コンピュータに恥をかかされるということ

コンピュータシステムは我々を不快にしてはならない。しかし実際には、不快な思いをさせられることは珍しくない。コンテキストを考慮するユーザビリティ手法は、そのようなユーザーエクスペリエンス上の社会的欠陥を発見することの助けになるだろう。

コンピュータシステムは決して人間に害を与えるようなことをしてはならない。そして、そこには、ユーザーに恥をかかせたり、不快にしたりしてはならないということも含まれる。かつて1942年に、Isaac Asimovはこの“危害を与えてはならない”という原則を彼のロボット工学3原則の第1条とした。しかし、コンピュータは人を傷つけない、というこの基本的な状態にいまだ我々は到達できていない。デジタルテクノロジーが驚くべき成果を挙げているにもかかわらず、ユーザーを満足させるところまでたどりつけていないシステムは多いし、ユーザビリティに問題のある製品をリリースし続けている企業も多いからである。

この状態に到達するには、システムが仕様に合わせて動作するだけでは十分ではない。また、システムがユーザブルなだけでも、もはや十分とはいえないのだ。大量のスマートデバイスが我々の世界を侵略し、我々が存在するほぼあらゆるコンテキストに関わってきているからである。その結果、そうした欠点やインタラクションの問題はシステム内だけにおさまらなくなってしまった。つまり、ユーザーはシステムによって、人前でイメージを下げたり、恥をかかされるようになったのである。

言い換えると、スマートデバイスを普及させたことにより、我々はコンピュータに恥をかかされるという状況を引き起こしてしまった。したがって、システムを単独で利用している状況のユーザーだけではなく、社会的な状況にあるユーザー、つまり、周りに誰かがいるところで、システムとのインタラクションをしているユーザーや、システムを共同利用するユーザーのコミュニティにまで広げて、我々のユーザビリティ手法を適用しなければならなくなったといえよう。

コンピュータが利用され始めたころ、ユーザーはコンピュータ上でプログラムを“走らせる”ことさえできれば満足していたので、ユーザビリティは機能性やわかりやすさと密接に結びついていた。しかし、デジタルシステムが成熟して、できることが増えるにつれ、使いやすさへの関心が、コンピュータ利用の前後や最中のユーザーエクスペリエンスの向上を目的とするユーザーエクスペリエンスデザインという分野へと発展した。タスク達成とユーザーの満足への配慮が、品質の測定やユーザーの価値認識、テクノロジーへの感情的反応といった、人と製品と企業の間のインタラクションにおけるさまざまな側面について気を配るところにまで広がっていったのである。

MS-DOSの悪名高いエラーメッセージ「Abort, Retry, Fail?」は、かつてのコンピュータとの対話の質やその限界の象徴である。

今や、コンピュータとスマートデバイスは社会の担い手になった。話しかければ、彼らは反応し、我々のために行動して、コミュニケーションや取引の場で我々の代わりをしてくれる。しかし、デジタルアシスタントたちは普段はリビングルームに潜んでいて、我々の話す一語一語に耳を傾けているが、ユーザーの言っていることを誤って解釈をすることも多い。システムが賢くなればなるほど、さらに役に立ち、もっとうまく機能することが期待されるようになる。現在、ソフトウェアに期待されているのは、我々に対して誠実で、信頼でき、礼儀正しいことなのである。

また、ユーザーエクスペリエンスデザインでは、“社会的な”ユーザーエクスペリエンス、つまり、グループというコンテキストにある場合のテクノロジーに関するエクスペリエンスにも取り組む必要がある。つまり、デザインしたものの振る舞いが家庭や職場の環境、学校の文化、遊びの場にどう合っているか、あるいは合わないのかを我々は理解しなければならない。

夕食の場、間仕切りのないオフィス、スポーツイベント、教会の礼拝では、デジタルシステムも我々自身も、それぞれ異なった振る舞いを求められるものだ。そこで、より礼儀正しくコンテキストに適合できるようになっているシステムも出てきた。たとえば、我々が予想する通りのやり方で、通常の設定にオーバーライドしてくれる「会議中」モードや「邪魔しないでください」モードを提供しているシステムがそうだ。こうしたモードにするとどうなるかを理解していて、自分が今、どのモードにあるかわかっており、いつモードを切り替えるべきかを覚えておければ、こうしたモードは非常に役に立つものである。

システムの中にはさらに進んで、たとえば、センサーでユーザーの動きを検出したり、時計や地図、カレンダーの情報から利用の意図や状況を推測して、ユーザーのやりたいことを予測するものもある。さらには、ユーザーの行動アクションから学習をするシステムさえある。

しかしながら、デフォルトの設定のせいで、恥をかかせられるシステムもある。エクササイズとして、非常にプライベートな活動を人前で報告されたり、深夜にかかってくる電話を待っているのに、呼び出し音を自動的にオフにしてしまうようなシステムがそれにあたる。

社会生活で恥をかくこと

コンピュータに恥をかかされたという事例は枚挙にいとまがない。以下にそうした事例に見られる典型的な問題を挙げよう。あなた自身も、自分の経験した、さまざまな耐えがたかった瞬間をこのリストに追加できるのではないだろうか:

  • コミュニケーションの大失敗: メッセージシステムのせいで、意図していない受信者やメッセージがすぐに含まれてしまったり、意図せぬアドレスから送信してしまいやすいことはよくある。グループSMSメッセージによって、個人あてのはずだったSMSメッセージがグループ全体に送られ、皆が気まずくなるということもありがちだ。
  • プライバシーの漏洩: システムによって、(写真や名前、場所のような)プライバシー情報がさらされたり、シェアされたり、あるいは、実際には削除されていないということは多いし、ときには、かなり後になるまで、その問題に気づかないことすらある。オフになっている、あるいはミュートになっていると思っていたワイヤレスマイクやカメラによって、プライベートな瞬間を実際に生中継されてしまうこともある。
  • ひどいタイミング: 24時間表示の時計を使っていない場合、午後2時のアラームやアポイントメントが、デフォルトで午前2時になっていることがある。カレンダーから1分ミーティングに招請されてしまうこともあれば、迷惑な効果音によって、静かな瞬間が台無しになることもある(たとえば、録音中や会議中に割り込んでくる気まずいボリューム変更音など)。個人的なメッセージのポップアップが公式な場でのプレゼンテーション中に出てくるということもよくある。
  • 押し付けがましい好意: オートコレクトなどのインタフェース機能のせいで、同僚の前で、思いがけなく恥をかかされてしまう。連絡先やよく使う連絡先(speed-dial list)にあなたにとっての危険人物を追加してしまうアルゴリズムのせいで、苦痛を感じたり、危険になることすらある。
  • 汎用的なアラート: アプリやサービスはソーシャルメディアの連絡先に自動のメッセージを大量に送ってくることが多い。また、通知はあらゆるデバイスで騒音になる可能性がある。1300km離れた場所に関する公共のアラートによって、真夜中に家中のものが起きてしまう。執拗な押し付けがましいアップグレードの通知の中には、「はい」と言えない技術的な問題、あるいはユーザーのポリシーによる理由の場合でも、「いいえ、結構です」という答えを受け付けてくれないものもある。
  • 特定の性別や民族、能力の人向けにデザインされたシステム黒色人種を認識しない画像検索や、ある方言には機能しない音声認識システム、両手を使わないと操作できないデバイスなどは、ひどく悪い方向に行ってしまったデザインのごく一部の例といえる。デザインチームが自分たちのようなユーザー向けにシステムをデザインしてしまったのが、そうなった理由だ。インタフェースデザインの第1法則は、あなたはユーザーではない、である。こうしたシステムは制作者にとって恥だ。しかし、もっと重要なのは、デザインの仕様から外されてしまっているユーザーを傷つけ、恥をかかせることである。
@Thingclashは「モノのインターネット(Internet of Things)の周辺で起こるテクノロジーやシステム、文化、価値の衝突の影響や意味」を収集するプロジェクトのTwitterアカウントである。非常に私的な瞬間を監視しているバスルームの照明や、デジタルパスポート、ウェアラブル機器はどれも、恥ずかしさや、さらにもっとひどいことの原因になる可能性がある。
LinkedInは自動配信メールで、ユダヤ系の社会主義者のプロフィール写真を、悪名高い白人至上主義者の政治活動のニュースと組み合わせ、間違えられたほう(=社会主義者)のソーシャルネットワークに投稿してしまった。単に両者が同じ名前だったからである。

具体的でも正確でもないアルゴリズムは、たくさんのユーザーに恥をかかせる供給源になりうる。たとえば、LinkedInは自動で送信されるメッセージ内で、ユダヤ系の社会主義者のプロフィールの写真を悪名高い白人至上主義者の政治活動のニュースに結びつけ、間違えられたほうのソーシャルネットワークのアカウントに投稿してしまった。なぜならば、単に両者が同じ名前だったからである。この事件についてのSlateの記事によると、LinkedInは自分たちのソフトウェアがずさんなものであるとわかっていたが、とりあえず使っているという。何かが起きたときに読者から言ってくるエラー情報を利用しているからだ。Slateにこの記事を書いたほうのWill Johnsonは、いったい何人の人がこういうやり方で間違った死刑宣告をされたのだろうと疑問を呈している。プロフェッショナルのネットワーク内で、大きな恥をかいて、就職の見込みがつぶれただけでも、致命的に感じられるはずだからである。

(訳注:間違えられた人は中学教師で、過去にナチスに投獄されてしまった家族のいるユダヤ系移民。なので、トランプの大統領選挙代理人に選ばれ、ナチスを信奉するような白人至上主義者の記事に自分の写真がくっつけられたことで、同僚に驚かれ、恥をかかされたと怒っている)

意図はしていないが、結果的にユーザーに害をなす可能性(と、それを防いだり、軽減する方法)を取りまとめる作業を、すべてのシステムの設計プランに組み込むべきだ。そこでは、まずこう自問するところから始めよう。「うまくいかない可能性があるのはどこだろうか」。

携帯電話での気まずい瞬間

携帯電話のおかげで、我々は新たなやり方でテクノロジーにいろいろと恥をかかせられようになってしまった。以下にそのうちのほんの一部の事例を示したい。

電話機の中には、ポケットやバッグの中から、あるいは連絡先の情報を見ようと思うだけで、うっかり電話をかけてしまうものがある。また、通話を終わらせたのに、電話が切れていないものもある。

通話中、すぐ近くにいる人から、話しかけられている、と思われてしまうことがある。そうなると、話しているつもりだった相手と、話しているつもりではなかった相手の両方にあやまらなければならなくなり、関わった全員に恥をかかせてしまうことになる。

モバイル搭乗券は空港で利用する前に消えてしまうことがある。探すべきは、Eメールの添付書類の中か、アプリ内、あるいはブラウザのダウンロードエリアだろうか。それとも、カメラアプリ内の画像がそれか。モバイル搭乗券がどこにあるかを追跡することで、余計な記憶への負荷となり、ユーザーの認知負荷は増大する。搭乗ゲートで、オンラインでの搭乗手続きをもう一度全部やり直さないと、飛行機に乗るためのバーコードが表示されないこともある。だが、プレッシャーを感じる必要はない。あなたがそれをやっている間、みな、辛抱強く待っていてくれるだろう。

Twitter上の航空会社のカスタマーサービス担当には、携帯電話から搭乗券が消えてしまったことを怒っている旅行者の苦情が寄せられている。

幸いにも、説明を改善したり、画像を使ったり、以前のように印刷するなどして、航空会社も旅行者もこうした問題を帳消しできるようにはなってきている。

しかし、モバイルバンキングやモバイル投票でたいへんだった人もいるのではないだろうか。携帯電話経由で、パスポートや運転免許の手続きをしたときはどうだっただろう。そして、うまくいかなかったときの影響もどんどんと深刻になってきている。

コンテキストにうまく適合したユーザビリティの事例

すでに以下のようなシステムでは、ユーザーが恥をかかないよう、コンテキストに即したUX上のコツがうまく利用されている:

  • Gmailはユーザーがメッセージ内で添付書類のことについて触れているのに、添付書類がついていないと、警告してくれる。
  • Androidのスマートフォンには、営業時間外に目的地に到着しそうな場合、教えてくれるものもある。
  • 車内に鍵を置いたままではドアをロックできなかったり、ドアをロックしないまま、うっかり車から離れたりできないようになっている自動車もある。
  • メッセージングシステムの中には、スケジュールを承諾すると、即、カレンダーにアポイントメントを簡単に追加できるようになっているものもある。

社会的欠陥にもコストはかかる

ユーザーは自分が見たことのある最良のデザインと比べて、使いやすさを評価するようになっていく。その結果、可もなく不可もないエクスペリエンスはグラスに水が半分も入っているというよりも、半分しか入っていないというように、厳しく解釈されてしまうことになる。そして、製品の欠陥が原因で問題が起こると、顧客は口コミを流すことから始めて、ずっと残ってしまう否定的なレビューを書くようになりかねない。

コンピュータシステムがうまく機能しないとすぐ、それをデザインしたものの評判は悪化する。“スマートさの足りない”システムとのインタラクション中に起こるさまざまな予期せぬ出来事によって、大きな恥をかかされたり、不快にさせられることは多い。そして、そういう無念な気持ちは長く続くこともありうる。人というのは、記憶の中にあるひどいエクスペリエンス同士を一括りにしがちだからだ。恥ずかしい気持ちになるたびに、前にそういうふうに感じたことを思い出すのである。紙とペンのほうがいい、と思うようになるのも無理はないだろう。

企業はユーザーが見つける問題の解決のための費用対効果にもっと大きな注意を払うべきだ。時間を無駄にするイントラネットの改善率を測定するほうがずっとやさしい作業ではある。しかし、出来の悪いデザインは顧客の時間や費用、そして、しばしば彼らの尊厳までも失わせてしまうことが多いからである。

顧客に恥をかかせたというコストを軽視してはならない。かつて愛していた企業や製品に裏切られた忠実な顧客こそが、誰よりも強く憤るのだ。裏切られたという気持ちは高くつくものであり、測定できるかどうかは、ここでは関係ないのである。

問題発生の仕組み

Andrew Hintonは彼の著書、『Understanding Context』の中で、こうした問題の多くは、“コンテキストの崩壊”が原因である、と説明している。つまり、あるコンテキストでは問題のなかったアクティビティも、別のコンテキストでは完全に場違いになってしまい、社会的な気まずさや、もっとひどいことを誘引しているというのである。デジタルや物理的なコンテキストに並び替えが起こり、社会規範や、他者や企業、デジタルシステム、自分自身に対する我々の期待の中でうまく機能しなくなっているのだ。

こうした社会的な問題の中には、デザイナーや調査担当が正しいコンテキストでシステムをテストしなかったり、適切でない対象者でテストしたことによって、起こってしまったと考えられるものもある。とはいえ、社会的欠陥というのは、デザインチームが普段、利用しているUXの手法で見つけるのは難しい。というのも、通常、インタフェースのテストはラボでおこなわれるということ、対象者は1回に1人のユーザーだけであること、実際の利用の状況や範囲、規模を知らなかったり、リアルなシミュレーションではないということ、それ自体が、多くの社会的問題の原因だと考えられるからである。システムというのは、単独、あるいはプロトタイプでの利用だったり、インストール前や、対象が少量のデータの場合、あるいは、机に座っての利用や、適切な照明環境で特定のタイプのユーザーが利用する、といったような状況ではかなりユーザブルだったりするものだからだ。しかし、利用される場所が家庭だったり、グループや公共の場、あるいは、普段の日常生活での活動をおこないながらだったりすると、ソーシャルな場面で恥をかかされるというこの課題は顕在化してくるのである。

ニュースの気象キャスターMetinka Slaterが雷雨の最新情報を更新しようとしたところ、Windows 10 に「Upgrade now(:今すぐアップグレード)」というメッセージが気象レーダーマップ上に出てしまった。そこで、Slaterはすぐに画面を別の動画ソースに切り替えた。出典: Beta News: Television station KCCI 8, Des Moines, Iowa, USA.

リリース後の問題解決は難しいこともある

もし、システムをリリースした後、ユーザーに恥をかかせるUXの問題を確認し、解決すればよい、と思っているのなら、考えなおしたほうがよい。問題を申告するというのはユーザーにとっては非常に難しいことが多いからである。また、絶望的になり、世間に向けて苦情を公開したユーザーを追跡して、即、対応するのに苦労している企業も実際にある。

リリース後は変更不可能なシステムも多い。こうした不吉な状況になるのは、電話や車、コンピュータデバイス(インターネットルーター、ガレージドアオープナー、エンターテイメントシステムなどの機器)のような、我々が頼りにしていて、よく利用するテクノロジーの場合が多く、モノのインターネット(IoT)のエコシステム内でもそうした状況になることが増えてきている。

自動車のシステムの再起動は一般的になってきてはいる。しかし、そのソフトウェアのアップグレードのプロセスは複雑だ。自分のスマートホームが役に立たなくなって、機能せず、信頼できなくなるというのは、誰も望まない類の未来の生活像だろう。“コンテキストに合っていて、時間が経っても”使いやすいようにデザインする、ということが必要不可欠なのだ。

UXデザインでの、コンテキスト上の問題を見つけて解決する方法

  • 自分が賢くなったように感じさせる、優れた設計のシステムから学ぼう。
  • フィールド調査を実施し、システムとインタラクションをしているユーザーのグループを観察しよう。また、その調査は時間をあけて、繰り返しおこなうとよい。ユーザーのインタビューやアンケート時には、イライラしたことや、困惑しそうな出来事など、感情がどう動いたかについて聞こう。
  • 長期間にわたり、毎日、システムを利用している間のインタラクションと、すべての事故や予期していなかったことについて、ユーザーに自己申告してもらおう。それには、たとえば、日記調査などの長期的な調査手法を利用するとよい。
  • 政治環境が自分たちのところとはまったく異なっている国(そして企業)といった、コンテキストが大きく異なった場合のシステムのユーザビリティについても考慮しておこう
  • 意図している利用方法かどうかにかかわらず、幅広い利用方法や誤用の可能性についても検討しておこう。
  • 悪意のあるユーザーや信用できないシステムオペレーターが自分たちのシステムを使って、どうやって他人に害を加えようとするかを考えておこう。
  • 自分たちの製品と一緒に機能するはずのテクノロジーエコシステムなどの製品のことも考えておこう。時が経つにつれて、最も壊れそうなものや、変化しそうなものは何だろうか。
  • 単独でもグループでも、さまざまなユーザーで早い時期に何度もテストしよう
  • アップデートしやすいようにしておこう。必ず、後からでも修理しやすいようにして、予期できない問題にも対策が取れ、ユーザーの安全を確保できるようにしておこう。
  • 長期にわたって個人情報を保護し続ける方法について考えておこう。クラウドに置いてはいけないものはある。データというのは本当は匿名化できてなかったり、保護されてなかったり、削除されてなかったりすることも多い。したがって、どの情報をデフォルトでシェアしたり、ユーザーから自動的に収集するのかはかなり慎重に考えよう。自分たちが保護できない情報を収集してはならない。
  • ユーザーに自分の個人情報やその共有範囲の管理権限を与え、自分たちに選択権があり、そこにはリスクも伴うということを意識してもらおう。
  • コンテキストや社会性に関わる欠陥のせいで、プライバシーやセキュリティ、法律、安全性に関わる問題が起こらないかどうかを考えよう。
  • 誰でもすぐユーザビリティのバグを申告できるようにしておこう。ユーザーが申告してきた問題を調べて、期待のミスマッチや意図していない弊害のヒントがないかを探そう。
  • ユーザビリティの問題について、システムやそのポリシーのどの部分にそうなった責任があるのかをまとめよう
  • 黙って悩まないようにしよう。あなた自身がそのシステムのデザインチームのメンバーであろうがなかろうが、自分や周りを不快にしたり、恥をかかせたりするシステムには文句を言おう。企業というのは、不満に思っている人が多いシステムを改良するものだからだ。

システム上の社会的欠陥は重要な問題

専門家の中には、人間の仕事の半分はロボットに置き換えられるし、高速道路は自動運転の車ですぐに占められるようになる、と予想する人もいる。いずれにせよ、未来のシステムはもっと社会的で、強力になり、人に危害を及ぼす原因になることも増えるだろう。また、スマートシステムに人間がますます依存するようになるにつれ、ソフトウェアの質と、問い合わせのしにくさというのが、ビジネス上の責任問題になっていく可能性は非常に高い。製品パッケージの読まれない免責事項に何を書いていようが関係ないのである。

何十年も前に作られたソフトウェアが思いのほか、長い寿命を保っているのを見れば、今、開発したシステムの中に、長く利用されるものもあるだろうことは容易に予想できる。ユーザーに自分たちのデザインしたシステムとうまく共生してもらいたいのなら、社会的な欠陥を含むユーザビリティの問題が起こらないようにして、長い間、利用された後でも、システムを修理し、アップデートできるように計画をしておく必要があるだろう。

参考文献

Asimov, Isaac. Robot science fiction series, 38 short stories and 5 novels. Various publishers worldwide, 1939-1986.

Hinton, Andrew. Understanding Context. ISBN 1449323170. O’Reilly Media, USA, December 2014.

編集履歴

航空会社のカスタマーサービス宛のツイートが、原文では3つあったところ、この翻訳記事では1つだけになっておりましたので、他の2つを追加しました(9月21日)。