インタビュー質問の作成でやりがちな6つの間違い

ユーザーインタビューでの質問方法は、収集するデータの信頼性と有用性に影響する。ここでは、インタビューの質問をより良いものにするための6つの方法を紹介する。

ユーザーインタビューは、ユーザーの経験、背景、ニーズ、要望に関する情報を明らかにする素晴らしい方法である。とはいえ、インタビューの質問を作成するには、ある程度の配慮と注意が必要だ。アンケートには適している質問が、ユーザーインタビューにも適切であるとは限らないからだ。また、質問の構成の仕方が不適切だと、参加者が混乱したり、彼らの思考や感情、ニーズ、欲求が不正確に伝わることになり、その結果、正しくない洞察を導き出してしまう恐れもある。この記事では、インタビューの質問を作成する際によくやる6つの間違いを取り上げ、それを改善する方法を提案する。

1.  スクリーナー調査で聞くべき質問から始める

インタビュー初心者の中には、参加者に関する事実を多く知ろうとして、インタビューガイドクローズド型(選択式)の質問だらけにしてしまう人がいる。たとえば、自宅での調理に関する経験について調査しているとする。そのインタビューの冒頭では、以下のような質問をあれこれしがちだ:

  • どのくらいの頻度で料理をしますか。
  • 食事に関する制限はありますか。
  • ミールキットサービスを試したことはありますか。
  • どのくらいの頻度で食材を買いますか。

ユーザーインタビューという状況を考えると、上記のような質問はクローズド型の質問と見なされる。可能な回答がそれぞれの問いに対して数種類しかないからだ。(もちろん、クローズド型の質問をオープンエンド型(自由回答形式)の質問と解釈し、さらに説明を付け足す参加者がいる可能性はある)。インタビューの冒頭でこのようなクローズド型の質問を多数することの問題点は、参加者が自分の経験についての話をすることができず、参加者との信頼関係を築く妨げになることだ。また、オープンエンドの質問ではなく、クローズドな質問をしてしまうと、聞こうとしなかったことは知ることができない!という問題もある。

インタビューの焦点を絞るためにクローズドな質問をすることが重要になってくる場合は、クローズド型質問は、スクリーナーアンケートに組み込めばよい。そこで得られる回答は、インタビューガイドを調整したり、インタビューのどこに重点を置くべきかを知るのに役立つはずだ。忘れてはならないのは、どんなユーザー調査も、参加者と過ごす時間には厳密なスケジュールがあるということだ。(そして、アンケートのようなモデレーターがいない手法の場合、ユーザーが調査に使う時間はほんのわずかである)。したがって、この限られた時間を最も重要な調査課題に割り当て、シンプルな方法ではなかなか集められないようなデータを収集する必要がある。

インタビューでクローズドな質問をすること自体には何の問題もない。実際、参加者が話していることを詳しく聞いたり、明確にするには、こうした質問が必要だ。しかし、参加者が自分の経験を共有できるようなオープンエンド型の質問をすることから始めるほうがずっといい。また、オープンエンドな質問から始めることで、あまり構造化されていないコミュニケーションをする準備ができ、参加者が後で詳細を話すきっかけを作ることもできる。こうした質問の例としては、以下のようなものがある:

  • 自分で料理をしたときのことについて教えてください。
  • 一番最近料理をしたときのことについて教えてください。
  • 新しいレシピで料理をしたときのことについて教えてください。

2.  典型的な行動についてのみ質問する

インタビュー初心者がやってしまう失敗には、典型的な行動について「のみ」聞く、というものもある。たとえば、以下のような質問について考えてみよう:

  • 何を食べるのかを普段、どのように決めていますか。
  • どのような調理器具を使うことが多いですか。
  • いつもどのように食事の準備をしているかを教えてください。

典型的な行動についてのみ聞くと、信頼できる詳細な情報を得ることが難しくなる。ユーザーが通常行っていること(そのようなことがあるとすればだが)と、通常行っていると彼らが「思っている」ことは違うかもしれないからだ! そのうえ、このような質問に対する回答からは、状況的な要因に大きく依存する参加者の行動を捉えることはできない。したがって、典型的だと思っていることを彼らに説明してもらうよりも、具体的な例について尋ねるほうがずっといいだろう

とはいえ、インタビューの冒頭でインタビュアーがグランドツアー型の質問(訳注:調査対象の全体像をつかむための広範な自由回答式質問)を行うことが通例となっている。その場合、この手の質問は典型的な行動について尋ねるものであるということを忘れないようにしよう。グランドツアー型の質問の例としては、以下のようなものがある:

  • 自宅での典型的な1日がどのようなものか教えてください。
  • 自宅での典型的な食事がどのようなものか教えてください。
  • オフィスでの典型的な1日について教えてください。

インタビューの冒頭で行うグランドツアー型の質問は、ストーリーのための場面の設定のようなものだ。この質問によって、状況のプレビューを手に入れることができ、インタビューを通してストーリーを構築するためにそれを利用することができるからだ。そのため、グランドツアー型質問をしたら、次は、#1で説明したような具体的な例について、質問をすればよい。

3.  仮定の質問をする

インタビュアーが、参加者にまず将来の経験や選択、状況を想像してもらってから、それに対する彼らの反応を聞く質問をすることがある。これは仮定の質問だ。以下の質問について考えてみよう:

  • ミールキットサービスを利用することにするとしたら、それはなぜでしょうか。
  • 新しい献立を一から作るのに役立つ商品があるとしたら、それを使ってみるでしょうか。

こうした質問の問題点は、ユーザーは将来の行動や選択を予測するのが苦手ということである。とはいえ、彼らはおそらく適切な答えを返すこともできるはずだ! つまり、ユーザーの本当の選択や欲求、ニーズを理解したいのであれば、想像上の将来のものではなく、実際の経験や選択について尋ねる必要がある。そして、これは必然的に、自分たちが知りたいと思っている経験を持つ適切なユーザーをリクルートしなければならない、ということを意味するのだ。

4.  解釈のきっかけとなる、明確化のための質問をする

過去の行動や思考、感情についてのユーザーの説明を聞くと、彼らがなぜそのような言動をとったのかという仮説を以下の例のように口に出してみたくなるものだ:

  • その献立にしたのは、作るのが楽だったからですか。
  • ミールキットサービスを注文したのは、時間を節約できるからですか。
  • そのレシピを選んだのは、Webサイトが気に入ったからですか。

こうした問いかけは、特に仮説がどれも妥当に思える場合、かなり無邪気な質問のように感じられる。しかし、実際には参加者を特定の回答へと導く質問である。したがって、「(…という理由)からですか」という言い回しの入った質問はしないようにしよう。人は誘導的な質問を提示されると、質問に同意するか、何らかのプライミング効果に屈してしまう可能性が高くなるからだ。その代わりとして、以下のような質問をするほうがずっといいだろう:

  • なぜその献立にしたのかを教えてください。
  • ミールキットサービスを注文しようと思ったきっかけは何ですか。
  • そのレシピを選んだ理由は何ですか

5.  複合的な質問をする

複合的な質問(または二重質問)とは、同時に複数の質問を含んでいるものをいう。たとえば、以下のような質問がそれにあたる:

  • どんな料理を作ろうと思ったのか、そしてその理由を教えてください。
  • 料理の世界に入ったきっかけと、料理学校での経験について教えてください。
  • どんなことがきっかけで料理に興味を持ち、料理が得意になったのでしょうか。

アンケートでは、このような質問を目にすることがよくある。しかし、インタビューで聞くのはお勧めしない。なぜならば、参加者はワーキングメモリーにその質問を記憶しながら、質問の一部に答える必要があり、それはたやすいことではないからだ。その結果、参加者が、間違って質問を覚えたり、質問の一部しか覚えられなかったりするかもしれないし、元の質問が何だったかを尋ねるのは間抜けなように感じてしまう可能性もある。そうではなく、質問は短く簡潔にしよう。そして、参加者に、何をしたのかだけでなく、なぜそうしたのかも教えてほしい、と言うのはやめよう。だからこそ、フォローアップ質問と深掘り質問はあるのだ!

6.  あいまいな質問をする

インタビュアーのする質問の範囲があまりに広いことで、質問の内容があいまいになり、参加者が間違った解釈をしたり、説明を求めたりすることがある。たとえば、以下のような質問がその例である:

  • 料理をする環境について教えてください。
  • 料理をするときの習慣について教えてください。
  • 料理に関する経験について教えてください。

このような質問をすると、「環境とはどういう意味ですか」、「どのくらいの頻度で料理をするのかということですか、それともどのように料理をするのかということですか」、「どの程度の経験があるのかということですか、それともどのくらい料理が好きかということですか」といった質問が参加者から返ってくることが考えられる。

質問を考え出す際には、その質問がどのように解釈されるかを考えることが重要だ。時間を取って、参加者の1人を対象にしてインタビューガイドのパイロットテストを行えば、聞こうとしている質問が間違って解釈されないか、また、説明を必要とするかを知ることができる。

要約

インタビュー質問を工夫することによって、収集するデータに大きな違いが生まれる。そのため、質問に確信が持てないようであれば、インタビューのパイロットテストをして、有用なデータを収集できているか、質問が正しく理解されているかを確認するといいだろう。

インタビューについて、さらに詳しく理解するには、1日トレーニングコース「User Interviews」、あるいは5日間のトレーニングコース「Qualitative Research Series」の受講を検討してみてほしい。