保守的Webユーザの増加

昨年1年間に実施したユーザビリティテストの結果から、ウェブデザイン上のイノベーションを受け入れたがらないユーザが増加していることがわかった。ウェブ上の他でもよく見かけるのと同じデザインを要求する態度が支配的になっている。

先進的なホームページのコンセプトについてテストした際、ユーザからはハッとさせられるような回答が帰ってきた。あるユーザはこう言った。「あなたのサイト独自のルールなんか学んでいるヒマはないんですよ」。また、別のユーザはこう語った。「単純明白なのにしてくれませんか。他のサイトですでにおなじみのインタラクションテクニックだけを使ったものに」。

ウェブには、物語的な流れとユーザオプションが期待されるようになってきた。そして、ユーザが望むのはこの期待にそったページなのだ。こうしたユーザ層が拡大している大きな理由として、ユーザは複数の異なったサイト間をしょっちゅう行ったり来たりしているということが挙げられる。ウェブ全体が寄り集まってひとつのユーザ体験として結実しているのであって、従来の書籍や新聞のように、ひとつずつアクセスする単独の出版物が寄り集まったものではないのだ。全体としてのウェブがユーザインターフェイスの基盤をなしている。ウェブという宇宙から見れば、いかなるサイトも小さな点に過ぎない。

ナビゲーションその他のユーザニーズをサポートするという観点からすると、ウェブデザインの現状はグロテスクといっていいほど不適当だということがわかった。このため、ユーザの間に保守主義が広まりつつあることを知って、私は少々がっかりしている。まだ幼年期に過ぎないこの段階で、ウェブデザインが固まってしまっては残念だ。しかしながら、「ユーザは常に正しい」を座右の銘にしてきた私としては、慣習に従うことを求めるユーザが増えているのなら、あらゆるデザインは前例に従うべきだ、と言わざるを得ない。つまるところ、ウェブはどんな人間よりも巨大なのだから、そのウェブを否定して独自のものを作っても、誰にも使ってもらえないだろう。

一方で、私は、この初期段階で進歩を止めてしまおうとも思っていない。ウェブデザインにおだやかな変化を少しずつ加えていこうというのが私の呼びかけだ。新しくサイトを立ち上げる際には、大部分は従来の慣習に従いながらも、新しいアイデアも少しずつ取り入れていこうというのだ。新しいアイデアの中にはかなりの成功を収めて、それ自体、新たな慣習として確立されるものもあるだろう。また、表面的な見かけは変えずにウェブを改善する可能性もかなりある。例えば、執筆作法を改善することで、サイトのユーザビリティを2倍以上向上できることがわかっている。同様に、同義語検索、スペルチェック、関連度評価、評価管理などのアイデアを取り入れて検索アルゴリズムを改善することで、サーバ上の検索の品質を向上させることができる。

ソフトウェアアップグレード浸透率の鈍化

この図は、Interse社とAdKnowledge社から得たデータにもとづいて、Netscape各バージョンのユーザがどれくらいいるかを、時間の経過に従って示したものである。バージョン1以降のすべてのリリースに関して、この図が語るところは共通している。新しいバージョンの利用増加は、前バージョンの利用低下と合わせて、伸び率が低い。新しいリリースの採用を示す曲線の傾きは、ユーザのアップグレード速度ということになる。バージョン2および3の時点では、アップグレード速度は毎週2%であった。言い換えると、毎週約2%のユーザが、以前のリリースから新しいリリースに乗り換えたということになる。大部分のユーザが乗り換えを完了するまでに、1年かかる計算だ(毎週2%で50週)。

Proportion of use of various Netscape versions from 1995 to 1998

バージョン4では、アップグレード速度が毎週1%に落ちている。この低いアップグレード頻度を持ってすると、現在では大部分のユーザが新しいバージョンへの乗換えを終えるまでに2年かかることになる。アップグレードが遅々として進まない理由として、以下の4つの要素が挙げられる。

  • ネットオタクが、もはやユーザの多数派ではなくなった。彼らにとっては、インターネットそれ自体が興味の対象である。1993から1994年にかけての私は、新しいアップグレードが出ていないかと思って、毎週MosaicのFTPサイトをのぞきに行っていた。1995年には、間近に迫ったNetscapeのベータ版リリースの噂が、Usenetニュースグループで宝物のような扱いを受けた。これに対して、現在のユーザのほとんどは、ウェブが自分たちに何をしてくれるかに興味を持っている。注意の対象はコンテンツにあって、テクノロジーやソフトウェアではない。それゆえ、彼らはアップグレードへの関心が低い。
  • 大部分の新規ユーザは、ブラウザのアップグレードのやり方を知らない。このため、どんなバージョンであれ、マシンにインストールされていたバージョンを使い続けることになる。初期のインターネットユーザは、ソフトのダウンロードや、インストール、それにデフォルトの初期設定やIPナンバー、プロクシ設定の変更方法といった数多くの秘儀に習熟していた。ネットにつなごうと思ったらそうせざるを得なかったのだ。今や、オンラインに参加するのは簡単になった。このため、テクノロジーの内部にくわしいユーザは、かなり少なくなった。
  • 機能追加とユーザビリティの向上という点では、以前と比較して、最近のブラウザのアップグレードは魅力に乏しい。最初期のブラウザはずいぶん原始的で、リリースがひとつ上がることによる向上度はかなり大きかった。当時は、アップグレードの利点が今より大きかったわけだ。
  • メガバイト単位でのダウンロードサイズが巨大化したが、帯域幅はそれに見合うほど拡大していない。よって、アップグレードのコストは高いものになった。

図に示したのは特定のブラウザに関連するデータだが、他のブラウザやプラグインにおいても、同様にアップグレード速度の低下が起こっていると考えられる。ウェブソフトウェアのアップグレードが遅くなったため、ウェブサイトユーザのかなりの部分が、古いバージョンを使い続けるようになるだろう。このため、定評あるウェブコンソーシアムの標準に準拠したデザインにしておく必要性は、ますます高まっている。

クライアントデザインは保守的に: サーバデザインは先進的に

ウェブユーザは保守的だ。彼らは一貫性のないサイトデザインや、グラフィックな仕掛けとアニメーションでいっぱいの派手なページなど望んでいない。最新のクライアントソフトを持っていないユーザも珍しくない。それゆえ、ウェブデザイナーは、ユーザに何を見せるかを判断する上で、保守的にならざるをえない。ページデザインは保守的、かつミニマリスト的でなければならない。ウェブデザインの取るべき道としては、複雑かつ先進的なデザインはサーバ側に移行するのがよいだろう。こうして、インテリジェントに加工されたサービスをユーザに提供するのである。

1998年3月22日

公開: 1998年3月22日 (原文:1998年3月22日)
著者: Jakob Nielsen
原文:The increasing conservatism of Web users

分類キーワード