Eメールニュースレター:
高まるユーザビリティ
最新の調査によると、ニュースレターの購読申し込み時のユーザビリティ指標は改善されてきている。しかし、ニュースレターをモバイル機器上で読むには、問題があることが明らかになった。
Eメールニュースレターは、依然として、インターネット上でウェブサイトを補完する最適なツールである。2つのメディアは以下のように補完しあっている:
ニュースレター | ウェブサイト |
---|---|
プッシュ型 | プル型 |
ニュース | 調査 |
ユーザーと関係を結ぶ | ユーザーの要求を満たす |
4回のユーザー調査
我々は4回の調査を通して、ニュースレターのユーザビリティを調べた:
- 調査1(8年前): 15人の参加者によるラボでのテスト。主に調べたのは、購読申し込みと購読解除のプロセス、およびニュースレターを受信し、開くこと。
- 調査2(6年前): 6カ国(オーストラリア、中国、日本、スウェーデン、イギリス、アメリカ)での、30人の参加者によるダイアリー調査。4週間に渡り、購読者の日常生活における、Eメールニュースレターの役割を調査。
- 調査3(4年前): 42人の参加者によるアイトラッキング調査と、6人の参加者によるフィールド調査。重点的に調べたのは、Eメールの受信箱とニュースレターのコンテンツがどのように読まれているか(あるいは、主には、流し読みをされているか)。
- 調査4(最新): アメリカとイギリスでの16人のユーザーによるラボでのテスト。その内容としては、モバイル機器を利用してのテストや、ニュースレターのコンテンツにおける口調の影響の研究など。
つまり、ニュースレターのユーザーエクスペリエンスのための我々のデザインガイドラインは、合計109人の参加者を通じた270のニュースレターについての体系的調査と、調査参加者が個々の受信箱で受信済みだった、さらに数百ものニュースレターについての1回のテストが現時点でベースになっている。
確認された以前の調査結果
最初の3回のニュースレター調査の結果のほとんどが、新しい調査でも確認された。
購読申し込みのインタフェースや件名といった、「昔からある」テーマが対象だったとはいえ、ユーザー調査を繰り返すといつもそうなるように、いくつかの変化や新たな知見も見つかってはいる。そして、ニュースレターのユーザビリティのためのガイドラインは149から199に増加した。(つまり、容認可能とされるユーザーエクスペリエンスの水準は上がり続けている)。
しかし、新しい発見のほとんどは、ソーシャルネットワーク、ビデオ、モバイルアクセスといった、前回調査以降、目に付くようになったエリアで見つかった。こうした新しいテーマは後ほど集中して取りあげることにして、まずは、重要な2つの論点について見ていきたいと思う。それは、ユーザーが受信する莫大な量のEメールについて、と、ユーザビリティがどのようにだんだんと展開してきているか、についてである。
Eメール: 増加の一途
前回調査からの明らかなトレンドの1つが、人々の受信箱に入っているメールの量がますます増加している、ということである。第3回と第4回の両方の調査で、ユーザーには自分のEメールアカウントにログインしてもらうことを依頼したが、たった4年前と比べても、新規、あるいは未読のメッセージの数は今回の方が300%も多かった。
明らかなのは、自分に来たEメールを処理し続けることに、ユーザーがかなり追いついていないということである。しかし、このことによって、メッセージに確実に注目してもらえるよう、「from」(送信元)と「subject」行(件名)をわかりやすく書くことが重要だという、従来からのガイドラインに変わりはない。実際に、受信箱が混み合うほど、このガイドラインが本当により重要になってくる。過去には、ニュースレターの件名が、内容の特定できないようなものだったり、スパムのようなものだったりしても許されていたこともあったかもしれない。しかし、今日、そうしたようなデザインをしてしまうと、酷い目に遭うだろう。
InterContinental Hotelsで見た件名に、次のような酷いものがあった。「Open Your (I)s to the Wonders of the Sea(海の不思議にあなたの(I)を向けよう)」。そう、それはその会社のロゴマークに入っている「(I)」の気の利いた引用である。もし、ユーザーも時間をかけて考えれば、これを「eyes(:目)」と読むとわかるだろう。しかし、受信箱を急いで全部チェックしようとしている間に、言葉遊びやダジャレのようなものに付き合う時間などないものである。また、ユーザーにメッセージを開かせるには、「海の不思議」などといった、どうとでも取れるような件名ではなく、もっとずっと強力な情報の匂いがそこには必要である。
件名の他にも、最近のユーザーは、メッセージのプレビューにより注意するようになっている。こうした変化はEメールの量が増加したこと(プレビューを見ればメッセージを全部開けなくても削除するか、残しておくか、ユーザーが決めることができるから)、モバイルでのアクセスが増えたこと(小さい画面上ではユーザーはたくさんのものを見ることができないから)が、一因になっている。
最も重要な内容でニュースレターを始める、というのは従来からあるガイドラインだが、プレビューの利用の増加によって、メッセージの冒頭におく、価値の高いコンテンツに力を注ぐことが、より重要になってきている。なぜならば、ユーザーがその先を見るという可能性は、いまやほとんどないからである。(ほぼ言うまでもないのだろうが、「価値の高さ」は、受信者にとって重要なのは何かという基準で判断される。現在、あなたがたが売り込みたいものが基準になるのではない)。
ニュースレターのユーザビリティの向上
購読申し込みのユーザーインタフェースについて3回調査してきたが、測定されたユーザビリティの結果は1回ごとに向上している:
- 調査1(8年前): 成功率79%、タスク達成に要した時間5分4秒。
- 調査3(4年前): 成功率81%、タスク達成に要した時間4分3秒。
- 調査4(今回): 成功率85%、タスク達成に要した時間3分32秒。
タスクを達成する時間が早くなっていっているのが特に素晴らしい。8年間で43%向上している。
ユーザーエクスペリエンスの指標が徐々に向上しているとき、その理由として考えられる説明は2つ、デザインのユーザビリティが向上したため、あるいはユーザーのスキルが向上したため、である。Eメールニュースレターの事例では、両者の可能性は少しずつある。しかし、一般的に考えると、8年前に比べて、ニュースレターの購読申し込みに関するユーザーの知識が大幅に増えたとも思えない。
したがって、パフォーマンスが向上したことの説明として主に考えられるのは、ニュースレターの購読者を惹きつけようとして、ウェブサイトのデザインが本当に良くなってきていることだろう。2004年と2010年の国政選挙時に発行された、政治キャンペーン用のニュースレターについての我々の分析から、この判断を裏付けるデータを得ることができる。政党間を平均すると、我々のユーザビリティガイドラインに対する、そうしたニュースレターの適合度は以下の通りであった:
少なくとも、選挙用のニュースレターという限られた事例においては、デザインは次第に良くなってきている。もちろん、我々が期待するほどの伸びではなく、年ごとの成功率の伸びは1ポイントを少し下回る程度でしかないが、それでも、状況は良くなってきてはいる。
ソーシャルネットワークとの競合
Eメールニュースレターは、FacebookやTwitterのようなソーシャルネットワーク上に投稿される最新情報より、顧客との関係を保つ方法としては優れている:
- ニュースレターというのは受信箱に入って、そこに留まるものである。その一方、ソーシャルネットワークではストリームベースのインタフェースというメタファーが利用されているため、新たな投稿があると、古い投稿は次々と置き換えられていく。
- ソーシャルネットワークのテストでわかったように、こうしたサービスは主に、家族や友達と連絡を取り合うために利用されようとしている。企業によるコンテンツはこうした考え方とは合わないことも多い。
- ニュースレターのデザインは管理できるものであり、そこには非常に多くの情報を持たせることができる。あるユーザーはニュースレターとFacebookのアップデートについて、次のような比較をしてくれた: 「よりたくさんの情報が得られるのは、Facebookよりもニュースレターです。私にとってのFacebookは進行中の何かについての一般的な面白い話といった感じのものですが、ニュースレターには内容があり、そこでは様々な話題やテーマが詳しく取りあげられています」。
最新の調査ではユーザーに企業からの「最新情報を受け取る」ように依頼した。それをするためにFacebookを選んだユーザーはわずか10%で、90%のユーザーがニュースレターのほうを選んだ。
ソーシャルネットワークを通して企業の最新情報を受け取ることに、ユーザーは実際には関心がない。とはいえ、ソーシャルネットワークも人々の注目を引くためには競い合わなければならない情報ソースである。ユーザーの中には、Eメール経由で受信するニュースアラートよりも先に、Facebookを通してニュース速報を知ったという人もいた。
ニュースレターの購読者というのは、たいていはあなたがたのもっとも忠実な顧客やファンである。したがって、ソーシャルネットワーク上にいる気まぐれなオーディエンスより、丁寧に彼らを扱うことが重要である。ニュースレターのコンテンツを充実させるというのが、その方法の1つであることは明らかだが、例えば、販売や新製品について知らせるニュースレターも、そのニュースをTwitterでつぶやく前に、確実に送信すべきといえる。
肯定的な面としては、ニュースレターによって、購読者に社会的な利益をもたらすことが可能である。つまり、購読者が彼ら自身とつながっている相手に向かって投稿できるような、ちょっとした話をフィードすることができるのである。それによって、彼らは自分達が情報に通じているという気分を味わえる。これはあなた方のもっとも忠実なフォロワーに報いるための手段であるが、その間、あなたがたのメッセージはソーシャルサービス上で拡散し続けていくことにもなる。
モバイルでの利用: 速読、遅読
2000年に実施したモバイル機器を対象にした最初の調査以来、モバイルでの利用には暇つぶしになるものがキラーアプリになることがわかっていた。外に出かけると、時間を数分間、つぶさなくてはならなくなることは多いが、モバイルコンテンツによって、そうしたニーズを満たすことが可能だからである。
新しく実施した調査でも、この結論は変わらなかった。つまり、ユーザーの多くは、時間が空いたとき、モバイル機器上でニュースレターを読んでいた。こうしたときには、デスクトップコンピューター上でEメールを処理しながらいつも読んでいるものよりも、もっと長い内容のものを読みたいというユーザーもいた。
その一方、モバイル利用時には、デスクトップ使用時よりも時間のプレッシャーがさらに強いことが、多くの場合の特徴である。モバイル機器上でのメールチェックは、プライオリティの高いメッセージだけを見たいとき、短い休憩時間中によく行われるからである。
したがって、ニュースレターには、モバイルでの利用のため、より理解しやすく、要領を得たものであるべき、というものもあれば、よりくつろいだコンテンツを提示しても差し支えない、というものもある。いずれの利用シナリオの条件も満たせない中途半端なところを狙うくらいなら、どちらか一方を目指すほうがいいだろう。
最新の調査で見つかった大きな問題の1つが、モバイル機器の小さな画面上で読むには、フォーマットがお粗末なニュースレターが多い、ということである。実際のところ、モバイル機器上でのニュースレターの読みやすさについての評点は、7段階評価で3.3と、悲惨なものだった。
Eメール内のビデオ
ビデオはニュースレター内での役目がある。しかし、その役目はたいていのテーマにおいては、ちょっとしたものである。ユーザーはメールを処理しているとき、急いでいることが多いのに、ビデオを見ると、時間がかかってしまうからである。調査対象者の1人はこう言っていた。「おそらく、これは見ないと思います。テキストでなく、ビデオだからです。私が見たいのは記事であって、ビデオではありません。ビデオだと全部見なければなりませんからね。たとえたったの1分でも、ビデオを見る気にはなれません。それに、携帯だったら見られないかもしれないし。とにかく、携帯ではそういうものを見たくないんです」。
たいていの場合、ニュースレターのビデオというのは、ニュースレター内でユーザーが直接流し読み可能なテキストや画像の二次的かつ補助的なものであるべきである。ユーザーに正しい期待をしてもらうためには、リンク先がビデオなのか、記事なのかは、デザインによって、完全にはっきりさせておく必要がある。
ユーザーは何が見られるのかがはっきりしない場合には、ニュースレター内のビデオをクリックすることをためらっていた。重要なのは、明確に、そのビデオについて文字で説明するということである。また、そのビデオの特徴を伝えるプレビュー画像は、単に最初のコマを見せるのではなく、慎重に選んだほうが良い。最後になったが、ビデオの長さは明記しておこう。
インターネット(とニュースレター)には長生きしてもらおう
ウェブやEメール、ニュースレターというのは、正確に言うと、もはや新しい現象ではない。結果として、興味深い、長く続いていることによる効果について、我々は今、目にしている。例えば、ある調査参加者は、(紙媒体の)本の中で、あるニュースレターについて読んだ後、そのニュースレターの購読を決めた。別の参加者はあるカンファレンスに(「正直に言うと、無料のトートバッグをもらうために」)出席している間にあるニュースレターへの購読申し込みをし、そのイベントが終了した途端に、そのニュースレターを読み始めた。
我々のユーザーの50%の人が言うには、Eメールニュースレターは彼らのB2Bの購買に影響を及ぼしている。しかし、そうした効果はいつもではなく、タイミングがうまく合ったときにのみ起こる。ニュースレターはベンダーの評判を高めたり、保ち続けること、あるいは、ユーザーが積極的にビジネスを行う予算が十分でない閑散期に、彼らとの関係を維持することに役立つ場合が多いといえる。
カスタマーリレーションシップに関していうと、ニュースレターというのは長期の投資として見なされる必要がある。つまり、その魔法は徐々に効いてくる。戦略的にいうと、だからこそ、付加価値の高い内容を発行できるように力を入れるべきであり、くだらないだけのニュースレターを手に入るあらゆるEメールアドレスにやたら送りつけるようなことはすべきではない。より戦術的にいうと、だからこそ、何年にもわたって、同じURLを使い続けようというような古いガイドラインには従うべきといえる。毎シーズン、新しいマイクロサイトを構築する(そして、破棄する)べきではないのである。