ECサイトのユーザビリティ

サイトは改善されてきており、電子小売業のユーザビリティについての我々の知識もかなり増えている。今日では貧弱なコンテンツがユーザーの失敗の主な原因である。

eコマースユーザビリティについての最初の調査から11年が経ち、このトピックを再び扱うに価する時間が十分に経過した。今度の調査の結論は何かって? それはeコマースサイトのユーザビリティガイドラインの数が初版レポートの207個から最新版では874個に増加した、ということである。この大ざっぱな測定基準を用いると、ドットコムバブル時代に比べて、我々はeコマースのユーザーエクスペリンスについて4.2倍知っていることになる。

ユーザビリティ: 際立った進歩

11年前の調査では、当時のeコマースサイト上で試みられた496個のタスクの成功率56%だった。新しい調査では507個のeコマースのタスクが試みられるところを観察し、成功率は72%となった。

言い換えると、ドットコムバブル時代にはeコマースサイトで買い物をしようとするユーザーは、ほぼ2回に1回はうまくいかなかった。それほどサイトの質が悪ければ、バブルがはじけたのも当然だろう。今ではユーザーの失敗は4回に1回よりわずかに多い程度である。テーブルの上にたくさんのお金を置いたままにするかのように、サイトはチャンスを逃し続けてはいるが、その回数は以前ほどではなくなってきている。

現在、我々がeコマースサイトのユーザビリティを向上させるように勧める主な理由が、品質を向上させ続けている他サイトからの競争圧力である。今日の消費者は買い物を可能にするだけのサイトには満足しない。エクスペリエンス自体が楽しいものである必要もあるのだ。したがって、ユーザーの失敗を純粋に減らすためにデザインを向上させることには賛成できる一方、いまやシンプルな成功率の先にあるものを見る必要がある。そこではタスクを達成する能力がユーザーにあることが第一条件になるのは明らかだが。

検索はいくらか改善されてきてはいるが、依然として不満の種である。最初の調査では、ユーザーがあるeコマースサイトで初めて検索を試みたときの成功する割合は51%だった。新しい調査ではユーザーの最初のサイト内検索で成功する割合は64%となった。

しかしながら、ユーザーが期待する検索の質というのは今、実際にウェブサイトが提供しているものをはるかに上回っている。ウェブユーザビリティのほとんどの側面と同じように、ユーザーの期待というのは、ウェブ周辺で集められたユーザーエクスペリンスによって形作られる。(Jakobの法則にあるように、ユーザーは大部分の時間をあなたのところ以外のサイトで費やしている)。検索の事例でいうと、このことが意味するのは、Google等の大手の検索エンジンは完璧ではないとはいえ、かなりよく機能しているということである。

ユーザーはeコマースサイトを検索しても欲しいものが見つからないとき、そのサイトにはお目当ての商品がないと思うことが多い。ユーザーの検索スキルは低いので、彼らは検索キーワードをどう変えるかを考えるよりは、通常はサイトを離れてしまうだろう。

過去の調査結果は有効

我々の最初の調査では、衣類、デパート、エンターテイメント、花、食品、家具、おもちゃという7種類の商品カテゴリーの20個のウェブサイトに関する、ラボベースのユーザビリティテストについて報告した。テストはアメリカとデンマークの2カ国で実施された。比較的、限定的なものであったにもかかわらず、この調査は当時の他の誰が実施したものよりも内容が多かった。そして、結果として得られた207個の初期のガイドラインのうちの206個が、今回の、ずっと複雑な調査によって確認された

取り消された1個のガイドラインはなんだったのか。それは新規顧客には専用のウェルカムページを提供しようというものである。今日ではユーザーはあなた方のサイトに到着するまでに、すでに他のサイトで買い物をしたことがあると考えて、まず間違いない。eコマースは今や新しいものでもないので、それがどんなものであるかをユーザーに伝える必要はない。サイトが利用しやすければ、ユーザーはそこを利用するだろう。

11年経ったガイドラインの99.5%が確認されたという事実からわかるのは、ユーザビリティ上の発見の息の長さである。我々のデザインアドバイスは人の心の特性に基づいているので、現場で多くの人を夢中にさせそうなテクノロジーよりもずっと変化の速度が遅いからである。

新しいユーザー調査

新しい調査では3個のユーザビリティ手法が用いられた。それは昔からある(最初の調査でも使われた)ユーザーテストアイトラッキングダイアリー調査形式のフィールド調査である。調査は3カ国で実施したが、ほとんどのセッションはアメリカ(のGeorgiaとIndiana、New York)で実施し、少数ながら中国とイギリスのユーザーでも調査した。

合計すると、ユーザーがテストしたのは206個のサイトであるが、それは最初の調査でテストした数の10倍以上だった。しかし、上述したように、我々が確認したのは最初の調査の「わずか」4.2倍の数のユーザビリティガイドラインだった。このことからわかるのは、ユーザー調査の研究の広がりによって、調査から得られるリターンは幾分減ってきている、ということである。

テスト対象のサイトは、ものすごく広い範囲の産業や商品にわたっていた。たとえば、高尚な文化から俗っぽいもの(Paris Museum PassとNASCAR)、安いものから高いもの(WalmartとTiffany’s)、バーチャルなものから物理的なもの(TicketmasterとThe Container Store)、一般的に興味を持たれるものからかなり専門的なもの(ZapposとLightbulbs.com)まで。

ダイアリー調査以外のすべての調査では、ユーザーのオンラインショッピング中の実際の行動を直接的に経験的観察することで実施した。我々はユーザーの隣に1対1で座り、ユーザーには具体的なタスクを行いながら、考えていることを声に出してもらうように依頼した。この調査アプローチによって、ユーザーの行動する理由についての深い洞察と、他の手法では得られない調査結果が手に入れられるのである。

テストのタスクの中にはかなり指示的なものもあり、そこでは事前に定めた目標のためにサイトにたどり着いたユーザーを、デザインがどの程度サポートしたかを評価した。タスクの例は以下のようなものだった。「10フィート×20フィート(200平方フィート(=18.58平方メートル))の広さの部屋の窓に設置するエアコンを買ってください。省エネタイプでリモコン付きのものをお願いします。そういうエアコンをwww.homedepot.comから購入してください」。

タスクにはより幅広いものもあり、そこでは特定のニーズがないユーザーを、サイトがどの程度買う気にさせることができたかを評価した。タスクの例は以下のようなものだった。「あなたは最近、昇進して、ボーナスをもらったので、自分にご褒美をあげたいと考えています。自分に何かを買ってみてください。Links of London(ジュエリーショップ)で200ポンドでお願いします」。

また、ユーザーが訪問すべきサイトを特定しないウェブ横断型タスクもテストした。例えばあるタスクでは、ユーザーに切れた電球を与えて、以下のような指示をした。「デスクライトの電球がちょうど切れてしまいました。交換するランプを手に入れてください」。

最後になるが、カスタマーサービスのタスクもいろいろとテストした。タスクの例は以下のようなものだった。「台風警報が発令されたら、cinema.com.hkで買ったチケットは払い戻しできるでしょうか」。

様々なタイプの顧客をサポートする

ダイアリー調査では自発的にタスクを実行するときに、人々がなぜ、そしてどのように自ら買い物をするのかを調べた。ダイアリーを書いた人達は合計263個のeコマースサイトを訪問した。

3分の2の割合で、ユーザーは事前に決めた目標のためにサイトを訪問した。つまり、35%の訪問では特定の種類の商品を(特定の商品を念頭に置かずに)探し、27%の訪問では特定の商品を探した。

3分の1の割合で、ユーザーは何がセールになっているかをチェックするためにサイトを訪問していた。こうした訪問はEメールニュースレターの受信や、売り出しや特別セールについて知ることがきっかけになることが多かった。

したがって、サイトがサポートしなければならないタスクは次の4種類すべてである:

  • 知っているアイテムの購入
  • カテゴリーの調査。つまり、自分のニーズに一番合う商品をユーザーはどこで確認し、買えるのか
  • 特売品狙い
  • 刺激を得るためのブラウジング

最後に、ユーザーの中には1回限りの顧客になる者もいる。彼らはそのサイトについて知らないし、そこにもう1度来る気もないが、(例えば、ギフトカードをもらったので、あるいは親戚がそのサイトが扱っている商品をプレゼントとして欲しがったので)1回だけ買い物をするだろうという人たちである。

質の悪いコンテンツは売上に悪影響を及ぼす

eコマースデザインの最初のルールは変わらない。つまり、顧客は商品を見つけることができなければ、買うことはできない。

しかし新しい調査での主な問題は、商品を見つけることではなく、商品についての情報を見つけることだった。実際のところ、観察された143個のユーザーの失敗のうち、55%はコンテンツの質の悪さが原因だった。その典型的なものが、不十分だったりはっきりしない情報、あるいは役に立たないエラーメッセージである。時にユーザーはサイトへの電話やメールを考えていると言うが、それは彼らの質問にその企業がサイトそのもので答えるチャンスを放棄しているということを明らかに示している。

コンテンツは言葉で表すこともできれば、視覚的に表すこともできるが、いずれにしろ、ユーザーが商品について判断し、そのサイトを気持ちよく信頼してお金を使うために必要な情報を提供する必要がある。

eコマースの弱みの大きなものは、販売されているものをユーザーが触ったり、感じを確かめたり、見たり、味わったり、嗅いだりすることができないことである。また、代金を支払う前に品物を手に持って、本質的に確かめることもできない。すなわち、触覚的なエクスペリエンスがないのだ。オンラインショッピングは純粋に情報のエクスペリエンスである。(あるいはユーザーエクスペリエンスであると我々は言いたい)。繰り返すが、ここでは良質なコンテンツが非常に重視される。そして、多くのサイトがそれを提供することに失敗している。

最後になるが、ユーザーが商品の写真をもっと大きくしてほしいというのであれば、そのサイトは写真を劇的に大きくすべきである、というガイドラインを一体何度言ったらいいのだろう。写真の拡大が不十分であることは2005年 ウェブデザインの間違い・トップ10の10番目に挙がっていたものである。しかし、古いガイドラインにもかかわらず、いまだに頻繁に破られている。

ロイヤルティ=ビジネス

調査参加者の1人がこう言った。「なにかで良いエクスペリエンスを経験したら、ずっとそれを使い続けるでしょう」。すべてのユーザーがこれほど忠実なわけではないが、調査から明らかに示されているのは、eコマースで顧客ロイヤルティを育てることによる利益はとてつもない、ということである。

ウェブ横断型のタスクではユーザーが買い物をするのに訪問すべきサイトを特定しなかった。そこで、ユーザーの半数がまっすぐ検索エンジンに向かったのは予想通りだったが、あとの半分のユーザーが自分の既に知っているサイトに直接行ったことはちょっとした驚きだった。

情報ハイウェイ上で検索エンジンという料金所を迂回することは、ユーザーのロイヤルティから得られる一番の利益である。しかしその利点の行きつくところはもっと先にある。

ウェブを検索することから始めたユーザーのうち、SERP(検索エンジン結果ページ)から選んだ最初のサイト上でタスクを達成した人はわずか39%だった。つまり、検索をしたユーザーのほぼ3分の2は初恋の相手を捨て、別のところで買い物をしようと移動したことになる。この結果から明らかになるのは、インターネットビジネスで成功するには、SEO(検索エンジン最適化)と検索エンジンでの高いランクが必要だが、それだけでは十分でない、ということである。実際にもっと重要なのは、サイトに来たユーザーを満足させることなのだ。検索のユーザーにはたまたまクリックしたサイトに対するロイヤルティがほとんど見られないからである。

対照的に、検索を迂回して、直接好きなサイトに行ったユーザーは圧倒的にそのサイトでお金を使う。具体的には、71%のユーザーがそうした一方、他サイトでタスクを達成したのは29%のみだった。(もちろん、後者のグループによって失った取引高はかなりのものである。たとえあなた方のサイトに忠実であっても、eコマースのユーザーは明らかに見くびってはならないのである)。

ロイヤルティがもたらす利益を考えると、強引にユーザー登録を要求したくなることもあるだろう。しかしそれは間違っている。あなた方に必要なのは、初めてのユーザーがなじみ客になる前に彼らを改宗させることである。前もっての登録をユーザーは非常に腹立たしく感じるからである。その一方、買い物を済ませるために嫌々ながらも大量のデータの記入が必要なことについて、よくユーザーは不満を言っていた。リピーターにはそれが時間の節約になることを気づかせれば、最終的には彼らを登録に向け、動かすことができるだろう。

一般には、サイトというのは全販売サイクルとユーザーエクスペリンス全体に関する長期的視点から恩恵を受ける。トランスメディアデザイン戦略はモバイルサイトとEメールニュースレター戦略、(良質な確認のメッセージを含む)良質なカスタマーサービスを包含するためにメインのウェブサイトを越えるべきなのである。そう、eコマースのユーザーエクスペリンスは遠くまで来ることができた。しかし、顧客のニーズを真に満たすためには、さらに先へ行く必要があるだろう。

公開:2011年11月7日(原文:2011年10月24日)
著者:Jakob Nielsen
原文:E-Commerce Usability

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