ユーザビリティ調査結果を行動しやすいものにする:
良質なレポートを書くための5つのヒント

ユーザビリティテストをより価値あるものにするためには、調査結果から今後の課題を明確に特定して、デザインソリューションに向かうチームの動きを手助けする必要がある。

プロダクトチームはユーザビリティの調査結果の扱い方がわからないと、単にそれを無視するものだ。したがって、ユーザビリティ調査の結果を明確で正確かつ記述的に書き、チームによる課題の特定と、解決に向けた努力を手助けするのはユーザビリティ専門家の責任である。

チームのユーザビリティによるデザイン改善を手助けするための秘訣は、結果を対応策の取りやすいものにすることである。テストをし、結果を分析して、報告を行なっても、チームがそうした結果への対処方法がわからないなら意味がないからである。ユーザビリティの専門家、特にこの業界に入って日が浅い人は、チームが自分の書いた調査結果を活用してくれないと不満を言ったりもする。こうなってしまう理由は数え切れないほどあるが、調査結果自体が問題の原因だったり、悪化させていることは多いのである。

ユーザビリティの調査結果はそれ自体がユーザブルでなければならない。つまり、必要なのはメタユーザビリティ(訳注:ユーザビリティのユーザビリティ)なのである。以下は、ベテランから新人まで、ユーザビリティ専門家が自分のまとめる調査結果のユーザビリティを向上させるための5つのヒントである。このヒントはユーザビリティ関係のマネージャーやクライアント、プロダクトチーム、ユーザビリティレポートの顧客が、自分たちが受け取るレポートの価値をより適切に評価する際にも便利だろう。

具体的に書く

曖昧な調査結果をもらっても、プロダクトチームはほとんど動きようがない。詳細がわからなかったり、説明が不足していると、チームに何が問題なのだろうと思わせてしまったり、その修正の仕方について困らせてしまう可能性もある。

「登録に苦労していた」ことがわかったと言われても、問題の特定にはなってないし、解決のヒントにもならない。では、なぜ登録に苦労したのだろう。ユーザーにはその理由がわかっていたのか。既存ユーザー用のログイン欄を新規ユーザー用の登録欄と間違えたのか。質問が多すぎたのか。フィールドラベルが不明瞭だったのか。入力フォームで求めた情報がユーザーの持ってないものだったのか、わからないことだったのか、あるいは言いたくないことだったのか。ステップに予想外のものがあったのか。ボタンの配置が悪かったのか。

結果とは次のように具体的である必要がある。「サイト登録用のボタンの色のコントラストが弱く、ページの背景に埋没してしまっていた」。ユーザーが苦労する原因となったデザインやフロー、インタラクションは、可能な限り、エリアを具体的に特定しよう。

ユーザーのせいにしない

結果を特定のユーザーと結びつけて書くという罠には陥りやすいものである。たとえば、「そのユーザーはこれをすることができなかった」、「3人のユーザーがそれを見つけることができなかった」というように。こうした結果が焦点を当てているのはユーザーであって、デザインではない。これが問題なのは、責任がユーザーにあるように見えることである。チームメンバーが結果を読んでも、「なるほど、そのユーザーはリンクを見つけられなかったが、他のユーザーだったらできるだろう」と思ってしまい、すぐにその課題を全面的に忘れてしまいがちになる。

これはまた、チームがユーザーの行為をどのようにデザイン変更に置き換えるかもわかりにくくする。調査結果が説明すべきは、ユーザーを混乱させたり間違った経路に導いたりしたデザイン要素である。たとえば、サイトのナビゲーション構造が曖昧だったのか。ラベルやリンクにつけた名前が良くなかったのか。サイトの編成がユーザーの期待したものとずれていたのか。

ユーザビリティセッションの開始時、我々はいつもテストユーザーにこう言うようにしている。「我々がテストしようとしているのはあなたではなく、このシステムです」。これはユーザビリティを布教するための宣伝文句ではない。実際、これこそがテストの結果を最も有益にする考え方なのである。

広い視野で見る

ユーザビリティテストでは細部に焦点を当てすぎ、大問題に気づかないままになってしまうということが起こりやすい。小さな課題を特定するのも重要だが、それはそのデザインにあるより大きな課題の検討を犠牲にしてまで行うことではない。たとえば、ボタンのデザインやリンクの名前を変えることはプロセス内の各ステップの改善にはなるかもしれない。しかし、それによって、ユーザーの期待に合っていなかったり、彼らのニーズを満足させていないプロセス自体の修正をすることは不可能なのである。

レポートで細部に焦点を当てすぎると、それが原因でチームがデザインにバンドエイドを貼りまくることになる可能性もある。苦しんでいるのは実は足が折れているからなのだが。ユーザーがあらゆるステップで苦労しているなら、うまくいかない理由はたぶん全体のフローや構造にあり、その途中にあるささいなことのせいではないだろう。

しかし、現実には、プロジェクトの多くはデザイン上の大きな課題を修正する時間もなければ、リソースもない。少なくとも、すぐには修正できないのである。したがって、レポートには細かい点についての記録を残そう。しかし、大きな、包括的課題についての調査結果も入れるようにし、そうしたことが見過ごされないようにもしよう。

解決策を特定する手助けをする

ほとんどのチームでのユーザビリティ専門家の仕事は、デザインに関する課題を特定することである。つまり、デザインの修正はデザインと開発部門の仕事なのである。しかしながら、ユーザビリティ専門家が、デザイン解決策について独自の専門的アイデアを持っていることは多い。彼らはユーザビリティテストで何が機能したか、さらには、何が機能しなかったかを直に見て知っているし、あるデザインで何が機能し、何が機能しないかを、長年にわたって理解しようとしてきたかもしれないからだ。彼らは可能なデザイン解決策についての知見を提供することもできるのである。

とはいえ、ユーザビリティレポートはユーザビリティ専門家が自分の役割を逸脱するとだめになる。調査結果はデザイン全体をやり直した詳細なワイヤーフレームという形はとってはならない。新しいワイヤーフレーム一式を調査結果のリストの代わりに渡すのはチームを怒らせる原因になりかねない。簡単なモックアップをあちこちで使い、要点を説明するのは許容範囲である。しかし、全面的に変更された設計図があると、チームは調査結果の有用性どころではなくなってしまうだろう。

デザインや開発のチームと協力して作業するようにし、ただ報告したらプロジェクトから離れるということはしないようにしよう。結果を議論のかたちで提示すれば、ユーザビリティ専門家は、ユーザーがそのデザインで経験した問題(あるいは成功)を直に目撃したものとして、どんな解決策ならそのデザインでの問題を解決できそうか、あるいはできなさそうかについて、専門家としての知見を付け加えることができる。テストで出てきた課題の対処方法をチームで判断するミーティングは予定に入れておいて、参加しよう。ユーザビリティのセッションにチームメンバーを呼び、セッションの間にチームとデブリーフィングをするとさらにいいだろう。

デザイン変更についてのアドバイスをユーザビリティレポートに入れるという手もある。そうしたアドバイスはチームが課題を理解し、可能な解決策を考え始める手助けとなる。そこでは、ボタンを動かしたり、ラベルを変えること、ナビゲーションのカテゴリーを組み合わせたり、リンク名をもっと明確にすることを提案しよう。しかし、アドバイスはアドバイスとして提示しよう。アドバイスにはそれらしい表示をし、チームには文字、あるいは生で直接、そのアドバイスの意図はデザインの解決策を考えるきっかけとなり、ユーザビリティ上の課題を説明することであり、唯一あるいは最高の解決策として提示しているわけではない、と説明しよう。創造的なデザイナーならもっといい案を考え出してくれるかもしれないからである。

結果を整理してランク付けする

ユーザビリティテストを通して発見された課題はどれも同じくらい重要なわけではない。その上、ユーザビリティのレポートに含まれる調査結果は、調査の規模やテストするデザイン、担当するユーザビリティ専門家によって、5個のこともあれば、100個のこともありうる。したがって、チームに必要なのは結果を解析して、1)自分が担当している画面やデザイン、要素に関係するものはどれか、2)ユーザビリティの観点から見てどの問題が最大の課題だったのか、を見つける方法である。

調査結果は類似したものごとにまとめられるべきである。つまり、ナビゲーション関係の課題についてのセクションもあれば、特定のページやタスクフローについてのセクションがあったりするだろう。さらに、調査結果は問題の深刻度によってもランク付けされるべきである。たとえば、その問題は1人のユーザーをつまずかせたちょっとしたものだったのか。2つのセッションでしか見られなかったが、そのユーザーの全体的なエクスペリエンスを狂わせたものだったのか。それとも、非常に問題としては大きなもので、その課題に対処しない限り、プロダクトの成功はありえないようなものだったのか。低中高と調査結果のランク付けをすると、ユーザビリティ調査で明らかになった課題がどの程度重要なものかがチームにわかりやすくなる。良かった結果も忘れずに入れよう。そうすればチームには今の時点で何がうまくいっているかがわかることになる。

記述的なレポートによって将来価値を積み上げる

この記事にあるアドバイスが提供するのは、即時的な価値である。それは、現在のデザインフェーズにおいてユーザビリティの知見が作用する機会の増加によるものだ。これはまた、組織のユーザビリティ投資のROIも向上させる。プロダクトを改善することで、コンバージョンレートの向上、顧客満足度の向上、エラーの減少、等の測定可能なメリットがもたらされるからである。(活用されない調査結果が利益を生むことはない)。

調査結果のより適切な説明が提供するのは、顧客についての知識が組織にさらに蓄積されることによる、将来価値である。ユーザビリティ結果のアーカイブを続けていけば、将来、デザインプロジェクトを計画実行するときにこうした知見を駆使することが可能になる。そうすれば、デザインについて、同じ間違いは二度としなくなるだろう。

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調査レポート(英文)

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公開:2013年10月21日(原文:2013年9月14日)
著者:Amy Schade
原文:Making Usability Findings Actionable: 5 Tips for Writing Better Reports

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