マスクとサングラス

寒くなると日本ではマスク姿の人が増えますが、アメリカではあまり見かけません。一方、日本では目上の人の前でサングラスをするのはマナー違反ですが、アメリカではそうは取られません。顔を隠す2つの手段、どうやら日米で心理的なギャップがあるようです。

  • 森原悦子
  • 2015年11月6日

マスクをしている人の後ろ姿

最近日本はめっきり寒くなってきたようですが、LAも11月の最初の日曜にDaylight savings が終わって冬時間が始まり、いよいよHolidayシーズンに突入してきました。

日本では寒くなると風邪の予防や感染防止の意味でマスクをする人が増えますが、アメリカでは風邪でもマスクをする人が殆どいません。顔を覆うツールで、もう一つ挙げられるのはサングラスですが、こちらは日本よりもアメリカの方が日常的に見られます。

顔を覆うのに日常的に使われるこの2つのツールについて、日米の意識の違いについて考察してみました。

アメリカ人にとってマスクをしている人=伝染病重症患者?

LAの空港で国際線のターミナルに行くと、アジア人、特に日本人はすぐに見分けがます。それはマスクをしたままで出てくるからです。でも、同じ時期に国内線のターミナルに行くと、マスクをしている人をまず見かけません。冬でも街中で、マスクをしている人を見かける事はまずありません。どうしてでしょうか?

マスクをするというのは、アメリカ人にとって(伝染病などの)重度の病気にかかった人という認識があるようです。例えば、国内線の飛行機でマスクをした人が隣に座ると明らかに嫌そうな顔をしたり、「あなたは伝染病にかかっているのか?」と聞いてきたりします。

日本では最近は予防でかける方も多いようですし、むしろあったかくて良いとか、顔が隠れて丁度いいという人もいるようです。大きな意識の違いですね。

マスクではないですが、笑う時も日本人が口や歯を隠すようにして笑うことにアメリカ人は不安感を持つという話もよく聞きます。日本では笑うときに歯を見せるのはエチケット上良くない、隠した方が上品という感覚がありますから、この点についてかなり感覚が違うことがわかります。

日本人にとって、お客様の前でサングラスをかけるのは失礼?

アメリカで日系のタクシーサービスに乗った際、アメリカ人の運転手が「サングラスをかけていいですか?」と聞いてきました。アメリカではサングラスをかけて運転するのは普通の事なので、わざわざお断りを入れて装着したことにびっくりしました。

しかし後で考えてみると、日本人をメインに相手にしているサービスだったので聞いてきたのではないかと推測しました。たとえば日本では目上の方の前でサングラスは失礼という考えがあります。そういった理由でここアメリカでも日系企業はその意識の差を理解していて、日本人がお客様の場合は、断ってからサングラスをかけるように教育されているのだろうと思いました。

アメリカ人の場合はサングラスに対して、おしゃれ・目上に対して失礼という感覚よりも、紫外線からの保護のためにかけるという感覚が強いようです。さらには健康保険の種類によっては、サングラスの購入に健康保険が適用される事もあります。目に良くないからサングラスをかけるように強く勧められたりもします。子供のサングラスもよく見かけますし、おしゃれというよりも、目の保護という意味でかけさせているようです。

上記のような状況なので通常運転手が「サングラスをかけていいですか?」と断ることはまずないですし、適当な場所であればサングラスをかけることをマナー違反とは誰も感じません。

マスクのケースとは逆で、日本ではサングラスをかけることに対してこういった感覚はあまり見られないのではないかと思います。ファッションの感覚の方が強く、日常的にかけるものという感覚ではないかもしれません。さらに言うと日本人は相手の目が見えないと、ちょっと不安に感じたりする感覚もあるのではないでしょうか?

ちょっとした日常の一コマですが、マスクやサングラスといった小さなアイテムでも国によって捉え方が違うという良い一例かと思います。これに限らず、見過ごしやすい小さな事が、ユーザーの地域性の違いで心理的に及ぼす意味が違ってくるということは実はまだいろいろとあるのではないでしょうか。

次回皆さんがアメリカの国内線の飛行機内でマスクをかけたい状況があるようでしたら、一言「花粉アレルギーだから、かけてます」など、一言心配を減らすために隣の人に声をかけてあげると、まわりに居る人が安心してくれるかもしれませんね。

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森原悦子
著者(森原悦子)について
Interface in Design, Inc. COO/President。
武蔵野美術大学卒。インダストリアルデザイナーなどとして活躍後、旧イードに入社。定性調査やエスノグラフィーといった手法を得意とし、クライアントのグローバルな商品開発のコンサルティングリサーチを多く手がける。2011年8月より現職。