UIが速すぎる場合
ユーザーは、変化が速すぎるものを見落とすことがある。また、気がついているときでも、画面上の変化する要素を、限られた時間内に理解するのはさらに難しい。
応答時間関連のユーザビリティ上の問題の99%がユーザーインタフェースが遅すぎることが原因であることを考えると、コンピュータが速すぎるという数少ない事例について書くというのは危険なことかもしれない。結局のところ、
- コンピュータは遅すぎることが多い。そして、
- 応答時間が速いとユーザビリティは向上する。急速に人間の記憶は劣化するので、遅いコンピュータを待っている間、人は自分がしていたことの一部を忘れてしまう可能性があるからである。
その上、若いユーザーが忍耐力に欠けることはよく知られているが、年配のユーザーですら遅いサイトに長くとどまったりはしないからである。
誤解を招かないように説明できているといいのだが。つまり、ほとんどの場合、速ければ速いほどユーザーエクスペリエンスとは良くなるものなのだ。
とは言え、速すぎるということもある。一番最近、そういう例を見たのは、2、3日前、「タッチスクリーン向けのモバイルアプリ」と「モバイルとタブレット向けのビジュアルデザイン」についてのコースの次期アップデートのため、タブレットのアプリケーションをユーザーテストしていたときであった。そのユーザーはWi-Fiネットワークの正しい接続に何度も繰り返し失敗していた。というのも、彼女が再三タッチしていたのは、リスト内の別のエントリーだったからである。
こういうミスをしてしまうことがジェスチャーインタフェース固有の問題であるということを受け入れ、ターゲットから少しはずれた点にタッチしたりする人もいる。
しかし、このユーザーは間違ったターゲットを何度もヒットしていた。理由はなぜか。タブレットが絶えず電波をスキャンして、利用可能なWi-Fiネットワークのリストにエントリーを追加したり削除したりすることで、目的のターゲットが移動し続けていたことを、彼女が気づいていなかったからである。
そのインタラクションは以下のように進行した:
- (適切なログイン情報を持っていた)目的とするネットワークを見つけるため、ユーザーはそのリストを流し読みした。
- ステップ1で見つけたネットワークの行にタッチすることを意図して、手をそのターゲットに向けて移動させ始めた。
- 彼女の指がタブレットの表面に向かって移動するほんの少しの間にも、そのリストはエントリーを追加したり削除したりして、目的とするターゲットの位置を画面上の違うところに急に動かしてしまっていた。
- ユーザーは目的とは別のターゲットを選択した。なぜならば、そのときには彼女が目指していたネットワークがあった位置を新たなネットワークが占めていたからである(その上、彼女の指がそのターゲットを覆っていたため、間違った名前のものにタッチしていることに彼女は気づかなかった)。
- ユーザーは選択したネットワークにログインしようと試みたが、拒否された。彼女が利用していたのは別のネットワークの認証情報だったからである。
矢継ぎ早にこうしたステップが起こったにもかかわらず、気の毒なそのユーザーがあまりにも何度も、まったく同じシーケンスを繰り返すので、私は何が起きていたかを見極めるのに、そのユーザビリティテストのビデオを再生しなおす必要がないほどだった。
(もちろん、ユーザビリティテストの基本原則に従って、我々がその不運なテスト参加者に、彼女がしていることは間違っている、と伝えることは不可能だった。つまり、我々は、Wi-Fiのソフトウェアがリストの更新を検出しない間に彼女がついにそのネットワークを運良く選択できるまで、静かに座って彼女が失敗しつづけるのを見ている必要があった)。
速いことで見逃される可能性
瞬く間に、という言い回しのように、一瞬で画面が変化すると、ユーザーが本当に瞬きをしてしまって、その変化を見逃す可能性もある。あるいは、先ほどのWi-Fiの例のように、変化が起こっている短い間隔の間、画面のまさにその部分を彼らが見ているとは限らないのだ。
勝手に変化が起こるとき、つまり、その変化がユーザーの指示でないときには、人はそれが求めているものかどうかすらわからなくなり、急に変化したものを見逃す可能性が高い。この問題を緩和するための有効な方策の1つは、変化のスピードを、例えば1、2秒続くアニメーションを利用などして遅くすることである。しかし、シグナルの送りすぎは避けよう。激しく点滅する画面ほどイライラするものはないからだ。
画面の更新が速いのは、それがユーザー主導の行動の結果なら素晴らしいことである。例えば、タブレット上のスライダーにタッチするときには誰でも、それが即、強調表示されて、起動済みであることを示してほしいと思うだろう。また、スライダーを動かしているときには、それに対応する画面上の要素がすぐに更新されることを望むものだ。
ユーザーは何かしている限りは、自分がそれに対する結果を求めているということがわかっている。しかし、こうした場合にも、更新がそうした行動から遠く離れたところで行われると、ユーザビリティの問題が起こる可能性はある。ユーザーの視界の外の変化は見落とされる可能性があるので、古い情報を新規の情報に単に入れ替えるときより、強いシグナルが要求されるからである。その典型的な例がeコマースのショッピングカートである。ショッピングカートに追加するをユーザーがクリックするとその商品数を数え上げるだけの、画面の隅に置かれた表示だ。テストでは、自分がクリックしたボタンから離れたところでこうしたわずかな更新が起こったとき、ユーザーがそれを見落とす、ということによく出くわす。
速いことで難しくなる可能性
2種類目のユーザビリティ上の問題は、ユーザーが急な変化には気づいていても、何が起きているかをすぐに理解できないときに起こる。こうしたことはカルーセルやローテータ等の自動送り式のデザイン要素で起こることが多い。何かを興味が持てそうだと判断すると、すぐにそれが画面からばっと外れて、希望していないものに取って代わられてしまうからである。
これは例えば、あなた方の言葉を読むのが得意ではない国際的な顧客や、ユーザーインタフェースの扱いにさらに時間が必要な年配あるいは障害のある人など、より時間のかかるユーザーには特に問題となる。このようなユーザーは、画面の急激な変化による被害を並外れて受けやすいだろう
ここで、ユーザビリティのシンプルな原則を1つ規定したいと思う。顧客をあざけるのはやめよう。
そして、一回りして最初に戻るが、遅すぎることに比べれば、速すぎることは問題としてはずっとまれであるということを覚えておくことも重要だ。速かろうが遅かろうが、大事なのは、ユーザーエクスペリエンスの時間という側面に注意を払うことである。結局のところ、他のほとんどの形態のデザインと比べて、インタラクションデザインを差別化する最も重要な要素は、これが時間で変化する現象を扱うものだ、ということである。
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Original image by: John Liu