ニュースレターが受信トレイの中で生き残っていくには

ニュースレターのユーザビリティは、前回の調査以降も改善が続けられてきた。とはいえ、ユーザを取り巻く情報は増える一方であり、ユーザの注目を得るための競争も激化し続けている。

メール配信されるニュースレターのユーザビリティに関する前回の調査から、まだ2年しか経っていない。ユーザビリティの調査は、ただ闇雲に繰り返しても時間の無駄に終わってしまう。ユーザビリティのガイドラインは、時間をかけてゆっくりと改められていくものだからだ。ユーザビリティは人間の本質に依るところが大きく、変化のペースは極めて遅い。しかし、ニュースレターは数少ない例外の一つである。なぜなら、ユーザがそれを目にする環境、つまり受信トレイが年々混み合ってきているからだ。

ニュースレターのユーザビリティを評価するために、新たにユーザリサーチを実施した(詳細は以下に記す)。その結果、以前得られた知見がすべて今も有効であることが分かった。127項目のデザインガイドラインにまとめられている前回のレポートをそのまま活用し、今回の調査結果を踏まえてさらに磨きをかけた。主な変更点は、まずレポートのボリュームだ。ユーザが受信トレイにあるメールをどのように片付けていくのか、その中にあるニュースレターにどのように目を通すのかなど、アイトラッキング調査の結果を追加し、メール配信されるニュースレターのユーザビリティに関して合計165項目のガイドラインをまとめた。

最も肝心な結論は変わらず、インターネット上で客と良い関係を維持するための最良の手段はニュースレターだということである。

ユーザリサーチ

42名のユーザにご協力いただいて、アイトラッキング調査を新たに実施した。ユーザがニュースレターの定期購読を申し込んだり、解約したりするときに、ウェブサイト上のどこに目を向けているのかを記録した。また、受信トレイの中身を見るときや、個々のニュースレターに目を通すときの視線移動についても記録をとった。

117個のニュースレターを使って、以下の調査を実施した。

  • 12個のニュースレターについては統制をとって実験を行った(12個すべてのニュースレターを同じ条件でユーザに呈示した)。
  • 40個のニュースレターについては統制をとらずに実験を行った(受信トレイの中にあるニュースレターの中から、ユーザ自身に、もっとも関心の持てるものを選んで読んでもらった。他のニュースレターに比べて、人気が高く多くのユーザに読まれるものがいくつか現れた)。
  • 残り65個のニュースレターを使って、アイトラッキング調査を行った。65個すべてのニュースレターをそれぞれ1名のユーザに読んでもらった。

ニュースレターを調査するだけでなく、RSSリーダーを使ってニュースフィードも読んでもらうことにした。新たなメディアとして頭角を現してきたニュースフィードと、既にメディアとしてある程度の地位を築いているニュースレターとを比較してみることにしたのだ。

さらに、フィールド調査も実施した。ユーザの仕事場へ入れてもらい、オフィスでのユーザの様子を観察させてもらったのだ。ユーザの日常に入り込むことで、多様な情報ソースに囲まれ、時間に追われる生活の中で、ユーザがニュースレターやニュースフィードをどのように扱うのかを見せてもらうことにした。

ユーザビリティの向上が確認された点

4年前に最初の調査を行った頃に比べると、ユーザ・インターフェイスが格段に進歩し、メーリングリストへの申し込みや解約が容易に行われるようになっていた。

  • 定期購読の申し込み:ニュースレターの定期購読を申し込むのに要する時間は、4年前の5分4秒から4分3秒に短縮され、25%の生産性向上が実現されている。
  • 定期購読の解約:ニュースレターの定期購読を解約するのに要する時間は、4年前の3分5秒から1分38秒に短縮され、生産性は驚くことに89%も向上したことになる。

4年という短期間のうちに、企業がユーザ・エクスペリエンスの向上に努め、25%~89%と幅はあるものの、相当の成果をあげてくれたのは嬉しい限りだ。メールで配信されるニュースレターの重要性が、企業の中でしっかりと受け止められていることの証である。

しかし、成果が出てはいるものの、今後の取り組みが期待されることはまだたくさん残っている。ニュースレターの定期購読を申し込むのに、1分もかかるようでは、まだまだ改善の余地がある。

最近の調査によると、定期購読申し込みの成功率は81%である。ウェブサイト上で行われる様々なタスクの成功率は平均して66%であり、それに勝る結果にはなっている。しかし、成功率が81%ということは、ユーザビリティを改善することで、50,000人の定期購読者を有するニュースレターは、さらに11,700人の追加を見込めるということでもある。

本文は斜め読み、イントロは無視

アイトラッキング調査の大きな利点の一つに、 “読む”行為がどのように行われているのかを詳しく調べられることがある。ユーザは、驚くべき速さで受信トレイにあるメールをさばき、ニュースレターに目を通していることが分かった。1本のニュースレターに使われる時間は、平均してわずか51秒だった。“読む”という表現がそもそも不適切かもしれない。ユーザが隅々まで目を通したニュースレターは、全体の19%に過ぎなかった。多くの場合、ユーザは斜め読みするだけだったのだ。斜め読みでも下まで目を通してもらえれば良い方で、時間にして35%は、ニュースレターのごくわずかな一部分を流し見するか、全体をざっと一瞥して終わりだった。

ニュースレターの冒頭にあるイントロの下りは、あっさり読み飛ばされる場合が多かった。平均して3行ほどのテキストに過ぎないにもかかわらず、そこで視線を止めることすらないユーザが全体の67%にものぼった。

ニュースレターを使ったアイトラッキング調査の結果を示すヒートマップ
ニュースレターを使ったアイトラッキング調査の結果を示すヒートマップ。見出しの単語2つ目くらいまでに視線が集中していることが分かる。
ユーザの視線がもっとも長く滞留した箇所を赤色で、次に長かった箇所を黄色、あまり見られなかった箇所を青色で示す。

変化するユーザの行動

前回調査したときから大きく変わったのは、ユーザの元に、以前にも増して大量の情報が流れ込むようになっていることである。常に溢れんばかりの受信トレイに、どのニュースレターならさらに追加する価値があるかとユーザが選り好みするようになっている。発信する側は、ニュースレターのユーザビリティによりいっそうの意識を向け、目を通しやすいニュースレターのデザイン、短時間で完了できる定期購読の手続きなどを達成していかなければならない。

ユーザは、複数のニュースレターを丹念に比較して取捨しているようだ。そうやって、メールのボリュームを減らしている。よく出来たニュースレターも、さらに良いものが現れればお払い箱となってしまうかもしれない。限られた時間をいかに節約して活用するかを人々は常に意識しており、欲しい情報を提供してくれる一番のニュースレターはどれかを見定めようとしているのだ。

メールの管理に長けたユーザが増えてきている。仕事のうえでも、そしてプライベートにおいても、メールが欠くことのできない重要なツールになってしまっているからだ。(メールは、インターネットの一番のキラー・アプリケーション。多くのユーザにとって、ウェブサイトが二番手である。)平均すると、ユーザは一人3.1個のメールアカウントを持っていて、目的に応じて使い分けているらしい。

“古い”メールアカウントも捨てずにキープして、時々チェックしているようだ。ニュースレターがそのようなメールアカウントに配信されていれば、新鮮なうちに読んでもらうことは難しいだろう。配信後、随分と時間が経ってからクリックや注文が舞い込む現象“slow tail”にもつながっている。ニュースレターからのリンク先がすぐに期限切れにならないようにしたり、奉仕品の提供期間も少し長めに設定したりしておく以外に対応策はない。

ユーザの中には、スパムやあまり実用的ではないメールの受け先として別のアカウントを用意しているという人もいた。まず、ユーザを説得しなければならない。あなたの配信するニュースレターが、そのアカウントではなく、もっと優先順位の高いアカウントにこそふさわしいものであることを。ニュースレターの価値や配信頻度などをさりげなくも確実に定期購読の申し込み画面で伝えるよう配慮すれば、難しいことではない。

どのプロバイダも、最近ではギガバイトを超える容量をユーザに提供している。以前にも増して、ユーザはニュースレターをアーカイブしておくことができるようになった。これまで以上に情報が溢れるということである。しかし、インターネットを活用した他のメディアよりも、ニュースレターの価値を長い目で捉えることができるということでもある。というのは、ニュースレターは、ユーザが個々に所有する情報空間の一部に保管されることになり、自分のコントロールがきく環境で必要なときに参照することができるからだ。SEO(検索エンジン最適化)を駆使したニュースレターを用意する必要はないが、半年、一年と時を経てから古い情報を取り出して使いたいと考えるユーザがいるかもしれないことを忘れてはならない。

未だに改善されないユーザビリティの問題点

今回の調査でも、よく聞かれるユーザビリティ上の問題点が多数、確認された。たとえば、ニュースレターを2つのフォーマットで配信しているとあるウェブサイトは、その2つの選択肢を以下のように表示し、ユーザを戸惑わせた。

2つのラジオボタン。左に「HTML」、右に「Text」の順で並んでいる。

まず、ラベルの付け方が明らかにガイドラインに反している。2002年に発表したニュースレターに関する最初のレポートから指摘を続けているガイドラインだ。2つのフォーマット形式を表すときの表現は、ガイドラインにしっかり明記されている。それに倣えば、多くのユーザが違いを難なく理解できるはずだ。この例にあるような専門用語の使用は、論外である。

2004年に報告したとおり、ラジオボタンを使った選択肢を横に並べるのは、ユーザに“間違えてください”と言っているようなものである(チェックボックスとラジオボタンに関するガイドライン#6に詳細の記述がある)。案の定、今回の調査でもこんなことがあった。“HTML”と“Text”の違いを十分に理解していたあるユーザが、“HTML”が、その右横にあるラジオボタンを指しているものと考え、誤ってそのラジオボタンをクリックしたのだ。

そのように“考えた”というのは適切ではないかもしれない。マウスのクリックは瞬間的な行為で、“考えて”からするようなものではない。ラジオボタンをしっかり吟味してからクリックしていれば、間違えることはなかっただろう。しかし、“ラジオボタンの意味をしっかりと理解すること”が、生活の中で大事な目標になるようなことはない。むしろ、子供たちともっと一緒に過ごしたいと思うのが自然であり、ウェブサイトを見ながらマウスをクリックすることは、極力短時間で済ませたいはずだ。エラーを未然に防いでくれるデザインが求められているということである。

RSS/ニュースフィード

ニュースフィードに関するガイドラインの中で、何よりもまず大切なものは、RSSと称することを止めることである。ユーザの82%は、RSSが何を意味するのか分からなかった。技術本位の表現は使うべきではない。なぜなら、多くのユーザが技術を理解していない(あるいは、気にも留めていない)からである。ユーザのために何をしてくれるものなのかを明確に伝える言葉を使うべきだ。この例で言えば、“RSS”よりも“ニュースフィード”の方がずっと良い。

“RSS”という言葉は知らなくても、“フィード”という言葉からならなんとなく意味を想像できるというユーザもいた。My Yahoo! をはじめ、ポータルページをカスタマイズして利用しているユーザであれば、過去に“フィード”を受け取った経験があるからだろう。

ユーザによって、ニュースフィードに対する印象は様々である。複数のウェブサイトから発信されている情報を、それぞれのサイトにアクセスすることなく一カ所で集約的に読むことができることを好むユーザや、見出しのリストにざっと目を通すことができて、不要なニュースは中身を見る必要がない点を好むユーザがいる。読みたいニュースを読みたいときに読むことができる仕組みを高く評価するユーザもいる。配信を受けるばかりで、自分でコントロールすることのできないニュースレターとは対照をなすニュースフィードの特徴である。

一方、ニュースフィードをあまり好まないユーザも大勢いる。日々、溢れんばかりの情報に囲まれて既に嫌気のさしている人々にとっては、さらなる情報ソースの登場は不快でしかない。逆に、既に利用しているツールに届けられるメール配信のニュースレターなら、新たな負荷とは感じずに済むようだ。メール配信なら、アーカイブしておけるので、読むのを後回しにすることも容易だ。ニュースフィードは、刻々と更新されるのでそうはいかない。

今回の調査に協力してくれたユーザの中には、My Yahoo! にニュースフィードを登録してはいるが、ほとんど使っていないという人もいた。これまでの調査から既に分かっていたことだが、ユーザはポータルページのカスタマイズに時間を使いたがらない。設定を変えて元に戻して、ニュースフィードをMy Yahoo! から外すこともしないが、読むこともないというユーザがいたとしても驚くことではない。

発行元のウェブサイトが提供するコンテクストから切り離されてしまっているニュースフィードをひどく嫌がるユーザもあった。本格的なニュースのウェブサイトへアクセスすれば、最新ニュースばかりでなく様々なコンテンツが提供されていて、掘り出し物を探し当てるような楽しみ方ができるのだそうだ。

ニュースフィードは万人に受け入れられるわけではないし、メール配信されるニュースレターに完全に取って代わることもあり得ない。ニュースの見出しを一カ所でまとめて見られることを好むユーザを読者に持つウェブサイトであれば、ニュースレターを補完する存在にはなるかもしれない。新聞社をはじめ、ニュースや速報の配信に力を入れるウェブサイト、インターネットの熱狂的支持者をターゲットにするサイトなどであればニュースフィードもユーザに受け入れられていくだろう。一方、一般的なビジネスユーザや消費者層を相手にするサイトであれば、ニュースフィードに重きを置く必要はなさそうである。ニュースレターの質や配信頻度を向上することにこそ、注意が向けられるべきだろう。

ニュースフィードを使ったアイトラッキング調査の結果から、ニュースレター以上に、フィードの見出しや要約は斜め読みされていることが分かった。たくさんのウェブサイトから集められた膨大な数の見出しの中にあっては、あなたのウェブサイトが読者に示す存在感は塵に等しい。さらに、ユーザは見出しの冒頭にある単語を2つ程度までしか見てくれていない。見出しをとにかく簡潔に書くこと、しかも先頭には強い情報伝達力を持った言葉を置くことが肝要である。

ニュースフィードは冷たいメディアである。ニュースレターに比べると温かみがない。よくできたニュースレターが築き得る企業と顧客の良好な関係を、ニュースフィードで同じように構築しようとしても無理である。ニュースレターの定期購読者が企業にもたらす価値と、ニュースフィードの場合のそれとを比較するのに十分なデータはない。しかし、ニュースレターの方が10倍売り上げに貢献しているという結果が出たとしても驚きはしないだろう。ニュースレターの方が、ずっと力強く、そして温かみのあるメディアであることを考えれば、ウェブサイトのニュースフィードを充実させるよりも、ニュースレターの定期購読者を増やしていくことの方が多くの企業にとって価値が高いと言えそうである。

2006 年 6 月 12 日

公開:2006年6月12日(原文:2006年6月12日)
著者:Jakob Nielsen
原文:Email Newsletters: Surviving Inbox Congestion

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