Webサイトを読むということ:そんなことも(時には)ある
ウェブコンテンツによってユーザーが興味のあるセクションに集中できるようになれば、ユーザーはその記事を流し読みから実際に読むようになる。
(オンラインバンキングのような)直接取引を別にすれば、インターネットコンテンツに関するユーザーの行動というのは矛盾している:
- ユーザーは情報を求めてウェブサイトに行く。
- ユーザーは標準的なウェブサイトの訪問中、ほとんど読むことをしない。
この2つめのポイントは長年にわたる大量の調査で十分に裏付けられている:
- 1997年に世界で初めて行われたユーザーがウェブコンテンツをどのように読むのかについての調査の結果を要約すると次の一言に集約される: ユーザーは読まない。情報を注意深く読む代わりに、ユーザーはそれを流し読みするのが一般的である。
- 2006年のアイトラッキング調査でわかったのは、ユーザーはページの上部あるいは左側にある単語に注目して、ウェブサイトの文章をF字型に流し読みすることが多い。その一方、それ以外の場所に現れている語についてはちらりとも見ない。
- 最近の調査でこうした結果の数値化が行われている。ページビュー当たり平均の時間で見ると、ユーザーは最大でもページにある語の28%を読むだけの時間しかない。
我々はこうした調査結果を受けて、例えば、どうやってヘッドラインやリンクの最初の2語に最大量の情報を詰め込むかといったナノコンテンツにまつわる問題についての調査をこれまで行ってきた。
情報の匂いの強い簡潔なキーワードを先に出すというのがウェブライティングの重要なガイドラインであることには変わりはない。とはいえ、必要最低限以上の内容をユーザーが読むこともある。そこで今回、我々はその理由を知りたいと考えた。
人々が読むタイミング
この現象を調査するために、何百というサイトを基にアイトラッキング調査による150万回もの視線の滞留を分析した。こうしたサイトにユーザーが150万回もの視線を置いたという事実が意味するのは、ウェブ上で人々が実際、紛れもなく情報を消費している、ということだ。
良い例がある。ある動物園のウェブサイトを訪問したこのユーザーは1つのパラグラフを余すところなく読んだ:
もちろん、この例からはいつものお決まりの調査結果も明らかになっている。つまり、ユーザーはページにある情報をたくさん見ることはしなかった。このページはよく構成されており、特定の種類のカモについての生息域や生息場所、特徴、行動、繁殖といった様々な情報を描写する明快なヘッドラインも付いている。この例で、このユーザーはカモの行動に興味を持ち、それに関するパラグラフを徹底的に読んだ一方、それ以外のパラグラフには容赦なく簡略化した流し読みをするだけだった。
ユーザーが興味のある情報に集中し、残りを無視できたというのは良いことである。人々がウェブサイトを読むのを我々が目にするときには、サイトが以下の2点のユーザビリティ上の目標を達成していることが理由になっていることが多い:
- 良質な情報アーキテクチャ(IA)。そして、そこには明快なナビゲーションがついていて、ユーザーが自分の興味に関連のあるページにすぐたどり着けるようになっている。ユーザーは遅かったり、誤解を与えるナビゲーションのせいで立ち往生すると、持っていた興味自体を徐々に失ってしまう。目的のページにやっとの思いでたどり着いたときのたくさん読もうと思う彼らの意欲についても同様のことが起きる。さらには、明快な手がかりをページごとに提供し、そこにはこれこそがそのページのユーザーに必要なものであることを示す、良質な見出し等のデザイン要素も入っているべきである。
- 良質なページレイアウト。そうすれば、ページの該当箇所に素早く視線を導くことができる。(動物園の例にあるように)各セクションの情報を要約するよく練った小見出しを活用されている。
最初であることの重要性
動物園のウェブサイトのアイトラッキングの例で、ユーザーが読んだのはページの4番目のパラグラフだった。そこに目的の情報があったからである。とはいえ、一般にはユーザーが最も注目するのはページの上部にある情報である。
以下の表が示すのは、どのくらいの割合のユーザーが本文テキスト中の各位置のパラグラフを見たかである:
テキスト冒頭からの位置 | そのパラグラフを見たユーザー |
---|---|
第1段落 | 81% |
第2段落 | 71% |
第3段落 | 63% |
第4段落 | 32% |
この表が示しているのは、ユーザーがあるパラグラフを見たかどうか、つまり、そこに少なくとも1回は視線を滞留させたかどうかだけである。こうした見るという行為は流し読みの一部と考えられ、コンテンツ自体がおもしろくない限り、実際に読むという行為にはつながらないことが多かった。
表が示すように、最初の3パラグラフはどれもまずまずの量の注目を集めていた。しかし、4番目のパラグラフを見たユーザーが32%しかいなかったことには注目すべきである。
SERPで2番目にあることの価値
ユーザーがSERP(検索エンジン結果ページ)閲覧時に取る行動は大体同じだ。SERPで最初にヒットするもののクリック回数が極端に多いことは非常によく知られている。そもそも、検索結果の1ページ目より先に進もうとするユーザーはほとんどいないのである。
ユーザーの注目は最初の方にヒットしたものに集まりがちである。しかし、彼らも実際にはクリックパターンが示す以上に、多少、周りも見ている。つまり、ユーザーの17%はクリックする前にSERPのリンクの1個だけにしか視線を向けていないが、42%の人は2番目、あるいは3番目にヒットしたものにも視線を向けている。
もちろん、10個のオーガニックリンクと山ほどの広告があるページで、3個のヒット結果しか見ないというのは見る量としては少ない。しかし、それこそが過半数の人が取る行動なのである。クリックしないまでもあなた方のエントリーを人々が見るということにブランディング価値があると確信できる限り、主要な検索エンジンで2番目、3番目のヒットとして現れることから得られるブランディングは悪いものではない。
最初のSERPのはるか下の方に現れたとしてもある程度のブランディング価値は認められる。なぜならば、ユーザーの12%はそのページを1番下まで見るからである。(2ページ目以降の検索結果を見る人は2%しかいない。したがって、その場合に得られるブランディングは最小限になる。そのうえ、クリックされる回数はさらにずっと減ることになる、最初のページに出ない限りは)。
本文のテキストを読んでいる時と同じで、ユーザーの関心というのはSERP上でも急速に減っていく。18%のユーザーは3番目のオーガニックリンクを見るが、4番目のリンクまでたどり着く人は8%しかいない。(こうした数字はすべてユーザーの目がそのリンクに滞留したかどうかを示しており、それをクリックしたかを指しているわけではない。クリックの最初のヒット結果への集中度はさらに高い)。
良質なIA、良質なレイアウト、良質なライティング
前述のように、役に立つIAと有効なページレイアウトがユーザーにあなたの記事を読ませるためには重要だ。しかしながら、アイトラッキングデータからは、ユーザーを流し読みをする人から読む人に転向させる3番目の要因も発見されている。それは質の高いライティングである。
申し訳ないが、これはびっくりするような答えではない。しかし、我々はウェブコンテンツ向けに83個の詳細なガイドラインを確認しているが、そういったガイドラインを煎じ詰めると、実際、そこに行き着くのである。あなた方のコンテンツに人々を導いたものは良いものであるに違いないからだ。
しかし、良質なウェブコンテンツとは文章として優れているというだけではない。質の高いデジタルコンテンツは表示上のニーズをみたすだけでなく、ユーザーが実際に読みたい情報に流し読みの目を向けさせることで彼らの時間の節約に役立つ明快なヘッドライン等の要素も含んでいるのである。
フルレポート
ユーザーがウェブサイトをどのように読むのかについてのアイトラッキングのフルレポートがダウンロードできる(文章の書き方についての83のガイドライン入りの355ページ、英語)。
さらに学ぶ
調査レポート(英語)
関連記事
- 世界最良のヘッドライン: BBC News
- ブログ的投稿ではなく、論説を書こう
- 興味深い事実がウェブページに人を引きつける
- Define Techy Terms for Older Users(未訳)
- SEOとユーザビリティ
ニールセン博士のAlertbox「ウェブサイトを読むということ: そんなことも(時には)ある」 http://t.co/H9v1sc7t6t ウェブコンテンツによってユーザーが興味のあるセクションに集中できるようになれば、ユーザーはその記事を流し読みから実際に読むようになる。
— U-Site編集部 (@UsabilityJp) July 8, 2013