コーヒーの新たな波、Cold Brew On Tap

今、アメリカでは、コーヒーをビールサーバーから注ぐ「Nitro Cold Brew」が注目されています。日本のスターバックスでも一部の店舗で先行発売されていますが、ここでその人気ぶりをご紹介します。

  • 森原悦子
  • 2017年7月24日

日本ではコールドブリュー(水出しコーヒー)はコーヒー好きな人に長く人気ですが、アメリカではにわかにCold Brewが人気になってきています。特にスターバックスがその人気を牽引していますが、何といっても単に水出しではなく、ビールのサーバー(Tap)から注ぐことで窒素ガスを加え、「まろやかな口あたりとクリーミーな味わいが生まれる」(スターバックス)そうです。この窒素ガスを加えた水出しコーヒー(Nitro Cold Brew On Tap)がアメリカでウケる理由を考察してみました。

コーヒーなのになぜ、ビールサーバーから注ぐのか

Cold brewに窒素ガスを入れるのにベストな手法がビールサーバーを使うことだったから、と言ってしまえばそれまでですが、単にそれだけではない理由があるのではないか?と勘ぐって考察してみました。

アメリカでは、ここ数年クラフトビールが人気だと言われています。特にミレニアル、女性、ヒスパニックの間で人気があるという記事もあります(Today’s Craft Beer Lovers: Millennials, Women and Hispanics – Brewers Association)。

弊社があるLos Angelesのトーランスのエリアでも、クラフトビールを提供するお店がここ1年でかなり増えました。例えば、こちら、Zymurgy Brew Works & Tasting Room。ビールと言えば、Tap。しかもビールサーバーから注いで飲むのは格別ですよね。

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What’s On Tap – Zymurgy Brewより。

ビールはワインに代わって、ミレニアルに人気を博していますが、このTapから好きな銘柄を注いで飲むというスタイルがクールなのではないか、と思います。

Tapから注ぐコーヒーは、味だけでなくオトナ体験も提供しているのかもしれない

まず、Tap はインテリア的な視点からも格好がいいかもしれません。下の写真は、スターバックスの店内でのTapの設置例です。下記の写真のスターバックスでは偶然かもしれませんが、顧客が飲み物を受け取るカウンターに一番近いところにTapが設置されて、外から見えるようになっています。

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スターバックスの店内でのTapの設置例。

また、店内のサインボードには、このようにDraftという文字が踊り、まるでビールを売っているかのようです。コーヒー店がバーのようなイメージも醸し出すことで大人っぽさを狙っているのかもしれませんね。こんなテイストも、ミレニアルには好まれるのではないでしょうか。

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スターバックス店内のサインボードには、Draftという文字が踊っている。

Cord Brew On Tapの波はスターバックスに限った話ではなく、小さな街のサンドイッチ店でさえ、この様にCold Brew Tapを設置しているところが増えてきています。「Tapから注いでもらう」という体験もこの商品の付加価値となるわけです。カップに注いでしまえば変わらないのかもしれませんが、お酒を飲めない人でもできる大人っぽい体験が、背後にある価値の一つであることは間違いないでしょう。

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小さな街のサンドイッチ店でさえ、Cold Brew Tapを設置しているところが増えてきている。

このように、Cold Brewというアメリカ市場的には新しい飲み物に、Nitro、Draft、Tapというような装飾を被せることで、ミレニアルにウケる体験を組んだストーリー作りをしている点で、非常に興味深い商品ではないかと思います。

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森原悦子
著者(森原悦子)について
Interface in Design, Inc. COO/President。
武蔵野美術大学卒。インダストリアルデザイナーなどとして活躍後、旧イードに入社。定性調査やエスノグラフィーといった手法を得意とし、クライアントのグローバルな商品開発のコンサルティングリサーチを多く手がける。2011年8月より現職。