ソーシャルメディア向けの書き方:
Facebook、Twitter、LinkedInで配信する企業コンテンツ
ソーシャルネットワーク上のメッセージの、時間の経過にしたがって消えていくというシンプルさはユーザーに好評である。しかし、そこでの流し読みしにくい書き方や、頻繁すぎる投稿、企業側の自社の位置づけ方のまずさにユーザーはよくいらだっていた。
メガIAが取り組むのは、あなたの情報を複数の外部ウェブサイトやインターネットサービスにわたって配信する際に起こる課題である。これは小さな挑戦ではない。あなた自身のサイトのアーキテクチャを設計することですらたいへんなのに、さらにサイトを追加して、より広範囲に配信しようとすれば、良好なユーザーエクスペリエンスを確実に提供するのがいっそう困難になるからである。
ユーザー調査
企業や組織からのソーシャルネットワークやRSSへの投稿に対し、ユーザーがどのようにアプローチするかを明らかにするため、我々は2回にわたって調査を実施した:
- 1回目の調査は3年前に実施したが、RSSフィードに焦点をあてた。2つの調査手法を用いて、様々なフィードを4つのRSSリーダーでテストした:
- ほとんどのセッションは従来的なユーザビリティ調査の形で実施したが、そこではアイトラッカーを多く使って、人々がRSSのタイトルや宣伝文をどのように読んでいるかを詳細に調べた。
- また、フィールド調査も数回実施し、ユーザーを彼らの職場で観察した。これによって、我々は、ビジネス向けのRSSフィードを人々が日々の仕事の中でどのように利用しているかをより自然なかたちで知ることができた。
- (新たに実施した)2回目の調査ではFacebookとTwitter、MySpace、LinkedIn
の4つのソーシャルネットワークを対象としたが、RSSフィードについても追加のテストを行なった。この回では以下の2つの調査を実施した:- ほとんどのセッションは従来的なユーザビリティ調査のかたちで実施した。そこでは参加者は自分自身のRSSリーダー(主にGoogleリーダー)を利用して、この調査のRSSセグメントを調べた。ユーザーには、セッション前の2週間、ソーシャルネットワークとRSSフィードの両方で、予め決めておいたいくつかの企業や組織のメッセージに登録をするよう依頼した。また、テスト期間中、新たな企業への登録も依頼した。それによって、我々は彼らが新しい相手を「フォローする」ときにどのように行動するかを観察することができた。ラボでのこうした調査によって、企業や組織からのメッセージにアクセスしている間、参加者がそれをどのようにブラウズしたり読んだりするのか、詳細に理解することができた。
- また、ダイアリー調査も実施した。4週間にわたって、ユーザーは既存のソーシャルネットワークやRSSフィードリーダーを利用して、企業や組織からのメッセージを受け取り、それを記録して、コメントを書いた。このやり方によって、我々は長期間での利用パターンを調べることができた。
調査全体でのユーザー数は73人で、男女比はほぼ半々だった。参加者の大半はアメリカ在住だったが、イギリスやオーストラリアのユーザーについても調べた。年齢は20才から59才で、職業は、銀行のマネージャーから、データベース管理者、電気工、保険ブローカー、弁護士、オフィスマネージャー、薬剤師、自営業者、教師まで様々だった。
2回目の調査では、120以上の企業や組織によるメッセージをテストした。そのテストの大半は我々の調査とは関係のないところでそのメッセージを受信していた1人のユーザーによって行われた。より系統だったユーザビリティの情報を得るために、我々は、複数のユーザーに以下の42の企業のメッセージへの登録を依頼し、その後、そのユーザビリティをテストした。
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ビジネスユース vs. パーソナルユース
上記のリストが示すように、ソーシャルネットワークとRSSのビジネスユースのみを我々は調査した。この種のサービスは友人や家族と連絡を取り合うためのパーソナルユースで利用されている割合が圧倒的に多いが、我々はそれについては調査しなかった。確かに何人かの政治家や(有名なスポーツ選手やミュージシャンのような)有名人のメッセージについてはテストしたが、彼らは個人であるとはいってもインターネット上にメッセージを投稿するという状況の上では、企業や組織として機能していると言えよう。
例えば、オーストラリアの首相がタスマニアに向かっていることをtweetするとき、それは現地に住む友人に、彼がその晩、ビールにつきあえることを知らせるためのものではない。むしろ、それは彼がその州のニーズに目を向けているという事実を宣伝するためのものと言える。ユーザーの何人かも書いていたが、実際のところ、首相が投稿したのか、それとも、彼の補佐官のうちの1人が投稿したのかは疑わしい。
我々の調査は明確なゴールに向けて実施された。そこで我々が見出そうとしていたのは、企業や組織のためのガイドラインである。プライベートな最新情報を投稿するための個人にとっての最適な投稿方法を見つけることに我々は関心がなかった。
そうはいっても、ビジネス系のメッセージはパーソナルメッセージの間の隙間をくぐり抜けて登場する。こうしたコンテクストが利用の前提となるというわけだ。頻繁すぎる投稿によって、ユーザーの実際の友人達を締め出してしまうようなビジネスのやり方は人気を失うことになる(その結果、フォローされなくなる危険性がある)。ソーシャルネットワーク上の企業や組織をフォローしている際に、ユーザーにとって一番うっとうしいものとして、頻繁すぎる投稿が挙げられていた。
ユーザーがソーシャルネットワーク上で好むのは、たいていの企業や組織のコミュニケーションの場でふさわしいとされているよりもカジュアルなスタイルのビジネスメッセージである。同時に、RSSフィードにはよりビジネスライクであること、無駄話を排除することが期待されている。また、BBCのようなある種のサービスは、ソーシャルネットワーク上であるにもかかわらず、かなり専門的な論調の方が好ましいとされた。
ソーシャルメッセージと比較してRSSの最新情報はより信頼性が高く、より「公式な」情報源であると見なされていた。 またユーザーはRSSフィードについては仕事中にチェックする傾向にある一方で、ソーシャルネットワークには主に自宅からアクセスしていた。
我々が調査したとき、企業や組織によるソーシャルネットワークの更新に携帯機器からアクセスするユーザーはわずか6%に過ぎなかった(94%は「本当の」コンピューターからアクセスしていた)。モバイルユーザビリティの発展に伴って携帯機器からの利用率が増加する可能性もあるが、その数字は少ないままだろう。なぜならば、企業や組織のメッセージは人々が外出先でも読む必要のあるような、必ず知っておかなければならないタイプの情報であることはまれだからである。
ストリームの管理
我々が調査したすべてのメディアが投稿についての1つのストリーム(つまり、タイムラインや「ウォール」)を持ち、最新のものが一番上に来るように投稿を逆時系列に並べていた。RSSのユーザーの中にはメッセージを情報源によって並べている人もいたが、ストリームを時間順に配列するやり方のほうがユーザーエクスペリエンスとしては主流であった。
このようなユーザーインタフェースの徹底したシンプルさは評価が高かった。多少のスクロールは必要かもしれないが、リストを上から見ていく以外には何の特別な努力もコマンドも要らないからである。ユーザーは見逃したかもしれない過去の投稿を探し出そうとせず、最新の情報さえ読めれば満足していた。
したがって、ユーザーのメインページからひとたび外れてしまったメッセージは存在しないのと同じようなものであると言える。2ページ目にあるメッセージまで見ようとしてブラウズを続けるユーザーはほぼいないと言っていいだろう。
この点が、ユーザーが手動で削除する必要のあるEメールニュースレターやその他のEメールによる通知との明確な違いである。ソーシャルネットワークの更新によって、タイムラインは下に流れて、徐々に自ら消えていくが、ユーザーはそれについて何もする必要はない。この点を参加者は高く評価していたが、その結果、顧客との関係を保つという観点からは、Eメールニュースレターに比べて、ストリームベースのメディアがより非力になってしまうことは間違いない。
投稿の頻度
ユーザーのほとんどはFacebookやTwitterに少なくとも日に1回はアクセスしていたが、MySpaceやLinkedInへの訪問回数はそれより少なかった。将来的にはここに挙げてないサービスが人気になっていくだろうが、基本的な結論は変わらないままだろう。つまり、頻繁に利用され、非常にタイムリーな最新情報として役立つサービスもあれば、もっとリラックスしたペースで使われるサービスもあるということである。企業や組織からのメッセ-ジの投稿頻度はそうしたサービスの内容に合わせて調整するべきである。
あまりにも投稿回数が少ないと、ユーザーが自分のタイムラインを次に訪問する前に、あなたがたの情報はアクティブなタイムラインから外れてしまうことになる。しかし、投稿回数が多すぎると、他のメッセージを締め出してしまう。
人間の行動の三大動機は、不安、欲、独占であるが、ソーシャルネットワークでの投稿によって後者の2つに対処することができる。ユーザーは得をすることには特に高い関心を持っていた(欲)。とはいえ、企業や組織の投稿は友好な関係を築くためのものというよりはコマーシャルである、と彼らは理解はしていても、あまりにも積極的な売り込みには抵抗を示すものである。適切なバランスを見いだすことが非常に重要といえるだろう。
ユーザーは投稿が最新であることを望んでいる。例えば、あるユーザーは、ソーシャルネットワークで受け取った情報によって、自分が「最初に知った」ような気分になれると言っていた。こうした感覚によってフォロワーは独占しているという感覚を得る。
更新をしないという評価を確立してしまっていた企業もいくつかあった。企業のソーシャル機能を調べていた際、こうした墓場のようなサイトに対するユーザーの印象は非常に悪かった。さらにうんざりしていたのは、友人リストへの登録リクエストに対して迅速な返答がなかった場合である。適切な頻度の投稿が可能なだけの予算がある場合にのみ、ソーシャルネットワーキングサービスの利用は始めよう。そして、後になってその予算がないことに気づいたら、蜘蛛の巣に覆われる前に潔くそのサービスは閉じよう。
フォローする企業を見つける
ユーザーのほうから積極的にソーシャルネットワーキングサイトで企業や組織を見つけようとすることはほとんどない。友人からの推薦や企業からのEメール(ニュースレターや確認メッセージ)、あるいは企業のウェブサイトからのリンクといった、ある種の刺激がきっかけとなって、企業のフォローを始めていたことが多かった。
不幸なことだが、ある企業をフォローしようと決めたとしても、ユーザーがそのサイトを常に簡単に見つけられるとは限らない。ソーシャルネットワークに登録するための情報を見つけるため、ユーザーは企業自身のサイトを頻繁に訪問していた。というのも、ソーシャルネットワーキングサイトが現時点で提供する検索やナビゲーションが貧弱だからである。哀しいことに、企業自身のサイトですらユーザーがその企業のソーシャルサービスを見つけるのに役立っていないこともあった。「Twitter」や「Facebook」のようなキーワードで検索されたら、少なくともあなた方自身の検索エンジンでは正しいページが「第一候補」として間違いなく、ぽん、と出てくるようにしておこう。
RSSフィードの利用における変化
3年の間隔を空けて、2回にわたってRSSの利用状況を調べたため、このフォーマットに対するユーザーの態度の変化を追うことができた。そこでの主な発見は、変化はほとんどない、ということであった。1回目の調査から導き出されたユーザビリティのガイドライン15個の全てが2回目の調査でも確認された。(しかし、新たにいくつかのガイドラインが発見されたので、RSSフィードのためのユーザビリティガイドラインは全部で24個になった)。
1回目の調査での主な発見は、技術系以外のユーザーは「RSS」という言葉の意味を理解していないことが多いというものだった。これは今も変わらないが、1語以上の説明的な単語によって頭字語を補うために、「RSSフィード」のように単語を組み合わせて使うことを我々は今も推奨している。
前の調査からの最大の変化は、RSSの利用が現在、増え続けており、読者の幅も広がってきているということである。以前はRSSを利用するというのはかなり実験的なことで、ユーザーの大多数はその機能をどのように使うのが一番良いのかよくわかっていなかった。今では、人々はRSSにずっと慣れ、注意深くフィードを選ぶようになっている。
主観的満足度
2回目の調査では、292の企業や組織のメッセージの満足度を(7が最高の)7段階尺度を使って様々な属性について評価するように人々に依頼した。
一番スコアが低かったのはメッセージの有用性で、その平均値は4.3だった。これはほとんどのユーザビリティ調査での満足度の値よりも低い。顧客が本当に欲しい内容の投稿をどのように届けるか、企業がいまだ発見できていないのは明らかである。
企業メッセージにおいて、最も高い得点を獲得したものには以下の3点の共通した特徴があった。なにがしかのきちんとした内容を含んでいて、タイムリーな更新がなされ、情報源である企業や組織に対してユーザーが期待する種類の情報を提供していた、ということである。
内容の有用性に問題があっても、企業の信頼性に対する評点は一般に高く、その平均点は5.7だった。信頼性の評点が低かった企業はメッセージ内に広告を含んでいるところが中心だった。
ソーシャルメッセージとRSSのユーザビリティ
こうした満足度が示すように、ソーシャルネットワークでのメッセージやRSSフィードのユーザビリティを向上させるための道のりはまだまだ遠い。
問題はユーザー名の選択のようなシンプルなものから始まっている。例えば、アメリカの教育省のTwitterのIDは「usedgov」だが、それだと「使用済みの政府」(used government)のように意味が取れるため、ユーザーは困惑していた。同様にロゴも酷いことが多く、いくつかのサービスが提供している小さなレンダリングのものは特に酷かった。ユーザーはロゴやユーザー名を拾い出そうとしてストリームを下に流し読みしていっているのに、この基本的なニーズを邪魔しているものが多かった。
メッセージが短ければ短いほど、書き方が重要になってくる。長い内容のものの最初の何文字かを使うだけで目的を達成した気分になるのはやめよう。企業や組織からのフィードにはそのメディアに適した形で書くという手間が取られていないものがあまりに多かったが、彼らはそれによって自ら被害を被っていた。というのも、ユーザーはそのリンクをクリックして良いかどうかわからなかったからである(したがって、クリックしなかった)。
ありがたいことに我々にはもう上がるしか道がない。ユーザーは本当にメッセージを欲しがっているのだ。ほどほどの量で、内容が良ければ。