非営利団体のWebサイト:
寄付とボランティアを増加させる

慈善団体のウェブサイトで寄付をするのは、eコマースのサイトでお金を使うより、7%難易度が高い。物理的な物の寄付はさらに難易度が上がる。非営利団体のウェブサイトにとって、ソーシャルメディアは補助的なものであり、最優先すべきはわかりやすいコンテンツを書くことである。

非営利、慈善、非政府組織(NGOs)…ほとんどの名前はこれらの団体が「ではない」ということを強調している。そして、orgがドメインに付いたウェブサイトを調査すると、商業サイトによって提供される明確なバリュープロポジションとは異なっていることが明らかである。サイトを訪問する理由というのは、(a)そこにあるものが好きで、(b)それを手に入れるためにお金を払おうとするため、というのが典型的である。しかし、非営利団体のサイトではそうではないのである。

非営利団体がボランティアやオンライン寄付を集めたいなら、自分たちのバリュープロポジションを明確に伝える必要がある。不幸にも、こうした情報の伝達が非営利団体サイトでのユーザーエクスペリエンスの泣き所になっているのだが。

非営利団体サイトのユーザビリティについての最新調査

非営利団体サイトのユーザーエクスペリエンスの改善についてさらに調査するために、いま一度、基本的方法に立ち戻って、代表的なユーザーが様々なそうしたサイトを訪問する様子を観察した。今回の場合、ユーザビリティ調査の主なリクルート条件とは、過去に慈善団体への寄付を行なったことのある人を見つけることだった。また、以前にボランティアの経験がある人やFacebookユーザーのリクルートも行なった。

新しい調査は、我々が最初に行なった、オンライン寄付をする人々についての調査の続編となった。前回調査からはまだ2年しか経っていないため、この短い期間にユーザーの行動が大きく変わるような理由はない。(ユーザビリティ上の発見が変化するのは非常にゆっくりである人間の脳の限界によって必然的に決まってくるものがほとんどだからである)。

それでも、念のために、オンライン寄付についてもう一度テストを実施したが、同じユーザビリティ上の課題が発見された。

2回の調査で、テストしたのは合計60個の非営利団体及び慈善団体のウェブサイトである。サイトは以下のカテゴリーをカバーできるように選定した:

  • 芸術、文化、人文科学
  • 動物
  • 開発・救援
  • 教育
  • 環境
  • 健康
  • 福祉
  • 公益
  • 宗教

ほとんどのサイトは大規模で全国的な非営利団体のものであるが、より小規模の、地域的な慈善団体や、国際組織のテストも行なった。

テストしたのは以下の7個のタスクについてである:

  • 寄付先の選定: 参加者はこちらが指定したカテゴリーに属する、概ねミッションの似た2つの非営利団体のサイトを利用して、どちらの団体がより寄付に値するかの判断を下した。
  • 初めての寄付の実行: 参加者は自分のクレジットカードを使って、選ばれた慈善団体へのオンライン寄付を行なった。これにかかった費用は調査後、我々からユーザーに返金された。
  • 再度の寄付の実行: 参加者は(調査より前に)寄付したことのある慈善団体に再度のオンライン寄付を行なった。
  • 非金銭的貢献:参加者はペットフードや中古のおもちゃのような具体的な物の寄付についての情報を探した。このタスクでは、ユーザーに特定のサイトを指示することはしなかった。つまり、ユーザーはウェブを利用して、彼らの持ち物を受け取るにふさわしい慈善団体を探した。
  • 製品の購入: 参加者は、例えば、American Diabetes Associationが販売する料理の本のような、NGOがウェブサイト上で販売している物を自分のために買うように依頼された。
  • ボランティア活動: 参加者は調査対象になっている団体の中の1つで、ボランティアをすることについての情報を探した。
  • Facebookを利用しての慈善団体の調査: 参加者はFacebook上で2つの類似した非営利団体を比較し、寄付先にする団体を1つ選ぶことをした。

最初の2個のタスクは両方の調査で実施されたが、後の5個のタスクは2回目の調査で初めて行なわれた。

寄付プロセス: 現時点のベストプラクティスよりも7%劣る

人にお金を与えるというのは、何かを買うためにお金を使うよりも難しいものである。2回目の調査で、実際の寄付行為を完了するプロセスにかかった時間は、(別に実施した)eコマースについてのユーザビリティ調査で、ユーザーがeコマースの精算プロセスを完了させるのにかかった時間よりも7%長かった

ユーザビリティが7%劣るからといって最悪というわけでもない。しかし、非営利団体サイトのユーザーエクスペリエンスが商業サイトよりも今のところ、劣っているということが明らかになったのは事実である。

非金銭的な貢献: 悪い

ユーザーはお金を寄付するとき以上に、非金銭的な貢献をするときにずっと苦労していた。その明らかな理由の1つは、物理的な物の寄付が標準的なオンライン取引ではないということである。したがって、ユーザーは他のサイトでの経験から形成されたメンタルモデルに頼ることができない(対照的に、少なくとも、利用しなければならないボタンや入力フィールドに関しては、お金の寄付はお金の支払いに割と似ている)。

ウェブサイトがユーザーに何か新しいことをするように依頼するときは常に、ユーザーが新しいプロセスを理解するというハードルを越える手助けになるよう、そのユーザーインタフェースは特にわかりやすくすべきである。哀しいことに、この難易度の高いタスクに対して、今回調査の慈善団体のほとんどが提供していたユーザビリティは、特に貧弱なものだった。その結果、物理的な物を寄付することについての情報を探すのは難しいことが多く、具体的な情報に欠けていた。

非金銭的寄付についてのユーザビリティが低いことによって、物を寄付したい相手を見つけるまでに、多くの非営利団体の間を行なったり来たりするユーザーが多かった。こうした経験に対して、ユーザーがつけた満足度の評価は、今回の調査で最低のもので、(7が最高値となる)7段階評価で、平均5.3だった。

ボランティア活動のプロセス: 良い

ある団体でのボランティア方法を探し出すというタスクに対してユーザーが与えた評価は、7段階評価で6.7と非常に高かった。たいていのサイトにはトップページからこうした情報に直接行けるシンプルなリンクが置かれていたからである。また、標準的な任務の内容と拘束時間、といったボランティアの志願者が前もって知りたい細かい点についての説明を含む、ボランティア活動についてのわかりやすい情報を提供しているサイトがほとんどだった。

ボランティア用のかなりシンプルな応募フォームを提供しているサイトも多かった。しかし、ボランティアをする前に誰かと直接話をしたい人は多い。したがって、問い合わせ先を載せておくことは重要といえるだろう。

ソーシャルメディア: 補助的

非営利団体を調べるのにFacebookは利用されない。また、寄付にも利用されない。調査でFacebookを利用してそうするように依頼したとき、非営利団体が製品や寄付を強要したり、Eメールニュースレターのようなものの購読をさせようとすることに、ユーザーは苛々していた。

非営利団体や慈善団体がFacebookを利用しているということは当然と思われていた。しかし、そこで期待されている情報の量は、公式サイトにあるものよりは少ない。実際、Facebook上でPeople for the Ethical Treatment of Animals (PETA)のページを調べたユーザーは、「PETAの公式サイトにある情報はたぶんこの10倍以上でしょうねと言っていた。

ソーシャルメディアを通して、その団体のミッションと目的を見つけることの代わりに、ユーザーがもっと興味を持っていたのは、その団体での活動によって恩恵を受けた人の話を聞くことだった。彼らがソーシャルネットワークに期待していたのは、その団体に関わりのある実在の人物についてのストーリーの紹介である。例えば、あるユーザーは、Make-A-Wish FoundationのFacebook上の記事に取り上げられていた、その団体に助けられた人たちについてのストーリーに引き付けられていた。非営利団体や慈善団体はソーシャルメディアを利用すべきであるが、それは、実際にあったストーリーや、対話、交流を通してユーザーとつながりを持つための手段としてである。しかし、その団体についてじっくり調べたいユーザー用に、メインのウェブサイトへのわかりやすいリンクを張っておくのも忘れないようにしよう。

非営利団体が宣伝をしたり、寄付を呼び込むための手段として、ソーシャルメディアが補助的なものであるという調査結果は、他で実施した調査の結果とも重なっている:

  • ソーシャルメディアでの企業情報の提供についての1回目の調査でわかったのは、ユーザーは商業的投稿が頻繁すぎると苛々するし、ソーシャルメディアのサイトで企業を探したりは滅多にしないということだった。その代わり、製品情報が欲しいときにはユーザーは企業のサイトに行く。
  • どのように大学生がウェブを利用するかについての最新の調査でわかったのは、ソーシャルメディアとは個人的な話をする場で、企業がマーケティングをするところではないと学生が考えているということだった。学生は企業や、大学、政府機関、非営利団体について知りたいとき、検索エンジンを利用して、その団体の公式サイトを見つけようとし、Facebookには行かない。

ターゲット層や対象サイトのタイプが異なる別々の3つの調査から同じ結果が得られたということが重要である。

最優先すべきこと: わかりやすく情報を提供しよう

今回の調査で、非営利団体の情報を見つけて、その信頼性を判断するというタスクに対し、ユーザーの付けた評点は平均5.3とかなり低いものだった。それに対し、実際の寄付プロセスに対するユーザーの付けた(テストしたサイト全体を平均した7段階評価での)平均点は5.7だった。

寄付のワークフロー自体を改善することも可能ではある。しかし、今回のユーザビリティ調査で明らかになったのは、問題の中心はそれではないということだ。次に来る10年間でオンライン寄付を5倍にするという可能性を実現するには、非営利団体のサイトは、コンテンツのユーザビリティが貧弱であるという大きな問題に対処する必要があるのである。