ユーザビリティ再考(1)

2006年あたりに考えてからここ数年使ってきた図だが、製品品質と利用品質とを区別したISO 25010を読むことにより、何かちょっと変だなあ、と思うようになった。

満足感を、有効さと効率よりも上位に位置づけた構造図

ユーザビリティ概念について、僕はこれまでISO 9241-11の定義のうち、満足感を除いて有効さと効率を用いてきた(2006)。その考え方は、図1に示すように、有効さと効率をユーザビリティの中に含め、満足感をそこよりも上位の特性と位置づけるものだった。有効さと効率はユーザビリティを構成する要因と考えてよいが、満足感には信頼性や費用などの特性や美しさやかわいさも影響することから、もっと上位の概念と位置づける必要性を感じていたのだ。

また、この考え方には、CIFのミーティングで提起されたsmall usabilityとbig usabilityの区別をそのまま踏襲している。つまりNielsenのいうusabilityは狭義のものでありsmall usabilityと呼ぶべきものであること、またNielsenのいうusefulnessが実はbig usabilityと呼ぶべきものであり、ISO 9241-11で言われているユーザビリティと同じものである、という考え方も含まれている。Nielsenのusefulnessはusabilityとutilityの合わさったものになっているので、CIFミーティングでの考え方を踏襲した結果、utilityとしての機能や性能をそこに位置づけている。

さらにユーザビリティの他にも信頼性や安全性、費用がかからないこと、互換性や保守性などは、やはり満足感に影響するものであり、それらをまとめて客観的品質特性とした。また満足感には、さらに快適さや嬉しさや美しさなどの主観的品質特性も影響していると考えた。その結果が図1である。

Kurosu (2006, 2013)による、ユーザビリティと満足感に関する構造図
図1 Kurosu (2006, 2013)による、ユーザビリティと満足感に関する構造図

この図の骨格は2006年あたりに考えたもので、徐々に手を加えながらここ数年ほど、この図を使ってきたのだが、『人間中心設計の基礎』を書くためにISO 25010(図2)を読むことにより、んー、何かちょっと変だなあ、と思うようになった。

ISO 25010における、製品品質と利用品質のモデル
図2 ISO 25010における、製品品質と利用品質のモデル

製品品質と利用品質の区別

ISO 25010では、そのものの品質(製品品質)と、それが使われた時の品質(利用品質(Quality in Use))とを区別している。ちなみにISO 25010の前身のISO 9126-1では製品品質のことを外部品質と内部品質と呼んでいたが、製品品質という言い方の方がわかりやすいと思う。

もともとusabilityという言葉はuseとabilityが合わさったものであり、あくまでもabilityなのである。いいかえれば、ユーザビリティが高いものを使っても、利用したときの品質が良いものになるという保証は「ない」のだ。だからISO 25010では製品品質と利用品質を区別しているわけだ。ただ、それとISO 9241-11との関係がどうもすっきりせず、またISO 25010自体にもすっきりしないものがあり、ずっとモヤモヤとしていた。

先日(2014年8月)、早稲田大学の東先生の「利用時の品質とユーザビリティ」という講演を聞きながらいろいろと考え、その結果、現時点で自分に納得できる概念整理ができたように思うので、ここに報告したい。

(「ユーザビリティ再考(2)」へつづく)

公開:2014年10月29日
著者:黒須教授

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