電車の種別が分かりにくい

鉄道会社によって、列車の種別や呼称には違いがあり、まったく統一がとれていない。ユーザビリティの観点からすれば最悪だ。できれば列車種別は統一したカテゴリー名称にしてほしいと思う。

  • 黒須名誉教授
  • 2025年8月25日

目的の駅に停まらない電車に乗る

以前、知人が拙宅の近くで食事をしようと、新宿から小田急線にのって狛江にくるためにまず成城学園前で乗り換えようとした。狛江は各駅停車しか停まらないので、急行にのって二つ手前の成城学園前で各駅停車に乗り換えるつもりだったのだ。で、新宿駅で目についたのが急行ではなく快速急行だった。快速というのだから急行よりも少し遅いだろうけど、まあ成城学園前まで早く行ければ同じことだからいいだろう、と乗っていたところ、成城学園前をサーっと通過して、登戸まで行ってしまったというのだ。やむを得ず、登戸から反対方向の上り列車の各駅に乗り換えて狛江にたどりついたというのだが、要するに、快速急行というのは急行よりも停車駅の多い快速ではなく、急行より停車駅の少ない列車だったのだ。普段乗っている京王線からの連想で、快速は急行よりも停車駅が多いと思い込んでいたから起きてしまった失敗談である。

わけの分からない列車種別

実は鉄道会社によって、列車の種別や呼称には違いがあり、まったく統一がとれていない。しかも、同じ鉄道会社でも、時期によって種別が変更になることもある。ユーザビリティの観点からすれば最悪なのだが、普段通勤や通学に使っている人は、「その」鉄道についてわかっていればいいので、あまりわかりにくさについて気にすることもないのだろう。一般の旅客のことを考えるなら、種別のつけ方に各社に共通したルールがあるべきだと思うのだが、それぞれが自分の道を進んでいる現状である。

この状況についてよくまとめてあるのがウィキペディアの「会社別列車種別一覧」というページなのだが、それをみると混乱している現状がよくわかる。そこから幾つか情報をピックアップしてみたい。

小田急電鉄の場合

  • 小田原線:特急ロマンスカー>快速急行>通勤急行>急行>通勤準急>準急>各駅停車
  • 江ノ島線:特急ロマンスカー>快速急行>急行>各駅停車
  • 多摩線:快速急行・通勤急行>急行・各駅停車

    小田急では特急ロマンスカーが一番早いのだが、「はこね」「さがみ」「あしがら」などの名称によって停車する駅が異なっており、利用するたびに確認する必要がある。もちろん覚えてしまえばいいのだろうが、覚える気力がわいてこない。筆者は熱海の家にいった帰りに利用することも多いのだが、町田で快速急行に乗り換えて登戸で各駅に乗り換えるのか、町田ではなく新百合ヶ丘で各駅に乗り換えるのかなど、毎回注意を強いられる。

    また快速急行は追加料金の必要ないなかでは最速なのだが、これは「快速」とみるのではなく「急行」のなかでも「快速」なもの、というように解釈しなければいけないようである。

    通勤時間帯に利用したことがないので、通勤急行や通勤準急というものがあることを知らなかったが、これらも一般の急行や準急よりは早いもののようだ。ともかく、急行>準急>各駅という順序は他の鉄道会社とも共通しているようで、この範囲では間違えることはないだろう。

    ついでに書いておくと、本厚木から新松田までの区間は、快速急行ですら各駅に停車する。たしかに駅間距離は長いようだが、快速急行や急行にのっていてうんざりするのはこの区間である。なんとかならないのかなあ、小田急さんよ、という気持ちでいる。

    京王電鉄の場合

    • 京王線系統: Mt.TAKAO号≧京王ライナー>特急>急行>区間急行>快速>各駅停車
    • 井の頭線:急行>各駅停車

      京王線にはMt.TAKAOという高尾山に関連づけた特別な列車があるが、イベント対応の列車のようである。通常は、ライナー、特急、急行、区間急行、快速、各駅である。ライナーは特殊な特急で特別料金が加算される。特殊というのは、特急停車駅である笹塚や明大前、千歳烏山では下りは乗車のみというような変則的な乗降しかできず、調布は通過となり、普通に停車するのは府中からだ、という点である。要するに遠距離からの通勤通学の乗客の利便性を考えたものといえるのだろう。あとは特急>急行>快速>各駅という一般的な図式に従っているが、例外は区間急行である。「区間」というのは、調布以降の区間という意味のようで、新宿から調布までは通常の急行よりも多くの駅に停車するのだが、ただの急行とくらべてどちらが短時間で行けるのかが直感的にはわかりにくい。

      東急電鉄の場合

      • 田園都市線:急行>準急>各駅停車
      • 目黒線:急行>各駅停車
      • 大井町線:急行>各駅停車(緑)>各駅停車(青)
      • 東横線・みなとみらい線:S-TRAIN>特急>通勤特急>急行>各駅停車

        東急は東横線をのぞいて、急行、準急、各駅というシンプルな構成になっている。ただし、大井町線については「東急大井町線では二子玉川 – 溝の口間でどちらの線路を走るかにより各駅停車の種別色が分けられており、各駅停車(緑)は大井町線の線路を走行し、途中の二子新地・高津は通過する。各駅停車(青)は田園都市線の線路を走行し、途中の二子新地・高津にも停車する」と、普段利用していない者にとってはわけの分からない区別がされているようである。普段利用していない筆者にはよくわからないが、二子玉川と溝の口の間には二種類の東急電車が走っている、ということ…らしい。わかりにくい。

        要するに

        都内を走る全路線について書き連ねていっても退屈なだけだろうから、ここまでにするが、ともかく列車種別については運営会社の好き勝手になっている状態だということはよくわかる。もちろん近年は乗換案内ソフトも普及しているし、駅構内の停車駅案内もきちんとしてきたから、まあまあ問題がないといえなくもないのだが、できれば列車種別は統一したカテゴリー名称にしてほしいと思う。ようするに、全部の会社に共通の母体となるカテゴリーがあり、各企業は必要に応じてそのなかからカテゴリー名称をピックアップして使うようにするのだ。こうしておけば、初めてのユーザにもイメージがしやすくなり、冒頭の知人のような間違いをする人もいなくなるのではないだろうか。