新しいアメリカ人:そういえばアメリカは移民の国だった!

イードの米国子会社COOの森原が、そこでの生活やマーケット調査業務の中で気づいたことを綴るコラム。1回目は、それまで抱いていたイメージとは異なる、現在(と今後)の、アメリカ人のデモグラフィック属性について考察します。

アメリカという国は、日本人にとって非常に親近感の強い国の一つであると思います。そして、多くの日本人ビジネスパーソンにとっては、商売相手でもあるかと思います。

私個人も、そんなアメリカにやって来てしばらく経つのですが、日々「知っているようで知らなかった!」「アメリカの現実ってこんな感じだったのか~!」と驚きと学びの連続です。そんな日々のことを少しづつ、このコラムでご紹介できればと思っています。

森原悦子
著者(森原悦子)について
Interface in Design, Inc. COO/President。
武蔵野美術大学卒。インダストリアルデザイナーなどとして活躍後、旧イードに入社。定性調査やエスノグラフィーといった手法を得意とし、クライアントのグローバルな商品開発のコンサルティングリサーチを多く手がける。2011年8月より現職。

まずは、今年の1月に東京で、4月に弊社米国オフィスのあるロスアンゼルスのトーランスの2箇所で行った「イードセミナー2015」のトピックから幾つか紹介していきたいと思います。

今回のセミナーでは、「新しいアメリカ人」というトピックで主にミレニアルズ×クルマについてフォーカスして話をさせていただきました(ミレニアルズ(Millennials)とは、2015年現在、18歳から34歳くらいの世代を指します)。また、このトピックを読み解く助けとして、定性調査、ビジネス・アンソロポロジー(人類学)のアプローチを取り入れてみました。

ビジネス・アンソロポロジー
総合的にユーザーの特徴を理解するアプローチで、欧米で活用されてきている方法の1つです。私見ですが、エスノグラフィー(民俗学、民族学)はアンソロポロジーの手段の一つで、アンソロポロジーは、エスノグラフィーよりもっと総合的な理解に努めている、という感じがあります。

セミナーでは、「文化的背景」「定量データ」からみたミレニアル世代を取り巻く環境について理解をすることから始め、そして、エスノグラフィー調査による「定性データ」の分析結果をご紹介しましたが、その中から今回は、「文化的背景」の部分で「そういえばアメリカは移民の国だった!」という話を紹介したいと思います。

アメリカ=白人+黒人?

みなさんは、「アメリカ人」というとどんな人を思い浮かべますか?

オバマさんでしょうか? ブラッド・ピット? ジェニファー・ロペス? 人によって違うとは思います。

ご存知の通り、アメリカという国は移民の国です。色々な国からの移民を受け入れることで成り立っているといっても、過言ではないと思います。

統計を見てみると、1910年代、移民の87%はヨーロッパから来ています。つまり、移民の多くは白人であったことでしょう。1960年代になっても、移民の77%はヨーロッパからの移民です。つまり、開国からかなりの間、われわれ日本人にとってアメリカ人のイメージは白人であり、また黒人であったと言えると思います。

少数派が多数派に

しかし、2010年の統計を見るとヨーロッパからの移民は激減し、代わりにメキシコから約30%、アジアから28%、アフリカやオセアニアから23%となっています。

今日では、メキシコ、アジア、中・南米からの移民が、アメリカにおける外国出身者のマジョリティとなっている。

また、最新のアメリカのセンサス*によると、2044年にはヒスパニックはアメリカの人口の25%となり黒人の2倍に、白人は総人口の49.7%になってマイノリティに転換する(=非白人のほうがマジョリティになる)といわれています。さらに2060年には44%まで減少するといわれています。(*日本でいうところの国勢調査でしょうか。大掛かりなものは10年おきに行われ、最新は2010年版で、次は2020年です。)

数だけを取ってみても言えることは、今まで白人がメジャーだったのが、さまざまな人種・文化がメジャーの立場を取って変わろうとしているということでしょう。まさに現在は変化の真っ只中であると言えるのではないでしょうか。我々日本人のビジネスパーソンはこの変化を正しく認識できているのでしょうか。

私が住むカリフォルニアは、既にさまざまな人種・文化がさらにメインストリームとなっている、つまり「マイノリティがマジョリティとなっている」州の一つです。

仕事柄、私は調査で様々な人とランダムに会いますが、家族の単位一つを取っても、過去マイノリティであった人種とマジョリティであった人種が一つの家族の中でブレンドしている家族は非常に多いと感じます。

たとえば、オバマ大統領の家族の写真で一般に公開されているものを見ると、オバマ大統領の家族もブレンドファミリーである様子が見て取れます。

米国初の黒人大統領であるオバマ氏の家族も、写真を見るとブレンドファミリーであることがわかる。(写真提供: The White House

想像と異なる、現代の“家族のカタチ”

実際、家族という一番小さな単位の中で考えたとしても、変化が見て取れるようで、Pew Research Centerの記事で「現代のアメリカ家庭に関する5つの真実」(原題: 5 facts about the modern American family)という記事によると、下記のようなことが書かれていました。日本と同じところもあれば、大きく違うところも多々あります。私たちが容易に想像できる家族の姿とはだいぶ違うのではないでしょうか。

  • 初婚の中間値が近代で一番高くなっており、また初めて子供を持つ年齢も上がってきている。
  • 現在のアメリカの出生率は、1960年代が7に対して約1.9。
  • LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、またはトランスジェンダー)のうち300万人が人生のうちのどこかで子供を持つ。
  • 18歳から29歳の若者の約半分(44%)が義理の兄弟を持っており、2011年に産まれた子供のうち、41%が結婚をせずに産まれた子供。
  • 2010年には異人種間結婚の比率が1980年の倍に膨らみ、約15%となっている。特に異人種間結婚の割合が多いのが、ヒスパニックとアジア人。

移民の国アメリカ

そして、出生率が下がったとはいえ、やはり移民の国アメリカというべきなのでしょうか、人口の推移予測はかなりポジティブです。2013年の世界の国別人口トップ5は1位中国、2位インド、3位がアメリカです。そして2050年の予測はアメリカは一つ順位を落としますがまだ4位です。

アメリカについて特筆すべき点は、上位の他の国に比べて政治的にも安定して、通貨危機などのリスクも少ないと考えられることです。よって、日本から見ると、これからも魅力的なマーケットであると言えるのではないでしょうか。

アメリカは、2050年においても、世界でもっとも人口が増加する国の1つでありつづける。

移民の国であることを活かした発展性と、移民の国であることによる、さらなる複雑化が進むアメリカ人。その複雑さは我々日本人が体験したことのない環境であることは間違いないと思います。改めて“現在のアメリカ人とは何か”を知る必要性があることがわかったのではないでしょうか。また同時に、どのあたりが変わってきているのか、上記のような事実を基に予想をすることができるかもしれません。

次回はまた別の角度から「新しいアメリカ人」について考えてみたいと思います。

公開: 2015年6月19日
著者: 森原悦子

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