アメリカでのリサーチ計画時に気をつけること:学びについて

今回は、アメリカでのリサーチプロジェクトを実施する際に、日本人リサーチャーが「学び」について理解しておきたい背景を取り上げたいと思います。

アメリカでリサーチプロジェクトを計画する時に気をつけたいことについて、数回に分けて紹介していますが、今回は「学びについて」書きたいと思います。

就活において、新卒という概念がない

日本だと、学校を卒業して、4月に一気に新卒が入社というのが社会人になる構造ですが、アメリカではその概念は非常に薄いと言えると思います。

例えば、大学生のよくある就職へのパターンとしては、あるポジションや企業など、働きたいところを明確にして、何とかしてインターンをさせてもらうことが第一歩。そこで、本人と企業のお互いが相手のことを見極めて上手く行けば採用ということになります。それも、卒業してからフルタイムという形にこだわらず、学生とパートタイム(もしくはフルタイム)の兼業なんていう人も少なくはありません。

例えば、大学の2年生までの単位を取って、インターンから本採用に移行したところで、数年休学して働き、お金を貯めて、仕事でのコネクションを作ってから会社を一旦辞めて学業に戻って学位を取って卒業し、新たにコネクションを活かしてフルタイムの良いポジションに就職するというような形のキャリア形成もよく見かけます。アメリカではポジションが空けばいつでも採用、タイミングは決まっていないというのが常識です。

意外と学歴社会なアメリカ

日本では、学歴を採用時に主眼に置かないのが主流になってきているようですが、アメリカでは露骨に学歴を重視します。「学校はどこにいつまで居たのか?」「成績は?」「ボランティアは?」、大学であれば「どの学位を取って卒業したのか?」などが転職時の大きなステップアップや給与の決定要因になります

最近の調査で、Lifelong Learningという概念が非常に浸透しており、学び=収入アップという図式が学びのモディベーションになっているということが発表されていました(参照:Lifelong Learning and Technology)。

Pew Research Centerの調査によると、なんと大人の73%は自身のLifelong Learningについて考えたことがあるということでした。事実、働いている人の63%は過去12か月以内に自身のキャリアに関係のある、トレーニングやスキルアップに参加しているとのこと、これは非常に大きな数だと思います。

この数に寄与しているのはテクノロジーの進化で、たとえばwebinarと呼ばれるウェブ教室やセミナーに携帯で参加することも、このカウントに入るようです。

すでにフルタイムで働いていても、年齢がいくつになっても、学位を取ることで収入アップを目指す(目指せる!)

私がアメリカに住んで感じるのは、学ぶ=収入アップという考え方に年齢やライフステージなど、人々の現況にあまり左右されないのではないか、ということです。たとえ結婚して子供が数人産まれた人であっても男女関わらず、この思考が見られると思います。仕事をしつつ大学院に通うことでさらなる学位を取って、収入やポジションのアップをすることが当面の家族のゴールであるという話も珍しくないからです。いくつになっても、大学に行って(戻って)修士や博士を取ろうと考えることは素晴らしいという社会通念を感じます。

Pew Research center の調査「10 facts about American workers」では、近年、学歴による収入の差が顕著になってきていると伝えています。

7. The wage gap between young workers with college degrees and their less-educated counterparts is the widest in decades.

2015年の平均では、学士以上のフルタイムの25-34歳の年収平均は$50,000、ところが、大学中退だと$30,500、高卒だと$30,000と顕著な差が見られます。

こういった状況がLifelong Learningという概念を後押ししていると思います。

日本人が考える「学校卒業して就職、それからはずっと働く」という概念はアメリカでは合わない

日本人の私たちがアメリカで調査をする際に学歴や就職に関して自分たちの日本の物差しで相手を理解しようとしがちですが、このような背景を理解することによって、アメリカの人々の「学び」についての考え方モティベーション、将来設計とのつながりなど、一歩進んで理解できるのではないかと思います。

大学を一時中断して数年プロフェッショナルとして働いてキャリアを築いて、また学校に戻って学位を取ってから社会に戻ったらステップアップが出来る、というキャリアパスのフレキシビリティがある点ではアメリカは素晴らしいと感じました。

商品開発のための現地実態調査

イードの米国子会社・Interface in Design, Inc.は、どのような製品に関してもフレキシブルなスタイルで、アメリカをはじめとした世界各国で調査を実施することが可能です。

例えば、現地情報を出張せずに現地の状況を把握することも出来ます。

皆様の会社の商品企画や開発、デザイン部の方々が、現地向けの商品を開発する際の一助(マーケットの状況や、製品の使用状況などを通した仮説の抽出など)としていただけるはずです。

ご希望に応じてプレインタビューを加えたり、観察調査を加えるなどのオプショナルサービスも提供可能ですので、下記よりお問合せ下さい。

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森原悦子
著者(森原悦子)について
Interface in Design, Inc. COO/President。
武蔵野美術大学卒。インダストリアルデザイナーなどとして活躍後、旧イードに入社。定性調査やエスノグラフィーといった手法を得意とし、クライアントのグローバルな商品開発のコンサルティングリサーチを多く手がける。2011年8月より現職。
書籍のお知らせ:京都女子大学家政学部生活造形学科の教授である山岡俊樹先生が、2016年6月に『サービスデザイン: フレームワークと事例で学ぶサービス構築』という本を出版されました。この本では、サービスデザインの考え方やデザイン手法について解説してあります。出版にあたり、アメリカの実例をコラム形式で紹介してほしいという依頼を受け、U-Siteでのコラムのうち、本の内容に合うコラムを2本選び、それを一部変更したものが掲載されています。

公開:2016年10月17日
著者:森原悦子

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