手法混合型調査:定性と定量データの組み合わせ
手法混合型調査とは、1つの調査課題を探求するために定性的手法と定量的手法を組み合わせる手法である。
インタビューに定量的なアンケートを少し足しさえすれば、手法混合型調査と呼べると考えるチームもあるかもしれない。しかし、実際には、効果的な手法混合型調査とは、単に同じプロジェクト内で、定性的手法と定量的手法が両方、どこかに登場することを保証すればよい、というものではない。
手法混合型調査とは
UX業務の文脈では:
手法混合型調査(mixed-methods research/混合研究法)とは、1つの調査プロジェクト内で、定性的手法と定量的手法を組み合わせ、同一の包括的な調査課題に答える手法である。
手法混合型調査では、定性・定量アプローチを別々の独立したツールとして扱うのではなく、ユーザーエクスペリエンスの全体像をとらえるために、両手法をデータ収集の前・最中・後に意図的に統合する。
定量的手法は、測定可能なパターンや傾向を大規模なデータで示す。一方、定性的手法は、コンテキストを提供し、「なぜそうなるのか」という点、つまり、動機や不満、メンタルモデルを明らかにする。両者を組み合わせることで、数値だけ、あるいはストーリーだけを個別にとらえるのではなく、何が起きているのかとそれがなぜ起きているのかが結びついた多層的な理解が得られるということだ。
「手法混合型調査」という用語は、プロジェクトの途中で生じた予期せぬ発見や新たな疑問に対応するため、後からもう1つの手法を追加した調査を指す場合もある。こうした柔軟なやり方も有用ではあるが、この記事では最初から意図的にデザインされた手法混合型調査に焦点を当てる。つまり、定性的手法と定量的手法を一緒に計画し、同じ目的に沿って連携させ、互いを関連づけて分析するような手法混合型調査について取り上げる。
両方の種類のデータが同じ調査課題の答えを出すことに意味のあるかたちで貢献できるようにするには、前もって意図的に計画を立てておくことが重要だ。そうすることで、両方のデータから得られる知見が互いにばらばらなものになったり、重複するものになったりするのを避けられる。
しかし、調査で両タイプのデータを収集することを事前に計画していたとしても、調査の実施手順に関わる具体的な内容、たとえばインタビューの質問やタスクなどは、調査の過程で発見した内容に基づいて変化していくこともある。
手法混合型調査を用いたプロジェクトの例
チームで、ホテルのウェブサイトの大規模なデザイン変更を計画しているところだと想像してほしい。
まず、定量的なベンチマーク調査から始めて、主要なタスク(ホテルの部屋の予約、チェックイン・チェックアウト時間や予約キャンセルポリシーの確認など)について、成功率と所要時間を測定していく(デザイン変更プロジェクト完了後、新デザインでも同じ指標を収集して、改善が見られるかどうかも確認する)。
当初から、その後に定性的なユーザビリティテストも実施する予定にしているが、定性調査で用いる具体的なタスクは前もって完全には定義することはしない。
その代わりに、定性調査パートでは、ベンチマーク調査から抽出したタスクの一部、具体的にはユーザーが最も苦労したタスクに焦点を当てる。これにより、彼らのつまずきの理由の解明とデザイン改善に役立つ深い知見の収集に集中できる。
この例では、定量的な結果が定性的なユーザビリティテストのタスクの選定の指針になる。しかし、どちらのデータ収集方法も、ユーザーがどこで、なぜ苦労するのかを理解するという同じ調査目的のもとで併用することが最初から計画されている。
手法混合型調査を用いる理由
手法の長所と短所のバランスを取る
定量調査だけ、あるいは定性調査だけに頼ると、見落としが出てしまう。定量的手法は大規模な集団におけるパターンや傾向を明らかにするが、その背景にある「なぜ」を常に説明できるとは限らない。一方、定性的手法はユーザーの動機や不満、メンタルモデルを明らかにするが、通常は小規模なサンプルに基づくため、より広範なユーザー層に一般化できない場合がある。
全体像を把握する
手法混合型調査は、定性的手法と定量的手法を組み合わせることで、規模と深さを両立する。つまり、測定可能なパターンと豊かなコンテキストをもたらす。こうした多層的な理解は、何が起きているのかだけでなく、なぜそれが起きているのかをチームが把握するのにも役立ち、プロダクトに関する意思決定をより情報に裏づけられたものにするための鍵になる。プロダクトロードマップの策定、デザインの改良、機能の優先順位づけのいずれにおいても、手法混合型調査から得られる知見は、ユーザー中心の選択を行うためのより完全な基盤になる。
次の調査フェーズに情報を提供する
ときには、一方の手法がもう一方の手法の計画や改善に役立つことがある。たとえば、定性調査を初期に実施して、ユーザーのメンタルモデルやペインポイント、使う言葉を明らかにすれば、より的を絞ったアンケート質問を作成したり、ベンチマーク調査で意味のあるタスクを選択したりすることができる。逆に、定量調査の結果から浮かび上がったパターンや外れ値が、ユーザーインタビューや定性的なユーザビリティテストによる深掘りが必要な領域を示すこともある。あるフェーズで得られた知見が次のフェーズのデザインに直接反映されることで、調査プロセス全体がより焦点の定まった、効果的なものになる。
手法混合型調査における重要な留意点
手法混合型調査はユーザーエクスペリエンスについての包括的な見方を提供する一方、トレードオフもある。手法混合型調査のプロジェクトを計画する際には、より多くの時間とリソースが必要になることを念頭に置いておくとよい。
定性調査と定量調査の両方を実施するということは、2つ以上の異なる調査手順、参加者グループ、データタイプを管理するということでもあるからだ。
たとえば、発見フェーズにおいて、定量アンケートとユーザーインタビューの両方を実施する計画だとしよう。定量アンケートには少なくとも40人の参加者が必要であり、詳細なユーザーインタビューには(飽和に達するまでに必要な人数にもよるが)10人程度の参加者が必要になる。これらの要素すべてが積み重なって、プロジェクトの期間は長くなり、参加者募集の手間は増え、目的と調査結果について認識を揃えるために、リサーチャー、デザイナー、ステークホルダーの間でより緊密な連携も求められるようになる。
手法混合型調査でよく用いられる3つのデザイン
は、調査の目的、タイミング、利用可能なリソースに応じて、さまざまなやり方でデザインできる。
UXにおいては、以下の3つのデザインがよく用いられる:
- 説明的順序型
- 探索的順序型
- 収束的並行型
それぞれ、定性的手法と定量的手法が異なる形で結びつけられており、ユーザーを理解するための独自の道筋を提供する。

説明的順序型デザイン(定量の後に定性)
説明的順序型では、まず定量調査で傾向の把握やパフォーマンスの数値測定を行う。その後、定性調査でそれらの定量結果をより深く説明したり、掘り下げたりする。
このタイプは、定量調査の結果から、数値だけでは説明できない疑問が生じることが予想される場合に用いるとよい。たとえば、2つのデザインバージョンを比較するA/Bテストを実施するとしよう。結果からは、どちらのバージョンのほうが優れているか(あるいは有意な差がないか)はわかるが、数値だけではその理由を説明できない。そこで最初から、フォローアップとして定性的なユーザビリティテストを計画しておき、ユーザーの嗜好やつまずき、あるいはデザイン間で明確な差が見られない理由を明らかにするのである。
説明的順序型デザインは、データに差異やパターンがあることが予想され、その理由を理解したい場合にも有効だ。たとえば、経験レベルが異なる参加者(具体的には初心者とエキスパートユーザー)を対象に、定量的なユーザビリティテストを実施する計画があるとしよう。そこでは、特定の主要タスクにおける平均所要時間や成功率に顕著な差が生じることが予想される。そうした差異の理由を理解するため、最初からフォローアップとして定性的なユーザビリティテストを計画しておくのである。
探索的順序型デザイン(定性の後に定量)
探索的順序型では、まず定性調査でテーマの探索や仮説の立案をする。その後、フォローアップとしての定量調査で、定性調査で得た知見のテストや測定、妥当性の確認を行う。
このデザインは、テーマが未知であるか、まだ漠然としている場合に用いるとよい。たとえば、発見フェーズの初期に、少人数のグループを対象にコンテキストインタビューを行い、ユーザーのコンテキストや行動、ニーズを把握するとしよう。そして、その結果に基づき、定性フェーズで特定された嗜好や態度がどの程度一般化可能かを定量的に把握するために、より大規模なサンプルを対象としたアンケートをデザインして、実施する。
また、大規模なテストの前に仮説を生成したい場合にも、探索的順序型を検討するとよい。たとえば、ユーザーがウェブサイト内を移動しやすくすることが目標だとしよう。まず定性的なユーザビリティテストで、ユーザーがどこにコンテンツがあることを期待しているのか、そして、カテゴリーラベルをどのように解釈しているのかを明らかにする。次に、その知見をもとに、ナビゲーションのデザイン案を複数作成する。その後、どの案が最も効果的かを特定するために、定量的なツリーテストを大規模サンプルを対象に実施する。
収束的並行型デザイン(定性と定量を同時に)
収束的並行型では、定性調査と定量調査を同時並行で実施し、その結果をまとめて分析する。このやり方は効率的であり、定性と定量の調査結果を同時に比較・対照できる。
このデザインは、定性パートと定量パートを互いに独立して実施可能で(つまり、どちらか一方が他方の結果やデザインに影響されることはない)、それでいて両方が同じ調査目的に対して補完的な証拠を提供できるような調査条件のときに用いるのがよい。
たとえば、優先すべき機能を決定する必要があるとしよう。ユーザーに生体認証ログイン、即時送金通知、サポート担当者とのアプリ内チャットなどの機能に優先順位を付けてもらう定量的なMaxDiffアンケートを実施するとする(MaxDiffアンケートとは、プロダクトの機能などの選択肢セットを回答者に提示し、各セットごとに最も重視する項目と最も重視しない項目を選んでもらうアンケートである)。同時に、参加者に各機能に対する好みと、その背景にある理由を尋ねるインタビューを行い、MaxDiffの順位づけだけではとらえきれないユーザーの動機や微妙なニュアンスも明らかにする。時間の制約があるため、片方の手法が終了してからもう片方を開始するような余裕はない。しかし、両方を並行して実施することで、機能に対するユーザーの好みの傾向と、その背景にある理由の両方を確実に把握できる。分析時には、両方の調査結果を比較し、類似点と相違点を特定する。
手法混合型調査をうまく行うためのヒント
手法混合型調査を効果的に実施するには、以下の3つのヒントに従うとよい。
前もって計画する
手法混合型調査は、特にタイミングに関して綿密な段取りが必要だ。たとえば、フォローアップインタビューの対象者をアンケート回答者から選ぶ場合には、インタビュー開始前にアンケートの回答内容を確認する十分な時間を確保しておく必要がある。
そうすることで、インタビューの質問をアンケートから浮かび上がった特定の傾向や外れ値を掘り下げられるように組み立てることができ、一般的すぎる質問をしないですむ。
調査目的に沿った手法を用いる
各手法は、最も適した用途に使うべきだ。たとえば、A/Bテストでは、どのデザイン案がより高いコンバージョン率をもたらすかを定量的に測定し、その後、定性的なユーザビリティテストをフォローアップとして計画し、ユーザーがなぜそのデザイン案を別の案より好むのか、あるいはどこで操作に詰まるのかを明らかにするとよい。
単に、両方の手法を実施した、というかたちにするためだけに、2つの手法を併用してはならない。時間とリソースの無駄になりかねないからだ。両者は、同じ調査課題の異なる側面、たとえば、効果の大きさとその背後にある理由の両方を理解するために、意図的に活用することが重要である。
単にデータを追加するのではなく、データ同士の統合を考えよう
手法混合型調査の価値は、単にデータが増えることにあるのではない。それらをどう組み合わせて生かすかにある。
自問してみよう:
- 結果同士はどのように結びつきそうか
- 一方の手法が他方を説明したり補ったりするのか
- 異なる角度から得られた結果を三角測量しようとしているのか
たとえば、アンケートではユーザーがオンボーディングに不満を持っていることがわかり、定性的なユーザビリティテストではオンボーディング画面で繰り返し混乱が生じていることが判明したとしよう。この場合、2つの手法は互いの結果を補強し、妥当性を裏づけ合っており、三角測量が可能になっている。こうして得られた知見は、どちらか一方の調査で明らかになるよりも、はるかに説得力がある。
結論
手法混合型調査は、単に調査を増やすことを目的にしているのではない。より豊かで行動につながる知見を生み出すために、定性調査と定量調査の両方を、意図的かつ連携させながら実施するものだ。調査の規模と深さ、パターンとコンテキスト、測定可能な傾向と人間のストーリーを丁寧に組み合わせることで、手法混合型調査は、より情報に裏づけられた意思決定をチームが行えるようにする。新しいプロダクトのデザインであれ、ユーザーフローの改善であれ、満たされていないニーズの把握であれ、両方の手法を計画に組み込み、統合するために時間をかけることで、ユーザーのエクスペリエンスを真に反映する、バランスの取れた、より自信を持てる調査結果を導き出すことができるだろう。
参考文献
Leslie A. Curry, Harlan M. Krumholz, Alicia O’Cathain, Vicki L. Plano Clark, Emily Cherlin, and Elizabeth H. Bradley. 2013. Mixed Methods in Biomedical and Health Services Research. Circ: Cardiovascular Quality and Outcomes 6, 1 (January 2013), 119–123. https://doi.org/10.1161/circoutcomes.112.967885
Jeff Sauro. 2015. 3 Ways to Combine Quantitative and Qualitative Research. (April 2015). Retrieved July 21, 2025 from https://measuringu.com/mixing-methods/
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