AIリテラシーが生成AIの利用に与える影響
生成AIを頻繁に利用しているからといって、それをうまく利用できているとは限らない。AIリテラシーには、プロンプト作成能力と、出力評価能力の両方が必要である。
UXリサーチャー(特に市民向けテクノロジーやデジタルインクルージョンの分野)としてのキャリアの中で、私は長年にわたり、人々がインターネットをどのように利用しているかを観察してきた。プライベートであれ仕事であれ、AIによってユーザーが情報を検索・作成・伝達する方法が変化するにつれ、AIは新たな能力を必要とする、デジタルリテラシーの不可欠な新しい側面となりつつある。
大きな話題になっているとはいえ、ChatGPTやGeminiといった生成AIツールを誰もが利用しているわけではない。また、利用している人の中でも、その使い方は一様ではない。テクノロジー業界で働く人々は、AIを抵抗なく使えたり、高度に使いこなせたりすることを、多くのユーザーにとっても当然の前提と考えがちだ(自分はユーザーではないということを忘れてはならない!)。AIリテラシーの低いユーザーが生成AIとどのようにやりとりするかを理解することは、インクルーシブで支援的なAI体験をデザインする上できわめて重要なのである。
AIリテラシーとデジタルリテラシー
AIが、人々がオンライン上で情報を検索・作成・伝達する方法にますます影響を与えるようになるにつれ、AIリテラシーはデジタルリテラシーの新たな重要要素になりつつある。
デジタルリテラシーとは、広義には、デジタル技術を用いて情報を探し出し、評価し、作成し、伝達する能力と定義される。
AIは新たなインタラクションパラダイムをもたらしているが、それには新たなメンタルモデルが必要である。それは、ユーザーの過去の検索エンジンや従来のソフトウェアの利用経験から形成されたメンタルモデルと必ずしも一致するとは限らない。
我々の調査では、人々が情報探索に生成AIを利用する際、うまく利用できるかを左右したのは、以下の2つの異なる能力だった。
- プロンプト作成能力:生成AIが有用な出力を生成できるよう、意図、制約、コンテキストを伝える能力。
- 出力リテラシー:生成AIの出力を評価する能力。たとえば、情報の欠落や誤解を見抜き、ハルシネーションの可能性に気づき、情報源を探し、正確さが重要な場面には他の情報源と照らし合わせて確認する能力。
この2つの能力は、必ずしも同時に向上するわけではない。プロンプト作成能力は、生成AIに触れる機会が増えるにつれて急速に向上することが多いが、出力リテラシーの向上は遅れがちである。つまり、一見すると洗練され役立ちそうな回答をAIから引き出せるようになっても、その回答の正確性を見極めたり、どのような場合に検証が必要かを判断したりする能力まで必ずしも向上するとは限らない、ということだ。だからこそ、AIリテラシーは単一の連続的尺度で測定することはできない。それは、人々がどのようにプロンプトを作成し、どのようにその出力を評価し、AIとの関わり方をどのように選ぶかによってかたちづくられる、多面的なスキルセットなのである。
以下のマトリックスは、我々の調査で観察されたAIリテラシーのタイプを示したものだ。ユーザーは4つの象限のいずれかに当てはまるが、生成AIに対する態度、生成AIに触れる機会、あるいは新たに獲得したAIに関する知識によって、時間の経過とともに別の象限へ移動することがある。

これら4つの象限は単なる理論上の話ではない。AIによる情報探索に関して最近実施した調査でも、各ユーザータイプの例が実際に見られた。
- AI初心者:AIシステムを十分に理解しておらず、自信を持って利用することができない、新規または経験の浅いユーザー。プロンプトの作成方法や出力の評価方法を知らない。
- ナイーブなパワーユーザー:生成AIと流暢にやりとりし、プロンプト作成に熟練しているように見えるが、出力を鵜呑みにし、誤りや欠落を見逃しがちなユーザー。
- 懐疑的な非利用者:AIの出力をどう扱うかは理解しているものの、不信感、倫理的な懸念、あるいは個人的な好みから、生成AIを頻繁には利用しない、あるいはまったく利用しないことにしているユーザー。頻繁に利用しないため、プロンプト作成能力はあまり向上しない可能性もある。
- AIエキスパート:生成AIを戦略的かつ選択的に活用し、効果的なプロンプトを作成し、健全な懐疑心を持ち、重要な局面では出力を検証するユーザー。
この記事では、プロンプト作成能力と出力リテラシーが、人々の生成AIとの関わり方にどのような影響を与えるかを示す。
調査概要
デジタルリテラシーについて学ぶ最良の方法は、質問することではなく、観察することだ。
最近実施した調査で、23歳から65歳までの参加者が、自ら選んだ課題について、従来のウェブと生成AIの両方を使って調べ物をする様子を観察した。参加者は任意のサイトやツールを自由に使用でき、この調査がAIに焦点を当てたものであることは知らなかった。当初AIを使用しなかった参加者には、セッションの後のほうで、AIを試してみるよう促した。参加者は、休暇の行き先、DIYプロジェクト、高額商品の購入など、さまざまなトピックについて調べていた。調査参加者のAI利用経験はさまざまで、生成AIチャットボットに不慣れな人が1人、特定の業務タスクにのみAIを利用している人が3人、そして個人的な場面と仕事の場面の両方で生成AIを日常的に利用している人が5人いた。
プロンプト作成能力:キーワードから会話へ
改めて説明すると、プロンプト作成能力とは、生成AIが有用な出力を生成できるよう、ユーザーが意図・制約・コンテキストを伝える能力を指す。
プロンプトを作成する際、プロンプトの作成に長けた参加者は、自分が何を達成しようとしているのか、自分にとって何が重要なのかを説明していた。彼らは、自分の課題のコンテキストと、期待する解決策に対する制約条件も盛り込んでいた。その結果、彼らのプロンプトは平均すると長くなっていた。ある参加者は、長いプロンプトを作成しながら次のように述べた。「ここではちょっとコンテキストを提供しようとしているだけです。そうすることで、結果が少し良くなることが多いように思うので」。
プロンプトの例:ニューヨーク州のロングアイランドにあるモントークに行きたいです。ダウンタウンに近いことから考えて、カークパークビーチはその辺りで最高のスポットの1つだと思います。もっとおすすめの場所はありますか。また、このエリアで一番おすすめのカフェやレストランはどこですか。
プロンプト作成能力が低い参加者は、コンテキストや制約条件をあまり入れない傾向にあった。彼らのプロンプトは検索キーワードのようなものが多かったが、これは生成AIを検索エンジンと混同していたためかもしれない。
キーワード形式のプロンプトの例:冷凍庫が下にあるスマート冷蔵庫
さらに、プロンプトの作成に長けた参加者は、一度に複数の質問をしたり、意思決定を支援する形式(表や順位づけされたリストなど)を求めたりするなど、より複雑なリクエストを行うことが多かった。
この違いを説明するために、プロンプト作成能力が大きく異なる参加者による2つのプロンプトを以下に示す。両者とも、購入する車を絞り込むために生成AIを利用した。
| プロンプト作成能力が低い | 通勤1時間なら乗用車かSUVどっち、カムリXSEかCR-VスポーツLハイブリッド |
| プロンプト作成能力が高い | 家族で乗る車についていろいろ調べていて、最初に調べた中で特に目を引いたのがトヨタグランドハイランダーハイブリッドです。これは、6人乗り以上、そこそこの燃費、そして四輪駆動という私の希望条件を満たしています。ハイランダーハイブリッドとグランドハイランダーハイブリッドには、多くのグレードやオプションがあることに気づきました。各グレード間の価格差や違いについて調べるのを手伝ってもらえますか。情報を要約するのに役立つ表も作ってください。 |
このような違いは、調査全体を通じて見られた。プロンプトの作成に習熟した参加者は、1つの会話の中でやりとりを続け、それまでのコンテキストを活かして話を展開する傾向が強かった。彼らは、明示的な質問をせずに、コンテキストを追加するフォローアップのプロンプトを頻繁に作成し、生成AIチャットボットが以前のコンテキストを取り込むことを期待していた。
フォローアッププロンプトの例
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言っていることはもっともだけれど、手持ちのA19 Philips hue電球をこの用途にどうしても使いたかったんです。
たぶんミシシッピ川より西側がいいので、西側ならどこでも大丈夫です。
あるエキスパートユーザーは、Geminiアカウントに複数の会話を固定しており、ファシリテーターに次のように述べた:
「それまでに話した内容をすべて思い出してもらいたいときは、前の会話に戻ることがあります。」
一方、初心者の中には、不必要に会話をやり直す人もいた。ある参加者は、同じ会話を続けるのではなく、質問を練り直すたびにブラウザの「戻る」ボタンを繰り返し使用して、毎回最初からやり直していた。
出力リテラシー:出力の評価と検証
我々の調査では、プロンプト作成に熟練したユーザーの一部が、誤りが生じやすい情報(価格やユーザーインタフェースの操作手順など)を正しいかどうか確認しないことがよくあった。この行動は、彼らが生成AIの限界を十分に認識していなかった可能性を示唆している。生成AIの仕組みを理解すると、その限界を認識しやすくなる。しかし、出力を適切に評価するために、ユーザーがLLMの専門家である必要はない。出力リテラシーは、その大部分が行動に関わるものだからだ。すなわち、間違いが生じやすい詳細を検証し、裏づけを探し、リスクが高い状況では自信たっぷりに聞こえる回答であっても暫定的なものとみなす、ということだ。
知識と、利用への前向きさのパラドックス
AIに関する技術的な理解が深いユーザーほど個人的な情報探索を含むさまざまなタスクへのAI利用に前向きだろうと思うかもしれない。この傾向は、テクノロジー分野には一般的に当てはまる。つまり、そのテクノロジーの仕組みを理解している人は、それをより取り入れる傾向にある。しかし、『Journal of Marketing』誌に掲載された研究では、これとは逆の結果が明らかになった。AIに関する概念的知識が少ないほど、AI利用に対する前向きさが高いことが示されたのである。直感に反するこの結果は、大学生から米国全体を代表するサンプルに至るまで、多様な対象者を用いた6つの調査で繰り返し確認された。テクノロジー全般に対する態度、一般的な知識レベル、AIの能力に関する信念など、数多くの要因を調整した後でも、AIに関する概念的知識が少ないほどAI利用に対する前向きさが高い、という負の相関が見られた。
その研究の著者らは、この傾向がみられる背景の1つに驚嘆の気持ちがあることを明らかにした。すなわち、概念的知識が少ないユーザーほど、AIを「魔法のようなもの」ととらえる傾向が強かったのである。
この結果は、AIの利用が(さらにはAIへの熱意さえも)、なぜ批判的に評価する能力の信頼できる指標にはならないかを示している。
「まるで魔法のようだ」:ナイーブなパワーユーザー
我々が行った小規模な定性調査でも、この結果を裏づける事例が確認された。数か月前からChatGPTを使いはじめたナイーブなパワーユーザーは、得られた情報がどこから来たのかよくわかっていなかった。
「正直に言うと、Maria、わからないんです。まるで魔法のようです。」
このユーザーは、最近、自分の検索習慣が根本的に変わったと報告した。以前は個人的な情報探索ではまずGoogleを使うのが常だったが、今ではまず生成AIを使うようになったという。
「批判的思考を奪っている」:懐疑的な非利用者
また、我々が利用を促したにもかかわらず、情報探索タスクではAIの利用を避けていた懐疑的な非利用者も見られた。この参加者は、仕事でのコーディング作業には生成AIチャットボットを利用していた。しかし、個人的な調べ物には利用していないと語った。「ただ、必要だと感じないだけなんです。むしろ、なんというか、自分でいろいろ考えたいんです」と彼女は言った。その後、彼女は生成AIが人々が自分で考える能力を損なっていると不満を漏らした。
「それは人々から…批判的思考力を…奪っていると思います(略)。それによって、人々が情報を見極める力が弱まると思います。」
AIの出力のチェック
初心者やナイーブなパワーユーザーは、情報探索タスクに生成AIを活用することに、より前向きであった一方、生成AIから得た情報を見極める力は低かった。彼らは得られた結果に対してより強く喜び、感心していて、それを精査せずに受け入れる傾向も強いことが観察された。
それに対して、エキスパートユーザーは、AIの回答を明確にする質問をしたり、別のサイトや検索エンジンを使って結果を照合したりして、AIの回答を頻繁にチェックしていた。
例:車の購入
今回の調査に参加したAIエキスパートユーザーは、購入を検討していた車のさまざまなグレードについて調べるため、しばらくGeminiを利用した。会話の中で、彼はGeminiの信頼性をウィキペディアと比較し、Geminiのアドバイスだけに基づいて高額な買い物の決断を下すことはないと述べた。
「ここ[Gemini]にある情報だけを頼りにすることはないですね。研究論文で引用できるようなものではありません。それでも、たいていはかなり確かな情報が得られます。」
この参加者はAIが生成した情報に対して適切な懐疑心を持っていたため、それが他のサイトの情報と矛盾していることに気づいた。希望していたモデルではNightshadeというグレードを選べないとGeminiが誤って伝えた際、彼はGeminiに本当にそうなのか何度も確認した。「たまに、私は(略)Geminiの間違いを指摘することもあります」と彼は語った。最終的に、彼は他で見た情報をGeminiに伝えた。
プロンプト:他の自動車評価サイトを見ると、2025年式トヨタハイランダーハイブリッド(のMAXパワートレイン非搭載モデル)には、LE、XLE、Limited、Nightshadeというグレードがあるようです。なぜXLEとLimitedだけを比較したのですか。
セッション中、Geminiは主張を譲らなかったため、このエキスパートユーザーはGoogleで別途検索を行い、受け取った情報の真偽を確認した。そして、最終的に、Geminiが参照していた情報は古くなっている可能性が高いという結論に達した。
ツールとモデルの選択
調査では、出力リテラシーの高い参加者は、生成AIをより選択的に利用する傾向があった。彼らは複数のツールを(人によっては有料サブスクリプションも)利用した経験があり、タスクに応じて特定の製品やモデルを選択していた。たとえば、ある参加者は、業務上の調査をまとめるためにNotebookLMを、プログラミングにはCursorを使用していた。また、別の参加者はGemini ProのFlash、Pro、Deep Researchの各モデルを状況に応じて使い分けており、正確な出典が重要な複雑なタスクにはDeep Researchを、より高度な推論を要するタスクにはProを、ちょっとした質問にはFlashを使用していた。
対照的に、初心者やナイーブなパワーユーザーは、最初に紹介されたツールをそのまま使うことが多く、ツール間のどのような違いが重要なのかよくわかっていなかった。ある初心者は次のように尋ねてきた:
「AIにいろいろな種類があるのは知っています。たとえば、GeminiとChatGPTなど(略)どちらを使えばいいのかをどうやって判断すればいいのでしょうか。それぞれ違うのですか。それとも、どれを使っても同じ結果が得られるのでしょうか。」
両方の側面でデザイナーがユーザーを支援する方法
生成AIツールは、プロンプト作成能力(必要としていることをユーザーが表現できるようにすること)と出力リテラシー(返ってきた結果をユーザーが評価できるようにすること)の両方を支援すべきである。多くの製品では、プロンプトのヒントや正確性に関する注意書きがすでに提供されている。しかし、特にオンボーディングメッセージとして表示されたり、インタフェース上の見落としやすい小さなテキストとして表示されたりする場合、初心者のユーザーはそれらをしばしば無視していた。
たとえば、ある参加者は、この調査で、GeminiとPerplexityを初めて利用した。どちらのツールもウェルカムメッセージと正確性に関する注意書きを表示していたが、彼女はそれらにほとんど注意を払っていなかった。Geminiでは、画面の大部分を覆う大きなウェルカムメッセージまで表示されていたが、彼女は約10分間そのメッセージを回避しながら操作を続けた後、それを閉じた。彼女がメッセージを読んだ様子はなかった。


これらの例は、2つのよくあるUX上の問題を示している。すなわち、ユーザーはオンボーディングメッセージを読みたがらないということ、そして、役立つガイダンスがAIが生成した長い回答の中やその下に埋もれていることが多いということだ。

生成AIツールは、ユーザーが意図を表現する際だけでなく、返ってきた内容を解釈する際にもユーザーをさらに支援できる。プロンプト作成能力と出力リテラシーには、それぞれ異なるUX戦略が求められる。より良いプロンプト作成とより良い出力を促すためのデザインの工夫には、次のようなものが考えられる:
- AIが生成した長いテキストの中にプロンプトの提案を埋もれさせるのではなく、クリック可能な選択肢として表示する。
- ユーザーがクリックやタップですぐに選べる調整項目を提供する(「制約を追加する」「表にまとめる」「人気順に並べる」など)。
- プロンプトがあいまいな場合、推測して、広範すぎる回答を返すのではなく、簡潔な確認質問をする。
- 一般的なフィルターや制約(旅行計画における予算、場所、日程など)のための簡易的なコントロールを提供する。
ユーザーが出力をより適切に評価・検証できるよう支援するために(特に正確性が重要な場合)、デザイナーは次のようなこともできる:
- 情報が古い可能性がある場合や確認が難しい場合、意識的に不確実であることを示す表現を入れる。
- 誤りが生じやすい情報(価格、在庫状況、製品内の手順を段階的に示すガイダンスなど)には、コンテキストに応じた警告を表示する。
- 「検証」アクションをより目立つようにする(例:「出典を表示」「重要な主張を確認」「ウェブ検索結果と比較」)。
- 出典がない場合や出典の信頼性が低い場合は、そのことを明確に示す(例:「信頼できる出典が見つかりません」)。
結論
AIリテラシーは単純な連続的尺度で測れるものではない。生成AIを頻繁に利用しているからといって、それを効果的に利用できているとは限らない。むしろ、AIリテラシーとは、プロンプト作成能力と出力リテラシーという2つの側面からなる複合的なものである。この2つの能力は、必ずしも同時に向上するとは限らない。そのため、人々の生成AIとの関わり方は、両者がどのように組み合わされているかに左右される。デザイナーは、ユーザーがAIについて何を知っているかだけでなく、AIをどのように利用し、信頼しているかという点においても、ユーザーの現状に合わせた対応をする必要がある。
参考文献
S. M. Tully, C. Longoni, and G. Appel. 2025. Lower Artificial Intelligence Literacy Predicts Greater AI Receptivity. J. Mark. 89, 5 (2025), 1–20 https://doi.org/10.1177/00222429251314491
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