長文記事 対 短文記事:
コンテンツ戦略から見た比較

情報採餌理論は、コンテンツ戦略のコストと利益の算出方法を示してくれる。簡潔な概要記事とすべてを網羅するような詳細記事を組み合わせた混合食餌法が、ベストな戦略となる場合が多い。

情報とは、どれくらいあれば十分なのか? どんなレベルを超えると情報過多になるのか? そして、これが一番肝心なのだが、最適な情報量とはどの程度のボリュームを意味するのか?

情報採餌理論は、ユーザがウェブサイトでどれくらいの記事を読むか決める上での交換条件を定式化する方法を示してくれる。より正確に言うと、食餌選択とは、動物がどんな餌を食べ、ユーザがどんな記事を読むのかを示すモデリングツールなのだ。どちらのケースでも同じく、動物やユーザは、自分にとってのコスト対利益を最大化するようなやり方で消費の対象を決定する。

たとえば、大ウサギと小ウサギが生息している森があるとしよう。オオカミはどちらを食べるだろうか? 答えはあからさまに“大ウサギ”だという気がするだろう。腹を満たすという目的からすれば、それが最大の利益をもたらすからだ。しかし、大ウサギは逃げ足が速くて捕まえにくいとしたら、その利益は目減りしてしまう。小ウサギの方が捕まえやすいなら、ちょっとずつ何度もご馳走にありつく方がずっといい。

それに、オオカミにとっての基本的な目的は、獲物を追いかけて消費する分を上回るカロリーを摂取することだ。本当に答えが必要なのは、どの獲物が一番食べ応えがあるかということではなく、獲物を捕獲するコストに対してもっとも多くの取り分が手に入るのはどの方法かということである。

絶対的な利益の大小ではなく、コスト対利益の比率こそが重要なのだ。

情報消費者(informavore)についても、まったく同じことが言える。長文記事はそれだけ多くの情報を含むが読むのに時間がかかりすぎるとしたら、ユーザはそのサイトに見切りを付け、他のサイトでもっと短くわかりやすい記事を読むことだろう。

記事を読むためのコスト対利益の測定基準

このモデルを算定できるようにするには、性質が異なる記事を読む場合のそれぞれのコストと利益を定量化しなければならない。

コストを定量化するのは簡単だ。これは、記事を読むのにかかる時間として計算すればよい。イントラネットの場合、就業中の情報収集にかかる時間を単位として従業員への賃金が支払われるので、これは具体的な金額を伴う直接費用となるだろう。公開ウェブサイトの場合、時間はもっと間接的なコストとなる。ユーザはお金をもらってネットサーフィンするわけではないからだ。ただしそうは言っても人生は短く、一日は24時間しかない。たとえ対価が支払われないとしても、ユーザは時間には敏感だし、決して無駄にはできないと思っている。

利益の方は、オンライン情報から得られるさまざまな価値を示すような、仮説上の利益単位によって定量化できる。法人取引について調べているB2Bユーザの場合、利益単位はすぐに金額に換算できる。そのユーザがウェブでの調査に時間をかけた結果、どれくらい条件のよい取引ができたか、またはどれくらい優れた製品が購入できたかを、その金額が示すからだ。

ホームユーザの場合も、利益を金額に換算することはできそうだ。たとえば航空券の購入について調べている場合、もう一つ別のサイトか他の出発時刻をチェックすることで得られた利益は、購入すべきチケットを決定するための選択肢がより豊富になったおかげで節約できた料金の平均金額に当たるはずだ。

ニュースやエンターテインメント系のサイトで記事を読んでいる場合、利益単位は各ページで読者が感じる満足や楽しさの量を表すだろう。

サンプル比較: 長文記事 対 短文記事

では、コスト対利益の測定基準として以下の数値を用いながら、サンプル比較を行ってみよう:

  • 短文記事:
    • 600ワード、読み取りコストは3分間(読み取り速度を200ワード/分とした場合)
    • 記事1件あたり7利益単位が得られる
  • 長文記事:
    • 1,000ワード、読み取りコストは5分間
    • 記事1件あたり10利益単位が得られる
  • 次に読む記事を見つけるための所要時間: 1分間

以下のグラフは、短文(青い折れ線)と長文(赤い折れ線)それぞれの記事を次々に読むにつれて、利益単位の累計が増えていく様子を示している:

長文記事と短文記事をそれぞれ読んでいく場合のコスト(X軸)と利益(Y軸)

折れ線上のドットは、転換点を表している ―― つまり、ある記事を読み終え、他に読みたい記事を探し、次の記事を読み始めた時点を意味する。ユーザが記事を探している間は、利益はゼロとなる。

(ここで私は「探す(search)」という用語を用いたが、これは他に面白そうな記事を探すためのあらゆるユーザ行動を意味する。次に読む記事を見つけるためなら、検索エンジンでもサイトのナビゲーションの仕組みでも、手段は問わない。)

このグラフから明らかなのは、短文記事だけをひたすら読み続けた方が大きな利益が得られるということだ。利益の累計はこのようになる:

  • 短文記事: 1時間あたり105利益単位
  • 長文記事: 1時間あたり100利益単位

結論ははっきりしている: 人々は短文記事を読むほうを好むのだ。この事実は、われわれが実施したウェブサイトの読み取りにおけるユーザ行動の調査研究からも判明している。長たらしいサイトは、容赦なく見捨てられる傾向にある。ユーザは要点だけをすくい取りたいと思っていることがほとんどなのだ。

ワード数を削減するメリット

先ほどの仮定をよく読んでもらえれば、計算上は短文記事に軍配が上がる理由がわかるだろう: それは、短文記事が長文記事の60%の長さしかないのに、70%の利益を出せると仮定したからだ。

これは現実的な数字だろうか? ほとんどのケースについては、イエスだと言える。優秀な編集者なら、記事の価値を30%しか減らさずに、ワード数の方は40%削減できるに違いない。結局、切り捨ての対象になるのはもっとも価値の低い情報であるはずだ。

長さがものを言う場合

では、ここで前提条件を変えて、長文記事の3件に1件は、残り2件の3倍の価値を持つと仮定しよう。言い換えれば、すべての長文記事のうち3分の2は今まで通り10利益単位分の情報を提供するが、残り3分の1は30利益単位の価値をもたらすとするのである。

このシナリオは、ある問題について正真正銘何から何まで知る必要があるような、特殊な状況に対応している。

たとえば、特定の6種類の食品を食べると死に至る危険がある難病が存在すると想定してみよう。そのうち4種類はありふれた食品で、残り2種類はほぼ誰も食べたことがないような珍しいものだとする。単なる好奇心でその病気についての記事を読んでいるユーザなら、ありふれた4種類の食品しか取り上げていない短文記事でもそれなりに満足するだろう。しかし、万が一ユーザ自身がその病気だと診断されたばかりだとしたら、「あなたを死なせる危険がある食品は6種類ありますが、そのうち2種類はごく珍しいものなので説明は省きます」という記事を読んでも気が済まないはずだ。自分が避けねばならないすべての食品について警告してくれるような、長文記事を読みたいと思うのは明らかだ。

以下のグラフは、この新たな仮定に基づくコスト対利益を示している:

長文記事と短文記事のいずれかのみを読む場合と、両方合わせて読む場合のそれぞれのコスト(X軸)と利益(Y軸)

青い折れ線は、短文記事のみを読んだ場合の変化を示す(前のグラフと同じ)。赤い折れ線は、新たな仮定に基づく長文記事のみを読んだ場合の変化を示す。3件に1件については利益が跳ね上がっており、青い折れ線をはるかに上回っている。

結論として明らかなのは、今度は長文記事のほうが価値が高い場合もあるため、より多くの利益をもたらすということだ。

だが、ユーザが選択できる行動には3つめのパターンがある: ある時は短文記事を、またある時は長文記事を読むという、混合食餌法だ。緑の折れ線が、この行動パターンを示している。

混合食餌法では、次に読む記事を見つけるための所要時間を見直さねばならない。必ず1種類の記事しか読まない単純なシナリオでは所要時間を1分としたが、今度は1.2分かかると仮定しよう。時間を増やす理由は、2種類の記事を両方とも対象にしていつどちらを読むべきか決める必要がある分だけ、事前に余分な手間がかかるからだ。

意思決定とは時間を要する行為である。だからこそ、数多くの選択肢を用意するよりも、シンプルなユーザーインターフェースを提供するのが一番だということが多いのだ。ユーザにできることが増えると、そのたびに考える時間も必要になるので、実際にその機能を使う時間が奪われてしまう。

このグラフでは緑の折れ線が赤の折れ線をさらに上回っているが、その原因は、長文記事のうちで十分な価値のない3分の2については、ユーザがさっさと見切りをつけたせいである。

今回のシナリオでは、記事を読むための方針の違いによって得られる利益の累計は、それぞれ以下の通りとなる:

  • 短文記事のみ: 1時間あたり105利益単位
  • 長文記事のみ: 1時間あたり167利益単位
  • 短文記事3分の2 + 長文記事3分の1: 1時間あたり181利益単位

数学的モデル 対 現実生活

もちろん現実生活においては、きっちり3件に1件の記事には必ず詳細な情報がないと困るというわけではない。

しかし、私が提示したモデルが示す一般概念は、この上なく現実的である:

  • 記事を読んで得られる利益の大きさには、ユーザの状況次第でかなりの差が出る。
  • ほとんどの場合、短文記事ほど1ワードあたりの価値が高い。
  • 場合によっては、ある問題についての情報が完全であるほど、または非常に詳細であるほど、高い価値をもたらすことがある。

この記事で計算に用いた数値は、あくまで試算目的の単なる仮定にすぎない。みなさん自身のコンテンツやターゲットユーザの種類に応じて、同様に試算することができるだろう。

さて、対策は?

というわけで、みなさんのウェブサイトのコンテンツは、簡潔にまとめるべきか深く掘り下げるべきか、どちらだろうか?

  • 多数の読者を獲得したいなら、短くてざっと目を通しやすいコンテンツに力を入れよう。この戦略は、広告収入で運営しているサイトや、衝動買いを誘いやすい商品を扱うECサイトに適している。
  • 真剣に問題解決の必要に迫られている人々を集めたいなら、すべてを網羅するような詳細記事に力を入れよう。この戦略は、特定の複雑な問題に的を絞ったソリューションを売り物にするサイトに適している。

一般的に、何かを真剣に必要としている人々はもっとも貴重なユーザである。そのような人々なら、有料顧客になってくれる見込みが高いからだ。それこそ、私がブログ的投稿ではなく論説を書くことを勧めた理由でもある。

しかしながら、本当にベストなコンテンツ戦略と言えるのは、ユーザの混合食餌法を反映するやり方だ。1種類のコンテンツだけに縛られる筋合いはない。大多数のユーザ向けには短い概要を示すと同時に、もっと詳しい情報を求める少数ユーザに対しては、さらに徹底した記事やホワイトペーパーを提供することも可能だ。

言うまでもなく、これら2種類のユーザが同一人物であることも珍しくない ―― いつもは時間に追われているユーザが、時には徹底分析の体勢に入ることもある。事実、われわれが実施したB2Bユーザの調査でも判明したことだが、ビジネスユーザは購入を考えている複雑な製品やサービスにあまり詳しくないことが多く、細かく調べる前に大体の方針を決められるよう、簡潔な概要説明を必要としているのだ。

お助け役となるハイパーテキスト

ウェブでは、一つのハイパースペースの中で短文と長文の両方を用いたもてなしができる。まずは概要の紹介と、短く簡潔にまとめられたページでユーザを迎えよう。そこから、別のページに用意した長めの詳細な解説にリンクするのだ。

このアプローチに従えば、どちらのタイプのユーザにも(あるいは、購入手続きの途中で同じユーザが異なる段階にいる場合でも)対処できる。

ユーザがサイトに滞在している一分一秒を無駄にせずより多くの価値を提供するほど、そのサイトの利用機会が増え、ユーザの滞在時間も長くなる見込みが高い。それゆえに、ユーザのニーズに合わせたコンテンツ戦略の最適化が肝心なのだ。

2007 年 11 月 12 日

公開: 2007年11月12日 (原文:2007年11月12日)
著者: Jakob Nielsen
原文:Long vs. Short Articles as Content Strategy

分類キーワード