Webでショッピングする理由
ウェブ上で何らかの製品を購入したユーザに関する最近の調査で、ウェブデザインにとって関連が深い3つの重要な結果が明らかになった。
- ウェブ上で買い物をする一番大きな理由は、利便性と使いやすさにある
- 買い物客がeコマースサイトで費やす時間のうち、実際の購買にかける時間は5%に過ぎない。製品検索、商品比較、その他の購買以外のタスクが全体の95%を占めるので、ユーザのロイヤリティを高めようと思うなら、これらのタスクが簡単にできるようにしておくことだ
- eコマースは国際的な傾向を強めつつある。国外のサイトから購入するユーザも数多い(この結論はアメリカ人顧客にはあまり当てはまらない。彼らはもっぱら国内のサイトから購入しているからだ。だが、アメリカの販売者にとっては、たいへん重要な意味がある。国外の顧客に配慮する手間さえ惜しまなければ、海外向けに大きな売上を上げることができるのだ)
以上はDanish E-Commerce Associationがスポンサーとなって行われた調査の結果である。質問に回答したのはデンマークに住むインターネットユーザ2929人。そのうちで、実際にウェブ上で何か購入したことのあるユーザは1780人(61%)だった。私が参照したのは、実際に買い物をしたことのある後者のユーザ群からの回答だけである。
購入のしやすさが顧客を引き付ける
回答者は、ウェブで買い物をする理由のうち、もっとも重要なものを5つ挙げるよう依頼された。価格の安さは確かに顧客を引き付ける要因ではあるが、回答者の考える重要ポイントとしては第3位に過ぎなかった。回答の大部分は、買い物が簡単に、楽しく、効果的にできるという点に関連するものであった。
ウェブで買い物をする理由 | |
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注文がしやすい | 83% |
商品ラインナップの豊富さ | 63% |
価格の安さ | 63% |
サービスや配達の迅速さ | 52% |
商品についての詳しく明快な情報 | 40% |
店員を気にしないで済む | 39% |
支払いが簡単 | 36% |
ウェブで買い物をする際に探すのはどんな情報か? | |
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製品自体についての詳細な情報 | 82% |
価格比較 | 62% |
販売者についての詳細な情報 | 21% |
あまり驚くべき結果とはいえないが、製品情報と販売者情報に対する関心には、たいへん大きな落差があるという点に注意しておきたい。ウェブ上ではゴール志向が非常に強まり、今購入しようとする製品についての関心が大きくなる。反対にその製品を供給している企業の性格といった抽象的な問題への関心は薄れる。
定性的調査で、こういうことが明らかになった。例えばNew York Timesには、音楽CDを販売する某サイトの副社長が語った次のような発言が引用してある。「顧客が求めるものは何か、彼らに尋ねてみたんですが、その答えは『コミュニティ感覚』でもなければ『ショッピング体験』でもなかったんです。彼らが求めたのは音楽サンプルをもっと増やして欲しいとか、使いやすくして欲しいとか、スピードや、あるいは低価格といったことだったんですよ」
調査目的の訪問や購入以外が目的の訪問も大切にしよう
意図的に製品やサービスの情報を見つけた後、どれくらいの割合でそれを購入するか? | |
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ほとんどいつも | 2% |
3/4くらいの割合で | 14% |
半分くらいの割合で | 30% |
1/4くらいの割合で | 45% |
ほとんどゼロ | 9% |
この質問で「購入」と呼んでいるものには、サイト上での購入、物理的な店舗での購入の両方が含まれている。モチベーションのある買い物客ですら、購入客にコンバートさせるのは容易でない点に注目しよう。購入はしないというのが、平均的な結論である。ユーザが製品情報を意図的に調査する際の行動を単純に見るのではなく、平均的行動に着目すれば、この結論はさらに強まる。この調査のスポンサーとなったeコマースサイトのうち、いずれかにアクセスしたユーザに対して、なぜそのサイトに来たのか尋ねてみた。回答者は以下のように答えた。
一番最近 [参加サイト] にアクセスした理由は何か? | |
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製品情報を求めて | 26% |
その他の情報を求めて | 32% |
モノやサービスの購入のため | 5% |
エンターテイメント的な価値 | 18% |
その他の理由 | 18% |
思い出してほしい。この人たちは、オンラインで買い物をする人たちなのだ。それでも購入目的でeコマースサイトに来る人はたったの5%しかいない。残り95%の顧客行動をサポートすることで、ユーザのロイヤリティを高め、買いたくなったら、またサイトに戻ってきてもらえるようにすることが重要だ。
サイトであまり販売を強調しすぎると、ユーザは引いてしまう(「店員を気にしなくていい」という点をウェブの重要なメリットとして挙げた買い物客が、39%もいたことを思い出そう)。ほとんどの場合、ユーザは製品について調査したいとか、あるいはその他の特定の情報を見つけたいと思っている。だから、実際の売上よりも、アクセス数の方がはるかに多いからといってがっかりすることはない。それは自然なことであり、顧客の望む行動、すなわち比較購入や購入前の製品調査といった行動をサポートしている証拠なのだ。
国外ショッピング
回答者が買い物をしたウェブサイトの場所 | |
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デンマーク | 45% |
その他ヨーロッパ | 17% |
合衆国 | 32% |
その他の国々 | 5% |
買い物のほとんどが国内なのは明らかだ。だが、国外からの買い物もかなりの量に達している。特に、アメリカのウェブサイトは、デンマークと活発に取引をしている。ヨーロッパの2倍売っているという点は、特に注目に値する。ヨーロッパのeコマースを改善する必要があるというのは、この点から明らかだ。
だが、アメリカのeコマース戦略家も、この調査結果の上にあぐらをかくようなことがあってはならない。ヨーロッパの状況も改善されるだろうし、将来的には、より手ごわい競争相手になるはずだ。また、デンマークはいくつかの点で、ちょっと特殊なところがある。国土が非常に狭く、教育水準は格別に高い。よって、デンマーク人がアメリカのサイトで買い物をする確率は、他よりも高いと言えるのだ。大きな国の住人は国内のサービスを求めるだろうし、外国語教育が行き届かない国では、英語オンリーのサイトから買い物をする確率は低いだろう。
1999年2月7日