Web利用の逆説:
こんなにダメなものがなぜ使われるのか?

ウェブはダメだ。本当になっていない。

私の見るところ、少なくとも90%の商業ウェブサイトは難しすぎて使えない。問題となる点はいくつかある。

  • ゴテゴテしたページデザイン。ダウンロードに永遠とも思える時間のかかる
  • 社内の都合しか考えないデザイン。製品に関する本当の情報は何ひとつ伝えず、大げさな売込みに終始している
  • わかりにくいサイト構造。論理性がまったくないか、あるいは企業の組織図にもとづいている
  • ナビゲーション補助の欠如。わかりにくいサイト構造とあいまって、探しているものが非常に見つかりにくくなる
  • 物語的な執筆スタイル。印刷用途やリニアな読書には向いているが、オンラインでのユーザの読み方には適していない(ユーザは「読む」というよりは、「流し読み」に終始しているのだ)

以前、ウェブサイトのユーザテストについて私のコラムで取り上げた際に議論したことだが、ウェブユーザビリティ調査を行うと、平均的な結果として得られるのは、テストユーザは、テストタスクを実行しようとして失敗するということであった。結果的に失敗する公算が大きいのだ

サイトが役に立つ場合でさえ、総合的なユーザ体験は悲惨なものであることが多い。例えば、最近私は新しいPCが必要になったので、Dellのウェブサイトで買おうと考えた。インターネットの専門家たるもの、自ら「ウェブライフスタイル」を実践すべきであるという持論に従ったのだ。Dellのサイトにはいくつか弱点もあったが、かなり使いやすく、希望どおりのハイエンドマシンを注文することができた。3日後、確認の電子メールが送られてきた。マシンの発送は6週間後になるというのだ。こいつはちょっと黙っていられない。Amazon.comの教育のおかげで、ユーザは、インターネットでオーダーしたら、確認の電子メールは数分後、商品は数日中に届くのが当然と考えている。出荷が遅れる場合は、ウェブサイト上で警告しておくべきだ。

Dellに電話したら、私が要求したテープドライブは在庫切れで、そのせいで配送が遅れると言われた。君たち、在庫管理システムとウェブサイトを連動するようにしておいたらどうかね?遅延や在庫の問題があるのなら、顧客がオンラインで買い物の調査をしている時点で知らせておく必要がある。代替オプションを検討できるようにもしておくべきだ。結果:Dellは3035ドルの注文をフイにした。ウェブサイトでの顧客サービスがなっていなかったからだ。

好まれるのはなぜ?

幾多の問題があるにも関わらず、それでもみんながウェブを使い続けるのにはいくつか理由がある。

  • 90%のサイトがダメだとしても、ユーザは総時間の90%をダメなサイトに費やしているわけではない。ダメなサイトには1回しか行かないが、よいサイトならロイアリティの高いユーザになる。このため、あらゆるユーザが、90%の時間を良いサイトのために使い、ダメなサイトをチェックするのには10%しか使わないかもしれない。例えば、Yahoo!はウェブでもっとも多くの人を集めるサイトだが、それは彼らがもっとも速く、もっとも控えめなデザインを採用していることが一因になっている。
  • ほとんどの人はウェブがどれくらいよくなる可能性を持っているのか知らない。T型フォードの時代を振り返ってみよう。馬に乗るよりいいということで、みんなは先を争ってこの車を買い求めた。だが、T型フォードとMercedes E430のどちらを取るか、と言われたら、恐らくMercedesを選ぶだろう。ウェブを利用するということは、私にとっては、Mercedesの運転に慣れた人間に、毎日T型フォードを運転しろというようなものだ。ハイパーテキストシステムが、はるかに優れたものでありうることを私は知っている。これは、1980年代から90年代初めにかけての私たちの調査にもとづいて言っているのだ。
  • 時にはウェブが役立つこともある。しかも現実より優れていることがあるのだ。例えば、新聞の株式欄を探すよりは、ウェブサイトで一連の株の取引価格を調べてブックマークしておく方がはるかに楽だ。経済欄に目を通すより、企業関連のニュースをオンラインで検索した方が簡単だ。
  • ウェブでは、時としてよいサービスを受けられることが現実にあるので、ユーザはある意味で、Skinnerのネズミのような行動を取る。すなわち、たまにエサが落ちてくるというだけで、檻の中でえんえんとレバーを押し続けるのである。実際には、エサの落ちてくる間隔がランダムであればあるほど、ネズミは長時間レバーを押し続けるのだ。ランダムであるがゆえに、次回こそは何かごほうびにありつけるのではないかという希望が生まれる。ウェブでリンクをクリックする時とそっくりだ。

ほとんどのウェブサイトがダメであり、10%のよいサイトにユーザの時間とお金の大部分が注ぎ込まれているという事実から、よい結論がひとつ導かれる。それは、ウェブで成功を収めるのは比較的簡単だということだ。なぜなら、大方の競争相手は無知だからだ。物理的な世界では、大企業がよい顧客サービスを提供するのは難しい。たいてい、それほど粒ぞろいのスタッフは揃えられないからだ。反対に、ウェブ上ではよいサービスとはちょっとしたプログラム上の問題であり、たくさんの顧客と製品ラインに反映することができるからだ。

1998年8月9日

公開: 1998年8月9日 (原文:1998年8月9日)
著者: Jakob Nielsen
原文:The Web usage paradox: Why do people use something this bad?

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