と言っている。別のユーザは「ライフスタイルのセクションなんて絶対に見なかったと思う。私にとっては意味不明だもの。」と言っている。(ナビゲーションのカテゴリ名には装飾的な言葉を使わないというのは、昔からユーザビリティのガイドラインにある。明確で、一般的な言葉を使おう。)

ユーザは、恩着せがましかったり、何をするのか強制するようなサイトを嫌う。彼らは、訪問の目的をサポートをしてくれるサイトを好むのだ。

J.K. Rowling のウェブサイト(ハリー・ポッターの著者)は、不可解性を避けるべきであるというルールの例外かもしれない。このサイトは、どちらかというとアドベンチャーゲームに近い。しかしその目的が、Rowling の次回作についての噂をファンに与えるためだということを考えれば正しいやり方だ。このサイトは間違いそうな要素をたくさん含んでいる。例えば、どうしてペーパークリップが FAQ へのリンクだと想像がつくだろう。このサイトはハイパーテキストのリンクについてのガイドラインのほとんどを破っている。クリック可能だと認識することは不可能で、かすかに読み取れるメタファによってのみ、それが何を表しているのかがわかる。

Excerpt of graphical homepage that depicts a cluttered desktop with items like paper clips and a calendar
jkrowling.comのホームページの右上部分

子供についてのユーザ調査によって、リンクやボタンがクリックできるように見えないと問題が生じることがわかっている。同時に、仮想環境を主なナビゲーションインターフェイスに使うと、(ゲーム以外で)大人がほとんどの場合嫌うのに対して、子供の場合は上手くいくこともわかっている。また、リンクを探し出したり、ページの興味深い部分にマウスを当てて何が起こるかを探ったりすることについては、子供は許容範囲が大きい。したがって、Rowling の場合は不可解型のアプローチが成功していると言える。ただし、ティーンエージャーの魔法使いについて書いたサイトではない限り、真似をすべきではない。

不愉快型: ユーザに対する抑圧

そして今なお生き続けている、3 つ目のウェブデザインのイデオロギーは抑圧だ。この考え方は、ウェブがテレビになることを望む、特定のアナリストたちが主な支持者たちで、ユーザには本当の意味での選択肢を与えないようにするというものだ。スプラッシュページ、ポップアップ、戻るボタンの機能停止などが、不愉快型イデオロギーの典型的な例だ。

不愉快型デザインの最近の狡猾な例として、IntelliTxt などの技術を使って記事本文中の言葉に広告リンクを埋め込むというアイデアがある。そのような広告方法は、ナビゲーションというコンセプトを汚すことによって、ホストサイトでのユーザ体験を傷つけるだけでなく、全ウェブサイトの価値を毒するものだ。このようなリンクは、ユーザがサイトの中を動き回らなくなり、信頼を置ける検索エンジンを使って次のページを探すようになる理由をさらに与えることになる。

ウェブ広告の多くがそうであるように、埋め込み広告リンクは、ユーザがやりたいことを最大限邪魔するという土足マーケティングに依存している。このような広告の多くは、失敗に終わっている。ウェブ広告での成功例のほとんどは、ユーザの邪魔をするよりも、力になってくれるものだ。例を挙げれば、検索エンジンの広告、分類広告のあるサイト、そしてリクエスト・マーケティングだ。

時にはユーザの選択肢を抑圧することが正しいこともあるが、それはユーザを補助するためであって、制限をかける形で行ってはいけない。たとえば、eコマース・サイトでのチェックアウト手続きの最中に、サイトのほかの部分へのリンクを全て表示することによって、ユーザの気をそらしてはいけない。チェックアウトを進めるためのボタンをハイライトし、ユーザが必要とするかもしれない機能(例えば、買い物を続ける、プライバシー・ポリシーなど)へのリンクだけを提供しよう。

このようなチェックアウト・デザインはリンクの数を劇的に減らすが、ユーザを制限することにはならない。なぜなら、チェックアウト中にユーザが行いたいのは、購入手続きを完了するか、購入をやめる又は遅らせるかの、いずれかしかないからだ。

ほとんどの不愉快型デザインは不快だ。人は操られているときは、それを認識し憤りを感じる。自由に動き回れるはずのウェブ上では、それをさらに強く感じるのだ。

主導型が最後には勝つ

主導型イデオロギーが、ウェブの根本的な特性にはもっとも適切だ。ユーザは望むところに行くことができる。ユーザはすぐに満足感が得られることを求めており、不可解型アプローチの回り道やパズルに付き合うだけの忍耐力は持ち合わせていない。ウェブを環境ではなくツールと考える傾向が強くなり、ユーザの目的志向は強くなっている。クールなサイトを見るためのウェブサーフィンは過去のものだ。

不愉快型は、疑うことを知らないナイーブなユーザから金を搾り取れる上手い方法に思えるかもしれない。しかし長期的には、ユーザはどのサイトが本当に手厚くもてなしてくれるかを理解したうえで、そのサイトのリピーターになるのだ。ウェブサイトの本当の意味での売り上げはロイヤリティの高いユーザから得られるのだ。そして最もロイヤリティを育むのに適しているのが、主導型のサイトなのだ。

インターネットで商売をするためには、ユーザの力になるデザインを採用するのが一番よい。騙すよりも、人々が欲しがっているものを与えるほうが売るのが簡単なのだ。

2004年8月30日

公開:2004年8月30日(原文:2004年8月30日)
著者:ニールセン博士
原文:Mastery, Mystery, and Misery: The Ideologies of Web Design

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