Web調査:
データを信ぜよ

これまでの間に、ウェブ上でのユーザ行動については、かなりのことがわかっている。例えば、ダウンロードは高速でないといけない。彼らは極端に忍耐力がなく、彼ら自身のゴール達成に役立つサポートが迅速に提供されることを期待している。ところが、ほとんどのウェブサイトは遅く、内部的な都合で運営されていて、ユーザの問題解決には焦点が当たっていない。

調査を無視してはならない: それは、あなたのサイトを何100%も改善することができるのだ。あるプロジェクトで、たとえ当のサイトの顧客から得られたデータがないとしても、普通のサイトで調べたウェブユーザの平均的行動に関する一般的データを利用すべきである。確かに、あなたのサイトがあまりにもユニークで変わっているために、ユーザが、他のサイトとはまったく違った行動をとるということはありうるだろう。だが、私はその可能性は薄いと思う。違っていることを証明するデータがあるのなら、それでいい。だが特定のデータがないのなら、一般的法則に従うのが一番だ。

実例1: 顧客登録は後回しに

顧客登録用フォームは、新しい顧客を獲得する上で命取りになる。デパートの入り口に武装警官を配備して、身分証明書2種類を見せ、各自の家系についての立ち入った質問に答えた人以外は店内に入れない、というのと同じだ。

登録するくらいならどこかよそへ行ってしまうというユーザは少なくない。ごく単純なことだ。彼らには、あなたの質問にいちいち答えているようなヒマはないのだ。うまくいけば、Microsoftが新たに開始したPassportイニシアチブによって、顧客登録のユーザビリティは改善されるかもしれない。だが、ウェブ全体で通用するワンクリック登録の標準が確立されたとしても、やはりユーザにとって登録を強いられることは腹立たしい。忙しいウェブユーザにとっては、クリックひとつでも重労働だ。それより重要なのは、ユーザは、サイトに対する信頼感ができるまでは個人情報を開示したがらないということだ。

  • 顧客登録(あるいは、彼らが達成しようとする目的の前に立ちはだかるようなものはなんであれ)は縮小すべきであり、できるだけ簡単かつ迅速にするべきである。この手のフォームは、すべてユーザビリティテスト済みであることを確認すること。
  • 新しいPassportイニシアチブや、あるいはその他の広く利用されている仕組みに従って、ユーザが一度入力したデータをウェブ全体で再利用できるようにしよう。どんなシステムであれログインは一度だけ、というのが、広く知られたユーザビリティ上の要求項目である。ウェブも同じであるべきだ。
  • 利用プロセスの中では、登録はできるだけ後回しにしよう。新しい顧客にあなたの価値を知ってもらう前に性急にことを進めようとすれば、単に見込み客を逃すことになる。

この法則を無視したサイトでは、「顧客」登録の1/3、あるいはそれ以上がデタラメだったりするのは、よくあることだ。Donald Duckという人はすごい常連ユーザだ、なんて本気で思っている人はまさかいないだろうね?

長年の定性的調査の結果、顧客登録はユーザビリティの障害となり、顧客を逃がす元になることがわかっている。だが、いったいどの程度の障害になるのだろうか?

今月初めに開催されたUsability Professionals’ Associationの年次カンファレンスでは、Intuit社のMarie Tahirが、QuickenMortgage.com(抵当付きの貸付けサイト)を何バージョンか開発する上で使ったユーザビリティプロセスについて発表した。初期のバージョンで大きな問題になったのは、顧客登録を要求するのが早すぎたことだ。この発見にもとづいてサイトが再デザインされ、ユーザは、登録しなくてもサイト内の有用なエリアに入れるようになった。登録はもっと後の段階、つまり、貸付けを行うために本当にユーザの個人情報が必要となる段階まで先送りされた。この結果、利用率は2倍になった。

ここで得られる教訓は2つある。

  • そのとおり。ユーザビリティは役に立つ。あなたのサイトのうち、ユーザが使えない、あるいは使おうとしない部分を改善すれば、結果はすぐに出てくるだろう。
  • 通常、ユーザビリティの改善は大きな成果を生む。これはほんの数%のことを言っているのではない。ユーザビリティに注力した結果、100%、あるいはそれ以上のトラフィック、売上の増加が見られることは珍しくない。

実例2: ウェブマーケティングの有効性

Internet
World
、それにIconocastで紹介された最近の調査結果だが、Forresterではウェブマーケティング担当の重役を対象に、サイトのプロモーションのためにどんな手段をどれくらい用い、それがどれほど効果的だったかを調べている。その結果は、ウェブマーケティング手法の実効性と、その利用度とは反比例するということを示している(図参照)。言い換えると、ウェブマーケティング手法は使えば使うほど、得られる結果が減ってしまう

Scatter plot of Web marketing methods rated for effectiveness and frequency of use
Forrester Researchによるウェブマーケティング担当重役調査(1999年4月)

私が1997年から言っていることだが、ウェブでは広告はうまくいかない。最初の分析ではユーザ行動に関する定性調査を元にしていたのだが、今や、この結論を裏付けるもっと定量的なデータが現れたわけだ。

  • アイトラッキング(視線追跡)調査では、ユーザは広告をまったく見ていないことがわかった
  • わずか数年でクリックスルー率は2%から0.5%にまで下落した
  • 多くのサイトの売上データを見ても、広告をクリックしてやってきた数少ないユーザは、たいして売上に貢献していない – お金を落としてくれる顧客は、たいてい別の手段を通じてやってくるのだ

クリックスルー率の下落は、あらゆるウェブ調査の中でも、もっとも印象的なデータである。過去3年にわたって、このトレンドを示す線は非常に明白で、かつ一貫しているからだ。この線をさらに数年先まで延長してみれば(2000年終わりには0.1%にまで落ち込む)、結論は明らかだ。

  • 実質的な収入をサイトの広告収入に頼るようなインターネットビジネスモデルは作らないこと。1ページビューあたりの収入金額が0.4セントという現在の水準でも、Yahooなら生き残れるかもしれない。なぜなら、1日あたり3億1000万ものページビューがあるからだ。しかし、あなたにその真似はできないだろう。
    自身のサイトのマーケティング計画でも、オンライン広告を中心に考えてはいけない。オフラインでの広告とインターネットに適したマーケティング手法、例えば提携プログラムや電子メール(お知らせを希望した顧客を対象にすること。頼りになる信頼感の高いサイトだという評価を得たいのなら、スパムは絶対にやってはいけない)のような手法を組み合わせるべきだ。

データを見れば一目瞭然のメッセージを無視しているマーケッターが多い。自分たちが得意とする旧来メディアと同じように、ウェブでも広告が成功して欲しいと思っているのだ。だから、彼らはバナーの無駄打ちをやめない。もう一度言おう。データを信じて、次の手を考えよう

私は最近、大手eコマースサイトのマーケティングディレクターにこうたずねた。「どうして提携プログラムをやらないの?外部からのリンクを増やすためのインターネットを使ったマーケティング手法としては、もっともいいやり方(Forresterの調査ではトップスコアをとっている)なのに」その答えは、基本的にこういうものだった。「提携プログラムを始めるにはソフトウェアの改造が必要で、この負担が大きすぎるんだ」同じように答える人は多いだろう。最良のマーケティング手法が、一番利用されていないというのはこれが原因だ。大きなチャンスがここに転がっている。ウェブサイトで簡単に提携プログラムを始められる方法を開発すればいいのだ。ただし、現時点の技術を応用しても、マーケティングプログラムのソフトを開発するためにオタクを1人か2人雇うほうが、これより効果の薄い方法に注ぎ込むよりもずいぶん安あがりなはずだ。

もっと調査が必要

残念ながら、ウェブユーザビリティに関する調査で公に入手可能なものは、まだまだ数が限られている。内部的な調査はいくつか存在するし、自社でそういった調査をやろうと言う企業の数が増えていることはたいへん喜ばしいことだ。だが、公開された調査結果も必要である。そこで得られた知見は一般化することができるからだ。例えば、いくつかの調査結果、ウェブで2番目によく使われる機能はBackボタン(1番はリンクのクリック)であることがわかった。そして、この調査結果は、やたらと新しいブラウザウィンドウを開きたがる人たちに反論する際の大きな根拠となる。「そうしておかないとユーザは元の画面に戻ってこられないだろう」というのが彼らの言い分だが、決してそんなことはないのだ。

特に、大学には、ウェブの利用状況調査をもっと行っていただきたい。ウェブ以前とウェブ以後の世界の変化を研究しようにも、早くしないとすぐに手遅れになるだろう。比較対象とすべき非接続グループに属する人がいなくなってしまう。急げ。

1999年7月11日