Slow Tail:
訪問から購入までのタイムラグ
ユーザが購入者に転じるのに、最初の訪問から長時間かかることはよくあることだ。実際、注文の内 5 %が、ユーザが最初に検索エンジンの広告をクリックしてから 4 週間以上経ってから行われている。
Rimm-Kaufman Group の Alan Rimm-Kaufman 博士は最近、Google と Yahoo の広告での 100 万クリックを追跡した。これらの広告クリックは最終的に 41,377 のコンバージョンを、対象ウェブサイトで生んだ。対象となったウェブサイトは伏せられているが、良いサイトだろうと思われる。なぜなら、彼等のコンバージョン率( 4 %)は平均的なウェブサイト( 2 %)の倍もあるからだ。
対象サイトの内 85 %が B2C で、残りの 15 %が B2B のサイトだった。コンバージョンの定義は、大半のサイトが実際の購入だったが、いくつかのサイトではカタログ請求や、そのほかもっと複雑な販売手続きの前進をコンバージョンとして定義している。
販売サイクルの遅延
ユーザが検索エンジン流入すると、注文はすぐに行われはじめる。コンバージョンの半分は最初の 28 分以内に行われた。この人たちは、買い物をしたいと分かっていて、そのサイトが良いeコマースのサイトで、価格設定がリーズナブルであれば、購入する人たちだ。
75 %のコンバージョンが 24 時間以内に行われてはいるが、残りの 1/4 はもっと後に行われている。90 %に到達するまでにはユーザが広告をクリックしてから 12 日もかかり、95 %まで到達するのは 4 週間もかかる。従って、残りの 5 %の注文は最初のクリックから 4 週間以上経ってから行われているのだ。
下のグラフは、累計コンバージョン率と、その転換率に到達するまでにかかった日数を表している。
グラフが明確に示しているように、曲線は 80 %付近で平坦になっている。言い方を変えれば、4/5 の注文はすぐ(最初の訪問から 3 日以内)に行われるが、残りの 1/5 はslow tail(遅い尾っぽ)となり、劇的に遅いペースで追加されるのだ。
2 ヶ月後には、99 %が受注されるが、3 ヶ月目に入ってからも売り上げが 1 %伸びている。
Slow tail は値段が高い場合のほうが起こりやすい。100 ドル以下の商品の場合、90 %の注文が11 日以内に行われている。300 ドル以上の商品では、同じコンバージョン率に達するまで18 日かかっている。
コンバージョンの遅延は、私自身、自分のビジネスで経験していることだ。Alertbox を 5 年も読み続けた末に、やっとユーザビリティ・レビューを買うために、上司を説得したといった話をよく聞く。レビューは 3 万 5000 ドルと、高価だ。
Slow Tail: デザインへの実装
- 比較テストや、サイトの性能計測を行った場合、ユーザの最初の訪問での行動だけを分析するのでは不十分だ。1 日目のデータだけでは、結果の 75 %にしか過ぎない。それも平均的なサイトの場合だ。もし高価だったり、複雑な商品である場合、初日のデータはさらに少ない割合の行動しか反映しないことになる。
- ユーザを追跡調査するために Cookie を使う場合も同様に、期限切れまで最低でも 90 日間設けなければ、沢山のコンバージョンを見失うことになる。
- ユーザはよく、最終的な決断を下す前に、何度もサイトを訪れる。そのためサイトのデザインは、最初の訪問行動とは異なる、再訪問行動をサポートしなければいけない。ユーザビリティの 5 つの質的な属性の内、同じ場所に同じ物を配置しておくなど、記憶性に特に気を配らなければいけない。(もちろん学習容易性も重要であることに変わりはない。最初の訪問時に数秒で使い方を理解できないサイトを再訪問しようと思う人など、全くいないからだ。)
- まだ購入を迷っているユーザに、早まった要求をしないこと。たとえば、仕様書を読んだり、デモを見たりするために登録を義務づけないこと。それさえなければ、後でコンバージョンする多くの人に尻込みさせてしまうことになる。
- 買い物カゴに時間制限を設けないこと。ユーザが再び訪問したとき、過去に買い物カゴに入れたままになっている商品は、そのままそこに残っているべきだ。ユーザ個別の設定や、ウィッシュリストも同様だ。もし客が商品に興味を示しているならば、数週間何も購入していないからといって、彼等がかき集めた情報を捨ててしまってはいけない。
- 最低でも終了から 3 ヶ月間は、検索エンジンの広告や、その他キャンペーンのための特設の入り口を残しておくこと。ユーザはパンフレットや、広告リンクの URL のブックマークを、後で探索するために残しておくことがある。
全般的に言えば slow tail は、ユーザ全員がその場で決断をする用意がないことを示している。せかしてはいけない。ユーザにサイト内を見て回り、商品について学習する余裕を与えよう。そうして、将来の買い物を容易にしてもらうのだ。
2005 年 9 月 6 日